成約者アンケートの「きっかけ」は、最初の接点と予約の入口を分けて聞く
成約した二人に「当会場を何で知りましたか」と聞く。多くの式場が入社時のアンケートや契約時の書類に入れている設問です。この1問の集計を見て、「Instagramが3割5分もある。もっと力を入れよう」「ポータルは2割しかない。掲載費を下げよう」と媒体費を動かしている式場も多いと思います。
僕は、この1問だけで予算を動かすのは危ないと思っています。理由は単純で、二人が「知った場所」と「予約した場所」は、別の場所になることが多いからです。Instagramで見つけて、予約はポータルサイトから入れる。検索で見つけて、予約は公式サイトのフォームから入れる。この流れは、いまの二人の探し方としてごく普通です。
結論から書きます。成約者アンケートは「最初に知った場所」と「見学を予約した入口」の2問に分けて聞く。そして、媒体費を配分するときは、どちらの数字で割ったかを必ず書いておく。この2点だけで、同じアンケートから出る結論がかなり変わります。
この記事の数字は、会場の規模も組数も金額も、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均や実績ではありません。自分の会場のアンケートに置き換えて読んでください。
1問だけ聞くと、答えがどちらかに偏る
「何で知りましたか」という聞き方は、答える二人によって意味が変わります。
ある二人は「最初に名前を目にした場所」だと受け取ります。別の二人は「見学に行こうと決めた場所」だと受け取ります。さらに別の二人は、ただ「いちばん最近見た場所」を書きます。同じ設問なのに、頭の中で違う質問に答えているわけです。
集計する側は、全員が同じ質問に答えたつもりで足し算をします。すると、割合そのものは出るのに、何の割合なのかが分からない数字になります。
もうひとつ、選択肢を1つしか選べない設問だと、二人は「いちばん印象に残っているもの」を選びます。印象に残るのは、たいてい最後に触れたものか、いちばん派手なものです。地味だけれど必ず通る入口、たとえば公式サイトの料金ページや、Googleマップの写真は、回答として選ばれにくい。でも、成約者の多くが通っている可能性があります。
設問を2つに分けると、何が変わるか
分け方はシンプルです。
- 設問1:「最初に当会場を知ったのは、どこですか」
- 設問2:「見学(ブライダルフェア)を予約したのは、どこからですか」
選択肢は、設問1と設問2で同じ並びにそろえます。Instagram、検索、結婚情報サイト、知人・家族の紹介、通りがかり・その他、といった具合です。設問2には「当会場の電話・LINE・DM」のような、式場に直接連絡した入口を足します。
こう聞くと、回答は「最初の接点」と「予約の入口」の対応表になります。次の節で、仮の数字でこの表を作ってみます。
仮の数字で、対応表を作ってみる
仮に、ある会場の成約者100組に2問を聞いたとします。数字はすべて仮です。
設問1(最初に知った場所)の集計はこうなったとします。
- Instagram:35組
- 検索(Googleなど):25組
- 結婚情報サイト:20組
- 紹介:10組
- その他:10組
ここまでは、普通の1問のアンケートと同じ形です。ここに設問2を重ねて、行を「最初に知った場所」、列を「予約した入口」にした表にします。
| 最初に知った場所 | Instagram経由で予約 | 公式サイト | 結婚情報サイト | 紹介・その他 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 12 | 8 | 15 | 0 | 35 | |
| 検索 | 0 | 20 | 5 | 0 | 25 |
| 結婚情報サイト | 0 | 0 | 20 | 0 | 20 |
| 紹介 | 0 | 0 | 0 | 10 | 10 |
| その他 | 0 | 5 | 0 | 5 | 10 |
| 合計 | 12 | 33 | 40 | 15 | 100 |
縦に見ると設問1、横に見ると設問2です。注目するのは、Instagramの行です。最初にInstagramで知った35組のうち、Instagramから予約したのは12組だけで、15組は結婚情報サイトから、8組は公式サイトから予約しています。つまりInstagramで知った二人の半分近くは、予約の段階で別の入口に移っています。
反対に、結婚情報サイトの列は40組あります。最初に知った場所が結婚情報サイトだった人は20組なので、残りの20組は、別の場所で知ったあとに、予約の手前でサイトに入ってきた人たちです。
同じ予算でも、割り方で1組あたりの数字が逆になる
ここに媒体費を載せてみます。これも仮の数字です。年間の媒体費を、Instagramの運用に240万円(人件費を含みます)、結婚情報サイトの掲載に800万円とします。
1組あたりの費用は、割る組数で変わります。
| 設問1で割る | 設問2で割る | |
|---|---|---|
| 240万円 ÷ 35組 = 約6.9万円 | 240万円 ÷ 12組 = 20万円 | |
| 結婚情報サイト | 800万円 ÷ 20組 = 40万円 | 800万円 ÷ 40組 = 20万円 |
設問1だけで見ると、Instagramは1組あたり約6.9万円、サイトは40万円で、Instagramがサイトの6分の1の費用に見えます。「サイトの掲載を減らして、Instagramに寄せよう」という結論が出やすい数字です。
ところが設問2で割ると、どちらも20万円になります。差がなくなります。
どちらが正しいか、という話ではありません。設問1は、見つけてもらう力を測っています。設問2は、予約を受け止める力を測っています。Instagramは見つけてもらうのが得意で、予約の入口としては別の場所に頼っている。サイトは、予約の入口として働いている。そう読めるだけです。
ここでInstagramを減らすと何が起きるかを考えます。35組のうち15組はサイト経由で予約しているので、Instagramを止めるとサイトの予約も減ります。サイトを減らすと、Instagram経由で見つけた15組の予約の入口が細ります。片方だけを削る判断は、この表を見ずにはできません。
2問を取るときの実務
設問を分けると、聞く側の負担も、答える二人の負担も増えます。続けられる形にするために、僕が現実的だと思う運用を書いておきます。
聞くタイミングは、契約時の書類に入れる。見学後のアンケートに入れると、成約しなかった二人の回答が混ざります。成約者だけを対象にしたいので、契約の席で、書類の記入欄として聞くのがいちばん確実です。
選択肢は6〜7個まで。多すぎると、二人は選ぶのをやめます。迷いそうな選択肢は、あらかじめ2つに割っておきます。たとえば「SNS」は、Instagram、TikTokのように会場がふだん使っている媒体の単位で分けます。使っていない媒体は載せません。
「覚えていない」を選択肢に入れる。覚えていない二人に無理に選ばせると、ほかの選択肢に混ざって、割合がゆがみます。「覚えていない」が多い会場は、それ自体が、二人に残る接点が薄いというサインになります。
複数選択にするかどうかは、設問ごとに決める。設問2(予約の入口)は、実際に1つの入口しか使っていないので、単一回答にします。設問1(最初に知った場所)は、1つに決められない二人も多いので、「いちばん最初」と念押しして単一回答にしつつ、自由記述の欄を1行つけておくと、あとで読み返せます。
集計は四半期に1回で足りる。1か月の成約組数が少ない会場だと、対応表のマス目に入る組数が1〜2組になって、動きが読めません。仮に月に10組の成約なら、3か月で30組です。行が5つ、列が4つの表に30組を散らすと、1マスあたりの組数は1組台になります。マス目の数字そのものより、行の合計と列の合計を見比べる使い方にとどめます。
数字が出たあと、媒体費の動かし方
対応表と、設問1・設問2それぞれの割った数字が出たら、見るのは次の3点です。
- 行の合計と、同じ名前の列の合計の差。Instagramは行35、列12で、23組分「入口を他に頼っている」と読めます。差が大きい媒体は、見つけてもらう役割です。差が小さい、もしくは列のほうが大きい媒体は、予約を受け止める役割です
- 見つけてもらう媒体の予算を、予約の入口の数字だけで判断しない。入口の数字が小さいからといって減らすと、その媒体から回ってきていた予約まで消えます
- 予約の入口の媒体の予算は、設問1の数字だけで判断しない。最初に知った場所の数字が小さくても、他の媒体で知った二人を受け止めているからです
この3点を守るだけで、一方の数字だけを見て予算を動かす失敗は、かなり減らせると思います。
もちろん、これは相関を並べているだけで、因果ではありません。Instagramを止めたら15組が減るのか、別の入口に移るだけなのかは、止めてみるまで分かりません。変えるときは、1つの媒体だけを、1四半期だけ動かして、翌四半期の表と見比べるのが安全です。複数を同時に動かすと、どの動きが効いたのか分からなくなります。
既存のアンケートを活かすなら
すでに「何で知りましたか」の1問がある会場も多いはずです。その場合、設問を変えると過去の数字と比べられなくなります。次のどちらかで進めるのが現実的です。
- 既存の設問は残して、設問2だけを追加する。過去の集計は設問1として、そのまま使える
- 設問を入れ替えるなら、入れ替えた月を記録しておく。前後で割合が変わっても、設問の変更が原因かもしれないと分かる
どちらでも、「いつから何を聞いているか」を、集計表のすみに書いておいてください。1年後に見返したとき、いちばん役に立つのは、その一行です。
まとめ
- 成約者への「何で知りましたか」は、答える二人によって意味が変わる。最初に知った場所なのか、予約の入口なのかが混ざる
- 設問を「最初に知った場所」と「見学を予約した入口」の2つに分け、選択肢はそろえる
- 仮の数字では、設問1で割るとInstagramは約6.9万円、サイトは40万円。設問2で割るとどちらも20万円になる。割り方で媒体の評価が逆転する
- 行の合計と列の合計の差で、媒体の役割(見つけてもらう/予約を受け止める)を読む
- 聞くのは契約の席で、選択肢は6〜7個、「覚えていない」を入れる。集計は四半期に1回
- 因果ではなく相関を並べた表なので、媒体費は1つずつ、1四半期ずつ動かす
