来館・成約

式場の見学予約は何日先から受けるか|直前枠を閉じる損得

土曜の朝9時に、予約サイトの通知が鳴ります。「本日15時、見学希望」。担当は午前の見学が2組入っていて、午後は打ち合わせが1件です。この予約を受けるか、断るか。現場ではこの判断が、毎週のように起きています。

この記事の結論は1つです。見学予約の最短日を何日先にするかは、直前に予約した二人が、日をずらしても来てくれる割合で決まります。その割合が仮の式場では3割強で、そこを超えて来てくれるなら閉じてよく、下回るなら開けておいたほうが得です。

ここで書く数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査の数字は1つも使っていません。年に何組の予約が入るか、直前の予約が何割か、どちらも自分の式場の数字に置き換えて読んでください。計算の骨組みを持ち帰ってもらうのが目的です。

直前の予約を受けると、何が起きているのか

直前の予約には、いい面と悪い面が両方あります。

いい面は、二人の熱が高いことです。「今日の午後、空いていませんか」と動く二人は、すでに何社かを見ていて、比べる段階に入っている可能性があります。決める日が近い二人に会えるのは、式場にとって大きな機会です。

悪い面は、こちらの準備ができないことです。予約が前日の夜に入れば、担当のアサイン、ヒアリングシートの確認、日取りに合わせた見積もりの下書きまで、やれる範囲が狭くなります。当日の朝に入れば、ほとんどゼロです。会場の下見の順路も、試食の枠も、ぎりぎりで組むことになります。

つまり直前の予約は、熱の高い二人に準備の薄い状態で会う仕組みになっています。準備の薄さが成約率に響くなら、受けること自体が損になる場合があります。逆に、準備が薄くても成約率がほとんど変わらないなら、断る理由は消えます。どちらなのかは、式場ごとに違います。だから「何日先から受けるか」は、感覚ではなく数字で決められます。

仮の式場を置いて、3つの数字を決める

計算の舞台を作ります。次の式場を考えます。

  • ネットから入る見学予約は年600組
  • そのうち、来館の3日前以内に入る「直前の予約」が15%で、90組。残りの510組は、それより前に入る通常の予約
  • 1組を成約したときの粗利は100万円

ここまでは、式場の予約台帳を1年分並べれば、そのまま出せる数字です。予約が入った日と来館日の差を計算して、3日以内かどうかで分けるだけです。この作業を1回もしていない式場は、まずここから始めてください。

次に、通常の予約と直前の予約で、来館率と成約率がどう違うかを置きます。

  • 通常の予約:来館率80%、来館した二人の成約率30%
  • 直前の予約:来館率65%、来館した二人の成約率25%

直前のほうが来館率が低いのは、熱が高い一方で、予定が流動的なぶん、当日に流れる組も多いと考えたからです。成約率が低いのは、準備が薄いぶん、見学の中身が二人の関心に合いきらないと考えたからです。この2つの差は仮の置き方で、実際の台帳では逆になることもあります。直前の予約のほうが成約率が高い式場も、十分ありえます。

いまの運用、つまり直前も受ける運用で、年間の成約を計算します。

  • 通常の予約:510組 × 0.80 × 0.30 = 122.4組
  • 直前の予約:90組 × 0.65 × 0.25 = 14.6組
  • 合計:約137組

粗利は約1億3,700万円です。

直前枠を閉じると、直前の二人はどこへ行くのか

最短日を、たとえば3日先に区切ったとします。直前に予約しようとしていた90組には、3つの行き先が考えられます。

  1. 日をずらして、通常の予約として入れ直す
  2. 別の式場に行く
  3. 見学そのものをやめる

2と3は、式場から見れば同じ「失った組」です。そこで、この2つをまとめて「離脱」と呼び、直前の90組のうち何割が離脱するかを d とします。残りの割合(1-d)は、日をずらして来てくれる組です。ずらして来た二人は、準備ができた状態で会えるので、通常の予約と同じ来館率80%、成約率30%で動くと置きます。

閉じた場合の直前組の成約は、次の式になります。

90組 × (1-d) × 0.80 × 0.30

閉じない場合の直前組の成約は、14.6組でした。この2つが等しくなる d が、損益分岐です。

d を動かして、年間の成約の増減を見ます。

離脱の割合 d 閉じた場合の成約 閉じない場合との差 粗利の差
20% 約139.7組 +2.7組 +約270万円
30% 約137.5組 +0.5組 +約50万円
40% 約135.4組 -1.7組 -約170万円
50% 約133.2組 -3.8組 -約380万円
60% 約131.0組 -6.0組 -約600万円

分岐は d が約32%のところです。直前の二人の3割強までなら、閉じても損はなく、それを超えて逃げるなら、開けておいたほうが粗利が残ります。

この表を見て、意外だった人もいると思います。直前の予約は、成約率が低くても、受けていたほうが得になる範囲が広いのです。理由は単純で、閉じると「準備ができるぶんの上積み」と「逃げる組の損」が釣り合うのが、離脱が3割強という、思ったより低い水準だからです。準備の効果は、直前の90組にしか及びません。年間の成約137組のうち、動かせるのはそのうちの数組分だけです。

分岐点は、直前の二人の来館率と成約率で動く

32%という数字は、先ほど置いた4つの数字から出ています。直前の予約の来館率と成約率が違えば、分岐点は動きます。

直前の来館率が65%ではなく50%だったらどうでしょう。直前組は、受けていても14.6組ではなく、90組 × 0.50 × 0.25 = 11.3組しか成約しません。閉じたときに失うものが小さくなるので、分岐点は約48%まで上がります。直前の二人の半数近くが逃げても、閉じたほうが得になる、ということです。

反対に、直前の成約率が通常と同じ30%なら、準備の薄さが成約に響いていないことになります。この場合の分岐点は約19%まで下がり、直前の二人の5人に1人が逃げるだけで、閉じる損が上回ります。

整理すると、閉じてよいかどうかの境目は、次の2つの比で決まります。

  • 直前の予約が、通常の予約に比べて、どれだけ来館しないか
  • 来館した直前の二人が、通常の二人に比べて、どれだけ成約しないか

どちらも、予約台帳と成約記録を突き合わせれば、直前の予約と通常の予約に分けて出せます。直前の予約の来館率と成約率を、通常の予約と並べて見たことがあるか。ここが、この判断の入り口です。

直前の予約の割合が違うと、金額が変わる

分岐点の離脱割合は、直前の予約が全体の何割かには関係しません。90組でも150組でも、32%は32%です。ただし、動く金額は変わります。

直前の予約が全体の10%(60組)、15%(90組)、25%(150組)のそれぞれで、離脱が20%、30%、50%のときの年間の成約の差を並べます。

直前の割合 離脱20% 離脱30% 離脱50%
10%(60組) +1.8組 +0.3組 -2.6組
15%(90組) +2.7組 +0.5組 -3.8組
25%(150組) +4.4組 +0.8組 -6.4組

直前の割合が高い式場ほど、閉じたときの損も得も大きくなります。直前の割合が25%もある式場で、離脱が5割に達すれば、年に6組以上の成約を失う計算です。粗利100万円なら、600万円を超えます。

ここで見てほしいのは、得のほうの幅です。離脱が20%でうまくいっても、増えるのは年に数組です。損のほうは、離脱が5割に達すると同じ規模で逆に出ます。得は小さく、損は同じ幅で出る。だから、閉じる判断は、離脱の割合を実際に確かめてからにしたほうが安全です。

閉じる前に、離脱の割合を確かめる方法

離脱の割合は、閉じてみないと分かりません。ただ、閉じる前に見当をつける方法が3つあります。

直前の予約が、他社も見ている二人かを見る

予約の時点で「他に見学した、または予約している式場」を聞いている式場は、直前の予約の中で、他社を並べている二人の割合が分かります。聞いていなければ、来館後のアンケートで、直前の予約だった二人だけを抜き出して見ます。他社と比べている段階の二人は、断られたとき、別の式場に行きやすいと考えられます。

一部の曜日だけ、試しに閉じる

全部の枠で閉じる必要はありません。たとえば、平日の火曜と水曜だけ、最短日を3日先に変えます。数週間続けると、閉じた曜日に入るはずだった直前の予約が、どれだけ通常の予約として入り直したかが見えます。入り直した割合が、そのまま「1-d」の見当になります。

断るのではなく、直前の枠を短くする

直前の二人に「今日の15時は担当が詰まっています。30分の簡易の案内なら出せます」と返す方法もあります。会場の見学だけを短く見せて、試食や見積もりの説明は、改めて別の日に取る形です。この方法は、直前の二人を逃さず、準備が薄いまま長く会うことも避けられます。断ったときの離脱を、小さくできる可能性があります。

閉じない場合は、直前の予約をどう受けるか

計算の結果、閉じないほうが得だと分かった式場もあります。その場合は、直前の予約を、通常の予約と同じ形で受け続けるのではなく、準備の薄さを補う仕組みを作ります。

具体的には、次の3つです。

  • 直前の予約が入ったら、予約サイトの項目から、ヒアリングの要点(日取り、人数、予算の目安、誰と来るか)を担当が見られるようにする
  • 直前の予約専用に、見学の順路と試食の枠を1つ、あらかじめ空けておく
  • 直前の二人には、見積もりは当日出さず、見学後のメールで送る段取りにする

3つ目は、準備の薄さを逆手に取る形です。当日、中途半端な見積もりを出すと、二人の頭に最初の金額が残ります。それより、見学で関心を聞き取って、翌日に二人の関心に合わせた見積もりを送るほうが、成約率が上がる可能性があります。

ただし、これは仮説です。直前の予約専用の枠を作ると、通常の予約の枠を圧迫する可能性もあります。土日の昼のような混む時間帯では、枠をどちらに回すかで損益が変わります。この記事の計算は、枠が足りている前提で作っています。満枠の日が多い式場は、直前の予約を受けた結果、通常の予約を断っていないか、別に確かめる必要があります。

受ける・閉じるを決めたあとに見る数字

どちらを選んでも、決めたあとに見る数字は同じです。

  • 直前の予約の来館率と成約率(通常の予約と別に)
  • 閉じた場合は、閉じた曜日の予約件数の変化と、通常の予約への入り直し
  • 簡易の案内を出した場合は、そこからの再来館率

これらを月に1回、台帳から出します。3か月続けて、置いた前提と大きくずれていたら、前提を置き直します。32%という分岐点は、仮の式場の数字です。自分の式場では、15%かもしれませんし、60%かもしれません。

まとめ

  • 見学予約の最短日は、直前に予約した二人が、日をずらしても来てくれる割合で決まる
  • 仮の式場(年600組、直前15%、粗利100万円)では、離脱が約32%を超えると、閉じる損が上回る
  • 直前の来館率が低いほど分岐点は上がり、直前の成約率が通常に近いほど分岐点は下がる
  • 閉じて増える成約は年に数組、損は離脱が5割に達すると同じ規模で逆に出る。得は小さく損は同じ幅で出る
  • 閉じる前に、他社を見ている二人の割合を聞くか、一部の曜日だけ試して、離脱の見当をつける
  • 閉じずに、30分の簡易の案内で直前の二人を受ける方法もある
  • 閉じないなら、予約の時点で要点を担当に渡し、見積もりは見学後に送る段取りにする