披露宴のサプライズは、誰に内緒かで式場の動きが3つに分かれる。仮の式場で確認の手間は年5.4万円、内緒が漏れる事故が年1件で元が取れる
披露宴のサプライズ演出を頼まれたとき、式場は何を確認するでしょうか。曲、時間、機材。多くの式場がここまでは聞いています。ただ、事故になるのはたいてい、その手前の「この話は誰に内緒なのか」を聞いていないときです。僕の置いた仮の前提で計算すると、内緒の相手を聞いて動き方を分ける手間は年5.4万円ほどです。内緒が漏れる事故を年1件防げれば、元が取れます。
この記事の数字はすべて、僕が置いた前提による計算です。実在の式場の実績でも、業界の平均でもありません。自社の組数や所要時間に置き換えて使ってください。
サプライズは3種類あって、漏れる場所が違う
サプライズと一言でいっても、内緒にしている相手で3つに分かれます。
1つ目は、二人がゲストに仕掛けるもの。両親への手紙をその場で読む、ゲスト全員にメッセージカードを仕込んでおく、といった形です。内緒の相手は、ゲストか両親です。
2つ目は、ゲストが二人に仕掛けるもの。友人が内緒で動画をつくる、親が当日に手紙を用意する、というものです。内緒の相手は、新郎新婦本人です。式場に連絡してくるのは二人ではなく、友人や親の側になります。
3つ目は、新郎と新婦のどちらかが、もう一方に仕掛けるもの。新郎だけが式場に頼んでおく演出や、新婦だけが知らない曲の差し替えがこれです。内緒の相手は、二人のうちの一方です。
この3つは、見た目は同じ「サプライズ演出」です。でも、式場の中で情報が漏れる経路が違います。漏れる経路が違えば、手当ても変わります。
- 1つ目は、ゲストに配る物や、司会の台本から漏れる
- 2つ目は、二人宛のメールや見積書、当日の進行表から漏れる
- 3つ目は、二人で共有している打合せの記録や、LINEのスレッドから漏れる
「サプライズは慎重に扱う」という方針だけでは、どこで漏れるかが分かりません。まず、誰に内緒かを聞く。これが最初の1問になります。
二人宛の書類は、ほぼ全部が漏れ口になる
3つの型のうち、いちばん事故が起きやすいのは2つ目と3つ目です。理由は単純で、式場の書類と連絡が、基本的に「二人宛」に作られているからです。
たとえば、友人が内緒で動画の上映を式場に頼んだとします。このとき、二人宛に届く進行表の写しに「友人からの動画 3分」と書いてあったらどうなるでしょうか。打合せ票の共有リンクに載っていたら。当日の司会台本の下書きを二人に確認してもらうときに、その行が残っていたら。
漏れ口は、書類の中だけにあるわけではありません。担当が二人との打合せの席で、うっかり口にすることもあります。「友人の動画のお時間ですが」の一言で終わります。
だから、サプライズの受付では次の3つを先に決めます。
1. 窓口を分ける。 二人宛の連絡とは別に、依頼者専用の連絡先をつくります。依頼者が友人なら、その友人とだけやり取りするメールかメッセージのスレッドを立てます。二人のスレッドにはサプライズの話を書きません。
2. 書類の書き方を分ける。 二人に見せる進行表では、サプライズの時間を「ゲスト企画」のように伏せた名前にします。内部用の進行表には、実際の内容を書きます。二人用と内部用で、同じ時間帯が別の名前になる。これを最初に決めておけば、後から修正して漏らす心配がなくなります。
3. 打合せの場で話題にしない人を決める。 二人との打合せに出る担当が、サプライズの中身を知らなくてもいい形にします。内容を知る人は、当日の司会、キャプテン、音響の最小限にしぼります。知っている人が少ないほど、うっかりの確率は下がります。
仮の式場で、確認の手間を計算する
ここから先は、数字を置いて計算します。前提はすべて僕が仮に置いたものです。
- 年120組の披露宴をおこなう
- そのうち3割にあたる36組が、何かしらのサプライズ演出を入れる
- 36組のうち3分の1、12組は、友人や親が窓口になって頼んでくる
- 式場の人件費は、仮に1時間3,000円で計算する
まず、全36組に「誰に内緒か」を聞く手間です。契約後の打合せの中で、サプライズの有無を聞き、内緒の相手を確認し、内部用の進行表に別名を作ります。これを1組20分とします。36組で12時間、金額は3.6万円です。
次に、友人や親が窓口になる12組です。依頼者専用の連絡先を立てて、本人確認と内容の確認をやり取りします。ここは1組30分とします。12組で6時間、1.8万円です。
合計すると、5.4万円になります。年間の組数にならすと、1組あたり450円です。
では、この5.4万円はいくらの事故を防げれば元が取れるのでしょうか。事故が1件起きたときの損失を、仮に5万円と置きます。サプライズの中身が二人に知られてしまった場合、お詫びの食事券や、写真の追加サービス、翌日のお詫びの電話や手紙にかかる時間で、5万円前後を想定した数字です。この前提なら、元が取れる事故の件数は5.4万円を5万円で割った1.08件です。年に1件ほど防げれば、ほぼ同額になります。
もし1件あたりの損失が8万円なら、0.68件で元が取れます。3万円なら1.8件です。ここは、自社の過去の事故の記録から実際の数字を入れてください。記録が無い式場は、「事故が起きたら、どう片づけたか」を一度書き出してみると、想像より手間がかかっていることが分かります。
もう一つ、数字に出ないものがあります。サプライズが漏れた披露宴は、二人の記憶に「式場が漏らした」として残ります。口コミの文面は、金額の損失よりも長く残ります。ここは計算に入れていませんが、5万円という置き方はむしろ小さく見積もっているはずです。
時間は、サプライズの長さより「押し方」で決まる
サプライズの確認でもう一つ見落とされるのが、時間の置き場所です。
仮の披露宴を165分とします。サプライズを1件入れると、紹介や移動を含めて、本人たちは「3分」のつもりでも実際は5分前後かかります。動画の上映なら暗転の前後、手紙なら読み手が席から出てくる時間が足されます。
36組が1件ずつ入れた場合、年間で5分×36回の延長が起こりえます。ただし、これは「全部が予定より押す」場合の上限です。実際には、依頼の時点で持ち時間を決めておけば、押す分を別の場面で調整できます。
決め方は、サプライズの依頼を受けるときに、次の3つを聞くことです。
- 何分以内におさめるか
- 当日の進行が押したとき、サプライズを削るか、他を削るか
- 削る場合、誰が最終判断をするか
3つ目は、サプライズならではの事情です。内緒にしている相手がいるので、その場で二人に確認を取れません。だから事前に決めておく必要があります。前の記事でも書いたとおり、削る順番は事前に決めておくほうが、当日の誰が判断しても同じ結果になります。サプライズはとくに、判断する人を前もって決めておかないと、現場が止まります。
火・音・床・片付けの確認は、一覧にして渡す
演出の中身によっては、安全や設備の確認が要ります。口頭で聞くよりも、チェックの一覧にして依頼者に見せるほうが、抜けが減ります。
- 火を使うか(キャンドル、花火、クラッカーなど)
- 大きな音が出るか。出るなら、ゲストへの事前の周知はどうするか
- 床に何かを撒くか(紙吹雪、花びら、水)
- 暗転が必要か。必要なら、何秒か
- 機材の持ち込みはあるか。ある場合は、いつ、誰が
- 片付けは誰がするか。時間は何分見込むか
- 撮影や配信に映るか
この一覧は、事故の予防というより、依頼者に「やってはいけない線」を最初に見せる役目があります。見せないまま当日になると、現場で「それはできません」と言うことになり、二人の前で場の空気が止まります。
一覧の最後に書いておきたいのは、「できないことは、事前にこちらから返事をする」の一文です。依頼者は、できないと言われたときの気まずさを、当日まで引きずります。前日の夕方に「花びらは使えませんが、代わりにこれならできます」と提案できれば、その場で調整が済みます。
うまくいかなかったときの戻し先を決める
サプライズが失敗する理由は、漏れる以外にもあります。動画の再生ができない。手紙を読む人が当日に体調を崩す。遅れて来るゲストが仕掛けの要になっていた。
こうなったときに「何事もなかったように進める」か「その場で二人に伝える」かは、前もって決められます。決めておくのは3つです。
- 実行できなかったとき、そのまま消すか、別の形に置き換えるか
- 二人には、いつ、誰が、どう伝えるか。披露宴の中か、後日か
- 依頼者には、どの時点で結果を知らせるか
置き換える形としては、動画が流せなければ、写真を数枚スクリーンに映す。手紙を読む人が出られなければ、司会が代読する。このくらいの代替を、事前に依頼者と決めておきます。
二人に伝えるかどうかは、サプライズの種類で分かれます。1つ目の型(二人がゲストに仕掛ける)は、二人が当事者なので、その場で相談できます。2つ目の型(ゲストが二人に仕掛ける)は、二人は何も知らないので、後日の伝え方まで依頼者と決めておきます。「実はこういう企画がありました。当日は事情で実施できませんでした」と、依頼者から二人に伝えてもらうのが基本の形です。式場から二人へ先に伝えると、依頼者の面目をつぶします。
受付の流れに落とす
ここまでの内容を、契約後の打合せの流れに入れると次のようになります。
- 契約後の最初の打合せで、「当日にサプライズを考えていますか」と聞く。あれば、誰に内緒かを確認する
- 内緒の相手が二人の一方、またはゲストなら、依頼者専用の連絡先を立てる
- 二人用の進行表には伏せた名前、内部用の進行表には実際の内容を書く
- 持ち時間、削る順番、最終判断をする人を決める
- 火・音・床・片付けの一覧を渡し、できないことを前日までに返す
- 失敗したときの代替と、二人への伝え方を決める
- 当日の朝、内容を知る人だけで10分の確認をする
7番目は、当日の朝に内容を知っている人(司会、キャプテン、音響の3人と依頼者)だけで集まり、役割を声に出して確認するだけです。式場側の3人が10分ずつ使うと、36組で年18時間、人件費は5.4万円です。上の5.4万円に足すと10.8万円になり、元が取れる事故は年2.2件に増えます。ここは、サプライズが入った日だけ朝の確認を5分に縮める、という調整もできます。
聞かないほうがいい場合もある
ここまで「聞く」前提で書きましたが、聞かなくていい場面もあります。
二人が自分たちだけで仕掛けるサプライズで、式場の設備も人手も使わないものです。たとえば、自分たちで用意したメッセージカードを、ゲストの席に自分たちで置くだけの場合です。式場は何も手伝わないので、確認も要りません。この場合は、聞かれるほうが面倒になります。
線を引くなら、式場の設備、時間、人手のどれかを使うかどうかです。どれも使わなければ、確認は省きます。1つでも使うなら、上の流れに乗せます。
まとめ
- サプライズ演出は、内緒にしている相手で3種類に分かれる。二人がゲストに、ゲストが二人に、一方が他方に。漏れる場所が違うので、最初に「誰に内緒か」を聞く
- 式場の書類は二人宛に作られているため、2つ目と3つ目の型は漏れやすい。窓口を分け、進行表を二人用と内部用に分ける
- 仮の年120組で、サプライズありが36組、友人や親が窓口の組が12組なら、確認の手間は年5.4万円。事故1件を5万円と置けば、年1件防げれば元が取れる
- 時間は、サプライズの長さより「押したときに誰が何を削るか」を事前に決めておく。内緒の相手には確認が取れないので、判断する人を前もって決める
- 火・音・床・片付けは一覧にして見せ、できないことは前日までに返事をする
- 失敗したときの代替と、二人への伝え方は、依頼者と先に決めておく。ゲストが二人に仕掛けた場合は、依頼者から二人に伝えてもらう
- 式場の設備・時間・人手を使わないサプライズは、聞かない。線は、この3つのどれを使うかで引く
