人気日のキャンセル待ちリストは、仮の式場なら空きが年0.3回出れば元が取れる。難しいのは損益より、誰に何と声をかけるかだ
人気の日取りが満席のとき、問い合わせてきた二人に何と言っていますか。「その日は埋まっています。別の日でいかがですか」で終えている会場は多いはずです。けれど、契約済みの日が空くことは、毎年どこかで起こります。日程変更、延期、白紙。そのとき、空いた日を知らせる相手が手元にいるかどうかで、再び埋まる確率が変わります。
結論から書きます。年に5日の空きが出る仮の式場で、キャンセル待ちリストが「空いた日の埋まり率」を30ポイント引き上げるなら、純増は年1.5組。成約1組の粗利が140万円なら、年200万円ほどの上乗せです。管理に年14.5万円かかっても、分かれ目は 空きが年0.3回 です。3年に1回でも空きが出れば足ります。
つまり、損益だけを見れば、持たない理由はほとんどありません。だから、この記事で時間をかけるのは損益ではありません。リストに誰を載せ、空いたときに誰から連絡し、契約済みの二人にはどう扱うかという運用の部分です。損益が通るのに多くの会場が持っていないとしたら、詰まっているのはそこだと考えています。
この記事の数字は、出典のある統計ではありません。キャンセル率も埋まり率も、会場ごとに大きく違います。僕が置いた前提を先に並べるので、自分の会場の数字に替えて使ってください。
前提を先に置きます
使う前提は、すべて仮置きです。実在の会場の実績ではありません。
- 人気日(土日祝のうち、問い合わせが集まる日)は年間60日ほど。多くが契約済みで、満席の状態
- 契約後の日程変更・延期・白紙などで、人気日が年に5日ほど空く(60日の1割弱)
- 空いた日が、リストなしで再び契約される割合は、日までの期間で変わる
- 成約1組の粗利は140万円
- リストの管理は、年12万円(台帳の整備、月1回の見直し)に、空きが出るたびの連絡工数0.5万円を足したもの
空きが出る日は、一度にまとめて出るわけではありません。年5日が、年間にばらけて出ると考えます。
空きがいつ出るかで、埋まり率はまったく違う
ここが計算の肝です。空きが出てから挙式日までの期間が長いほど、新しく契約する二人は見つかりやすくなります。短いほど難しい。結婚式の準備には数か月かかるので、挙式の1か月前に空いた日を、新しく探している二人が使うのは現実的ではありません。
仮の置き方として、空きが出る時期を4つに分け、リストなしとリストありの埋まり率を置きます。
- 挙式の6か月以上前に空く(空きの4割):リストなし40%、リストあり80%
- 3〜6か月前に空く(3割):リストなし30%、リストあり60%
- 1〜3か月前に空く(2割):リストなし15%、リストあり40%
- 1か月未満に空く(1割):リストなし5%、リストあり20%
この埋まり率も仮置きです。ただ、形には根拠があります。リストなしの場合、空いた日を知らせる手段は、公式サイトの空き表示や、フェアで偶然会った二人しかありません。リストありの場合、「その日が欲しい」と事前に決めている二人に、直接連絡できます。探す手間がないぶん、決まるまでが早い。直前でも、条件が合えば動いてくれる二人がいます。
重みをつけて平均すると、こうなります。
- リストなし:0.4×0.4 + 0.3×0.3 + 0.2×0.15 + 0.1×0.05 = 28.5%
- リストあり:0.4×0.8 + 0.3×0.6 + 0.2×0.4 + 0.1×0.2 = 60%
差は31.5ポイント。以下では丸めて30ポイントとして使います。時期別に見ると、効きが大きいのは、早い時期の空きです。6か月以上前の空きだけで、差の半分を占めます。逆に、1か月未満の空きは、リストがあっても大きくは動きません。
損益は、空きが年0.3回で通る
年5日の空きがあり、埋まり率が30ポイント上がるなら、純増は 5×0.3=1.5組です。
- 純増の粗利:1.5組 × 140万円 = 210万円
- 管理コスト:12万円 + 5×0.5万円 = 14.5万円
- 差し引き:約195万円
分かれ目は、次の式で出ます。
- 必要な空きの回数 = 年間の固定管理費 ÷(埋まり率の上がり幅 × 粗利 - 1回あたりの連絡工数)
- 12万円 ÷(0.3 × 140万円 - 0.5万円)= 0.29回
つまり年0.3回です。埋まり率の上がり幅が小さい場合も見ておきます。
- 上がり幅20ポイントなら、年0.44回
- 上がり幅10ポイントなら、年0.89回
- 上がり幅40ポイントなら、年0.22回
上がり幅が10ポイントしかなくても、年1回の空きで足ります。仮の式場は年5日空く前提なので、余裕があります。空きの回数も上がり幅も、かなり悪い側に振って、まだ黒字です。
空きの回数のほうを動かしても見ます。
- 空きが年2日、上がり幅30ポイントなら、純増0.6組で、差し引き約71万円
- 空きが年3日なら、純増0.9組で、差し引き約113万円
- 空きが年8日なら、純増2.4組で、差し引き約320万円
年2日でも黒字です。損益で迷う余地は、ほぼありません。
数えてはいけないのは、リストがなくても埋まっていた日
ここに落とし穴があります。上の計算で数えているのは「リストがあったから埋まった日」の純増です。リストがなくても埋まる日まで数えると、効果を多く見積もってしまいます。
たとえば、6か月以上前に空いた日は、リストなしでも40%は埋まります。リストありの80%のうち、半分はリストの効果ではなく、もともと埋まっていた分です。この記事の30ポイントは、すでにその分を引いています。自分の会場で効果を測るときも、リストから連絡して決まった数ではなく、リストなしの時期の埋まり率との差で見てください。
実際に追いかけるには、次の三つを記録しておくと足ります。
- 空きが出た日付と、空きが出た日から挙式日までの期間
- その日が再び契約されたか。契約された場合、リストから決まったのか、別の経路か
- リストに載っていた二人のうち、連絡して返事があった割合
半年から1年分たまると、自分の会場の埋まり率が見えてきます。前提に置いた数字を、そこで入れ替えてください。
損益より先に決めること:誰を、リストに載せるか
ここからが本題です。リストに載せる二人の選び方を決めておかないと、連絡しても決まらないリストになります。
載せていい二人の条件を、三つに分けて考えます。
- 日程の条件。 「その日だけ」なのか、「その前後の週末ならよい」なのか。その日だけの二人は連絡が当たる確率が低い代わりに、当たれば決まりやすい。前後の週末までよい二人は、連絡の数が増えるので、決まる確率は上がります
- 人数と予算の条件。 空いた日に、その二人の希望が会場に合うか。ここは登録のときに聞いておくと、連絡の無駄が減ります。見積もりの前提として人数を聞くことは、他の記事でも書きました
- 他の会場の検討状況。 すでに別の会場で仮押さえをしている二人は、リストに載せても動きません。聞くときは「ほかの会場も見ていますか」ではなく「日程が決まるのはいつ頃ですか」と聞くほうが自然です
載せない二人を決めておくことも大事です。日程を決めて動けない二人(半年以内の挙式が必須で、その日の空きがまず出ない時期の相談)を載せ続けると、リストが膨らんで管理が重くなります。リストに載せる前に、その日が空く確率は低い、と正直に伝えるほうが、信頼は残ります。
空いたときの連絡は、順番を先に決める
複数の二人が同じ日を待っているとき、誰から連絡するかを先に決めておかないと、空きが出た瞬間に混乱します。
順番の決め方は、大きく三つあります。
- 登録順。 説明しやすく、揉めにくい。一方で、条件が合わない先頭の二人に連絡する手間が増える
- 条件の合う順。 人数・予算が合う二人から連絡する。決まる確率は上がるが、なぜ自分が後なのかと聞かれたとき、説明に困る
- 条件に合う全員に同時に連絡し、先に返事をした二人に案内する。 早く決まる。ただし、返事が遅れた二人に不公平感が残る
僕なら、1と2を組み合わせます。登録順に並べ、その中で条件が合う二人に絞って連絡する形です。この形なら、「条件の合う登録順です」と説明できます。3は、直前の空きで、時間がないときだけにします。
連絡のあと、返事の期限も先に決めておきます。「48時間以内に返事をいただけなければ、次の方にご案内します」のように、時間を区切ります。区切りがないと、決まらないまま日が近づき、空いた日がまた埋まらなくなります。
契約済みの二人を、リストの話題に巻き込まない
もう一つ、運用で効くのは、契約済みの二人への配慮です。
キャンセル待ちリストの存在は、見方によっては「前の契約が解除されるのを期待している」とも取れます。契約を結んだ二人が、リストの存在を知ったとき、自分たちの契約が軽く扱われていると感じないか。ここは注意が必要です。
次のことを守ると、問題が起きにくくなります。
- 契約済みの二人に、リストの存在や人数を伝えない。聞かれたら「日程の希望は多く寄せられています」と答えるにとどめる
- 契約解除の相談を受けたとき、リストの存在を理由に急かさない。規定どおりに対応する
- 日程変更を提案するとき、リストの二人を理由にしない
また、空いた日を再び契約するとき、前の二人の事情に触れる必要はありません。「空いた」ことだけを伝えます。キャンセルの理由は、次の二人にとって関係がないからです。
登録の言い方は、約束にならないようにする
リストへの登録は、あくまで「空きが出たら連絡する」であって、「その日を確保する」ではありません。ここが曖昧だと、登録した二人が「待っていれば取れる」と思い、他の会場の検討を止めてしまいます。待ったあげく空きが出なかった二人は、他の会場も見る機会を失います。
登録の場面で、次の三つを伝えておくと安心です。
- 空きが出る保証はないこと。出るとしても時期は分からないこと
- 登録は無料で、登録したあとも他の会場を見て構わないこと
- 連絡は、希望の日程に空きが出た場合に限ること
「待たせて囲い込む」形にしないことが、長い目で見て会場の信用になります。この点は、損益の計算には出てきませんが、リストを続けられるかどうかを左右します。
小さく始める手順
最後に、始めるときの手順を置きます。
- 登録の条件を決める。日程・人数・予算・他会場の状況の四つを聞く
- 台帳を作る。表計算で足ります。日付、登録順、条件、連絡の可否
- 空いたときの連絡の順番と、返事の期限を書き出す
- 半年間続けて、空きが出た日数、リストから決まった組数、リストなしの時期の埋まり率を見る
半年で空きが1回も出なければ、まだ判断はできません。この計算の前提は「年に数日は空く」ことです。空きが出ない期間が続くなら、登録の条件を緩めるのではなく、期間を延ばして見るほうが正確です。
まとめ
- 満席の人気日のキャンセル待ちリストは、仮の式場で空きが年0.3回出れば元が取れる。年5日の空きなら、純増は年1.5組、粗利で約200万円
- 効きが大きいのは、挙式の6か月以上前に空いた日。1か月未満の空きは、リストがあっても大きくは埋まらない
- 効果は、リストから決まった数ではなく、リストなしの時期の埋まり率との差で測る
- 載せる二人は、日程・人数と予算・他会場の状況で選ぶ。空く確率が低い時期は、そう伝える
- 連絡は登録順を基本にして、条件が合う二人に絞る。返事の期限を先に決める
- 契約済みの二人にはリストの存在を話題にしない。登録の二人には「保証ではない」ことを先に伝える
