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サービス料は率より「何にかかるか」で総額が動く。同じ料理でも対象が装花と音響に広がると、仮の式場で1組4.8万円違う

結婚式場の見積もりには、たいていサービス料という行があります。率は10%と書いてある会場が多く、15%の会場もあります。そして二人は、この率だけを見て会場を並べがちです。

でも総額を動かすのは、率だけではありません。サービス料は「何の合計に率を掛けるか」で決まります。その対象が会場ごとに違うので、同じ料理、同じ演出でも、見積もりの総額は数万円単位でずれます。

結論から書きます。料理・飲物・会場使用料・ケーキの合計175万円の仮の式場で、サービス料が10%なら17.5万円、対象に装花と音響照明まで入れると22.3万円です。率を変えず対象を広げただけで、1組4.8万円違います。逆に、率を15%に上げて対象を狭いままにすると、26.3万円になります。

この記事の数字は、特記したもの以外、僕が置いた仮のものです。サービス料の相場と対象範囲の説明だけは、ゼクシィの解説記事をもとにしています。

サービス料の仕組み

まず前提を揃えます。サービス料は、スタッフの接客や運営にかかる費用を、料金の一定割合で上乗せする仕組みです。ゼクシィの解説記事では、飲食費と会場費の合計の10%が目安で、人数が多いほど金額が上がると説明されています。別のゼクシィの記事では、10〜15%という幅で示されています。

率は、会場の経営判断で決まります。ここは会場ごとに違って当然です。

問題は対象です。ゼクシィの解説では、会場使用料と料理・飲物・ケーキ代の合計に掛ける会場が多い一方、装花や音響照明も対象に含める会場があると書かれています。衣装は一般に対象外とされるものの、これも見積書で確認するように、という書き方です。つまり業界の中で、対象の決め方がそろっていません。

僕が気になるのはここです。率は見積もりの目立つところに書かれます。対象は、見積書の下のほうの注記か、口頭の説明に回りやすい。二人が比べているのは率なのに、金額を動かしているのは対象という状態が、普通に起きます。

4通りの計算

仮の式場を置きます。披露宴は70人で、内訳は次のとおりです。

  • 会場使用料は30万円
  • 料理は1人1.5万円で105万円
  • 飲物は1人0.5万円で35万円
  • ケーキは5万円
  • 装花は40万円
  • 音響照明は8万円
  • 衣装は50万円
  • 写真は25万円

会場使用料・料理・飲物・ケーキの合計は175万円です。装花と音響照明を足すと223万円になります。衣装と写真は、どの会場でも対象外にします。サービス料にかかる消費税は、ここでは外して考えます。

率と対象を組み合わせると、4通りになります。計算はPythonでしました。

組み合わせ サービス料の対象 サービス料 総額(衣装・写真込み)
10%・対象が狭い 175万円 17.5万円 315.5万円
10%・対象が広い 223万円 22.3万円 320.3万円
15%・対象が狭い 175万円 26.3万円 324.3万円
15%・対象が広い 223万円 33.4万円 331.5万円

10%・狭いと15%・広いでは、サービス料だけで15.9万円、総額で16万円の差になります。この差は、率の5ポイントだけでなく、対象の48万円分(装花と音響照明)が重なって出ています。

もうひとつ見ておきたい組み合わせがあります。10%・対象が広い会場と、15%・対象が狭い会場です。前者は22.3万円、後者は26.3万円。率だけを見ると前者が圧倒的に安く見えますが、差額は約4万円です。率の差は5ポイントなのに、金額の差は2割弱まで縮みます。対象の広さが、率の差をかなり食っているわけです。

二人の見え方

ここまでは、会場の側の計算です。二人の側から見るとどうなるか。

二人が複数の会場の見積もりを並べるとき、まず見るのは総額と、サービス料の率だと思います。内訳の対象範囲まで揃えて比べる人は多くないはずです(これは僕の見立てで、調査の数字ではありません)。

ゼクシィの記事には、見積もりより支払額が高くなった人が76.5%いて、差額の平均が92万4,000円だった、という2012年度の調査結果が出ています。古いデータなので現在とは違うかもしれませんが、高くなった主な理由は、料理、衣装、写真・ビデオの追加やランクアップとされています。サービス料の対象になる料理や装花を上げると、その分のサービス料も増えます。つまり、追加のたびに「本体 + 本体の10〜15%」が積み上がります。

二人が見積もりと支払額のずれに驚くのは、追加した本体の金額だけでなく、サービス料が連動して増えるのを知らないからでもある、と僕は見ています。

式場の側から見ると、これは不信のもとです。契約後の打合せで、装花を5万円上げる話をする。その5万円が、サービス料の対象なら5.5万円、対象外なら5万円。この違いを、担当者が毎回その場で説明できるかどうかで、二人の納得感が変わります。

対象を決める観点

では、会場の側はどう決めるか。判断の分かれ目を3つ挙げます。

1つ目は、対象に入れる理由が説明できるか、です。

サービス料は、スタッフの接客・運営の対価という建て付けです。装花や音響照明を対象に入れるなら、「この部分にもスタッフが付いて運営している」という説明が成り立つかを考えます。会場の中で、装花の搬入・設置を自前のスタッフがやり、音響照明も社内の担当が回しているなら、対象に入れる筋は通ります。外部の業者に丸ごと任せているなら、手数料のような位置づけに近くなり、説明が苦しくなります。

説明が苦しいまま対象に入れていると、二人に聞かれたとき、担当者が言葉に詰まります。そこで信頼を落とすくらいなら、対象を狭くして、本体の価格に寄せたほうがいい場面もあります。

2つ目は、本体価格とサービス料の配分を、見せ方として決めているか、です。

たとえば、サービス料を15%から10%に下げて、その分を料理の単価に載せる。総額はほぼ変わらず、見積もりの「サービス料の率」だけが低く見えます。この手は、二人の見た目の安さには効きますが、ひとつ注意があります。

料理の単価に載せると、料理は「サービス料の対象」なので、そこにも10%がかかります。総額を同じにしたいなら、料理に足す額はサービス料の減少分より少なくなります。ここを雑にやると、総額が意図せず上がります。

実際に揃えるなら、こう計算します。仮の式場で率を15%から10%に下げると、対象175万円に対するサービス料は26.25万円から17.5万円へ、8.75万円減ります。この減少分を料理に足して総額を揃えたいとき、足した料理にも10%のサービス料がかかるので、足す額は8.75万円を1.1で割った約7.95万円で済みます。70人なら1人あたり約1,140円です。

こうした調整は、会場の価格戦略として成り立ちます。ただ、二人の側から見て、「サービス料10%と書いてあるから安い」と思って契約し、あとで対象や料理の単価を知って驚く、という流れを作ってしまうと、契約後の不満になります。見せ方を決めるときは、契約後の打合せで二人に追加費用を説明する場面まで通して考えたほうがいいです。

3つ目は、対象外の項目を見積もりの中で目立たせているか、です。

衣装や写真など、対象外の項目があるなら、見積もりの中で「ここはサービス料なし」と分かるようにしておくと、二人の納得は上がります。逆に、対象かどうかが見積書のどこにも書いていないと、二人は聞くしかありません。聞かれるたびに説明するのは手間ですし、聞けなかった人は不信を持ったまま契約します。

見積もりの1行目

では、見積もりをどう直すか。僕の案は、1行目の書き方を変えることです。

今の見積もりが、「サービス料 10%」とだけ書かれているとします。これを、次の形にします。

  • サービス料10%(会場使用料・料理・飲物・ケーキの合計175万円に対して17.5万円)
  • 装花・音響照明・衣装・写真はサービス料の対象外

率と対象と金額を、1行に入れます。見積書の書式をいじるだけなので、費用はほぼかかりません。

この形にすると、二人が他の会場の見積もりと並べたとき、対象範囲の違いが一目で分かります。対象が広い会場にとっては、一見不利です。でも、対象が広いなら、その分のスタッフの働きを説明できるはずで、説明できるなら、並べて比べられることは不利になりません。説明できないなら、そもそも対象に入れている理由がないので、見直す機会になります。

逆に、対象が狭い会場は、この書き方で強みがはっきり出ます。率が15%でも、対象が狭ければ、実質の負担は10%・広い会場とあまり変わらない。それを二人が自分で気づくのを待つより、見積書で見えるようにしたほうが早いです。

契約後の追加のとき

もうひとつ、契約後の打合せの話です。

二人が料理を上げたいと言ったとき、担当者が「1人2,000円アップです」と言うのか、「サービス料込みで1人2,200円アップです」と言うのか。後者のほうが、あとで請求が合わないトラブルを避けられます。サービス料の対象になる項目は、追加の金額を言うときに、最初から率込みで話すルールにしておく、という決め方があります。

仮の式場で、打合せで追加が出る項目を、料理・飲物・装花・音響照明の4つとします。そのうち料理・飲物は対象、装花・音響照明は対象外の会場と、4つとも対象の会場では、追加の見積もりの出し方が変わります。対象が混在しているほど、担当者は「これは込み、これは別」と、項目ごとに言い分けなければなりません。新人が言い間違えやすいのは、こういう箇所です。

対象を広げて「全部込み」にそろえる、あるいは対象を狭くして料理・飲物・会場費だけに絞る。どちらも、担当者が一言で説明できる形です。中途半端に混ざった状態がいちばん説明に手間がかかります。

まとめ

  • サービス料は率だけでは決まりません。何の合計に掛けるかで総額が動きます
  • ゼクシィの解説では、会場使用料と料理・飲物・ケーキを対象にする会場が多く、装花や音響照明まで含める会場もあります
  • 料理・飲物・会場費・ケーキの合計175万円の仮の式場では、10%で17.5万円、対象に装花と音響照明を足すと22.3万円で、1組4.8万円違います
  • 10%・対象が広い会場と15%・対象が狭い会場の差は、率の5ポイントより小さい約4万円です
  • 追加のたびに、対象の項目にはサービス料が連動して増えます。二人が支払額に驚く理由のひとつです
  • 対象に入れる項目は、サービス料の建て付け(スタッフの接客・運営の対価)で説明できるかで決めます
  • 見積もりの1行目に、率と対象の合計額と対象外の項目を書くと、他社との並べ比べでも契約後の追加でも説明が通ります

サービス料は、率より対象で決まる行です。見積もりの1行目に対象を書けるかどうかが、その会場がサービス料を説明できているかの目安になります。