二人が見学する会場が平均2.6軒なら、来館の成約率の平均は27%から38%に収まる。自社の30%は、勝っているとも負けているとも言えない
来館した組の3割が契約してくれる。この数字を、多いと見るか少ないと見るか。月次の会議で成約率が出るたびに、先月より上がった下がったは話題になりますが、そもそも何%なら普通なのかを決めている式場は多くありません。
基準になる数字は、実は二人が何軒見学するかで、ほぼ決まってしまいます。ゼクシィ(リクルート)の記事に載っている「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」によると、ブライダルフェアに参加したカップルが訪れた会場は、平均で2.6軒でした。2.6軒を見て、1軒を選ぶ。これを逆さにすると、見学に来た二人の1回の来館が契約になる確率の平均は、1÷2.6で約38%です。
ただし、この38%は「見学した二人が全員、どこかで契約する」という前提の数字です。実際には、見学したあとで挙式そのものをやめる二人も、先送りする二人もいます。この記事では、その割合は調査で確認できなかったので、7割・8割・全員と置いて、基準線がどう動くかを計算します。結論を先に書くと、基準線は27%から38%の間に入り、自社の成約率が30%なら、平均の上か下かは「決めた二人の割合」しだいで逆になります。
2.6軒という数字の読み方
まず、数字の意味をそろえます。ゼクシィの記事に出ている2.6軒は、ブライダルフェアに参加したカップルが「訪れた会場の数」の平均です。僕の確認できた範囲では、記事に回答者数の記載はなく、見学しただけで契約までしなかった人が含まれるかどうかも分かりません。調査のひとつの目安として使います。
もうひとつ注意が要るのは、平均の2.6軒は、1軒だけ見て決めた二人と、5軒6軒と回った二人が混ざった平均だということです。1軒で決める二人もいれば、慎重に何軒も見る二人もいて、平均はその間に落ちます。式場の側から見ると、来館してくれた二人は、平均よりも「多く見る二人」のほうに偏りやすい面もありますが、これも確認できる数字がないので、以降の計算では偏りは入れません。
この数字が使えるのは、「業界全体では、延べ来館数が契約数の何倍か」を知るためです。延べ来館数が契約数の2.6倍なら、業界全体の来館に対する成約率の平均は、約38%になります。どの式場も二人の延べ来館の一部を取り合っていて、取り合う総量が決まっているからです。
全員が決める前提の38%から、7割の27%まで
仮の地域を置いて計算します。商圏に式場が5つあって、どの式場も年480組の来館があるとします。月40組の来館です。5会場の延べ来館は、480×5で2,400組です。
見学した二人が平均2.6軒を回るなら、見学した二人の数は2,400÷2.6で約923組です。この923組がすべて、5会場のどこかで契約するなら、契約は923組です。1会場あたりは約185組で、来館の成約率は185÷480で約38%になります。
次に、見学した二人の7割だけが、この商圏の5会場のどこかで契約すると置きます。残りの3割は、挙式を先送りするか、別の地域で挙げるか、挙げないことにした二人です。契約は923×0.7で約646組、1会場あたり約129組、来館の成約率は129÷480で約27%になります。
整理すると、次のようになります。
| 見学した二人のうち、この商圏で契約する割合 | 商圏全体の契約 | 1会場あたりの契約 | 来館の成約率の平均 |
|---|---|---|---|
| 100% | 約923組 | 約185組 | 約38% |
| 80% | 約738組 | 約148組 | 約31% |
| 70% | 約646組 | 約129組 | 約27% |
| 60% | 約554組 | 約111組 | 約23% |
会場の数や来館の数を変えても、この比率は変わりません。計算を支えているのは、延べ来館が契約の何倍かという、ただ1つの比です。商圏に式場が3つでも10あっても、二人が回る軒数と、そのうちで契約する二人の割合が同じなら、来館の成約率の平均は同じ値になります。
自社の成約率30%を、この表に重ねる
自社の来館の成約率が30%だったとします。年480組の来館なら、契約は144組です。
契約する割合を7割と置く場合、基準は27%、129組です。自社は144組なので、平均より15組ほど多く取っています。8割と置くなら、基準は31%、148組で、平均よりわずかに少ない。100%と置けば基準は38%で、年に約38組、平均より取れていません。
同じ30%が、置き方しだいで「勝っている」にも「負けている」にもなります。つまり、成約率だけを見て自社の強さを判断することには、構造上の限界があります。使える見方は、基準線を1つに決めるのではなく、幅を持って置くことです。27%から38%の間は「平均的」、27%を下回るなら、どの前提でも平均より取れていない、38%を上回るなら、どの前提でも平均より取れている、と読みます。
この見方で、月次の会議で出る数字を見直すと、30%は幅の中にいます。上がった下がったを論じる前に、27%を下回る水準にいるのか、38%を超える水準にいるのかのどちらかに動いたときだけ、構造の変化として扱えばよいことになります。
見学が2.2軒に減ると、全会場の成約率が上がる
基準線のもうひとつの使い方は、市場の変化を読むことです。二人が回る軒数が変わると、自社が何もしていなくても、来館の成約率は動きます。
契約する割合を7割に固定して、平均の見学軒数だけを変えて計算します。
| 平均の見学軒数 | 来館の成約率の平均 | 1会場あたりの契約(年480組来館の場合) |
|---|---|---|
| 2.2軒 | 約32% | 約153組 |
| 2.6軒 | 約27% | 約129組 |
| 3.0軒 | 約23% | 約112組 |
見学軒数が2.6軒から3.0軒に増えると、来館の成約率の平均は27%から23%に下がります。契約の総数は同じでも、延べ来館が増えるので、1来館あたりの成約は薄まるからです。逆に2.2軒に減ると、32%まで上がります。
つまり、SNSや比較サイトの充実で二人が気軽に何軒も回れるようになると、各会場の成約率は、会場の接客が何も変わらなくても下がります。成約率が下がったとき、接客が落ちたのか、市場の見学軒数が増えただけなのかは、成約率の数字だけでは区別できません。自社の来館数と契約数は同じ水準で動いているのに、成約率だけが下がっているなら、市場の側の動きを疑う根拠になります。
ただし、見学軒数の変化を、自社の数字から直接測る方法は僕の知る限りありません。来館時のアンケートで「今日で何軒目ですか」と聞くのが現実的な方法です。聞く数が数十件でも、傾向の変化は見えます。
来館を1割増やす手と、成約率を1ポイント上げる手
基準線を置くと、打ち手の比較も数字でできます。自社の来館の成約率が27%(基準と同じ)、年の来館が480組として、2つの手を並べます。
1つ目は、集客を強めて来館を1割増やす手です。来館が528組になり、成約率が27%のままなら、契約は約142.6組で、増えるのは約13組です。
2つ目は、接客や見積もりの出し方を見直して、成約率を1ポイント上げる手です。27%が28%になり、来館が480組のままなら、契約は約134.4組で、増えるのは約5組です。
成約率を1ポイント上げる手が、来館を1割増やす手と同じ13組を生むには、成約率を約2.7ポイント、つまり27%から約29.7%まで上げる必要があります。
ここで気をつけたいのは、来館を増やす手には落とし穴があることです。新しく増えた来館は、すでに来ている二人より、成約しにくい二人が混ざる傾向があります。広告で広く集めた来館は、検討が浅いことが多いからです。増えた来館の成約率が、既存の来館の半分の13.5%だったとすると、増えるのは528−480=48組の13.5%で約6.5組です。成約率を1ポイント上げる手の約5組とほぼ並びます。
この比較で言えるのは、どちらが効くかは、増える来館の質しだいだということです。増えた48組の成約率が約10%(既存の27%の4割弱)を上回れば、来館を増やす手が勝ち、下回れば成約率を上げる手が勝ちます。この境目は、前提で変わります。自社で確かめるなら、広告や媒体の経路別に、来館から成約までの率を分けて持つ必要があります。
数え方を決める
この考え方を使うために、自社で最低限そろえておきたい数字は3つです。
1つ目は、来館数と契約数です。月次ではなく、半年から1年の単位で持ちます。月30組から40組の規模だと、月次の成約率は数組の差で大きく動くため、基準線と比べる意味が薄くなります。
2つ目は、来館時に聞く「今日が何軒目か」です。フェアの受付のアンケートに1行足すだけで集まります。回答が集まれば、自社に来る二人の平均の見学軒数が出ます。ゼクシィの2.6軒と自社の数字が大きく違えば、基準線を自社用に引き直せます。
3つ目は、失注した二人の「その後」です。契約しなかった二人が、ほかの会場で挙げたのか、先送りしたのか、やめたのか。これが分かれば、「契約する割合」の仮置きを実測に変えられます。失注の連絡をしていない二人に聞くのは難しいので、前向きな連絡の中で、任意で聞ける範囲に絞ります。
3つのうち、手間が小さいのは2つ目です。1つ目はすでに持っているはずなので、実質的に増えるのは、アンケートの1行と、それを集計する作業だけです。
まとめ
ここまでの内容を、5点に絞ります。
- ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、フェアに参加したカップルが訪れた会場は平均2.6軒でした。来館の成約率の平均は、1÷2.6を出発点にすると約38%です
- 見学した二人が全員は決めない場合、基準線は下がります。7割が決めるなら約27%、8割なら約31%です。契約する割合の実測値は確認できていないので、基準線は幅で持ちます
- 自社の成約率30%は、27%から38%の幅の中にいます。この幅を外れたときだけ、構造の変化として扱います
- 二人が回る軒数が増えると、自社の接客が変わらなくても成約率は下がります。2.6軒から3.0軒で、基準は27%から約23%になります
- 来館を1割増やす手と成約率を1ポイント上げる手の優劣は、増えた来館の質で変わります。増えた来館の成約率が約10%(既存の4割弱)の境目で、順位が入れ替わります
