新郎新婦のリアル

猛暑日の屋外待機の暑さ対策は、仮の式場で年17万円。体調不良が年0.47件なら、1件で36万円を失う前提でないと元が取れない。先に効くのは設備より、予報で屋内に移すルールだ

7月の土曜、午後2時。チャペルの外で、ゲストが日なたに並んでフラワーシャワーを待っています。日傘を持っている人は少なく、女性の何人かはハンカチで首を押さえている。年配のゲストは、いつの間にか日陰を探して建物の壁際に寄っている。こういう光景は、夏の式場に立つと珍しくありません。

結論から書きます。猛暑日の屋外待機への対策は、設備を買う前に「予報が何度以上なら待機を屋内に移すか」というルールを決めるのが先です。このルールは追加の費用がほぼかかりません。ミストファンや日除けテントを買うのは、その次の段階で、体調不良が1件出たときの損が、仮の式場で36万円を超えると見るときだけです。

ここから先は、仮の式場で計算します。出典があるのは、東京都心の猛暑日が2025年に23日あった、という一点だけです。ウェザーニュースが2025年8月27日に、東京都心の年間の猛暑日が23日目になり、2023年の22日を上回って過去最多になったと報じています。ほかの数字は、すべて仮置きです。自分の会場では、どこを置き換えればいいかも書きます。

屋外で待つ時間が、どこで生まれるか

挙式から披露宴の間に、ゲストが屋外で立つ場面は、式場によって4つあります。

  • 受付のあと、挙式の開始を待つ時間
  • 挙式のあとのフラワーシャワーや、ライスシャワーの待機
  • 集合写真の撮影。新郎新婦と全員が並ぶので、準備を含めて15分から20分
  • 披露宴の前の、ウェルカムドリンクの歓談

これを全部やる式場もあれば、チャペルの前室や屋内のラウンジで済ませる式場もあります。屋外で待たせる式場は、庭やガーデンを売りにしていて、写真映えを重視する会場に多い印象です(これは僕が見た範囲の感覚で、割合を数えたデータはありません)。

屋外の演出が売りになるのは、春と秋です。夏の猛暑日になると、同じ演出が体調不良の原因に変わる。式場が「夏は庭を使わない」と決めれば簡単ですが、庭が決め手で契約した二人にとっては、夏の挙式でも庭で写真を撮りたいはずです。なので、禁止ではなく、条件つきで使う形を考えます。

猛暑日がどれだけ来るか

東京都心では、2025年の猛暑日(最高気温35度以上)が、8月27日の時点で23日目になりました。ウェザーニュースの報道では、2023年の22日を超えて過去最多です。連続でも10日続き、これも観測史上の記録とされています。

この数字を、式場に当てはめるときの注意があります。1つは、これは東京都心の観測点の数字で、自分の会場の気温ではないことです。海沿いや山あいの会場は、数字が大きくずれます。もう1つは、23日が7月から9月の92日に散らばっていることです。単純に割ると、この時期の4日に1日は猛暑日だった計算になります。

仮の式場では、この「4日に1日」を猛暑日の確率として使います。0.25です。実際には梅雨明けの前は低く、8月は高いので、月ごとに違います。自分の会場では、気象庁の過去のデータで、直近3年の7〜9月の最高気温が35度を超えた日を、土日だけ数え直してください。

仮の式場の前提

次の前提で計算します。すべて仮置きです。

  • 年間の挙式は120組
  • そのうち7〜9月の挙式が28%で、33.6組
  • 夏の挙式のうち、ゲストを屋外で待たせる演出を入れる組が70%で、23.5組
  • 猛暑日になる確率が25%(上の4日に1日)
  • 1組のゲストは60人
  • 1組の粗利は80万円

夏に屋外で待つ組が23.5組、そのうち猛暑日に当たる組が、23.5組の25%で5.9組になります。毎年、5〜6組の披露宴が、猛暑日に屋外で待機を入れていると読みます。

体調不良は年に0.47件

屋外で猛暑日に待ったゲストの中から、体調を崩す人が出る確率は、公開された数字を見つけられませんでした。そこで、猛暑日に屋外で待機した組のうち、1人以上が気分が悪くなって休む組を8%と置きます。これも仮置きです。

5.9組の8%で、年に0.47件です。2年に1件ほど、どこかの式で誰かが倒れそうになる。数字としては小さく見えます。ただ、式場の現場で想像してみると、新婦の祖母が日なたで具合が悪くなり、救急対応で披露宴の開始が遅れる、という場面です。件数が少なくても、1件で起きることは軽くありません。

対策は3段階に分けて数える

対策を、費用の軽い順に3つに分けます。

1段階目:予報で待機を屋内に移すルール

前日か当日の朝の予報で、最高気温が33度を超える日は、フラワーシャワーを屋内のロビーや日陰のある入口に変える。集合写真も、屋外で並ぶ時間を短くするか、建物の日陰側に場所を替える。ウェルカムドリンクは屋内へ。

費用は、追加の設備がなければほぼゼロです。かかるのは、打ち合わせで二人にこのルールを伝える手間と、当日に判断する担当者を決めることだけです。

ここで気をつけたいのは、二人への伝え方です。契約後の打ち合わせで「夏は暑い日だけ、屋内に変えることがあります」と最初に言っておけば、当日に変わっても、二人は驚きません。当日の朝に急に告げると、「楽しみにしていた庭の写真が撮れない」という不満になります。

2段階目:待つあいだの水分と日陰

ゲストが屋外にいる時間に、冷えた水とおしぼりを配る。人数分の日傘を貸す式場もありますが、費用がかさむので、まずは水とおしぼりにします。

仮に、1人150円(水とおしぼり)、60人で9,000円。それに、配る担当のスタッフ1人を1時間分、1,500円と置くと、1回あたり1万500円です。

この対策を、夏に屋外で待つ23.5組の全部ではなく、予報で暑さが一定を超える日の4割に絞って発動するとします。年に9.4回で、費用は約9.9万円です。

3段階目:日除けとミストの設備

庭の一角に、大きな日除けテントとミストファンを常設する。初期費用を36万円と置き、5年で償却すると、年7.2万円です。

2段階目の運用費と足すと、年17.1万円になります。これが、冒頭の17万円です。

17万円は、いくらの損を防ぐ額か

対策の費用が年17.1万円で、体調不良が年0.47件ですから、1件あたり36万円の損を防ぐ額に相当します。17.1万円を0.47件で割った数字です。

では、体調不良の1件で、式場はいくら失うか。直接の費用は小さいです。救急対応、タクシー代、お詫びの品で、仮に3万円とします。0.47件の合計で、年1.4万円。対策費の17.1万円には、はるかに届きません。

つまり、体調不良の直接の費用だけで対策費を回収することはできません。回収できるとすれば、間接の損です。たとえば、

  • 二人が披露宴を楽しめなかったと感じて、口コミの評価を下げる
  • 倒れたゲストが親族で、二人の家族が式場への不信感を持つ
  • 口コミ評価が下がって、見学の数が減る

こうした損が、1件あたり36万円、粗利80万円の0.45組分に相当するかどうかです。

僕の感覚では、この間接の損は、起きたときは大きく、ふだんは見えません。ただ、これは根拠のある数字ではありません。口コミに「暑かった」と書かれる頻度を、自分の会場の口コミから数え直してみてください。夏の挙式の口コミ、30件のうち何件に、暑さへの不満が出ているか。それが1件もなければ、3段階目の設備は急ぎません。3件あれば、対策を検討する根拠になります。

人数と回数で、費用がどう動くか

費用は、ゲストの人数で動きます。

ゲストの人数 年間の対策費
40人 14.3万円
60人 17.1万円
80人 19.9万円

人数が2倍になっても、費用は1.4倍にしかなりません。設備の償却7.2万円が人数に関係なく固定だからです。少人数の式場ほど、1組あたりの設備の負担は重くなります。

もう1つ、発動する回数も効きます。4割ではなく、予報が30度を超える日すべてに配ると、回数は倍以上に増えます。1回の費用は約1万円なので、回数を増やしても年20万円には届きませんが、スタッフの手が足りなくなる日が出ます。

判断の分かれ目

僕なら、次の順番で決めます。

  1. まず1段階目のルールを作る。予報の基準と、屋内に移す演出を決める。費用はほぼゼロ
  2. 夏の口コミを数えて、暑さへの不満があるかを見る
  3. 不満が出ているか、すでに体調不良の対応が年に1件以上あれば、2段階目の水とおしぼりを入れる
  4. 3段階目の設備は、2段階目を1シーズン運用して、それでも体調不良が出るときに考える

設備を先に買うと、使うのは年に10日程度です。残りの355日は置いておくだけになります。屋内に移すルールは、設備の有無に関係なく使えて、費用がかかりません。

自分の会場で数える手順

  1. 昨年の7〜9月の挙式のうち、屋外の演出を入れた組数を数える
  2. その日の最高気温を、気象庁の過去データから拾う。35度以上だった日数を数える
  3. スタッフに聞いて、体調不良の対応を覚えている件数を集める。記録がなければ、記録を始める
  4. 夏の口コミの中で、暑さに触れたものを数える
  5. 上の仮の式場の表の、確率と人数の欄を、自分の数字に替えて計算し直す

特に3の記録は、見落とされがちです。体調不良の対応が起きても、報告書に残していない式場は多いはずです(これは僕の推測です)。記録がなければ、年0.47件が実際は0.1件なのか2件なのか、誰にも分かりません。

まとめ

  • 東京都心の猛暑日は、2025年に8月27日の時点で23日目になり、年間の過去最多を更新したと報じられた(ウェザーニュース)。7〜9月で見ると、仮に4日に1日が猛暑日
  • 仮の式場(年120組)では、夏に屋外で待つ組が23.5組、そのうち猛暑日に当たるのが5.9組、体調不良は年0.47件
  • 対策は3段階。予報で屋内に移すルールは追加費用がほぼゼロ。水とおしぼりの運用が年9.9万円、設備の償却を足すと年17.1万円
  • 体調不良の直接の費用は1件3万円と置くと年1.4万円。対策費を回収できるのは、口コミや親族の不信といった間接の損が、1件36万円を超えるときだけ
  • 先に作るのは、設備ではなく、予報の基準で待機を屋内に移すルールと、体調不良の記録