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公式サイトの表示速度に使える費用は、仮の式場なら年5万円の画像圧縮は予約0.15件で元が取れる。年72万円のリニューアルを速度だけで決めるには、遅い訪問の4%を取り戻す必要がある

公式サイトの表示が遅いと、見学予約の手前で人が離れます。そう聞くと、サイトを作り直したくなる式場は多いと思います。ただ、作り直しに年70万円ほどかかるなら、速度の改善だけでその費用を正当化するのは難しいです。一方で、画像の圧縮や不要なスクリプトの整理のような数万円で済む対策は、予約が年に1件増える前に元が取れます。

この記事では、年間の訪問が36,000、予約が400件の仮の式場で、3つの改善策を「元を取るのに必要な予約の件数」に直します。数字は出典のあるものと僕の仮置きが混ざっているので、どちらなのかを分けて書きます。

出典のある数字は1つだけ

先に、確かな数字から。Googleが2016年に発表した「The Need for Mobile Speed」という調査があります。1万を超えるモバイルサイトの分析をもとに、モバイルの訪問の53%は、読み込みに3秒以上かかると離れる、という結果でした。日本語では、Google Developers Japanのブログが2017年にこの数字を紹介しています。

この数字は、よく引用されます。ただ、そのまま自分の式場に当てはめるのはおすすめしません。理由は3つあります。

  • 2016年のデータで、いまの回線や端末とは条件が違う
  • 世界中のモバイルサイトを混ぜた平均で、結婚式場に限った数字ではない
  • 53%の中には、3秒で表示されても離れた人が混ざっている

3つめが一番大きいです。遅いから離れた人と、見たい情報がなかったから離れた人は、離脱という1つの数字の中で区別されていません。速くしたら53%が戻ってくるわけではないです。

なので、この記事ではGoogleの53%を計算には使いません。「遅さを直すと、どれくらい取り戻せるか」は式場ごとに違うので、取り戻す割合を未知数として置いて、元を取るのに必要な割合を逆算します。

仮の式場の前提

ここから先は、すべて僕が置いた仮の数字です。

  • 公式サイトのスマホでの訪問は年36,000。そのうち見学予約に至るのが年400件
  • 予約のうち来館するのが85%、来館のうち成約するのが35%
  • 1組の粗利は140万円
  • 来館の対応には1組あたり5,000円かかる
  • 訪問の3割にあたる10,800訪問は、表示に3秒以上かかっている

1件の予約あたりの粗利を出します。0.85 × 0.35 × 140万円 − 0.85 × 5,000円 = 約41.2万円です。

次に、速度を直して戻ってくる人の質を置きます。遅くて離れた人は、検討がかなり進んでいる人というより、見に来て待ちきれなかった人が混ざっているはずです。もとの予約の8割の質と置くと、1件あたり約33万円です。

もう一つ。戻ってきた訪問が予約になる確率は、サイトの平均の1.1%より低く、0.5%と置きます。1,000人が戻ってきても、予約は5件です。

3つの改善策の費用

速度の改善には、手間のかけ方が違う3つの段階があると考えています。費用はどれも仮置きです。

A. 画像の圧縮と不要なスクリプトの整理。 式場のサイトは、挙式や会場の写真が大きいまま載っていることが多いです。写真のサイズを小さくして、使っていない計測タグや古い外部サービスを外す。制作会社に頼んで15万円、1回きりと置きます。効果が3年続くなら、年5万円です。

B. 速度に絞った開発の改善。 画像の遅延読み込み、配信の見直し、フォントの整理など。80万円で、効果が3年続き、保守に年3万円かかるとします。年あたり約30万円です。

C. 全面リニューアル。 300万円で、5年使うとして年60万円、保守が年12万円で、合計は年72万円です。速度だけが目的のリニューアルは普通ないはずですが、ここでは「リニューアルの費用のうち、速度で回収しようとしたら」を見ます。

元を取るのに必要な件数

年あたりの費用を、1件33万円で割ります。

改善策 年あたりの費用 必要な予約 予約400件に対して 必要な戻り訪問
A. 画像圧縮など 5万円 年0.15件 0.04% 30訪問
B. 速度に絞った開発 約30万円 年0.9件 0.22% 180訪問
C. 全面リニューアル 72万円 年2.2件 0.55% 437訪問

必要な戻り訪問は、必要な予約の件数を0.5%で割った数字です。

3秒以上かかっている10,800訪問のうち、取り戻す必要がある割合は、Aが0.3%、Bが1.7%、Cが4.0%になります。

この表を見て、Cの4%は意外と低いと感じる人もいると思います。ただ、これは「リニューアルの費用の全部を、速度で回収する」という前提の数字です。実際は、デザインの刷新や情報の整理や、スマホでの操作のしやすさも、リニューアルの目的に入っているはずです。速度は理由の一部にすぎません。

逆に、取り戻せる量はどれくらいか

遅い訪問10,800のうち、速度を直して取り戻せる割合を、1%、2%、5%と置いてみます。

  • 1%:108訪問が戻り、予約は0.54件、粗利は約18万円
  • 2%:216訪問が戻り、予約は1.1件、粗利は約36万円
  • 5%:540訪問が戻り、予約は2.7件、粗利は約89万円

2%取り戻せるなら、Aは年5万円の費用に対して粗利36万円です。Bの年30万円でも、わずかに黒字です。Cの年72万円は、5%取り戻して初めて黒字になります。

この仮の式場では、取り戻せる割合が2%前後なら、AとBは払う価値があり、Cは速度だけでは足りない、という並びです。

自分の会場の数字に替えるなら

この計算で、答えを一番動かすのは次の3つです。

遅い訪問の割合。 仮に3割と置きましたが、これは式場ごとに違います。サイトの写真が多く、古い作りのままなら、半分を超えることもありえます。逆に、すでに速いなら、そもそも直す余地が少ないです。GoogleのPageSpeed Insightsに自社のURLを入れると、スマホでの表示にかかる時間の目安が見られます。Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」には、実際の訪問者の読み込みの状況も出ます。

戻った訪問の予約率。 0.5%と置きました。見学予約のフォームが複雑だと、この数字はさらに下がります。表示が速くなっても、フォームの入力が12項目あれば、予約には届きません。

見学枠の空き。 戻ってきた予約が入る枠がなければ、いくら予約が増えても成約は増えません。土日の昼前後の枠が埋まっている式場では、増えた予約が平日の枠に回るか、断られるか、のどちらかです。平日に空きがあるなら、この計算はそのまま使えます。

優先する順番

結局、どの順番で手をつけるのがよいか。僕の考えは、費用の小さい順です。

まずAをやります。費用が小さく、効果が出なくても失うものがほぼありません。15万円は、年に1組の成約の粗利の1割強です。やる前に、PageSpeed Insightsの結果を保存しておいて、やった後に同じ条件で測り直します。

Aの後で、まだ遅いと出るなら、Bを考えます。Bの年30万円は、予約が年に1件弱増えれば回収できる水準です。ここまでは、速度の改善として単独で判断できます。

Cは、速度とは別の理由で決めます。デザイン、情報の整理、運用のしやすさ、スマホでの見やすさ。そのうえで、速度の改善はおまけとして付いてくる、と見るのが現実的です。リニューアルの稟議に「表示速度を改善して予約を増やす」と書くのは、年72万円を速度で回収する話になるので、僕は根拠が弱いと思います。

測れるのに測っていない式場が多い

最後に、一番手前の話を。速度の問題は、直す前に測れます。PageSpeed InsightsもSearch Consoleも無料です。数字を保存しておけば、直した後に変化が見えます。

ただし、予約が増えたかどうかは、速度の改善だけでは判断できません。同じ時期に媒体の掲載を変えたり、フェアを増やしたりすると、どれが効いたのかが分からなくなります。測り直す期間は、ほかの施策を動かさない時期にそろえるのが基本です。

見る数字は、訪問から見学予約までの割合。スマホだけで見ること。改善の前後で、最低でも1か月ずつ比べます。予約が月33件という規模だと、1件の違いで割合が動いてしまうので、ここで見られるのは大きな変化だけです。AとBの効果は、おそらく数字には出ません。出ないことを前提に、費用が小さいうちに済ませる、という判断になります。

遅さを疑う前に、確かめておくこと

表示が遅い、と言い切る前に、確かめておくことが2つあります。

1つめは、遅いのがトップページなのか、会場写真のページなのか、予約フォームなのか、という場所です。ページごとに原因が違います。トップページが速くても、写真を並べたギャラリーが10秒かかるなら、離れるのはそこです。Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」はページのグループごとに出るので、どのグループが「改善が必要」になっているかを見ます。

2つめは、社内で見て遅くない、という感覚を信じないことです。事務所のパソコンと光回線で確認すると、たいてい速いです。二人が見ているのは、移動中の電車や自宅の寝る前のスマホで、回線も端末も違います。PageSpeed Insightsのスマホの結果を基準にしてください。

この2つを確かめて、遅い場所が1か所に絞れるなら、Aの範囲で済むことが多いです。複数のページで遅くて、原因が作りそのものにあるときに、Bや、Cの話になります。

まとめ

  • 出典のある数字は、Googleの2016年の調査で、モバイルの訪問の53%が3秒以上で離れるというもの。ただし式場に当てはめる数字ではなく、計算には使わなかった
  • 年36,000訪問・予約400件の仮の式場で、画像圧縮などの年5万円は予約0.15件、速度に絞った開発の年約30万円は0.9件、全面リニューアルの年72万円は2.2件で元が取れる
  • 遅い訪問の2%を取り戻せるなら、AとBは黒字で、Cは5%取り戻さないと黒字にならない
  • 答えを動かすのは、遅い訪問の割合、戻った訪問の予約率、見学枠の空きの3つ
  • 順番は費用の小さい順。Aをやってから測り直し、Cは速度以外の理由で決める