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見学予約フォームの入力項目を12個から5個に減らすと、仮の式場では予約が年32件増える。ただ、追加分の3割が満枠の日に入ると、利益は消える

公式サイトの見学予約フォームに、入力項目がいくつあるか数えたことはあるでしょうか。名前、ふりがな、メールアドレス、電話番号、希望日、希望時間、人数、挙式予定時期、予算、会場に求める条件、きっかけ、備考。気づくと12個くらいに育っている式場は、少なくないと思います。

先に結論を書きます。この項目を5個ほどに絞る判断は、削った項目を電話で聞き直す手間が年17万円ほどかかったとしても、予約が年1件ほど増えれば元が取れます。損得を分けるのは、予約が増えるかどうかよりも、増えた予約が土日の満枠の日に入ってしまうかどうかです。年1,600人がフォームに来る仮の式場では、増えた予約の4〜5割が満枠の日に入ると、利益が消えます。増えた予約の質が低いと、その割合は2割を切ります。

この記事に出典はありません。数字はすべて僕が置いた仮の数字で、式場ごとに違います。どれを自分の会場の数字に替えれば答えが変わるのかが分かるように、前提から順に並べます。

先に置く前提

仮の式場は、公式サイトの見学予約フォームに年間1,600人が来る、と置きます。ここでいう「来る」は、フォームのページを開いて入力を始められる状態になった人の数です。

いまのフォームは入力項目が12個で、完了率は25%とします。年400件の予約です。予約のうち、実際に来館するのは85%の340組。来館のうち、成約するのは35%の約119組。年120組の式場と同じ規模になるように置きました。

1組の粗利は140万円とします。人件費は時給2,500円で計算します。この会場は、見学の予約が公式サイトのフォームに集まる、という単純な形にしています。実際には電話や媒体経由の予約もあるはずですが、ここではフォーム経由だけを切り出して考えます。

どれも仮置きです。自分の会場の数字がある項目は、置き換えて読んでください。

フォームを短くすると、何が起きるか

入力項目が多いフォームは、途中でやめる人が出ます。これは感覚としては多くの人が持っていると思います。ただ、僕は「項目を何個減らすと完了率が何ポイント上がる」という数字を、ここで出典つきで書くことはできません。ブライダルに限った公開データを見つけられていないからです。

なので、完了率が何ポイント上がるかは、仮に置きます。12個を5個に絞って、完了率が25%から27%に上がる、つまり2ポイントの上昇と置きます。年1,600人なら、予約が400件から432件に増えます。差は年32件です。

2ポイントにした理由は、控えめにしたかったからです。1ポイントなら16件、4ポイントなら64件になります。この記事の計算は、上がり幅が大きいほど有利に出ます。逆に、上がり幅がほぼゼロでも、後で書くとおり大きな赤字にはなりません。

増えた予約は、質が違う

大事なのは、ここからです。項目を減らして増えた予約は、もとの予約と同じ質ではありません。

いまの12項目を全部埋めてでも見学したい人は、検討がかなり進んでいる人です。5項目で済むなら申し込む、という人は、検討の入口にいる人が混ざります。来館率も成約率も、もとの予約より低いはずです。

そこで、増えた予約の来館率を70%、成約率を20%と置きます。もとの予約は来館率85%、成約率35%でした。増えた32件のうち、来館するのは約22組、成約するのは約4.5組です。

粗利にすると、増えた予約1件あたり、0.7 × 0.2 × 140万円 = 19.6万円です。32件なら約627万円になります。もとの予約の1件あたり粗利は、0.85 × 0.35 × 140万円 = 約41.7万円なので、半分より少し下の質、という置き方です。

削る側のコスト

絞ったぶん、聞けなくなる情報が出ます。予算、挙式予定時期、会場に求める条件。これは、見学の前に担当者が知っておきたい情報でもあります。

聞き直す方法は2つあります。予約が入ったあとに、電話かメッセージで確認する。あるいは、来館の当日に聞く。ここでは前者で計算します。1件あたり10分の確認と置くと、時給2,500円で約417円です。年432件なら約18万円です。

追加の来館にもコストがかかります。見学の対応に、準備と接客と見送りで1組あたり2時間かかると置くと、5,000円です。増えた来館22組で約11万円になります。

整理すると、増えた予約1件あたりの純粋な粗利は、次のようになります。

  • 粗利の増え:19.6万円
  • 来館対応のコスト:0.7 × 5,000円 = 0.35万円
  • 確認の電話:417円 = 0.04万円
  • 差し引き:約19.2万円

増えた32件なら約615万円。ここから、もとの400件にも確認の電話をかける固定費として約16.7万円を引いても、年約598万円が残ります。

損益分岐は、予約1件に届かない

元を取るのに必要な、増えた予約の数は、確認の電話の固定費16.7万円 ÷ 1件あたりの純粋な粗利19.2万円 = 約0.9件です。1,600人に対して0.05ポイントの上昇にもなりません。

つまり、完了率が少しでも上がるなら、フォームを短くする判断はほぼ黒字になる、ということです。ここまでの計算は、これだけを見ると、削らない理由が見当たりません。

ただ、この計算には大きな抜けがあります。見学の枠の数は、決まっているという点です。

満枠の日に入ると、押し出す

見学の枠は、繁忙の土日の昼前後にはいっぱいになります。別の記事でも書きましたが、土日の昼は予約が溢れる時間帯です。

満枠の日に、増えた予約が入ると、何が起きるか。枠は1つしかないので、その枠を取った人は、別の誰かの枠を奪います。奪われた側が、もとの質の予約だったなら、増えたぶんの粗利ではなく、差し引きで損をします。

先着で枠が埋まるなら、満枠の日の枠は、早く埋まった順に配られます。短いフォームで気軽に押せる人が、じっくり12項目を埋める人より先に枠を取ることは十分ありえます。

そこで、増えた予約のうち、s の割合が満枠の日に入ると置きます。その分は、もとの質の予約を1件押し出します。

  • 満枠でない日に入った場合の純粋な粗利:約19.2万円
  • 満枠の日に入った場合:増えた予約の粗利19.6万円 − 押し出した予約の粗利41.7万円 − 確認の電話0.04万円 = 約−22.1万円

増えた1件あたりの期待値は、(1−s) × 19.2万円 + s × (−22.1万円) になります。これがゼロになる s は、19.2 ÷ (19.2 + 22.1) = 約46%です。

増えた予約の46%を超えて満枠の日に入ると、フォームを短くしたことで、利益が減ります。

増えた予約の質と、分岐の関係

分岐の割合は、増えた予約の質で大きく動きます。3つの置き方で比べます。

増えた予約の来館率・成約率 満枠でない日の純粋な粗利 満枠の日の差し引き 分岐になる満枠の割合
70%・30% 約29.0万円 約−12.3万円 約70%
70%・20% 約19.2万円 約−22.1万円 約46%
60%・10% 約8.1万円 約−33.3万円 約20%

もとの予約に近い質の予約が増える(30%)なら、増えた予約の7割が満枠の日に入っても、まだ黒字です。逆に、来館が6割で成約が1割という質の低い予約が増える場合は、2割が満枠の日に入るだけで、利益が消えます。

つまり、分かれ目は、満枠の日にどれだけ入るかと、増えた予約の質の掛け算です。

年32件の増加を、満枠の割合ごとに見る

増えた予約を年32件と置いて、満枠の割合ごとの年間の利益を並べます。確認の電話の固定費16.7万円も引きます。

質が70%・20%の場合。

  • 満枠に入る割合が0%:約598万円
  • 20%:約334万円
  • 30%:約202万円
  • 50%:約−63万円

質が60%・10%の場合。

  • 0%:約241万円
  • 20%:約−24万円
  • 30%:約−156万円
  • 50%:約−420万円

満枠の割合が高い会場ほど、質が低い会場ほど、数字の振れ幅が大きくなります。ここで注意したいのは、表の下のほうの数字は、フォームを短くしたことの失敗ではなく、枠の足りない会場がフォームを短くした結果だ、という点です。

自分の会場で数えるもの

この計算を自分の会場に当てはめるために、数えるものは3つです。

1つ目は、満枠の日の割合です。見学の予約が入った日を過去1年ぶん並べて、枠が全部埋まっていた日の割合を出します。繁忙の土日の昼前後が中心になるはずです。年30日とか、年10日とか、会場によって全然違います。

2つ目は、フォームを短くしたあとの、予約のうち満枠の日に入る割合です。これは、いまの予約の日付の分布が参考になります。いま満枠の日に入っている予約の割合が高い会場は、増えた予約も同じ偏りで入る可能性が高い、と考えます。

3つ目は、増えた予約の質です。これは、フォームを変える前には分かりません。短くしたあとの1〜2か月で、来館率と成約率を、もとの項目数のときと分けて見ます。見分ける方法は、フォームの項目を変えた日付を記録しておくことです。それ以降の予約の来館率と、その前の来館率を比べます。

枠が足りない会場のやり方

満枠の日が多い会場は、項目を減らす前に、枠の使い方を決める必要があります。選択肢は3つです。

1つ目は、満枠の日だけ項目を増やす、という分け方です。空いている日は5項目、満枠の日は10項目にします。予約システム側で日付によってフォームを出し分けられるなら、枠が埋まる日の予約だけ、意欲の高い人に絞れます。

2つ目は、満枠の日の枠を、先着ではなく確認が取れてから確定する形にする方法です。申し込みは受けつけて、電話で意欲を確認したうえで確定します。確認の電話が必須になるぶん工数はかかりますが、枠が奪われる損失は避けられます。

3つ目は、枠そのものを増やすことです。担当者を足す、見学時間を短くする、という手があります。ただ、見学の所要時間を延ばすと断る件数が増える、という別の記事の計算があるとおり、時間を縮めるのも逆の効果があるはずです。ここは、見学の質との交換になります。

この3つのうち、どれを選ぶかは、満枠の日の割合で決まります。割合が低いなら、何もせずに項目だけ減らせばよく、高いなら、出し分けか確認の形にするのが先です。

枠に余裕がある会場は、迷わず短くしていい

反対に、見学の枠が年中埋まらない会場は、迷う理由がほとんどありません。損益分岐は、増えた予約1件ほどです。

この場合、フォームを短くする作業そのものが軽いか重いかのほうが、判断を左右します。フォームの項目を変えるのは、予約システムの設定画面で済むことが多いです。作業は1時間もかからないはずです。

ただし、削る項目の選び方には注意が要ります。「予算」「挙式予定時期」は、見学前に聞けると接客の準備が楽になります。削るなら、「きっかけ」「備考」「会場に求める条件」のような、自由記述に近い項目からのほうが、担当者の準備への影響は小さいと思います。

逆に、削ってはいけないのは、連絡が取れなくなる項目です。電話番号とメールアドレスの両方を必須にしている会場は、片方でよいか、考える余地があります。ただ、連絡が取れない予約は来館率が下がる、という別の損失があります。ここは、僕は答えを持っていません。

数字に入っていないもの

この計算に入れていないものが2つあります。

1つ目は、予約しなかった人のその後です。フォームが長くて途中でやめた人は、別の式場に行った可能性があります。その場合、取り逃がした成約があります。完了率が上がれば、その取り逃がしが減るので、計算の中の「増えた予約」は、実は別の式場から取り戻した予約でもあります。この側面は、数字を置けないので入れていません。

2つ目は、来館しなかった予約の扱いです。来館率が下がる予約が増えると、その枠は空いたままになります。満枠の日にこれが起きると、枠を奪われた側の損失に加えて、空いた枠が売れない損失も出ます。計算では、奪われた側の損失だけを入れました。この意味で、満枠の日の数字は、実際より少し小さく出ている可能性があります。

まとめ

  • 見学予約フォームの項目を12個から5個に絞って、完了率が25%から27%に上がる、と置くと、年間のフォーム到達1,600人の仮の式場で、予約が年32件増える
  • 削った項目を電話で聞き直す固定費は年約17万円で、増えた予約が年1件弱なら元が取れる。損益分岐は、予約が増えるかどうかでは決まらない
  • 分かれ目は、増えた予約が満枠の日に入る割合。増えた予約の来館率70%・成約率20%なら、その割合が約46%を超えると利益が消え、来館60%・成約10%なら約20%で消える
  • 枠に余裕がある会場は、短くすることを迷う理由が小さい。満枠の日が多い会場は、満枠の日だけ項目を増やすか、確認が取れてから確定する形にするのが先
  • 数字はすべて仮置きで出典はない。自分の会場では、満枠の日の割合、増えた予約の入る日、変更前後の来館率と成約率の3つを記録すると、置き換えられる