公式サイトに「よくある質問」を15個置く費用は、仮の式場で初年度5万円。電話の削減では年4万円しか戻らず、元が取れるかは来館予約が年0.12組増えるかで決まる
公式サイトに「よくある質問」のページを作る。どの式場でも一度は話に出る施策です。ただ、作ったあとに「電話が減った」「予約が増えた」と言える会場は多くないと思います。作る前に、何で元を取るのかを決めていないからです。
結論を先に書きます。年に600件の質問が来る仮の式場で計算すると、質問を15個置く初年度の手間は約5万円です。一方、電話やメールの対応が減って戻る人件費は、2割減って年4万円です。つまり、問い合わせ対応の削減だけでは、元はほとんど取れません。
元を取れるかどうかを決めるのは、別の線です。サイトを見た二人が、聞きたいことを聞けずに予約を見送っているかどうか。見送っていたぶんが、年に0.12組の来館として戻れば、初年度の手間は回収できます。この記事では、その線がどこにあるかを計算して、どの質問を置けばそこに届くのかを考えます。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査や統計の数字は使っていません。年に何件の質問が来るか、1件の対応に何分かかるか、成約率はどれくらいか。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。
仮の式場を置く。年600件の質問、1件8分
計算のために、1つの会場を置きます。
- 予約前の質問が、電話・メール・LINEなどあわせて年600件来る。月にならすと50件です
- 1件の対応に8分かかる。受けるだけでなく、調べて返す時間を含めた平均です
- 人件費は1時間あたり2,500円
- 来館した二人のうち、成約するのは30%
- 成約1組の粗利は140万円
ここから、2つの値が出ます。
1つ目は、質問1件あたりの対応費です。8分は2,500円の時間の約0.133時間なので、333円です。600件で年20万円になります。
2つ目は、来館1組あたりの期待粗利です。成約率30%に粗利140万円を掛けて、42万円です。来館が1組増えると、平均で42万円の粗利が見込めます。成約するのは来館のうちの3割だけなので、この42万円は「来館が増えれば必ず入る額」ではなく、平均の見込みです。
作る費用は、質問15個で初年度5万円
次に、費用を数えます。
質問を15個置くとします。1つの質問に、回答を書いて、内容が正しいかを現場に確認して、サイトに載せるまで、1時間かかるとします。15個で15時間、人件費は3.75万円です。
加えて、年に1回の見直しが要ります。料金も、人数の条件も、持ち込みのルールも、1年たてば変わります。見直しに5時間とすると、1.25万円です。
合わせて、初年度は5万円です。2年目以降は、見直しの1.25万円だけで済みます。サイトの更新を外注していれば、時間を人件費に置き換えず、外注費で見てください。
ここで1つ、割り切りがあります。ページのデザインや、サイトに載せる作業の費用は、数えていません。更新が自分でできるサイトなら、ほぼ0円です。外注なら、数万円が足されます。そのぶん、下の線は重くなります。
電話の削減だけで見ると、年4万円。元は取れない
まず、いちばん考えやすい効果、つまり問い合わせ対応の削減から見ます。
質問が減る割合を、表で置きます。単位は万円で、1件8分、時給2,500円で計算しています。
| 年間の質問件数 | 1割減る | 2割減る | 3割減る |
|---|---|---|---|
| 300件 | 1.0 | 2.0 | 3.0 |
| 600件 | 2.0 | 4.0 | 6.0 |
| 1,200件 | 4.0 | 8.0 | 12.0 |
600件の会場で2割減ると、年4万円です。初年度の費用は5万円なので、1年目は1万円足りません。2年目以降は見直しの1.25万円で済むので、そこからは黒字です。ただ、黒字の額は年に2〜3万円です。会社の利益に効く大きさではありません。
しかも、この「2割減る」は、置いただけの仮の数字です。ここで、質問が減りにくい理由を2つ書いておきます。
1つ目は、質問する二人は、答えが書いてあっても聞くことがある、という点です。ページに書いてあっても、見つけられなかった人は電話をします。見つけた人でも、自分の場合に当てはまるかを確かめたくて、聞くことがあります。
2つ目は、質問の中身が会場ごとに違うことです。他の会場でよく聞かれる質問が、自分の会場でも多いとは限りません。人気日の空き、持ち込みの可否、子連れで行けるか。会場の条件で、聞かれる中身は変わります。
だから、削減の割合を当てにして、元を取る計画を立てるのは危ういです。削減は「あれば得」くらいに置いておくのが堅いです。
本命は、聞けずに予約を見送る二人。年0.12組で元が取れる
では、何で元を取るのか。僕が見ているのは、サイトを見たものの、聞きたいことが分からず、予約まで進まなかった二人です。
こういう二人は、会場から見えません。問い合わせをした二人は数えられますが、問い合わせをせずに去った二人は、数にも名前にも残りません。電話が苦手な人、仕事で昼間に電話ができない人、「こんなことを聞いていいのか」と迷う人は、聞かずに別の会場へ進みます。
このとき、よくある質問のページが役に立ちます。答えが見つかれば、迷っていた二人が予約まで進めるかもしれません。
ここの損益は、簡単な割り算で出ます。初年度の費用5万円を、来館1組あたりの期待粗利42万円で割ります。0.12組です。つまり、このページのおかげで、年に0.12組、言い換えると8〜9年に1組、来館が増えれば、初年度の費用は戻ります。2年目以降は、見直しの1.25万円なので、0.03組、約33年に1組で足ります。
線はとても低いです。ただし、これは「ページが来館を増やした」と確かめられた場合の話です。確かめる方法は、あとの章で書きます。
先に、反対側のリスクを見ておきます。
古い答えが残ると、損になる
よくある質問のページは、置くより、置いたあとが難しいです。答えが古くなったときの損が、置く効果より大きくなることがあるからです。
たとえば、「持ち込み料は無料です」と書いてあるのに、実際は有料に変えていたとします。二人はページを信じて来館し、見積もりを見て、がっかりします。その場で、料金の話から入れなくなります。会場の対応の問題として、口コミに書かれるかもしれません。
最悪の場合、次のような形で損が出ます。
- 古い答えを見て来館した二人が、「話が違う」と感じて契約まで進まない
- 現場が「ページに書いてあるとおりに」対応して、ルール変更に気づくのが遅れる
- ページの答えと、電話での答えが食い違い、二人が不信感を持つ
この損は、数字にしにくいので、置く前に防ぎ方を決めておくのが現実的です。
- 料金と日付と人数など、変わりやすいものは、質問に具体的な金額を書かずに「目安の幅」と「見積もりで確定する」を書く
- 質問ごとに、更新日を載せる
- 見直しの担当者と時期を決める。「年に1回」ではなく「料金表を変えたとき」と結びつけておくと、忘れにくい
つまり、書く量を増やすよりも、変わりにくい答えを選ぶほうが、リスクは小さくなります。
置く質問は、「予約していいか」を決める質問から選ぶ
15個の質問を何にするか。ここで、効果の大きさがほぼ決まります。
僕は、質問を2つに分けて考えます。
1つ目は、「予約していいか」を決める質問です。ここで答えがないと、二人は予約までたどり着きません。たとえば次のようなものです。
- 予算の目安。最低人数と、1人あたりの料理の価格帯
- 人気日の空き方。土日の大安は、いつごろから埋まるか
- 持ち込みの可否。衣装、カメラ、引出物のどれが、どこまでできるか
- 子連れ、ペット、高齢のゲストの受け入れ
- 見学の所要時間と、予約から当日までの流れ
2つ目は、「契約後の安心」を作る質問です。たとえば、打合せの回数、キャンセル料の考え方、当日の流れです。これは、予約の前には決め手になりにくいので、順番を後ろに置きます。
質問の数は、15個でなくて構いません。大事なのは、1つ目の質問を先頭に置くことです。最初の画面に、予約の決め手になる質問が出ているか。そこだけは、サイトを開いて、二人の目線で確かめられます。
また、質問が増えすぎると、答えを探す手間が二人に移るだけです。僕は、カテゴリ分けか、上位の質問を先に出す形にして、1画面で全部を見せないほうがよいと考えています。ただ、これは数字の裏づけがない、僕の考えです。
効果の測り方。電話の中身を2週間、数える
置いたあとに、効いたかどうかを確かめる方法も決めておきます。
まず、置く前にやることがあります。質問の「中身」を数えることです。電話・メール・LINEで来る質問を、2週間、紙かスプレッドシートに1件ずつ書き留めます。分類は、「予算」「日程」「持ち込み」「子連れ」のように、5〜10個にします。
何件数えれば足りるのか。質問の割合を、誤差を抑えて知りたいなら、件数で決まります。95%の信頼度で見ると、割合の誤差は、50件なら約14ポイント、100件なら約10ポイント、200件なら約7ポイントです。たとえば、100件数えて「持ち込み」が30件なら、本当の割合は20〜40%のあたり、と読みます。
年600件の会場なら、2週間で23件ほどです。足りないので、1〜2か月かけて100件を目標にします。100件あれば、上位3つの質問を選ぶには十分です。10ポイントの誤差があっても、「持ち込み」が30%で「駐車場」が5%なら、順番は動きません。
置いたあとは、同じ分類で数え直します。ただし、置いた前後の質問件数の差を、そのまま効果と読んではいけません。繁忙期か閑散期かで、件数そのものが動くからです。見るのは、全体の件数ではなく、置いた質問の分類だけが減ったか、です。置いていない分類も同じ割合で減っていたら、ページの効果ではなく、季節の動きです。
来館の増減は、1年単位でも確かめられません。年に300組が来館する会場で、0.12組の差は、数えても見えない大きさです。だから、来館が増えたかどうかで効果を決めるのではなく、「質問の中身を数えて、予約の決め手になる質問に答えを置いた」ことを、作る理由にするのが現実的です。
やらなくてよい会場
このページが、割に合いにくい会場もあります。
- 質問が年に100件もない会場。電話の削減は年1万円に届かず、見直しの手間のほうが重くなります
- サイトの訪問者が少ない会場。ページを置いても、見る人が少なければ、予約前の離脱を拾えません。先に、サイトに人が来る入口を作るほうが先です
- 料金やルールが月ごとに変わる会場。古い答えのリスクが、置く効果を上回ります。先にルールを固めるのが先です
逆に、置く価値が大きいのは、質問の上位が毎回同じ会場です。毎週、同じ3つの質問に答えているなら、その3つだけでも、置く意味があります。15個も要りません。
まとめ
- 公式サイトに質問15個を置く初年度の手間は、仮の式場で約5万円。2年目以降は見直しの1.25万円です
- 電話やメールの削減で戻るのは、年600件の質問が2割減って年4万円。これだけでは元が取れません
- 本命は、聞けずに予約を見送る二人です。来館が年0.12組増えれば、初年度の費用は戻ります
- 古い答えが残ると、置く効果より損が大きくなります。変わりやすい料金は幅で書き、更新日を載せます
- 置く質問は、「予約していいか」を決める質問から選びます。予算、日程、持ち込み、子連れなどです
- 置く前に、質問の中身を100件数えます。順番が分かれば、上位3つから始められます
- 質問が年100件に満たない、サイトの訪問者が少ない、ルールが月ごとに変わる会場は、後回しにします
数えていない質問に答えを置いても、当たるかは運です。先に数えて、決め手になる質問から置く。これが、費用の小さいこのページを、損にしないやり方です。
