二部制の披露宴は、実施した二人の総額が16.6万円高い。ただし増えた4.9人あたりでは3.4万円で、人気日に枠を2回使うと1組あたり264万円の減収になる
二部制の結婚式は、同じ日の中で時間をずらして、披露宴を2回に分けて開く形です。昼にお世話になった親族や上司を招いて、夜は友人だけでにぎやかにやる、というような使い方をします。ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、この二部制を実施した二人の挙式・披露宴の総額が、実施していない二人より16.6万円高く出ています。
式場の側から見ると、「客単価が上がる新しいプラン」に見えます。ただ、この16.6万円には、あまり語られない続きがあります。二部制は宴会場を同じ日に2回使うので、人気日だと、そこに入れられたかもしれない別の組との取り合いになります。この記事では、調査の数字をそのまま使い、第2部が使う時間に別の組が入る確率をいくつかに置いて、二部制が得になる枠と損になる枠を計算します。先に結論を書くと、第2部の時間に別の組が入る見込みが5%を超えるなら、売上のうえでは二部制のほうが負けます。
調査が示している二部制の数字
使うのは、リクルートブライダル総研のゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国版報告書です。2023年4月から2024年3月に挙式または披露宴・ウエディングパーティーを実施した人が対象で、郵送で3,656人が回答しています。全国の数字は、地域ごとの婚姻件数に合わせて重みをつけた推計値です。
二部制について、報告書にはまず3つの数字があります。
- 二部制を知っていた人の割合は31.8%(2023年調査は36.8%、2022年調査は44.4%、2021年調査は38.0%)
- 知っていた人のうち、実際に二部制で実施した人は23.5%(2023年調査は15.7%、2022年調査は9.8%、2021年調査は12.1%)
- 実施者の招待客は平均57.1人で、非実施者の52.2人より4.9人多い
ここで注意が要るのは、23.5%の分母が「二部制を知っていた人」だということです。認知が下がって実施が上がっているので、これを見て「二部制が急に増えた」と言い切ることはできません。僕が披露宴・パーティーの実施者全体に対する割合へ直してみると、認知の割合と実施の割合を掛けて、2021年が約4.6%、2022年が約4.4%、2023年が約5.8%、2024年が約7.5%です。二部制を知った二人が、知ったうえで選ぶ割合は上がっていて、全体でも実施は増えている、ぐらいの読み方が妥当です。この掛け算は報告書に載っている数字ではなく、僕の計算です。
もうひとつ、規模の感覚です。回答者3,656人のうち、二部制を知っていたのは3割ほどで、そのうち実施者は約2割強です。単純に掛けると、実施者は全国集計で数百人規模の回答になります。数百人の平均の差ですから、16.6万円や4.9人は、揺れの幅を含んだ数字として読みます。
総額が16.6万円高い、を1人あたりに直す
二部制の実施者と非実施者を並べると、次のようになります。
| 招待客人数(平均) | 挙式・披露宴の総額(平均) | 1人あたりの総額 | |
|---|---|---|---|
| 二部制の実施者 | 57.1人 | 367.3万円 | 約6.43万円 |
| 非実施者 | 52.2人 | 350.7万円 | 約6.72万円 |
| 差 | +4.9人 | +16.6万円 | 約-0.29万円(-4.3%) |
1人あたりは、実施者のほうが4.3%安くなります。平均の総額を平均の人数で割った値なので、二人ごとの1人あたりを平均したものとは少し違いますが、方向を見るには足ります。
増えた人数に注目します。16.6万円を4.9人で割ると、約3.4万円です。非実施者の1人あたり6.72万円と比べると、およそ半分です。二部制で増えた招待客は、通常の1人分の単価では支払われていない、ということになります。
仮に、二部制の実施者も非実施者と同じ1人6.72万円を払っているなら、57.1人の総額は約383.6万円になります。実際は367.3万円なので、約16万円の差があります。この16万円が、二部制で料理や飲み物が軽くなる分なのか、第2部は会費制のように簡素にしている分なのかは、報告書からは分かりません。一方で、人数の増え方に対して総額が追いついていない事実は、数字に出ています。
もうひとつの注意です。この比較は、二部制を選んだ二人と選ばなかった二人という、別々の二人の比較です。二部制にしたから総額が16.6万円上がった、という因果は言えません。友人の多い二人が二部制を選びやすく、その二人が元から人数が多い、ということも考えられます。以降の計算は、「この差が二部制の効果だとして、それでも」という最大限に甘い置き方で進めます。
二部制が使うのは、宴会場の2枠
ここからは仮の式場で計算します。調査の数字ではなく、僕が置く前提です。
- 宴会場は1室で、土日は1日に2枠(昼と夕方)の披露宴を入れられる
- 通常の1組は1枠を使い、総額は調査の非実施者の平均、350.7万円
- 二部制の1組は第1部と第2部で、宴会場を2枠分使い、総額は調査の実施者の平均、367.3万円
- 粗利率や原価率は、どちらも同じとして、売上で比べる
ここで一番大事な前提が、二部制が2枠を使うことです。1日に昼と夕方の2回転している会場なら、二部制の二人がその日の宴会場を丸ごと押さえます。実際の運用で、第2部が1枠の半分ぐらいの短い時間なら、使う枠は1.5枠としても計算できます。
通常の1組が昼の枠に入り、夕方の枠が埋まる確率をpとします。二部制を入れないなら、売上は次のようになります。
350.7万円 × (1 + p)
昼の枠は必ず通常の1組が入る(二部制の二人も、断られれば通常の披露宴を選ぶ)と置いているので、1です。夕方の枠が埋まる確率がpです。二部制を入れるなら、売上は367.3万円です。二部制のほうが得になる条件は、次のとおりです。
367.3 > 350.7 × (1 + p)
これを解くと、pは約4.7%未満です。夕方の枠に別の組が入る確率が5%より低い日だけ、二部制は得になります。言い換えると、ほぼ確実に空いている枠なら、二部制は使い道があります。
pの値ごとに、二部制を入れたときの売上と、入れなかったときの売上の差を計算すると、次のようになります。
| 第2部の時間に別の組が入る確率 | 二部制が2枠を使う場合の差 | 二部制が1.5枠を使う場合の差 |
|---|---|---|
| 0%(必ず空く) | +16.6万円 | +16.6万円 |
| 20% | -53.5万円 | -18.5万円 |
| 50% | -158.7万円 | -71.1万円 |
| 80%(人気日) | -264.0万円 | -123.7万円 |
| 100% | -334.1万円 | -158.7万円 |
1.5枠の場合は、第2部の時間のうち半分だけが別の組と重なる、と置いて計算しています。損益分岐のpは、1.5枠なら約9.5%です。
人気日の夕方枠が8割埋まる会場で、二部制を2枠使って入れると、1組あたり264万円の減収です。年に3組の二部制を人気日に入れれば、約790万円です。二部制を断る判断は、人気日のこの数字と見比べて、客単価16.6万円の上乗せを理由にしても釣り合いません。
二部制が得になる枠はどこか
p<5%の枠は、人気日にはまず見つかりません。見つかるのは、次の枠です。
- 閑散期の土日で、夕方の枠が埋まらない日
- 平日や、六曜や季節で埋まりにくい日
- 通常は1日1組しか入らない会場の、午後に空いている時間
この枠なら、二部制は夕方の枠に別の組が入る心配がありません。通常の披露宴を1組入れただけでは売上は350.7万円ですが、二部制なら367.3万円です。16.6万円は、そのまま上乗せです。
もうひとつ、数字には出てきませんが確かめておく点があります。二部制は、準備や片づけ、スタッフの配置が2回分かかります。人件費や料理の仕入れが、同じ粗利率で済む保証はありません。上の計算は、粗利率が同じという置き方なので、現場の負担が重いなら二部制の得はさらに小さくなります。自社の閑散期で本当に16.6万円が残るかは、料理と人件費を足して確かめてください。
満足度の差は、小さい
調査には、二部制の実施者の満足を示す数字も載っています。「結婚式を通して、列席者と二人の関係が深まったと思う」と答えた割合は、実施者が92.2%で、非実施者が89.6%です。差は2.6ポイントです。「非常にそう思う」に絞ると、実施者が54.9%、非実施者が48.2%で、6.7ポイントの差です。
この差を、二部制をすすめる理由にするのは慎重にしたいです。2.6ポイントは、数百人規模の回答では誤差の範囲かもしれません。「非常にそう思う」の6.7ポイントは、方向としては意味がありそうです。二部制では、昼の親族と夜の友人を別々に迎えられるので、一人ひとりに話す時間が長くなる、という仕組みで説明はつきます。ただ、仕組みは僕の推測で、調査が確かめたことではありません。
式場が打ち出す言葉としては、「関係が深まったと答える二人が、二部制では多い傾向がある」ぐらいが限度です。「二部制にすれば満足度が上がる」とは言えません。
人数の分布は、二部制のほうが広い
もうひとつ、人数の分布も見ておきます。招待客が30人未満の割合は、二部制の実施者が15.7%で、非実施者が21.8%です。
二部制は、人数の多い二人だけの選択肢ではなく、少人数でも選ばれています。実施者の15.7%は、30人未満です。たとえば昼に親族15人、夜に友人10人、というような二部制もあるということです。この場合、総額は大きくならず、2枠を使います。売上の面では最も割に合わない型です。
少人数の二部制を受けるかどうかは、料金表より先に、方針として決めておく必要があります。見積もりの問い合わせが来てから考えると、その日の夕方の枠の状況で、受けるか断るかがばらつきます。
二部制を受けるかどうかの決め方
数字を並べると、判断の順番は次のようになります。
- その日の第2部の時間に、別の組が入る確率を見積もる。人気日で8割なら、二部制は受けない(または、2枠分の料金を別に設定する)
- 確率が低い日(閑散期、平日、六曜の弱い日)に限って、二部制のプランを出す
- 16.6万円の上乗せが、人件費と料理の仕入れを引いても残るかを、閑散期の実績で確かめる
2枠分の料金を別に設定する場合の下限も、ここから出ます。人気日の夕方枠が8割埋まるなら、通常の披露宴を入れたときの売上は350.7万円×(1+0.8)で約631万円です。二部制の総額がこれを超えないと、人気日の二部制は通常の披露宴より得になりません。367.3万円との差が、先ほどの表の約264万円です。この差を上乗せできる二部制の料金を、受け入れる二人は多くないでしょう。
つまり、二部制は人気日のプランではありません。空いている枠を埋めるためのプランで、16.6万円の上乗せは、おまけです。
まとめ
- ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、二部制の実施者の総額は367.3万円、非実施者は350.7万円。差は16.6万円で、招待客は4.9人多い
- 増えた4.9人あたりに直すと約3.4万円。非実施者の1人あたり6.72万円の約半分
- 認知は44.4%から31.8%に下がり、認知者のうち実施した割合は9.8%から23.5%に上がった。全体に直すと、実施は4%台から7.5%ほどに増えた(僕の計算)
- 二部制が2枠を使うなら、第2部の時間に別の組が入る確率が5%未満のときだけ、売上で得になる。人気日の8割なら、1組あたり264万円の減収
- 二部制は、空いている枠を埋めるためのプラン。人気日の枠を二部制に使うなら、2枠分の機会損失を含めた料金を別に設ける
- 満足度の差は2.6ポイントで小さい。「二部制なら満足度が上がる」とは言い切れない
