来館・成約

土日の見学枠が月96あっても、昼13時に希望が5割集まると月8組が溢れる。接客担当を1人増やす前に、枠の見せ方を変えると同じ8組が埋まる

「土日はもう満杯で、これ以上は受けられません」という話を、現場から聞くことがあります。広告費を上げて問い合わせを増やしたのに、来館が思ったほど増えない月に出やすい話です。

このとき、たいていの会場では「接客担当が足りない」という結論に向かいます。ただ、担当の頭数と見学の枠の総数を数えると、余っていることがよくあります。満杯に見えるのは総数ではなく、特定の時間帯だけです。

今日の話は、土日の見学枠の「総数」と「山」を分けて数える、という整理です。結論を先に書くと、接客担当4人で土日の枠が月96ある仮の式場でも、来館希望の5割が13時の枠に集まると、月に8組が溢れます。担当を1人増やせば消えますが、予約画面で隣の枠を先に見せるだけでも、同じ8組が埋まる計算になります。

出典のある統計に頼る記事ではありません。数字はすべて僕が置いた仮のもので、本文に前提を書きます。自分の会場の予約表に置き換えて読んでください。

前提:接客担当4人、土日8日、1日3枠

まず仮の式場を決めます。

  • 土日祝の営業日は月8日
  • 接客時間は10時から19時までの9時間
  • 見学1組の所要は150分(会場案内、試食、見積もりの説明まで)
  • 次の組の前に30分の準備と記録の時間を取る
  • 接客担当は4人で、全員が土日に出る
  • 1人が1日に受けられる枠は、10時・13時・16時の3つ

150分と30分で、1組あたり180分です。9時間は540分なので、1人3組がちょうど入ります。4人なら、1日に12組、月8日で96組が、土日の見学枠の総数です。

この96という数字が、冒頭の「満杯」の感覚とずれる出発点です。月の来館希望が80組なら、総数だけを見ると16枠も余っています。

総数で見ると足りて、時間帯で見ると足りない

次に、希望が3つの枠にどう散らばるかを置きます。

予約を取る側の実感として、見学の希望は均等には来ません。多くの二人にとって、午前は準備で慌ただしく、夕方は食事や帰りの予定と重なります。結果として、昼過ぎの枠に希望が寄りやすいと僕は考えています。この「寄り」の大きさは会場ごとに違うので、ここでは5つのパターンを置いて、溢れる組数を計算します。

月の来館希望が80組、各枠の定員が1日4組×8日=32組として、13時の枠に集まる割合を変えます。

13時に集まる割合 13時の希望 13時の溢れ 月の溢れ
33%(均等) 26.7組 0組 0組
40% 32組 0組 0組
50% 40組 8組 8組
60% 48組 16組 16組
70% 56組 24組 24組

10時と16時の枠は、残りの希望を均等に分けて置いています。

見てほしいのは、40%と50%の間です。13時に集まる割合が40%までなら、溢れはゼロです。32組という定員が、80組の40%にちょうど当たるからです。50%になると8組が溢れ、60%なら16組、70%なら24組です。総数は96のままで、何も変わっていません。変わったのは、希望の寄り方だけです。

逆算の式も書いておきます。溢れが出始める「山の割合」は、1つの枠の定員を月の希望で割ったものです。

溢れ始める割合 = 1つの枠の定員 ÷ 月の来館希望

定員32のまま、月の希望が60組なら53%、80組なら40%、90組なら36%です。つまり、広告やSNSが効いて来館希望が増えるほど、溢れ始める割合は下がります。問い合わせが増えた月に「満杯」の声が出るのは、この式でほぼ説明がつきます。

溢れた組は、全員が失われるわけではない

溢れた8組は、どうなるのでしょうか。ここは前提を置かないと、損失を大きく見積もりすぎます。

溢れた二人には、3つの行き先があります。

  1. 同じ日の別の枠(10時か16時)に移る
  2. 別の週末に移る
  3. 別の会場に先に行って、そのまま戻ってこない

1と2は、見学自体は成立するので、損失ではなく遅れです。3が損失です。ここでは仮に、溢れた組の半分が1か2に移り、半分が3になるとします。この「半分」は根拠のある数字ではありません。人気日の予約が取れないときの二人の行動は、会場の知名度や競合の近さで大きく変わります。後で動かして見ます。

月8組が溢れるなら、4組が失われます。来館の成約率を30%、1組の粗利を140万円と置くと、

4組 × 30% × 140万円 = 168万円

が、月の粗利の損失です。年にすると2,016万円です。これは13時に5割が集まる前提での数字で、60%なら溢れ16組・失われる8組・月336万円、均等に近い40%以下ならゼロです。

先ほどの「半分が移る」を動かすと、こう変わります。

溢れた組のうち、他の会場へ流れる割合 月の失われる組 月の粗利の損失
25% 2組 84万円
50% 4組 168万円
75% 6組 252万円

流れる割合が25%でも、年に1,000万円の粗利が動きます。50%の前提が外れていても、結論の方向(溢れは小さくない)は変わりません。

なお、移った組の成約率が、最初から希望の枠で見学した組と同じだとは限りません。希望の日に見学できなかった二人は、すでに別の会場を見ていることがあります。そこは今回の計算に入れていません。

手を打つ場所は3つある

溢れを減らす手は、大きく3つに分けられます。費用と効き方がまったく違います。

1つ目:接客担当を1人増やす

13時の枠だけを見れば、定員が4人から5人になり、1日5組×8日=40組を受けられます。希望が40組なら、溢れはゼロです。

ただ、増えた1人が10時と16時の枠まで埋めることはありません。この2つは、すでに定員32に対して希望が20組で、12枠が余っているからです。1人を増やして埋まるのは、13時の8組だけです。

費用は、仮に1人の年間人件費を500万円とすると、月約42万円です。月168万円の損失を消せるなら、数字の上では元が取れます。ただし、土日だけ働く人はほとんどいないので、実際には平日の仕事も含めた採用になります。採用に時間がかかり、入ってすぐは枠を埋められないことも、見ておく必要があります。

2つ目:枠そのものを足す

13時に入れられない分を、別の時間に作れないか、という手です。たとえば、13時と同じ内容で、同じ日に12時半の枠を足す、あるいは1人の所要を150分から120分に縮めて、1日の枠数を増やす方法があります。

所要を120分にすると、準備の30分を足して1組150分です。540分÷150分は3.6で、枠は整数なので、1人1日3組のまま変わりません。時間は余りますが、枠の数は増えない。4組目が入るのは、準備を含めて1組135分(540÷4)以下になるときで、見学そのものを105分まで縮める計算です。150分から45分も削ることになり、現実的には厳しい線です。

また、見学の内容を削ると、二人の体験が変わります。試食を省略するなら、そのぶん成約率が動く可能性があります。「10分削る」の損益は、削った後の成約率で決まるので、先に成約率の幅を押さえてから決めるほうが安全です。

3つ目:予約の見せ方を変えて、山を崩す

3つ目は費用がほとんどかからない手です。予約画面や電話の案内で、13時の枠を最初に出さず、10時と16時の枠を先に見せます。あるいは、13時の残りが少なくなったら、「13時は残り2組です。10時と16時は余裕があります」と添えます。

効果の目安も、先ほどの「山の割合」で書けます。月の希望80組、定員32組の仮の式場なら、13時に集まる割合を50%から40%に下げれば、溢れはゼロです。つまり、13時の希望を80組のうち8組、10ポイント分だけ、ほかの枠に動かせれば足ります。

10ポイントが動くかどうかは、会場ごとの実験でしか分かりません。ただ、動かす相手は「13時でなければ絶対に行けない」二人ではなく、「どの時間でもよいが、空いている枠の一番目立つところを選んだ」二人です。後者の割合は、予約フォームの設計次第でかなり変わると考えられます。

ここで注意したいのは、強い誘導にしないことです。13時の枠を隠したり、「その時間は取れません」と言ったりすると、二人の印象を落とします。あくまで、選択肢の並べ方を変えるだけにとどめます。

3つの手を並べる

溢れ8組(月168万円の損失)の仮の式場で、3つの手を並べます。

手 月の費用 溢れの変化 時間
接客担当を1人増やす 約42万円 8組 → 0組 採用に数か月
所要を短くして枠を足す 体験が変わる 条件が厳しく効きにくい すぐ
予約の見せ方を変える ほぼゼロ 山が10ポイント動けば0組 数日〜数週間

僕は、順番として3つ目を先にやるのが筋だと思っています。理由は費用ではなく、「担当を増やす」判断の前に、本当に総数が足りないのかを確かめる必要があるからです。山が崩れて溢れがゼロになるなら、採用は要りません。山が崩れても溢れが残るなら、そこで初めて、足りないのは総数だと言えます。

自社の予約表で確かめる手順

仮の式場の数字を、自分の会場に置き換える手順を書いておきます。

  1. 直近3か月の土日祝について、見学の予約が入った時刻を、10時台・13時台・16時台のように時間帯ごとに数える
  2. 各時間帯の定員(担当の人数×1日の枠数×営業日数)を出す
  3. 「その時間帯に入った件数」ではなく、「断った、別の時間を案内した、予約が取れなかった」件数を、電話やメールの記録から拾う。ここが一番抜けやすい
  4. 時間帯ごとに、希望の割合と定員の割合を並べる。希望が定員を超えている時間帯が、山
  5. 山の隣の枠の空き具合を見る。隣が空いているなら、予約の見せ方の問題。隣も埋まっているなら、総数の問題

3で拾う件数が取れない会場では、予約フォームの最初に選ばれた枠を記録するだけでも、希望の寄り方は推測できます。予約システムの設定を変える必要がある場合は、1か月だけ試す形でも十分です。

溢れの数え方でありがちなずれ

最後に、数え方で結論がずれやすい点を3つ挙げます。

1つ目は、「満席の日」の数え方です。土曜は埋まっていて日曜は空いている、という会場では、月8日の平均で見ると余裕に見えます。上の計算も、土日の8日を同じ条件で置いています。実際には、土曜と日曜を別々に出したほうが、山の高さがはっきりします。

2つ目は、季節です。見学の希望は、月によって増減します。年間の平均で見ると溢れが小さく見えても、繁忙月だけを切り出すと、先ほどの計算でいう「月の希望が90組」の状態になっていることがあります。90組なら、溢れ始める割合は36%です。13時に4割が集まるだけで、すでに溢れます。

3つ目は、担当ごとの差です。接客の得意不得意で、同じ150分でも成約率が違うことがあります。溢れた分を誰の枠に回すかで、失う成約の期待値が変わります。担当の成約率を個人で見るのは重い話なので、まず時間帯で見て、足りなければ担当で見る順番が現実的です。

まとめ

  • 土日の見学枠は、総数と時間帯別の定員に分けて数える。総数が足りていても、13時のような山の枠だけが溢れることがある
  • 接客担当4人・土日8日・1日3枠なら総数は月96。希望が月80組で13時に5割が集まると、月8組が溢れる
  • 溢れ始める割合は、1つの枠の定員を月の来館希望で割った値。来館希望が増えるほど、この値は下がる
  • 溢れた組の半分が他社に流れ、来館の成約率30%、粗利140万円なら、損失は月168万円。流れる割合が25%でも月84万円
  • 手は3つ。担当を増やす、枠を足す、予約の見せ方を変える。費用が小さく効果を試しやすいのは、見せ方の変更
  • 判断の順番は、山を崩してから、それでも溢れるなら総数を増やす。確かめるには、時間帯ごとの予約と、断った件数の記録が要る