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ウェルカムスペースの装飾は式場が売るか持ち込みか|年間の手取り

受付の横にウェルカムボードや花、フォトフレームを並べるウェルカムスペースを、式場がどう扱うかは会場ごとにばらばらです。二人の持ち込みに任せる会場もあれば、標準の装飾セットを用意して有料で売る会場、装花会社と組んで提案する会場もあります。

結論を先に書きます。仮の式場で計算すると、売る形にした場合の手取りは年70万円から90万円ほどです。持ち込みに任せる形は、売上がゼロのうえ、当日の受け取りと設営の手間だけが年12万円ほど残ります。差は80万円から100万円で、式場の売上全体から見れば小さい額です。ただ、この差は、二人が「この会場は持ち込みが面倒そうだ」と感じて契約をやめる確率にも触れます。粗利140万円の成約が1組弱減れば、売る形で得た手取りは消えます。

数字はすべて僕が置いた仮のものです。出典のある調査の数字は使っていません。自分の関わる会場の実数に置き換えて使ってください。

仮の式場を置く

前提を並べます。

  • 年間の挙式は120組
  • ウェルカムスペースは受付の横の一角。机1台と飾り棚、ボードを置くスペースがある
  • 挙式1組の粗利は140万円(ここでは固定で置く)
  • スタッフの時間は1時間2,000円で換算する
  • 二人が持ち込むウェルカムボードやアイテムを、当日に受け取って並べるのに、1組30分かかる

3つの形を並べます。

  • 持ち込みのみ:二人が用意したものを式場が受け取って並べる。式場は売らない
  • 標準セットを売る(内製):式場が持つ備品(飾り棚、ボード、造花、フォトフレーム)に、生花を少し足して1組18,000円で提案する。備品の初期投資は30万円で、3年で使い切る前提にすると年10万円。1組ごとの生花と消耗品は6,000円。設営に20分かかる
  • 装花会社に外注して売る:提携の装花会社が、花と小物で45,000円のウェルカムスペースを作る。式場の仕入れは25,000円。設営は先方がやるので、式場の手間は受け渡しの10分だけ

持ち込みのみは、売上ゼロで手間だけ残る

持ち込みに任せる形の費用は、30分 × 2,000円 = 1,000円が1組あたりにかかり、120組で年12万円です。売上はありません。

ここで見落とされやすいのは、手間の中身です。持ち込みの荷物は、前日までに届くものもあれば、当日の朝に二人の親族が抱えてくるものもあります。受付の準備と重なる時間帯に、荷物の受け取り、置き場所の相談、倒れそうなボードの補強が入ります。1組30分という置き方は、僕の感覚ではむしろ少なめです。実際の時間は、自分の会場の当日の動きを一度計って確かめてください。

標準セットを売る:18,000円で採用率60%なら年72万円

内製の標準セットの1組あたりの手取りを出します。

  • 売値18,000円 − 生花・消耗品6,000円 − 設営20分(約667円)= 約11,333円

採用率が60%なら、120組のうち72組が買います。72組 × 11,333円 = 約81.6万円。ここから備品の償却10万円を引くと、年約71.6万円です。

採用率が変わるとどうなるか、表にします。売値は18,000円のままです。

採用率 年間の手取り
10% 約3.6万円
20% 約17.2万円
30% 約30.8万円
50% 約58万円
60% 約71.6万円
80% 約98.8万円

初期投資を回収する採用率は、約7%です。10万円 ÷ 11,333円 ÷ 120組で出ます。つまり、年に9組が買えば、備品の償却は取り返せます。内製は、始めるハードルが低い形です。

売値も動かしてみます。採用率を30%、50%、70%に置いたときの年間の手取りです。

売値 採用率30% 50% 70%
12,000円 約9.2万円 約22万円 約34.8万円
15,000円 約20万円 約40万円 約60万円
18,000円 約30.8万円 約58万円 約85.2万円
24,000円 約52.4万円 約94万円 約135.6万円

この表は、売値を上げて採用率が同じなら手取りが増える、という前提で書いてあります。ただ、現実には売値を上げれば採用率が下がります。表のどのマスに自分の会場が入るかは、過去の見積もりでオプションをどれだけ選ばれているかを見ないと分かりません。僕には分からないので、ここでは表を作るだけにします。

外注して売る:45,000円で採用率40%なら年94万円

外注の1組あたりの手取りは、次のとおりです。

  • 売値45,000円 − 仕入れ25,000円 − 受け渡し10分(約333円)= 約19,667円

採用率が40%なら、48組。48組 × 19,667円 = 約94.4万円で、内製の60%採用(約71.6万円)より多くなります。外注は1組あたりの手取りが大きく、備品の初期投資がありません。そのかわり、採用率は低く置きました。45,000円という金額は、二人から見ると「ウェルカムスペースだけで4万円台」で、ほかの装飾やペーパーアイテムと予算を取り合うからです。この40%という数字も僕の置いた仮のもので、根拠のある数字ではありません。

外注の手取りも、採用率ごとに見ます。

採用率 年間の手取り
10% 約23.6万円
20% 約47.2万円
40% 約94.4万円
60% 約141.6万円

どちらの形でも、採用率が決める部分が大きいです。ここで考え方を整理します。

差は採用率より、断られた二人の反応に出る

3つの形を並べて、年間の手取りを比べます。

形 年間の手取り
持ち込みのみ −12万円
標準セットを売る(採用60%) 約71.6万円
外注して売る(採用40%) 約94.4万円

売る形は、持ち込みのみより80万円から100万円ほど手取りが多くなります。ただ、これは「二人が断らない」という前提で出した数字です。

売る形で起きがちなのは、次の流れです。

  • 見積書にウェルカムスペースの装飾が入っている
  • 二人は「これは自分たちで作りたい」と思っている
  • 外すと言うと、担当者が「持ち込みなら当日の受け取り方法は…」と条件の説明を始める

この流れで、二人が「手作りしにくい会場だ」と感じたとします。成約率が少しでも下がれば、手取りは消えます。計算してみます。年の成約が120組、来館した二人の成約率が30%とすると、来館は年400組です。ウェルカムスペースの扱いで成約率が1ポイント下がれば、年4組が減ります。4組 × 140万円 = 560万円です。

もう少し小さい数字でも見ます。成約が年に0.65組減れば、粗利は約91万円で、売る形の手取りの上限と並びます。120組の0.54%です。この数字から言えるのは、売る形で得られる額は小さく、成約率の0.5%程度の動きで消える、ということです。

なので、売る形を選ぶ場合も、持ち込みを選ぶ二人の扱いが大事です。具体的には、次の3つを決めておきます。

  • 見積書に載せるとき、「標準セット」ではなく「式場のおすすめ(選べます)」と書き、外せる前提にする
  • 持ち込みの二人に、搬入の時間、置ける物の大きさ、倒れやすいものの扱いを、契約時に1枚で渡す
  • 持ち込みの二人に、追加料金も条件もつけない(受け取りの手間は、売る形の利益から出す)

最後の点が肝心です。売る形の手取りは、持ち込みの二人の手間を持つことで成り立っています。持ち込みの二人に「持ち込み料」を請求すると、売る形の利益を守るためにやっているように見えます。そうなると、二人の側に「買わされる」感覚が残ります。持ち込み料の話は別の記事でも書いたとおり、金額より、決め方の説明が問われます。

内製か外注かを決める順番

3つの形のうち、どれを選ぶか。僕なら、次の順番で決めます。

  1. 過去1年のオプション採用率を見る。ウェルカムスペースに限らず、装花・ペーパーアイテム・演出で、見積書にあるオプションが実際にどれだけ残ったかを数えます。採用率が高い会場は外注、低い会場は内製が向きます。外注は1組あたりの手取りが大きい代わりに、売値が高いため採用率が下がりやすいからです
  2. 装花会社との関係を見る。外注は、提携先の質がそのまま会場の品質になります。ウェルカムスペースだけを頼む関係だと、先方にとって手間のわりに利益が薄く、対応が雑になりがちです。装花全体の取引と合わせて考えます
  3. 当日の人手を見る。内製は設営20分がかかります。土日の繁忙日に2組が同じ時間帯で入る会場なら、内製の設営は人手の取り合いになります。外注はこの手間が小さいです
  4. 持ち込みの二人の受け皿を作る。どの形でも、持ち込みを選ぶ二人は出ます。売る形の手取りに、持ち込みの二人の手間は含まれていません。受け取りの手順書は、売る形でも必要です

順番を決めると、「どれが儲かるか」の議論が減ります。1から3で、ほとんどの会場は形が決まります。計算で差が出るのは、採用率が極端に低い会場か、人手が足りない会場だけです。

内製を選んだ会場の、やりがちな失敗

内製の標準セットで手間が膨らむのは、品数を増やしたときです。

最初は「飾り棚、ボード、造花、フォトフレーム」の4点でも、二人から「この色にできませんか」「ここにペットの写真を足したい」と言われると、備品が増えます。備品が増えれば、倉庫の置き場所、色あせの交換、季節ごとの入れ替えが必要です。初期投資は30万円で置きましたが、品数が倍になれば、償却も倍の年20万円になります。採用率が高くても、手取りの上限が下がります。

内製は、品数を絞ることで成り立つ形です。「色は白と淡い緑の2種類」「ボードは1サイズ」と決めて、選択肢を減らします。選択肢を絞ると、二人は「式場のものは選べる範囲が狭い」と感じて、持ち込みに回ります。採用率が下がる代わりに、手間も減ります。どちらを取るかは、人手と相談です。

外注を選んだ会場の、やりがちな失敗

外注の失敗は、価格表のないまま提案することです。

装花会社の見積もりは、花の種類と季節で変わります。式場が「ウェルカムスペース 45,000円」と一律で見積書に書いても、仕入れが上がる時期には25,000円で収まりません。仕入れが30,000円になれば、1組あたりの手取りは約14,667円で、採用40%なら年70万円に下がります。仕入れ値が5,000円動くだけで、年の手取りは約24万円動きます。

なので、外注の見積もりは、季節ごとの価格表を先方と取り交わしておきます。繁忙期の花は高いので、式場の売値も季節で変えます。売値が一律のままだと、利益は仕入れの変動をそのまま受けます。

持ち込みのみを選ぶ会場もある

ここまでは、売る形が持ち込みのみより手取りが多いという話でした。ただ、持ち込みのみが正解の会場もあります。

  • 二人の手作りを売りにしている会場。ウェルカムスペースが「その人らしさ」の見せ場になっていて、式場が標準セットを出すと、売りとずれる
  • 人手が足りず、設営の手間が少しでも増えると当日の運営に響く会場
  • 装花を外部の持ち込み業者に任せていて、提携先がない会場

この3つに当てはまる会場なら、持ち込みのみで、受け取りの手順を整えることに力を使うほうが、年の手取りが減っても成約率を守れる可能性があります。ここは損益の計算に載らない部分で、僕には数字で示せません。会場の考え方で決めてよい部分です。

まとめ

  • 年120組の仮の式場で、ウェルカムスペースの手取りは、持ち込みのみがマイナス12万円、標準セットの内製(18,000円・採用60%)が約71.6万円、外注(45,000円・採用40%)が約94.4万円
  • 内製は備品の償却を取り返す採用率が約7%と低く、始めやすい。外注は1組あたりの手取りが大きいが、仕入れが5,000円動くと年約24万円動く
  • 売る形で得る額は、粗利140万円の成約が年0.65組減れば消える。持ち込みを選ぶ二人の扱いが、手取りより先に決める部分
  • 決める順番は、過去1年のオプション採用率、提携先との関係、当日の人手、持ち込みの受け皿
  • 持ち込みのみは、手作りが売りの会場や人手が足りない会場では、成約率を守る選択になる
  • 数字はすべて仮置き。採用率と仕入れ値は、自分の会場の見積書から取り直して使う