平日のブライダルフェアをやめると、仮の式場では年250万円浮く。ただ、平日に来ていた二人の7%が他社へ行くだけで消える。決めるのは、土日の空き枠だ
水曜日の午後。ブライダルフェアの開始時間になっても、受付に来たのは1組だけ。それでも試食の準備は3組ぶん済ませてあり、プランナーは4人が持ち場についている。こういう平日のフェアを、運営の会議で「来場が少ないなら、もうやめませんか」と言い出す人は、どの式場にもいると思います。
結論から書きます。平日のフェアをやめると、仮の式場では年250万円の運営費が浮きます。ただ、平日に来ていた二人のうち7%が、土日に移らず他社へ行くだけで、その250万円は消えます。そして、この7%を左右するのは平日の来場の少なさではなく、土日の枠にどれだけ空きがあるかです。土日がすでに定員いっぱいに近いなら、平日をやめた時点で、行き場のない二人が出ます。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査の数字は1つも使っていません。年に何回開くか、1回に何組来るか、成約率がいくつか。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。置き換える場所は、途中で何度か書きます。
仮の式場の前提
まず、数字をそろえます。
- ブライダルフェアは年150回。土日が年100回、平日(水曜)が年50回
- 1回の定員は6組
- 土日は1回に平均5.7組が来る。年570組
- 平日は1回に平均3組が来る。年150組
- 来場の合計は年720組
- 来場から成約になる割合は17%。年に約122組が契約する
- 契約1組あたりの粗利は140万円
- フェア1回を開くと、人手と準備で5万円かかる
5万円の中身は、人手が1回4万円、準備が1万円です。人手は、スタッフ4人が5時間つくとして、時給2,000円で4万円。準備は、会場の設営とモデル卓の用意です。試食の原価は、来た組の数に比例して出ていく費用なので、ここには入れません。来ない組には、そもそも出さないからです。
この前提だと、平日50回の運営費は年250万円です。やめれば、この250万円が浮きます。
一方で、平日に来ていた150組のうち、17%が成約になる計算なので、年25.5組が平日のフェア経由の契約です。粗利にすると3,570万円。全体の成約122組のうち、2割強にあたります。平日のフェアは、来場の数では2割ですが、成約でも同じ2割を作っています。「来場が少ないから、効いていない」とは言えない数字です。
7%の出どころ
250万円は、どこまでの失注で消えるのでしょうか。
1組の成約の粗利は140万円で、来場から成約になる割合は17%です。つまり、来場1組を失うと、期待値で23.8万円の粗利が消えます。140万円に0.17をかけた数字です。
250万円を23.8万円で割ると、10.5組になります。平日の来場150組のうち、10.5組が土日に移らず、どこにも来なくなったら、250万円は帳消しです。割合にすると7%です。
言い方を変えると、平日をやめる判断は、次の問いに答えることです。
平日に来ていた二人の93%以上が、土日の同じフェアに来てくれるか。
93%に届くなら、やめたほうが得です。届かないなら、続けたほうが得です。数字の根拠は、250万円と23.8万円だけです。自分の会場では、平日1回あたりの運営費と、粗利と、成約率の3つを入れ替えれば、同じ式で出せます。
土日の空き枠が、先に効く
93%という数字を見ると、「平日の二人は、ほとんどが土日にも来られるだろう」と思うかもしれません。ただ、土日に枠がなければ、来たくても来られません。
仮の式場の土日は、1回の定員が6組で、年100回です。入れる総数は600組。いまは570組が来ているので、空きは年30組しかありません。平日の150組のうち、土日に移れるのは、最大でも30組。20%です。残りの120組は、定員を超えます。
この状態で平日をやめると、どうなるか。
- 土日で受けられるのは30組
- 受けられない120組は、枠がないので、断るか、他の日を案内することになる
- 断った120組の期待値は、23.8万円をかけて2,856万円
運営費の250万円を浮かせるために、2,856万円を失う計算です。土日の枠に空きがないうちは、平日をやめる議論そのものが成り立ちません。
定員を増やして吸収する場合
土日の定員を6組から7組に増やせば、入れる総数は700組になって、空きは年130組になります。定員を増やすには人が要ります。スタッフを1人足すと、仮の式場では100回×5時間×2,000円で、年100万円です。
これを入れて、平日から土日へ移る割合ごとに、損益を出してみます。
| 平日から土日へ移る割合 | 移る組数 | 戻らない組数 | 失う粗利 | 浮く250万円と、増員100万円を入れた差し引き |
|---|---|---|---|---|
| 50% | 75組 | 75組 | 1,785万円 | 約マイナス1,635万円 |
| 70% | 105組 | 45組 | 1,071万円 | 約マイナス921万円 |
| 90% | 130組(空きの上限) | 20組 | 476万円 | 約マイナス326万円 |
90%の二人が移りたいと思っても、空きは130組です。135組が移りたくても、130組で止まります。定員を7組にしても、損が続きます。
増員の100万円が重いのです。この100万円が要らないくらい、最初から土日に空きがあるときだけ、平日の廃止は現実の選択肢になります。
空きが十分にある場合
では、土日に最初から空きがあるなら、どうなるでしょうか。
土日の平均が1回5.7組ではなく、4.0組の別の式場を考えます。土日の来場は年400組、平日は同じく150組です。定員6組のままで、土日の空きは年200組あります。平日の150組が全員移ってきても、受けられます。
この場合は、増員が要りません。浮く250万円は、そのまま残ります。あとは、移らない人の割合だけで決まります。
| 平日から土日へ移る割合 | 戻らない組数 | 失う粗利 | 250万円との差し引き |
|---|---|---|---|
| 90% | 15組 | 357万円 | マイナス107万円 |
| 93% | 10.5組 | 250万円 | ほぼゼロ |
| 95% | 7.5組 | 179万円 | プラス71万円 |
| 98% | 3組 | 71万円 | プラス179万円 |
93%が分かれ目で、95%を超えてやっと、70万円ほど得をします。余裕は、あまり大きくありません。「土日が空いているから、平日をやめても大丈夫」と考えるのは、足りません。さらに、平日の二人が93%以上移ってくれるという条件がつきます。
土日の空きの目安も出せます。平日の150組のうち93%、約140組を受けるには、土日に年140組の空きが要ります。定員6組で年100回なら、総数600組から140組を引いて、土日の平均が4.6組以下であることが条件です。仮の式場の5.7組は、この線をだいぶ超えています。自分の会場の土日の平均は、予約システムの来場数を回数で割れば、数分で出ます。
移る割合は、どう見積もるか
93%というのは、かなり高い数字です。平日にしか来られない二人は、一定数いるからです。たとえば、シフト勤務で土日に休めない二人。小さい子どもを預けられるのが平日だけの二人。仕事の都合で、土日に動くのが難しい二人。こういう人たちは、平日の枠がなくなれば、他社の平日フェアに行きます。
では、自分の会場では何割くらいなのか。当て推量で決めると外れるので、確かめる手があります。
1つめは、既存の予約データを見ることです。平日のフェアをキャンセルした人のうち、何割が土日で予約し直しているか。これは、平日に来られなくなった人が、土日に移るかどうかの近い値です。予約システムに残っている、キャンセル後の再予約の履歴で数えます。ただ、キャンセルした人と平日に来ていた人は同じではないので、あくまで目安です。
2つめは、一度に全部やめず、試してみることです。平日50回を、いきなりゼロにせず、隔週の25回にします。浮くのは125万円。移るはずの二人は、約75組です。1か月、2か月と続けて、隔週にした週の予約を、土日に移せた割合を数えます。割合が93%を大きく下回れば、廃止は見送りです。上回るなら、残りの25回も止めるか考えます。
3つめは、予約のときに聞くことです。平日の予約フォームに「土日の同じ内容のフェアでも都合がつきますか」と1問足します。回答が「はい」の割合が、そのまま移る割合の上限に近い数字になります。ただ、聞かれた二人が、本当に土日に来てくれるかは別の話です。回答は高めに出ると見ておいたほうが堅いです。
運営費の中身を、先に疑う
もう一つ、順番の話があります。平日をやめる前に、1回5万円の中身を見直す手です。
平日のフェアが3組なら、スタッフ4人は多いかもしれません。2人で回せるなら、人手は1回4万円から2万円に下がり、運営費は1回3万円、年150万円です。やめて浮く250万円ではなく、減らして浮く100万円が取れます。一方で、移らない二人を出すリスクは、ゼロのままです。
この手は、単純な引き算で効果が出ます。損益を計算すると、失う粗利がゼロなので、減らした100万円がそのまま黒字です。廃止の議論は、この手を打ったあとでも遅くありません。
ただし、少人数で回すと、接客の質が落ちる心配があります。質が落ちて成約率が下がれば、浮いた100万円はすぐ消えます。仮の式場だと、平日の成約率が17%から16.5%、つまり0.5ポイント下がるだけで、100万円がほぼ消えます。平日の来場150組の0.5ポイントは0.75組で、粗利140万円をかけると約105万円だからです。人を減らす前に、その平日の接客が何人で足りているのかを、実際の動きで確かめる必要があります。
平日を増やす手もある
逆の話も、少しだけ書いておきます。
平日の来場が3組なのは、定員6組のうち半分しか埋まっていないということです。運営費は、来場の数にかかわらず、1回5万円かかります。3組なら1組あたり1.7万円、6組なら0.8万円です。平日の枠を埋める手を打てば、同じ運営費で、粗利を稼げます。
平日に来る二人は、平日にしか来られない二人です。土日のフェアに誘導しても来ません。そういう二人に向けて、平日夜や、平日だけの予約枠を知らせる手があります。検索や広告の費用は別にかかるので、ここでは損益に入れません。
つまり、選べるのは3つあります。平日をやめる。平日を小さくして続ける。平日を埋める。どれが得かは、土日の空きと、平日の二人が土日に移る割合で決まります。
判断の手順
自分の会場で決めるときの手順を書きます。
- 平日と土日それぞれの、フェアの回数と、1回あたりの平均来場組数を出す
- 土日の定員から、年間の空き組数を出す。定員×回数−土日の来場数
- 平日の来場数の93%(式は250万円÷23.8万円÷150組)を、空き組数が超えているか確かめる。超えていなければ、廃止は選べない
- 平日の運営費を、1回あたりと年間で出す。人手と準備を分けて、人手を減らせるか確かめる
- 平日のキャンセル後の再予約率を見て、移る割合の目安をつける
- 隔週に減らして、数か月ぶんを数える
最初の2つは、予約システムの数字だけで終わります。ここで空きが足りなければ、3以降は要りません。足りているときだけ、4から先に進みます。
まとめ
- 平日のフェアは来場の2割、成約の2割強を作っている。仮の式場では、年25.5組・粗利3,570万円
- 平日50回をやめると、運営費は年250万円浮く。ただし、平日の来場の7%(10.5組)が戻らないだけで消える
- 判断の問いは「平日に来ていた二人の93%以上が、土日に来てくれるか」。式は250万円÷23.8万円÷150組
- 土日の平均が定員6組に対して5.7組だと、空きは年30組。平日の20%しか移れず、廃止は成り立たない
- 土日の平均が4.6組以下なら、平日の93%を受けられる。ここが廃止を検討する入り口
- 空きが十分でも、移る割合が93%を下回れば損。95%でプラス71万円と、余裕は大きくない
- 先に打てる手は、平日の人手を減らすこと。ただし、平日の成約率が0.5ポイント下がると効果は消える
- 移る割合は、キャンセル後の再予約率、隔週開催の試行、予約時の1問で見積もる
平日をやめるかどうかは、平日の来場の少なさでは決まりません。土日の空き枠と、移る割合で決まります。
