予約なしで見学に来た二人を受けるか。仮の式場では、空き枠なら年3.7組の純増。満枠でも受けるなら、同じ時間帯の予約組の成約率が2.75ポイント落ちた時点で損になる
会場の前を通りかかった二人が、「今日、見学できますか」と入ってくる。予約はない。ブライダルフェアの日なら、受付に立っているスタッフが一番迷う場面です。
受ければ、その時間帯に予約してくれていた二人の接客が薄くなるかもしれない。断れば、せっかく足を運んでくれた二人が、そのまま帰ってしまうかもしれない。どちらも、現場では「そのとき空いているかどうか」で決めていることが多いと思います。
結論を先に書きます。年48組が予約なしで来る仮の式場で計算すると、枠に空きがあるときに受けた分は、年3.7組の純増になります。満枠のときにも受ける場合は、同じ時間帯の予約組の成約率が2.75ポイント落ちた時点で損に変わります。そして、受けるか断るかより大きく効くのは、断る日に「次の予約」を取って帰せるかどうかです。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。年に何組来るか、成約率がいくつか、断った二人がどれだけ戻ってくるか。どれも調査の数字ではなく、出典もありません。自分の会場の数字に置き換えたときに、結論がどう動くかを読み取る計算として読んでください。
前提と、数えるもの
仮の式場の前提を置きます。
- 予約なしで来る二人は、年48組。週に1組弱です
- 来たときに、見学の枠に空きがある確率は70%。つまり33.6組は空き枠、14.4組は満枠のタイミングで来ます
- 予約して来館した二人の成約率は35%。粗利は1組140万円
- 予約なしで来た二人を見学させたときの成約率は25%。予約組より低く置きました。事前に会場の情報を見ていない人が混ざり、他の会場と比べる前の人も多いと考えたからです
- 断った二人のうち、後日あらためて予約して来る割合は40%。来た場合の成約率は予約組と同じ35%
- 満枠のとき、同じ時間帯には予約組が4組入っている
ここで一番大事なのは、最後から2つ目の前提です。予約なしの二人を断っても、全員が消えるわけではありません。「今日は予約でいっぱいなので」と言われて、あとで予約し直す人がいます。ですから、受けたときの成約を丸ごと「増えた分」と数えると、数字が膨らみます。
数えるのは、受けた場合と断った場合の差です。
- 受けた場合:1組あたりの成約は0.25組
- 断った場合:40%が戻って35%で成約するので、0.4×0.35で0.14組
- 差し引きの純増:1組あたり0.11組
48組のどれを受けても、純増はこの0.11組が基準になります。
空き枠で受ける場合
枠に空きがあるときに受けるのは、予約組に影響しません。担当者がいて、会場が見せられる状態なら、追加の費用はほぼゼロと置きます。
純増は、33.6組に0.11組を掛けて3.7組です。粗利140万円で、年に約517万円になります。
一方、断った二人が誰も戻らない場合(戻る割合が0%)は、純増が1組あたり0.25組になり、33.6組で8.4組、年1,176万円です。戻る割合が40%なら517万円、60%なら188万円まで縮みます。80%になると、受けるより断って予約を取り直してもらったほうが、1組あたり0.03組分だけ多くなります。マイナスに転じる境目は、戻る割合が約71%のところです。
つまり、空き枠で受けるのは、ほとんどの前提でプラスです。ただし、その大きさを決めているのは、断った二人が戻るかどうか。ここは自分の会場で数えられるので、あとで書きます。
受けた二人の成約率が低い場合
予約なしの二人の成約率も、前提の一つです。25%と置きましたが、これは感覚です。
| 予約なしの二人の成約率 | 1組あたりの純増 | 空き枠33.6組での純増 |
|---|---|---|
| 15% | 0.01組 | 0.3組 |
| 20% | 0.06組 | 2.0組 |
| 25% | 0.11組 | 3.7組 |
| 30% | 0.16組 | 5.4組 |
| 35% | 0.21組 | 7.1組 |
15%まで落ちると、受ける意味はほぼ消えます。戻ってくる40%の二人が、予約組なみの35%で成約するからです。
ここから分かるのは、予約なしの二人を「その場で決めさせる」必要はない、という点です。成約率が予約組と同じ35%なら、純増は年7.1組。25%なら3.7組。差を作るのは、見学が終わるときに次の接点(2回目の見学、見積もりの再提示、家族の同席)を決められたかどうかです。
満枠で受ける場合
問題は、満枠のときです。14.4組のうち、1回受けるたびに、同じ時間帯の予約組4組に目が届きにくくなります。受付の人手が1人減る、案内を中断する、試食の提供が遅れる。理由はいくつも考えられます。
まず、受けた側の純増を出します。14.4組に0.11組を掛けて、1.58組。粗利で年222万円です。
次に、予約組へのしわ寄せです。影響を受ける予約組は、14.4回×4組で57.6組。この57.6組の成約率が、35%から何ポイント落ちたら損になるかを計算します。
- 純増1.58組 ÷ 57.6組 = 2.75ポイント
2.75ポイント以上落ちると、満枠で受ける分の純増は消えます。落ち幅ごとの損益は次のとおりです。
| 予約組の成約率の落ち幅 | しわ寄せで失う成約 | 差し引き |
|---|---|---|
| 1ポイント | 0.58組 | +1.01組(年141万円) |
| 2ポイント | 1.15組 | +0.43組(年60万円) |
| 3ポイント | 1.73組 | −0.14組(年−20万円) |
| 5ポイント | 2.88組 | −1.30組(年−181万円) |
2ポイントなら、まだプラスです。3ポイントで逆転します。この線が高いか低いかは、会場によって違います。
僕の見立てでは、満枠のときに予約なしの二人を受ける運用は、ほとんどの会場で落ち幅が2.75ポイントを超えやすいと考えています。ただ、これは数字で確かめたものではありません。理由は、予約組が失う時間のほうが、数えにくいのに重いからです。予約組の二人は、その日に向けて見積もりを準備してもらい、家族の予定も合わせています。接客が目に見えて薄くなったとき、決める気持ちが下がるのは、予約なしの二人とは比べものにならない大きさだと思います。
予約なしの二人の質を、どう見ているか
もう一つ、分かりにくいところがあります。予約なしの二人の成約率を30%、35%に上げると、満枠で受けたときの純増が増え、許容できる落ち幅は4.0ポイント、5.25ポイントまで広がります。逆に、20%なら1.5ポイント、15%なら0.25ポイントです。
予約なしの二人の質が低いと見ている会場は、満枠で受けると損になる確率が高い、ということです。そう見ている会場が受け続けるなら、実は「断ると失礼」という気持ちで受けています。気持ちで受けること自体は悪くありませんが、損益の根拠にはなりません。
満枠の日は15分だけ見せて、予約を取って帰す
受けるか断るかの二択に見えて、現場にはもう一つの選択肢があります。満枠の日は、会場の入口と挙式会場だけを15分案内して、その場で次の予約を取って帰す形です。
この形の損益は、予約化率で決まります。予約化率とは、15分の案内を受けた二人のうち、その場で次の見学を予約した割合です。予約したあとの成約率は、予約組と同じ35%と置きます。
純増は、予約化率が、断ったときに戻る割合(40%)を上回った分だけ生まれます。
| 15分案内後の予約化率 | 満枠14.4組での純増 | 粗利 |
|---|---|---|
| 30% | −0.72組 | −71万円 |
| 40% | 0組 | 0円 |
| 50% | 0.50組 | 71万円 |
| 70% | 1.51組 | 212万円 |
| 90% | 2.52組 | 353万円 |
予約化率が40%なら、断るのと同じです。ただ、断ったときの40%は、二人が自分で電話やフォームから予約してくれる割合です。15分案内をしたうえで、その場で次の日程を決めて帰れば、予約化率を70%まで引き上げられる可能性があります。その場合、純増は年1.51組、212万円です。
この形のもう一つの利点は、予約組へのしわ寄せが小さいことです。15分なら、案内する人の手が空いた時間に収まります。しわ寄せが予約組の成約率で0.5ポイント以内に収まるなら、純増は残ります。
この数字を、僕は断言できません。「70%」は、僕が置いた仮定です。会場で数えれば分かる数字なので、次の「数える」の節で書きます。
前提を動かすと
結論を動かす前提を並べます。
予約なしの来訪数。 年48組を年24組に減らすと、空き枠の純増は1.85組、満枠の純増は0.79組に半減します。損益分岐の落ち幅(2.75ポイント)は変わりません。来訪が多い会場ほど、運用を決める価値は大きくなります。
断ったときに戻る割合。 0%なら空き枠だけで8.4組、40%で3.7組、60%で1.3組。この割合が低い会場(人通りの多い立地、観光客が多い地域など)ほど、受ける価値が上がります。反対に、旅行者でなく地元の二人が多く、予約し直す習慣がある会場では、断っても失うものは小さくなります。
同じ時間帯の予約組の数。 前提では4組としました。6組入っている日は、満枠で受けたときの対象が86.4組に増え、損益分岐の落ち幅は1.83ポイントに下がります。逆に2組なら、5.5ポイントです。予約の詰まり具合が、満枠で受けられるかどうかを決めます。
会場で数えること
ここまでの数字は、すべて仮置きです。会場で置き換えるために、次の3つを数えます。
- 予約なしの来訪数と、そのときの枠の空き。 1か月、受付で記録します。来た時間帯、人数、そのとき空いていたか
- 断った二人が、後日予約したか。 断ったときに連絡先を聞いておけば、1〜2か月後に予約の有無を照合できます。聞けなかった場合は、戻ってきた割合を知る方法がありません
- 受けた二人の成約と、同じ時間帯の予約組の成約。 月次の成約率は大きく揺れるので、数か月分をまとめて見ます。1〜2か月では、2.75ポイントの差は見えません
3つ目は、半年ほどかけないと結論が出ません。それまでの間は、満枠のときは「15分案内して予約を取る」を標準にして、予約化率だけを毎月見ます。この数字は、数か月で読めます。
決めておくこと
運用を決めるときは、次の4点を先に決めておくと、現場が迷いません。
空き枠の定義。 「その時間帯に予約が何組以下なら受けるか」を数字で決めます。たとえば、予約が2組以下なら受ける、3組以上なら15分案内にする、といった線です。担当者の気分で変えると、数字が読めなくなります。
最初の一言。 満枠のとき、「今日はいっぱいです」と断るのではなく、「今日は15分だけご案内できます。そのあと、ゆっくり見られる日を決めましょう」と伝えます。断る言葉から始めないだけで、予約化率は変わるはずです。
連絡先の取り方。 15分案内の最後に、名前と連絡先と希望の日だけを聞きます。長いアンケートは取りません。聞けなければ、あとで戻ったかどうかが分かりません。
予約組への配慮。 15分案内の担当が、予約組を担当する人と別になるようにします。予約組の担当が抜けるのが一番のしわ寄せになるからです。担当を分けられない日は、受けないと決めます。
まとめ
- 予約なしの二人は、受けた成約を丸ごと純増と数えない。断っても一部は予約し直して来るので、受けた場合と断った場合の差で見る
- 仮の式場(年48組、成約率25%、断っても40%が戻る)では、空き枠で受けた分が年3.7組、粗利で約517万円の純増
- 満枠で受けると、同じ時間帯の予約組57.6組の成約率が2.75ポイント落ちた時点で純増が消える。3ポイントで年−20万円、5ポイントで年−181万円
- 満枠の日は、15分だけ案内して次の予約を取って帰す形がある。予約化率が断ったときに戻る割合(40%)を超えた分だけ純増になり、70%なら年212万円
- 損益を動かすのは、予約なしの二人の成約率と、断ったときに戻る割合。この2つは会場で数えられる
- 数えるのは、来訪数と空き、断った二人の後日の予約、同じ時間帯の予約組の成約率。成約率は半年かけないと見えない
- 受けるか断るかより、断る日に次の予約を取って帰せるかが大きい
