式場の見学担当に新人を外すと損か|空き順と成約率順の分かれ目
土日の見学が詰まる日、受付で「次の見学は誰が入るか」を決める場面があります。空いている人から順に入れる式場もあれば、成約率の高い人に寄せる式場もあります。
成約率が40%の人と20%の人がいるなら、40%の人に寄せたほうが得に見えます。ただ、僕はこの考え方に1つ穴があると思っています。寄せた分だけ、受けられる組数が減るからです。
この記事の結論は、寄せるかどうかを分けるのは担当の腕前の差ではなく、受けきれずに断った組を別の日に動かせる割合だ、というものです。仮の式場で計算して、その線を見ていきます。この記事の数字はすべて、僕が置いた仮のものです。調査の数字は1つも使っていません。成約率も組数も、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
「成約率の高い人に寄せる」は、受ける組数を無視している
成約率は、来館した組のうち契約した組の割合です。担当ごとに出せますし、差が出るのも自然です。経験年数、説明の段取り、聞き取りの深さで、10ポイントや20ポイントは簡単に開きます。
ここで起きがちな判断が、「高い人に全部回せば、全体の成約率が上がる」というものです。この判断は、高い人が全部の組を受けられるときだけ正しい。実際には、1人が1日に受けられる見学は決まっています。見学は1組あたり90分から2時間かかり、試食や会場案内の準備もあるので、土日の1日に回せるのは3組前後でしょう。
つまり寄せるというのは、高い人の枠を埋めたうえで、あふれた組を新人やほかの人に回さず、断るか別の日に動かすということです。この「あふれた組をどうするか」が、損益の中心になります。
仮の式場を置いて計算する
次のように置きます。
- 見学担当は3人。Aの成約率は40%、Bは30%、Cは新人で20%
- 見学は土日と祝日の年100日に集中する。1人が1日に受けるのは3組まで
- 3人とも満員にすると、年に900組を受けられる。希望も900組ある
- 成約1組あたりの粗利は100万円
3人全員に空き順で回すと、成約は次のようになります。
- A:300組×40%=120組
- B:300組×30%=90組
- C:300組×20%=60組
合計で270組です。全体の成約率は30%になります。
次に、Cを見学から外して、AとBだけで受けるとします。受けられるのは600組で、成約は120+90で210組です。残りの300組は、断るか、別の日に動かします。
ここで、動かした組の行き先を考えます。
- 平日に来てもらえた組は、Bと同じ30%で成約するとします
- 動かせなかった組は、他会場に行き、成約はゼロ
あふれた組を何割動かせるかで、損益が反転する
動かせた割合を変えて、年間の成約組数を計算します。
| 動かせた割合 | 成約組数 | 全員に回す運用との差 |
|---|---|---|
| 0%(全部断る) | 210組 | -60組 |
| 25% | 232.5組 | -37.5組 |
| 50% | 255組 | -15組 |
| 67% | 270組 | ±0組 |
| 75% | 277.5組 | +7.5組 |
| 100% | 300組 | +30組 |
分岐は、あふれた300組の約3分の2、つまり67%を動かせるかどうかのあたりにあります。67%を超えれば、Cを外した運用のほうが得になり、下回れば損になります。
粗利を100万円としたとき、全部断ると年に60組分、6,000万円の差になります。見学の枠を1つ減らす判断が、これだけの金額に響く可能性があります。
動かした先の成約率を30%でなく25%にすれば、分岐は80%に上がります。35%なら57%まで下がります。分岐の位置は、動かした先でどれだけ決まるかにも左右されます。
動かせる割合は、自分の会場ではかなり低い
この67%という線は、土日の見学が詰まる会場にとって高いハードルだと思います。
見学に来る二人の多くは、仕事の都合で土日しか動けません。シフト勤務の二人は別として、平日に移れる二人は限られます。希望日の見学が埋まっていると言われた二人は、同じ週のほかの会場に空きを探します。式場側からは、移ってくれたのか、他会場に行ったのかが見えにくい。
ここは測れます。直近の1か月、「希望日が埋まっていて別日をご案内した」ケースを数えて、そのうち実際に来館した組の割合を出してください。その数字が分岐の67%を超えているかどうか。超えていなければ、新人を外す運用は、見学の機会を捨てる運用です。
予約の時点では、枠が埋まっていたら断るだけで、別日の案内をしていない式場もあるでしょう。その場合の動かせる割合は、実質ゼロに近いはずです。ゼロなら、寄せるごとに年60組分を失う計算になります。
断るときの一言で、動かせる割合は変わる
動かせる割合は、式場の事情だけで決まるわけではありません。断り方でも変わります。
「その日は埋まっています」で終わる返答は、二人に次の行動を委ねます。二人は検索に戻り、ほかの会場の空きを探します。ここで動かせる割合は低くなります。
一方、「その日は埋まっていますが、翌週の同じ時間帯と、平日の夕方なら空いています」と、候補を2つ添えて返せば、二人が考える手間が減ります。予約ページ側でも、満席の枠の隣に空いている枠が見えていれば、同じ効果があります。
さらに、別日に動いてくれた二人には、そのことを記録しておきます。最初に希望した日と、実際に来た日を並べて残すのです。数か月たつと「希望日が埋まっていた二人のうち、何割が別日に来たか」が出ます。この数字が、先ほどの分岐の67%と比べる物差しになります。
新人を回す損と、外す損は別の時間軸にある
Cを回し続けると、短期では成約率が低い組が出ます。ただ、Cが育った後の姿を考える必要があります。
仮に、Cの成約率が1年後に20%から30%に上がるとします。300組を受けて、10ポイント上がるので、年に30組、粗利にして3,000万円の差です。Cを外し続けると、この伸びは起きません。Cが受ける見学の数が、そのまま経験の数だからです。
もっとも、Cが一人で受ける見学がそのまま育つとは限りません。20%の成約率で受け続けた見学のうち、80%は決まらずに終わっています。育てるための経験として、その80%をどう扱うかが次の問題になります。
外さずに差を縮める3つの回し方
空き順で回しながら、成約率の差を縮める方法は3つあります。
新人の前半だけ、先輩が同席する。 最初の30分の会場案内を新人が受け持ち、見積もりの説明の前に先輩が入ります。成約率の差が最も出る場面は、見積もりと保留の対応であることが多いはずです。そこだけ先輩が入れば、枠は1人分のまま使えます。
予約の時点で、二人の関心を聞いて担当を振る。 たとえば、見学の予約フォームで「特に気になること」を聞いておき、料理や演出の話が中心の二人は新人に、総額や親族の人数を気にする二人は先輩に回します。全員に同じ担当を当てるより、難しい見学を先輩に集められます。
保留になった組の追客を、先輩が担当する。 見学を受けるのは新人でも、見学後の連絡やもう一度の来館の提案は、成約率の高い人が引き取ります。見学そのものを寄せるより、決まらなかった組を取り戻す側に先輩の時間を使うほうが、枠を減らさずに済みます。
3つとも、先輩の時間を食います。先輩の時間も有限なので、「先輩が同席する見学は1日1組まで」のように、上限を決めておかないと回りません。
空き順で回すときに決めておくこと
空き順で回すなら、決めておくことが2つあります。
1つ目は、新人が受けてはいけない見学の条件です。たとえば、「親が同行する」「相見積もりの持参を予約時に告げられている」といった条件です。難しい見学を先輩に寄せる線を、人ではなく条件で引きます。人で引くと、「あの人は新人だから外す」という扱いになり、本人も周りも、育つ見込みを前提にしなくなります。
2つ目は、新人の成約率を見る期間です。見学10組や20組では、成約率はぶれます。20%と書いたのは、ここでは置いた数字です。数か月は、率より「見積もりを出した後に二人が何を言ったか」の記録を見るほうが、育ち具合がつかめます。
寄せたほうが得になる式場もある
この計算は、希望が900組あって、3人で受け切るという前提です。前提を変えると、結論も変わります。
希望が600組しかない式場なら、AとBだけで全部受けられます。Cを外しても、断る組は出ません。成約は210組のまま、Cが受けていた分をA・Bが受けるので、全員に回すより成約が多くなります。この場合は、寄せるのが得です。
土日に集中せず、平日にも見学が入る式場も同じです。動かせる割合が高いので、分岐の67%を超えやすくなります。
逆に、希望が900組を超えている式場では、Cを外した分の損は大きくなります。あふれる組が増え、そのうち動かせない組も増えるからです。
つまり、寄せるかどうかは、枠が余っているか足りないかで決まります。余っているなら寄せて、足りないなら全員で受ける。担当の腕前の差は、判断の材料としては二番目です。
まとめ
- 見学担当を成約率の高い人に寄せると、その人の枠が埋まったあと、あふれた組を断るか別の日に動かすことになる
- 仮の式場(年900組・3人・成約率40/30/20%)では、あふれた300組の約3分の2を動かせないと、新人を外す運用は全員で回す運用より損になる
- 動かせる割合は、直近1か月の「別日を案内して、来館した組」で自分の会場の数字が出せる
- 新人は、1年後の成約率が10ポイント上がるだけで、年に30組分の差になる。外し続けるとその伸びが起きない
- 外さずに差を縮めるなら、前半だけ同席する、関心で担当を振る、保留の追客を先輩が引き取る、の3つがある
- 新人に回さない見学は、人ではなく条件(親の同行、相見積もりの持参など)で線を引く
- 希望が受けられる組数を下回る式場なら、寄せるほうが得になる。枠が余るか足りないかが先に決まる
