来館・成約

式場の2回目の来館は、迷っている1点を聞いてから誘う

見学が終わって、二人が「持ち帰って相談します」と言って帰る。そのあと、担当者から届くのは「いつでもまたお越しください」というお礼のメッセージ。多くの式場で見る流れです。

僕の考えを先に書きます。2回目の来館は、「また見に来てください」と誘っても生まれにくいです。生まれるのは、二人が迷っている1点が決まっていて、その1点を確かめる場として2回目が用意されているときです。つまり、誘う前に、迷っている点を聞く。聞いたあとに、その点だけを確かめる来館を提案する。この順番が大事だと思っています。

この記事では、二人が見学後に動かなくなる理由、迷っている1点の聞き方、2回目の来館の組み方、そして誘うべきでない二人の見分け方を整理します。数字は、出典があるものは調査名を書き、それ以外は前提を置いた計算です。特定の式場の実績ではありません。

見学を終えた二人は、比べる作業に入っている

まず、二人が置かれている状況を確認します。

ゼクシィ結婚トレンド調査2024を紹介する記事によると、結婚式を検討してブライダルフェアに参加したカップルは7割を超え、平均で2.6軒の会場を訪れています。同じ記事は、1軒しか回らなかった人の半数以上が「十分に比較できなかった」と後悔していたとも伝えています。調査の対象は、2023年4月から2024年3月に挙式や披露宴をした読者とネット会員です。

この数字が教えてくれるのは、二人が1軒目の見学を終えた時点では、まだ候補を絞っていないということです。多くの二人はそのあと2軒目、3軒目に行きます。しかも、1軒で決めた人の多くが後から物足りなさを感じている。だから二人は、見学のあとに「比べる作業」をします。

比べる作業をしているとき、二人の頭にあるのは「A会場とB会場、どちらがいいか」です。「A会場にもう一度行こう」とは、あまり考えていません。ここに「またお越しください」を投げても、比べる作業の材料にはなりません。

「またお越しください」が届かない理由

「またお越しください」には、二人が動く理由がありません。

二人にとって来館は、休日を使う行動です。予定を合わせて、移動して、90分前後を使う。その手間に見合う理由がないと、2回目は後回しになります。担当者の側は「来てもらえれば見せられる」と思っていても、二人の側は「何を見に行くのか」が分からない。

理由がない誘いは、断る理由も要りません。二人は返信を後回しにして、そのうち他の会場で話が進み、返信の機会そのものがなくなります。これは二人が冷たいのではなく、迷っている点が自分でも言葉になっていないからだと、僕は見ています。

迷っている1点を聞く

では、何を聞くか。見学の最後か、翌日までの連絡で、次の質問をします。

  • 「今日見ていただいて、ここだけは決めきれない、という点はありますか」

ポイントは「1点」と言うことです。「何かご不安な点はありますか」と聞くと、二人は「特にないです」と返します。不安を聞かれると、二人は問題を指摘することになり、答えにくい。一方、「決めきれない点」は、前向きに検討しているからこそ出てくる言葉なので、答えやすい。

返ってくる答えは、だいたい次のような種類に分かれると僕は考えています。(これは現場で聞く内容の整理で、割合を示すデータはありません。)

  • 金額:見積もりの総額が予算を超えている、何が含まれているか分からない
  • 日取り:希望の日が空いていない、仏滅の割引がどこまで効くか
  • 場所:親族の移動がしんどい、駅から遠い
  • 雰囲気:写真で見た印象と実際が違った、広さや天井の高さが合わない
  • 家族:親の意見が分かれている、親がまだ見ていない
  • 料理:試食できていない、アレルギーの対応が分からない

この6つのどれが出たかで、2回目の中身が決まります。

1点ごとに、2回目の中身を変える

迷っている点が分かったら、その点を確かめる来館として誘います。種類ごとに、組み方を整理します。

金額が理由のときは、来館ではなく見積もりの作り直しが先です。来館を誘うと、二人は「また高い話をされる」と身構えます。見積もりを出し直して、項目の差を説明する。そのうえで、「この見積もりを一緒に見ながら、削れる項目を決めませんか」と、来館の中身を決める。

日取りが理由のときは、空き状況を先に伝えます。2回目の来館は、希望の日が取れるかどうかが分かってから。取れないなら、取れる日の見学を提案するほうが親切です。

雰囲気が理由のときは、時間帯を変えて見てもらう誘いが効くと思っています。昼の会場と夕方の会場は、光の入り方も雰囲気も違います。1回目が昼なら、2回目は夕方の披露宴の時間帯。「雰囲気が合うか決めきれない」という二人に、違う条件でもう一度見てもらう理由ができます。

家族が理由のときは、親や家族の来館を誘います。二人だけが来て、親が来ていない。この状態で「持ち帰って相談」は、親に説明する役を二人が背負うことになります。2回目は「ご両親も一緒に」と、迷っている点そのものが来館の理由になります。

料理が理由のときは、試食の予約を案内します。これは、2回目の来館の理由として最も分かりやすい。ただし、試食を有料にしているか無料にしているかで、誘いやすさが変わります。損得はフェアの試食の記事で扱ったので、ここでは触れません。

場所が理由のときは、会場の問題というより、二人の事情です。ここは無理に2回目に結びつけず、アクセス情報の補足(送迎、駐車場、宿泊)を送るだけにとどめます。

誘い方の文面は、1点と日程の2つだけ書く

誘いの文面は、長く書かないほうがいいと思っています。書くのは2つだけです。

1つ目は、聞いた1点を、二人の言葉のまま書くこと。「お話の中で、親御さまがまだ会場をご覧になっていないとのことでした」のように。これで、二人は「覚えていてくれた」と感じます。

2つ目は、その1点を確かめる具体的な日程。「ご都合のよいときに」とは書かず、「今度の土曜の午後か、来週の日曜の午前なら、親御さまとご一緒にご案内できます」のように、候補を2つ出す。初回返信は予約リンクか候補日か、という論点は別の記事で扱いました。ここでも同じで、候補日が書いてあるほうが、二人は返事を作りやすいです。

書かないものは、特典や期限です。「今月中なら」のような期限は、迷っている点を解決しません。むしろ、二人に「急がされている」という印象を残します。CTAを期限で追う書き方は避けるべきだと、僕は考えています。

2回目に誘わないほうがいい二人

すべての二人に2回目を誘うのは、正しくないと思っています。

  • 予算が大きくずれている:見積もりを出し直しても届かないなら、2回目は双方の時間のロスです
  • 希望の日が取れない:取れない日に向けた来館は、誘う理由がありません
  • 「他の会場に決める」とはっきり伝えてくれた:この場合は、他会場に決めた理由と比べた順番を聞く、という別の対応のほうが、次に残るものがあります

誘わないと決めることも、2回目の設計の一部です。全員に同じ連絡を送ると、本当に迷っている二人への連絡が、他の連絡に埋もれます。

仮の数字で、2回目の誘いの損得を見る

ここからは、前提を置いた計算です。実績ではありません。

仮に、ある式場で1か月に100組が初回見学に来て、その場で決めない二人が60組いるとします。この60組に「迷っている1点を聞いて、2回目を誘う」運用を始めたとします。

  • 2回目の来館に応じる二人の割合を、仮に10%、20%、30%の3通りで置く
  • 2回目に来た二人の成約率を、仮に35%と置く

すると、追加で増える成約は、60組 × 応じる割合 × 35% で、次のようになります。

  • 応じる割合10%:6組が来館し、約2.1組が成約
  • 応じる割合20%:12組が来館し、約4.2組が成約
  • 応じる割合30%:18組が来館し、約6.3組が成約

もちろん、この中には、2回目の誘いがなくても自分で戻ってきた二人も含まれます。だから実際に増える分は、これより小さいはずです。増加分を見るには、運用を始める前の再来館の数を、1か月でも数えておく必要があります。

コストは、担当者の時間です。聞き取りの連絡に10分、2回目の来館に60分かかると仮定すると、20%の場合は、60組への聞き取りが600分、来館12組で720分、合計で1,320分、約22時間です。成約が仮に4組増えるなら、1成約あたり約5.5時間になります。これを、媒体からの1成約にかかる費用と比べて、割に合うかを見る。割に合わないなら、誘う対象を絞ります。たとえば、迷っている点が「家族」や「雰囲気」の二人に限る、といった形です。

この計算で見てほしいのは、数字の大きさではありません。「応じる割合」と「再来館の成約率」の2つが、運用の成否を決めていることです。この2つは、自分の式場の記録から出せます。

数える項目は3つ

運用を始めるなら、次の3つを記録します。

  • 聞き取りで返ってきた1点の種類(金額・日取り・場所・雰囲気・家族・料理)
  • 2回目を誘った組数と、応じた組数
  • 2回目に来た二人の成約数

種類を記録すると、自分の式場で二人が何に迷っているかの傾向が見えてきます。金額が多いなら、見積もりの出し方。家族が多いなら、初回見学の予約時に「誰と来るか」を聞く運用。見学の前や最中の設計を変えるヒントになります。

まとめ

  • 「またお越しください」は、二人が動く理由を作らない。2回目を生むのは、迷っている1点が決まっていること
  • 見学の最後か翌日までに「決めきれない点はありますか」と聞く。「不安」ではなく「決めきれない点」と聞くと答えやすい
  • 返ってくる点は、金額・日取り・場所・雰囲気・家族・料理に分けて、種類ごとに2回目の中身を変える
  • 誘いの文面は、聞いた1点を二人の言葉で書く、候補日を2つ出す、の2つだけ。特典や期限は書かない
  • 予算が大きくずれている、日が取れない、他会場に決めた二人には、2回目を誘わない
  • 仮の計算では、応じる割合と再来館の成約率が成否を決める。まず数えることから始める

2回目の来館は、誘う回数ではなく、聞いた1点で決まります。