式場の名前を生成AIに聞いて、間違いを直す月1回の手順
自会場の名前を、ChatGPTのような生成AIに入れて「この式場はどんなところ?」と聞いてみたことはありますか。
答えが合っているか間違っているかは、聞いてみるまで分かりません。そして新郎新婦が式場を探す入口で同じことをしているなら、その答えは見学予約より前に読まれています。この記事では、自会場について生成AIが何と答えるかを、月に1回、1時間ほどで確かめて直す手順を書きます。
先に断っておくと、僕は生成AIが式場探しの主役になったと言いたいわけではありません。日本の新郎新婦がどれだけ使っているかを直接示す調査は、この記事を書いた時点で見つけられていません。それでも確認の手順を勧めるのは、確かめるのにかかる手間がとても小さいからです。後半で数字にして見ます。
海外では何が起きているか
材料になる報道がひとつあります。英国の結婚情報サイトBridebookは、ChatGPTと連携して、日程・予算・人数・雰囲気といった条件から式場候補を提案する機能を出しています。2026年4月、英国のTechRadarがこの機能を実際に試した結果を報じ、日本語でもその内容が紹介されました。
報じられたのは、おおよそ次の点です。
- 条件を入れると、候補が理由の要約つきで出てくる。初期段階の候補出しとしては役に立つ
- 空き状況は示されない。料金も価格帯の表示にとどまり、繁忙期の差は反映されていない
- 一部の式場で、表示された価格が実際の見積額と食い違った
- 掲載情報が最新に更新されていないケースがあった
記事全体の評価は「契約判断に必要な情報収集の代わりにはならない」でした。つまり生成AIは決め手にはならないけれど、候補を絞る最初の段階には使われうる、という位置づけです。
ここで式場側が気にすべきなのは、3つ目と4つ目です。料金の食い違いと、古い情報。新郎新婦は決める前にAIの答えを信じ込むわけではないでしょう。ただ、見学を申し込む前の段階で、実際より高い、あるいは安いと思われたまま候補から外されたら、外されたことは式場から見えません。来なかった人は数えられないからです。
この報道は英国の1サービスの検証で、日本の式場について何かが分かったわけではありません。日本の式場が同じ状況かどうかは、自会場で聞いてみないと分からない。だから確認が要る、というのが出発点です。
聞く質問は10個で足りる
聞き方がばらばらだと、先月と今月の答えを比べられません。質問を固定します。僕なら次の10個にします。「◯◯」には自会場の正式名称と所在地の市を入れます。
会場そのものについて
- ◯◯(市名)の結婚式場「◯◯」はどんな式場ですか
- 「◯◯」の挙式スタイルと会場の特徴を教えてください
- 「◯◯」へのアクセス方法と駐車場を教えてください
お金について 4. 「◯◯」で80名の披露宴をすると、総額はいくらくらいですか 5. 「◯◯」の見積もりは、あとから上がりやすいですか 6. 「◯◯」の人気日と平日では料金は違いますか
選ばれ方について 7. 「◯◯」の口コミ・評判はどうですか 8. ◯◯市で、親族中心の少人数の結婚式ができる式場を教えてください 9. 「◯◯」を見学するとき、何を確認すればいいですか 10. 「◯◯」と、同じ市内の別の式場の違いは何ですか
4、5、6が大事です。料金は、報道でも食い違いが出た場所だからです。8は会場名を入れずに聞く質問で、自会場が候補に出てくるかどうかを見ます。最初から会場名を入れた質問は、名前を知っている人の確認でしかありません。新郎新婦の多くは、まだ名前を知らないところから探しはじめます。
10は他会場の名前が出てくるので、答えに他社の名前が並びます。比べて優劣をつける必要はありません。自会場について書かれた部分だけを見ます。
3つの画面に同じ質問を入れる
生成AIは使うサービスによって答えが違います。ひとつだけで確かめても、全体は分かりません。無料で使えるものを3つ選び、同じ10個の質問を入れます。
- 検索エンジンのAIによる回答(検索結果の上に出る要約)
- 対話型のAIサービスを2つ
答えは聞くたびに少し変わります。同じ質問を2回入れて、2回とも出た内容だけを記録すると、ぶれに振り回されずに済みます。
作業量は、10問×3つで30回答です。1回答あたり2分で読んで記録するとして60分。これが毎月の作業の全部です。担当は、公式サイトを触れる人にします。間違いを見つけたときに、その場で直し先を考えられるからです。
記録は表1枚、分類は4つ
記録は表計算ソフトの1枚で足ります。列は、質問番号、使ったサービス、答えの要約、判定の4つです。
判定は次の4つに分けます。
- 合っている:公式サイトと同じ内容
- 古い:昔は合っていたが、今は違う(料金改定前の金額、閉めたプランなど)
- 間違い:もともと合っていない。他会場と混ざっている場合も含む
- 載っていない:聞いたことに答えが出ない。または自会場の名前が出てこない
ここで大事なのは「載っていない」を失敗として扱うことです。8番の質問で自会場が出てこない場合、AIが間違えているわけではありません。AIが読める場所に、自会場について書かれた情報が少ないのです。これは直せます。
間違いの直し先は、AIではなく情報の元
生成AIの答えそのものは、式場が直せません。直せるのは、AIが参照している側です。何を直すかを、判定ごとに決めておきます。
古い、と判定したとき どこに古い情報が残っているかを探します。公式サイトの古いページ、結婚情報サイトの掲載ページ、Googleのビジネスプロフィール、過去のプレスリリース。料金や内容を変えたとき、公式サイトだけ直して他を直し忘れるのは、よくあることです。古いページは消すか、新しいページへのリンクを置きます。
間違い、と判定したとき 他会場と混ざっているなら、会場名と所在地が同じページに書かれているかを確かめます。名前だけが載っていて、市名が載っていないページは、混同されやすいです。「◯◯市の◯◯」と、毎回セットで書くようにします。
載っていない、と判定したとき 質問に答えるページがあるかを見ます。「80名だといくらか」を聞かれて答えが出ないなら、公式サイトに、80名の場合の見積もり例が載っているかを確かめます。料金を載せるかどうかは別の判断ですが、載せないなら、載せない理由と、いつ分かるかを書いておくだけでも、答えの材料になります。
どの場合も、直し先は公式サイトのことが多いはずです。AIのための特別な作業というより、公式サイトを正確で読みやすくする普通の作業に戻ります。逆にいえば、AI向けの小細工を考える必要はありません。
月1時間は割に合うのか
手間と、戻ってくるものを、仮の数字で計算します。以下は実在の式場の数字ではなく、前提を置いたモデル計算です。
- 月の作業は60分、年で12時間
- 作業者の時給を仮に2,500円とすると、年の人件費は3万円
- 1組の成約で残る粗利を、仮に80万円とする
3万円を80万円で割ると、0.0375組です。つまり、この確認と修正のおかげで、25年に1組が戻ってくれば元が取れる計算になります。年に1組戻れば、回収額は80万円で、人件費の約27倍です。
もちろん、実際に何組戻るかは分かりません。AIの答えが見学予約をどれだけ左右するか、日本での調査を、僕は見つけられていないからです。ただ、損益分岐が25年に1組なら、数字を測る前に始めてもいい、というのが僕の判断です。広告や動画のように、数十万円をかけて測るかどうかを考える話とは、桁が違います。
反対に、この確認をやめたほうがいい式場もあるはずです。公式サイトの更新が半年以上止まっていて、直す人がいないなら、確認だけして間違いを見つけても、直せません。その場合は、確認より先に、公式サイトの担当を決めるほうが優先です。
毎月やることと、最初の月にやること
最初の月だけ、少し多めにかかります。
- 質問10個を決める(会場名と市名を入れた形で保存する)
- 3つのサービスに入れて、30回答を記録する
- 判定が「古い」「間違い」のものは、元の情報がどこにあるかを探し、直す
2回目以降は、前月の表に今月の列を足すだけです。見るのは、判定が前月から変わったところだけで十分です。
直したものが、いつAIの答えに反映されるかは、サービスによって違います。すぐ変わることもあれば、数か月変わらないこともあるようです。反映されないからといって、直したことが無駄になるわけではありません。公式サイトの情報は、人間が見ても正しくなっています。
もうひとつ、料金に関する答えが出たときの注意です。AIが示した金額が間違っていても、その金額と公式サイトの金額のどちらが実際の見積もりに近いかを、先に確かめます。見積もりが契約までに上がる式場だと、公式サイトの金額のほうが実態より低く、AIの答えのほうが近いこともあるからです。その場合に直すのはAIの側ではなく、公式サイトの見せ方です。
まとめ
- 新郎新婦が式場探しの入口で生成AIを使うかどうかは、日本ではまだ測られていない。だから自会場について何と答えるかを、自分で聞いて確かめる
- 質問は10個に固定し、3つのサービスに同じ質問を入れる。料金と、会場名を入れない質問(8番)が大事
- 判定は「合っている・古い・間違い・載っていない」の4つ。直すのはAIの答えではなく、公式サイトや掲載ページなど、AIが読む側の情報
- 作業は月60分。仮の前提で計算すると、25年に1組戻れば元が取れる
- 公式サイトを直す人がいない会場は、確認より先に、公式サイトの担当を決める
生成AIが決め手になる日が来るかどうかは分かりませんが、候補から外されたことは、式場からは見えません。見えない場所を月に1回だけ覗いておく、という話でした。
