新郎新婦のリアル

妊娠中の二人の挙式は、契約時の週数に準備期間を足すと日程が決まる。半年後は出産直前、9か月後は産後に落ちる

「妊娠中なのですが、挙式はできますか」と聞かれたとき、その場で答えを持っている式場は、思っているより少ないはずです。

できる、と答えるのは簡単です。ただ、その二人が契約してから挙式までの間に、体は毎週変わります。衣装の採寸は契約時と本番でずれ、料理は食べられるものが変わり、体調しだいで日程そのものが動くこともあります。契約は取れても、変更とキャンセルの種を抱えたまま進むことになります。

結論を先に書きます。妊娠中の二人を受けるときに見るべきなのは、「受けるか断るか」ではなく、契約した日の妊娠週数と挙式日の関係です。契約時の週数に、契約から挙式までの週数を足すだけで、本番が出産予定日のどのあたりに来るかが決まります。この足し算を契約の前にやっておくと、日程の組み方と変更条件の置き方が見えてきます。

この記事では、足し算の表を作り、そこから式場が決めておくことを順に書きます。数字は計算のための仮の置き方です。妊娠の経過には個人差があり、医師の判断が最優先です。僕が確かめられた公開データで、妊娠中の挙式の割合や変更率を示したものは見つけられませんでした。なので、業界の傾向は書きません。自分の会場の数字に置き換えるための型として読んでください。

足し算の表を作ります

使う式は一つです。

挙式時の妊娠週数 = 契約時の妊娠週数 + 契約から挙式までの週数

契約から挙式までを月数で聞いたら、1か月を4.35週として換算します。出産予定日は妊娠40週とします。

契約時の週数を8週、12週、20週、契約から挙式までを6か月、9か月、12か月に置いて計算すると、次のようになります。

  • 8週で契約、6か月後に挙式:34週。出産予定日の6週前です
  • 8週で契約、9か月後に挙式:47週。出産予定日の7週後です
  • 8週で契約、12か月後に挙式:60週。出産予定日の20週後、つまり産後5か月ごろです
  • 12週で契約、6か月後に挙式:38週。出産予定日の2週前です
  • 12週で契約、9か月後に挙式:51週。出産予定日の11週後です
  • 12週で契約、12か月後に挙式:64週。産後5か月半ごろです
  • 20週で契約、6か月後に挙式:46週。出産予定日の6週後です
  • 20週で契約、9か月後に挙式:59週。産後4か月半ごろです
  • 20週で契約、12か月後に挙式:72週。産後8か月ごろです

見てほしいのは、半年後の挙式がいちばん危ない場所に落ちることです。契約が8週でも12週でも、半年後の挙式は妊娠34週から38週に当たります。出産予定日の目前です。逆に、9か月以上先に置くと、挙式は出産の後に来ます。つまり、妊娠中の二人が選べる日程は、実質的に2つしかありません。出産前のかなり遅い時期か、出産後です。

式場の平均的な契約から挙式までの期間は、会場によって違います。人気日を押さえる二人は1年以上前に決めることが多く、日取りを急ぐ二人は半年を切ることもあります。自分の会場で、直近の契約を10組抜き出して、契約日から挙式日までの月数を並べてみてください。その分布が、上の表のどの行に集中するかで、妊娠中の二人にどんな日程を提案することになるかが決まります。

安定期は、日程の目安に使いにくい

妊娠中の挙式というと、「安定期に挙げる」と言われます。一般に安定期と呼ばれるのは、妊娠16週ごろから27週ごろまでだと言われています。ただ、この範囲に挙式を置くのは、表を見ると難しいことが分かります。

契約が8週なら、安定期に挙式を置くには、契約から8週から19週後、つまり2か月から4.5か月後の挙式になります。式場の通常の売り方より、かなり短い期間です。人気日はたいてい埋まっていて、空いているのは平日か、条件の悪い日になりやすくなります。

ここで、式場側の損益に関わることが一つあります。妊娠中の二人のために、短い準備期間の日を空けておけるかどうかです。常に空けておけば、その日に別の二人に売れたはずの粗利を捨てることになります。空けておかなければ、安定期の挙式を求める二人は他の式場に流れます。

僕は、空けておくのではなく、「直前でも埋められる枠」を決めておくのがいいと思っています。たとえば、挙式の3か月前になっても売れていない日を、短期の準備でも受ける日として別に扱います。売れ残りかけている日なら、妊娠中の二人に使っても、他の二人から機会を奪いません。

衣装は、契約時と本番で体型が変わる

妊娠中の挙式で、いちばん手間が増えるのは衣装です。契約時に決めたドレスの仮縫いと、本番の体型の差が、通常の二人よりずっと大きくなるからです。

打合せの回数に影響するところだけ、整理します。

  • 仮縫いを1回で済ませず、本番の直前に採寸と調整を入れる前提にします。回数が増えるのは衣装担当で、サロンの工数が上がります
  • ドレスの形は、体型の変化に合わせて調整しやすいものを提案します。背中を編み上げやリボンで締めるタイプは、サイズを後から動かせます
  • 追加の調整にかかる費用を、契約時に伝えます。ここを曖昧にすると、本番直前に追加の請求が出て、二人の不信感が生まれます

仮に、通常の衣装の調整が2回で、妊娠中の二人は4回になるとします。1回あたりの衣装担当の工数を1時間、人件費を時給2,000円と置くと、2回分の差で4,000円です。費用で見ると小さい数字です。見るべきなのは、本番直前の調整に日程の余裕を持たせることです。式の2週間前に最終の試着を置くと、そこで出産の兆候があれば間に合いません。式場は、衣装屋さんの納期と、試着の日取りを、通常の二人より前倒しで管理することになります。

料理と席の準備

料理は、通常の二人よりも早めに確認する項目が増えます。

食べられないものを聞くのは、アレルギーの確認と同じ段取りで進められます。妊娠中に控えたほうがよいとされる食材は、医師の指導や本人の判断によって違います。式場の側で「妊娠中だから生ものは外す」と決めてしまうのは避けたほうがいいと思います。聞いて、本人が決めた内容を調理場に伝えます。

席については、控室や会場内の動線を確認します。座る時間が長くなる披露宴で、休める場所があるかどうかです。ドレスの種類によっては、席を立つのにも手がかかります。新郎側の親族や、介助が必要な家族の動線と同じように、二人の動線を見ておきます。

式場が決めておく変更条件

ここまでが準備の話です。経営の数字に直接効くのは、変更条件です。

妊娠中の二人の挙式は、体調で日程が動く可能性があります。ここで考えるのは、動いたときに式場がいくら失うかです。

仮の式場で考えます。1組の粗利は140万円とします。妊娠中の挙式を年に6組受けて、そのうち1組が直前に日程を変えるとします。変えた日が売り直せなければ、粗利の140万円を丸ごと失います。6組に1組の確率で、年間で見ると平均23万円の損失です。もし変更になった日が売り直せるなら、損失は小さくなります。売り直せる日かどうかは、日程の変更が決まる時期と、その日の人気で決まります。

だから、変更条件の置き方は次の3点で考えます。

  1. 変更を受ける期限を決めます。たとえば挙式の1か月前までなら、日程を変えられる。それ以降は、変更ではなくキャンセルとして扱う。期限を置く理由は、売り直す時間を確保するためです
  2. 変更の費用を決めます。変更が無料で何度でもできるとすると、売り直せなかった日の損失を式場が丸ごと負担します。変更は1回まで無料、2回目から有料、のような置き方が考えられます
  3. 変更先の日程を、あらかじめ何パターンか提示します。出産の後の日程を、契約時に仮押さえしておきます。変更が決まったらすぐ移せるので、二人の不安が小さくなり、式場もキャンセルを避けられます

「妊娠中だから特別に」と、場当たりで条件を緩めるのは、僕は反対です。式場が前例のない判断を担当者に任せると、担当者によって対応が変わります。二人の側から見ると、不公平に映ります。条件は契約書に書いて、全員に同じものを出すのがいいと思います。

挙式日の変更と売り直せる期限については、別の記事で数字を出しています。妊娠中の挙式でも、変更が決まる時期がその期限より前か後かが、損失の大きさを決めます。

産後の挙式を選ぶ二人を取りこぼさない

表で見たように、9か月以上先の挙式は、出産の後に来ます。ここで、産後の挙式を選ぶ二人の相談に乗れるかどうかが、受注に効いてきます。

産後の挙式で、式場が準備しておくことは次のとおりです。

  • 子連れで来る前提の席と、授乳やおむつ替えの場所の案内を、契約前に出します
  • ドレスは産後の体型の変化があるので、仮縫いを遅らせる前提で提案します
  • 赤ちゃんを抱いたまま入場する、参列者に預ける、などの進行の例を、あらかじめ示します

こうした案内が公式サイトや見学時の資料に載っているだけで、「ここなら相談できる」と感じてもらえます。これは、妊娠中の二人に限らず、小さな子どもを連れたゲストにも使えます。子連れゲストの備えは、別の記事で整理しています。

来館時に聞く3つのこと

妊娠中の二人が来館したときに、最初に確認することを3つに絞ります。

  1. 今、妊娠何週か。出産予定日はいつか
  2. 挙式をいつごろ希望するか。出産の前か、後か
  3. 医師から、挙式に関して言われていることはあるか

この3つが分かれば、上の表のどこに落ちるかが決まります。聞くときの言い方は、「体調を最優先に考えたいので、教えていただけますか」のように、二人の側に立つ言い方にします。

妊娠の事実は、二人から言われるまで確認しないのが原則です。見た目で判断して尋ねるのは避けます。二人から申し出があったときに、すぐに答えを返せる状態にしておくことが、式場の準備です。

まとめ

  • 妊娠中の挙式は、契約時の妊娠週数に、契約から挙式までの週数を足して、出産予定日との関係を出すところから始まります
  • 契約が8〜12週なら、半年後の挙式は妊娠34〜38週に落ちます。9か月以上先なら出産の後になります。実質、選べる日程は出産直前か、産後の2つです
  • 安定期(16〜27週ごろと言われます)に挙式を置くには、契約から2か月から4.5か月の短い準備期間になります。売れ残りかけの日を短期用の枠として扱うと、他の二人の機会を奪いません
  • 衣装は調整の回数が増えます。工数の差は小さくても、最終の試着を式の直前に置かない日程管理が要ります
  • 経営の数字に効くのは変更条件です。期限、費用、変更先の候補を契約書に書き、全員に同じ条件を出します。仮の式場で6組に1組が直前に変更し、売り直せないと、年23万円の粗利を失う計算になります
  • 産後の挙式を選ぶ二人にも、子連れの席、授乳の場所、入場の進行例を先に出せる状態にしておきます