東京の16時開始の挙式は、土日104日のうち32日、庭の撮影が日没に間に合わない。冬の夕方枠を値引きで埋めるなら成約を年1.5組、前倒しなら年0.5組増やせば足りる
冬の夕方に挙式を始める枠は、空きやすいと言われます。寒いから、仕事帰りに来にくいから、と理由はいくつも挙がります。ただ、式場の側から数えられる理由が一つあります。日没です。
結論から書きます。東京で挙式を16時に始めると、庭で写真を撮れるのは、土日104日のうち72日です。10月の後半から1月いっぱいの32日は、挙式が終わって庭に出るころには、もう陽が落ちています。この32日の夕方枠を値引きで埋めるなら、成約を年1.5組増やさないと元が取れません。開始を前倒しして日没前に撮影を終わらせるなら、年0.5組で足ります。
この記事の日没時刻は、出典のある統計ではなく、僕が天文計算の式で出した値です。実際の暦と数分ずれることがあります。費用や埋まり率は、すべて仮置きです。どこを自分の会場の数字に替えれば答えが出るか、が分かるように書きます。
前提を先に置きます
使う前提は、次のとおりです。実在の会場の実績ではありません。
- 挙式の開始から庭での撮影が終わるまでを70分とします。挙式に30分、庭への移動と集合に10分、撮影に30分です
- 庭の撮影は日没までに終えたい。日没後もしばらく空は明るいですが、ここでは安全側に日没で切ります
- 東京の日没時刻は、2027年の各日について、標準的な天文計算の式で出しました。札幌、福岡、那覇も同じ式です
- 土日の夕方枠は1日に1つ。1組あたりの粗利は140万円で、これまでこのメディアの計算に揃えています
- 冬の夕方枠の埋まり率は40%。それ以外の時期の数字は、この計算では使いません
2027年の土日は、東京でも札幌でも104日です。祝日は入れていません。
日没から逆算した、挙式開始の上限
70分を日没から引くと、その日の「この時刻までに挙式を始めれば、庭で撮れる」という上限が出ます。東京で、各月15日の値は次のとおりです。
- 1月 15時39分、2月 16時11分、3月 16時38分
- 4月 17時03分、5月 17時28分、6月 17時48分
- 7月 17時48分、8月 17時22分、9月 16時40分
- 10月 15時57分、11月 15時25分、12月 15時19分
いちばん早いのは12月で、日没は16時28分ごろ。上限は15時19分です。つまり、12月に15時半から始める枠は、もう庭で撮り切れません。夏は6月と7月に17時48分まで伸びます。同じ「夕方16時の枠」でも、夏の16時と冬の16時は、まったく別の枠だということです。
12月15日の上限を、ほかの都市でも見てみます。札幌は14時51分、福岡は16時02分、那覇は16時30分です。札幌の12月は、昼過ぎの枠でもぎりぎりになります。東京の感覚で夕方枠を設計した会場が、札幌では14時台の枠まで影響を受ける計算です。
開始時刻ごとに、庭で撮れる土日の数
上限を一日ずつ当てはめて、2027年の土日104日のうち、庭の撮影が日没に間に合う日を数えました。東京です。
- 15時開始:104日(すべて)
- 15時半開始:88日
- 16時開始:72日
- 16時半開始:57日
- 17時開始:40日
16時開始で間に合わない32日の中身は、10月が6日、11月が8日、12月が8日、1月が10日です。10月は16日以降の土日6日、1月は土日10日のすべてです。2月から9月は、東京なら16時開始でも日没に間に合います。
ほかの都市も並べておきます。16時開始で庭が撮れる日は、札幌が66日、福岡が104日、那覇が104日です。17時開始だと、札幌が41日、福岡が62日、那覇が71日になります。福岡と那覇は、16時までなら一年を通して庭が使えます。
東京で17時開始の枠を持つ会場は、庭を使える日が一年の4割弱です。17時の枠を「夕方の庭で撮れる枠」と案内するなら、4月から8月に限られます。これを、通年の枠のように売ってはいけません。
見学が昼なら、二人が見た庭は昼の庭
もう一つ、数えておくことがあります。二人が見学に来る時間です。
見学やフェアは、昼から午後の早い時間に集中します。そこで二人が見るのは、陽が高いときの庭です。冬の夕方16時の挙式に決めた二人は、契約のときに、その時刻の庭を見ていないことになります。
契約後に、庭での撮影が思ったより暗い、または撮影自体が削られるとなったとき、二人は「聞いていなかった」と感じます。ここで効くのは、費用ではなく説明の順番です。冬の夕方枠を提案するときに、日没の時刻を先に伝える。見学の時間を冬の夕方に合わせた日を用意する。どちらも、お金はほとんどかかりません。
ただし、これで成約が何ポイント動くのかは、僕は数字を持っていません。計算には入れません。
空きを埋める手は、三つ
東京で16時開始の夕方枠が、冬に埋まらないとします。会場の側に打てる手は、大きく三つに分けられます。
- 値引き:夕方枠を安くして、埋まる確率を上げる
- 前倒し:冬のあいだだけ開始時刻を早め、日没前に庭の撮影を終えられるようにする
- 売り方を変える:庭の撮影を前提にせず、夜の演出を主役にした枠として売る
三つ目は、費用も効果も、会場ごとに違いすぎます。計算には入れず、あとで触れます。先に、一つ目と二つ目を同じ物差しで比べます。
物差しは、「冬の夕方枠が、あと何組埋まれば元が取れるか」です。対象は32日、冬の埋まり率は40%。つまり、何もしなくても埋まるのは、32日×40%で12.8組です。
値引きの分かれ目
夕方枠を15万円引くとします。
値引きが厄介なのは、もともと埋まっていた12.8組にも効いてしまうことです。12.8組×15万円で、192万円を手放します。増えた組は、15万円引いても粗利が125万円残ります。192万円を125万円で割ると、1.54組です。32日のうち1.5日分、埋まり率でいえば4.8ポイントです。40%が約45%になって、ようやくトントンです。
前提を替えると、次のようになります。値引き額が15万円のままで、冬の埋まり率が30%なら必要なのは3.6ポイント(1.15組)。50%なら6.0ポイント(1.92組)です。もともと埋まっている枠が多いほど、値引きの壁は高くなります。値引き額を10万円にすると、埋まり率40%で3.1ポイント、20万円なら6.7ポイントです。
値引きで増える組が、人気日から移ってきただけの組なら、この計算はさらに悪くなります。この点は、閑散期の割引と共食いの記事で別に書いたとおりです。
前倒しの分かれ目
次に、冬の16時開始を15時に早めるとします。東京なら、15時開始は一年を通して庭の撮影が日没に間に合います。
前倒しにかかる費用は、日ごとの人手と段取りの組み替えです。前の枠との間隔が短くなり、片付けと仕込みが詰まるからです。これを1日あたり2万円と仮置きします。32日で64万円です。
粗利140万円で割ると、0.46組。32日のうち0.5日分、埋まり率でいえば1.4ポイントです。値引きの4.8ポイントに比べて、壁は3分の1以下です。
この差は、前倒しがもとの値段を守るところから来ています。値引きは、もともと埋まる枠にも割引を配ります。前倒しは、枠の中身を直すだけで、値段は守られます。
逆から見ることもできます。前倒しで埋まり率が上がる幅が分かっているなら、かけていい費用の上限も出ます。
- 埋まり率が2ポイント上がるなら、1日あたり2.8万円まで
- 3ポイントなら、4.2万円まで
- 5ポイントなら、7.0万円まで
同じ上がり幅で、値引きの上限を出すと、2ポイントなら6.7万円、3ポイントなら9.8万円、5ポイントなら15.6万円です。値引きの上限は、前倒しの費用上限の2倍強になります。ただし、この二つは単位が違います。値引きは1組あたりの金額、前倒しは1日あたりの金額です。並べて比べるときは、組と日の数を揃える必要があります。
前倒しが効かないとき
ここまでの計算は、「冬の夕方枠が空くのは、日没が理由だ」と置いたときの話です。理由が日没でなければ、前倒しをしても埋まり率は動きません。64万円がそのまま出ていくだけです。
見分け方は、会場のデータで、いくつか数えられます。
- 冬の夕方枠と、同じ月の昼の枠で、埋まり率を比べる。昼の枠も同じくらい空いているなら、日没は主犯ではありません。冬という季節そのものが、閑散期だということです
- 夏の夕方枠が埋まっているか。16時開始が、4月から9月にしっかり埋まっているなら、時間帯そのものの人気は問題ではないことになります
- 冬の夕方枠を見送った二人が、どの理由で外したか。見学のあとのアンケートや、断りの連絡の記録に、庭や撮影の言葉が出てくるか
この三つが揃って「夕方だけが、冬だけ空く」という形なら、日没を疑う理由が立ちます。そうでなければ、前倒しに先に費用をかけないほうが安全です。
売り方を変える手
三つ目の「夜の演出を主役にする」は、日没を問題として扱うのをやめて、強みに替える手です。庭の灯り、キャンドル、窓から見える夜景など、日が暮れた時間帯でしか出せないものを前面に出します。
この手の費用は、設備が要るか、既存の照明で足りるかで大きく変わります。効果も、二人が「夜の式」に価値を感じるかで決まります。僕には、この二つを置ける数字がありません。数字なしに「効く」とは書かないほうがいい、というのが僕の判断です。
ただ、やるなら一つ注意があります。夜の演出を売る枠にするなら、庭の撮影の案内をやめることです。「庭で撮れます」と「夜の庭が映えます」を同時に言うと、冬の16時の枠で、どちらも満たせない二人が出ます。
自分の会場の数字に替えるところ
この記事の計算を自社に当てはめるなら、替える数字は五つです。
- 所在地の緯度と経度。日没時刻が決まります。国立天文台の暦計算室で日の入りの時刻を調べられます。10月から2月は月に1回見れば十分です
- 庭の撮影にかかる時間。僕は70分と置きましたが、集合に時間がかかる会場や、撮影を絞る会場では違うはずです
- 夕方枠の開始時刻。16時、17時、そのほか
- 冬の夕方枠の実際の埋まり率。去年のデータがあれば、そのまま入れてください
- 前倒しにかかる費用。人件費だけでなく、前の枠との転換が成立するかも確認します
最後の確認が、とくに大事です。前の枠が14時台に終わる会場なら、15時開始への前倒しは成り立ちません。この場合は、前倒しの計算に進む前に、そもそも選べない手だと分かります。
まとめ
- 東京で16時に挙式を始めると、庭での撮影が日没までに終わるのは、土日104日のうち72日です。残りの32日は、10月後半から1月にあります
- 17時開始の枠は、東京だと庭が使える日が40日、4月から8月だけです。通年の枠として売ると、冬に説明が破綻します
- 札幌の12月は、14時台の枠まで日没の影響を受けます。福岡と那覇は、16時開始までなら一年中庭が使えます
- 冬の夕方枠を15万円引くなら、成約を年1.5組増やさないと元が取れません。開始を前倒しするなら、年0.5組で足ります
- 前倒しが効くのは、冬の夕方枠だけが空いているときです。昼の枠も空いているなら、原因は日没ではなく季節です
- 見学が昼なら、二人が見たのは昼の庭です。冬の夕方枠は、日没の時刻を先に伝えます
