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検索広告を「夜は電話が取れないから」と止めると損をする。仮の式場で夜の来館は月11組、止めて浮く10.5万円に対し失う粗利は460万円

検索広告の管理画面には、配信する時間帯を絞る設定があります。ブライダルの現場でときどき聞くのが、「電話の受付は19時までだから、夜は広告を止めたほうがいいのでは」という話です。クリックが来ても、誰も電話に出られない。お金だけが減っていくように見えるのは、よく分かります。

結論を先に書きます。年ではなく月の広告費30万円という仮の式場で計算すると、夜(19時から24時)に出している広告費は10.5万円です。ここを止めても、浮くのは10.5万円。一方、夜の広告から入る来館は月に11組ほどで、期待粗利にすると月460万円ほどです。止める判断が正しくなるのは、夜の転換率が昼の70分の1くらいまで落ちたときだけです。

ただ、夜を止めない話で終わらせるつもりはありません。夜に入った予約を、翌朝何時に返すか。ここで月に100万円ほどの差が動きます。広告の設定画面を開く前に、見るべきなのはこちらだと僕は考えています。

この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査や統計は使っていません。クリック単価も、時間帯ごとの割合も、転換率も、自分の会場の管理画面の数字に置き換えて読んでください。

仮の式場を置く。月30万円、1クリック200円

計算のために、1つの会場を置きます。

  • 検索広告の予算は月30万円
  • 1クリックの単価は200円。なので月に1,500クリック入ります
  • 電話の受付は10時から19時。夜はフォームとLINEだけが動いている
  • クリックが来館予約になる割合(転換率)と、予約が実際の来館になる割合は、時間帯で変わる
  • 来館した二人のうち、成約するのは30%
  • 成約1組の粗利は140万円

最後の2つから、来館1組の期待粗利が出ます。30%に140万円を掛けて、42万円です。来館が1組増えると、平均で42万円分の粗利が見込める、という意味になります。成約するのは3割だけなので、必ず入る額ではなく、平均の見込みです。

次に、クリックの時間帯ごとの割合を置きます。ここは本当に仮です。

時間帯 クリックの割合 クリック数 広告費
昼(10〜19時、電話あり) 50% 750 15万円
夜(19〜24時、フォームのみ) 35% 525 10.5万円
深夜早朝(24〜10時) 15% 225 4.5万円

二人が式場を調べるのは、仕事のあとの夜が多い、という感覚は現場でよく聞きます。ただ、その割合を示す調査は、僕は確認していません。なので35%は置いた数字です。自分の管理画面で、時間帯別のクリック数を見れば、すぐ入れ替えられます。

時間帯ごとに、来館がいくつ入るか

転換率と来館率を、時間帯ごとに置きます。電話もフォームも使える昼は高く、フォームだけの夜は下がり、深夜早朝はさらに下がる、という並びにします。

時間帯 予約への転換率 予約が来館になる割合 月の予約 月の来館
昼 4.0% 85% 30.0件 25.5組
夜 3.0% 70% 15.8件 11.0組
深夜早朝 1.5% 55% 3.4件 1.9組

夜の来館率を昼より低く置いたのは、フォームの返事が翌日になるからです。待たされた二人は、その間に別の会場へ予約を入れることがあります。この15ポイントの差は、仮の置き方です。この差こそが、あとで効いてきます。

合計すると、月の来館は38.4組。期待粗利は、38.4組に42万円を掛けて、およそ1,612万円です。広告費は30万円なので、広告としては十分すぎる桁の差が出ています。この仮の式場では、広告費が少なすぎて、損益を議論するまでもなく黒字です。実際の会場では、クリック単価も転換率もずっと厳しいはずなので、そこは次の章で動かします。

夜を止めると、いくら浮いて、いくら失うか

夜の配信を止めたとします。

  • 浮く広告費は、月10.5万円
  • 失う来館は、月11.0組
  • 失う期待粗利は、11.0組に42万円を掛けて、約463万円

浮く10.5万円に対して、失う粗利は463万円です。44倍の差です。

もう少し言い換えます。夜の来館1組を取るのにかかった広告費は、10.5万円を11.0組で割って、約9,500円です。来館1組の期待粗利は42万円なので、広告費は粗利の2.3%に収まっています。深夜早朝でも、4.5万円を1.9組で割って約2.4万円。粗利の5.8%です。

つまり、受付が終わっていても、フォームから入る予約の価値は、広告費よりはるかに大きい。ここが、「電話が取れないから止める」の弱いところです。取れないのは電話であって、予約ではありません。

止めたほうがよくなる線はどこか

では、どこまで転換が落ちれば、止める判断が正しくなるのか。

1クリック200円を回収するには、1クリックあたりの期待粗利が200円以上あればよいことになります。来館1組の期待粗利は42万円です。なので、クリックが来館に変わる割合が、200円を42万円で割った値、0.048%あれば、広告費は取り返せます。

夜の仮の数字は、転換率3.0%に来館率70%を掛けて、2.1%です。止める線の0.048%の、約44倍あります。夜の来館への転換率が昼の70分の1、つまり0.048%まで落ちたら、そこで初めて止める話になります。

実際の会場でこの線に近づくのは、次のような場合だと思います。

  • クリック単価がずっと高い。たとえば、地名と「結婚式場」を組み合わせた強い語で、1クリック2,000円を超えるとき。線は0.48%に上がります
  • 成約率が低い。成約率が5%なら、期待粗利は7万円で、線は2.9%まで上がります
  • 夜のクリックの多くが、予約する気のない閲覧で、フォームまで行かないとき

この3つは、自分の数字で確かめられます。線は動かせるので、会場ごとに計算し直してください。計算式は単純で、クリック単価を、来館1組の期待粗利で割るだけです。

本当の差は、翌朝の返事の速さに出る

さきほど夜の来館率を70%と置きました。昼の85%より15ポイント低い設定です。この差を縮めると、いくらになるか。

夜の予約15.8件のうち、来館になる割合を変えて、月の来館と期待粗利を並べます。

夜の予約が来館になる割合 月の来館 70%との差 期待粗利の差
55% 8.7組 マイナス2.4組 マイナス約99万円
60% 9.4組 マイナス1.6組 マイナス約66万円
70%(基準) 11.0組 0 0
80% 12.6組 プラス1.6組 プラス約66万円
85% 13.4組 プラス2.4組 プラス約99万円

夜の来館率が15ポイント動くと、月に約100万円の期待粗利が動きます。夜の広告費10.5万円の、およそ10倍です。

広告の時間帯設定をいじって浮かせられるのは、多くても月10万円です。翌朝の返し方で動くのは、月100万円。桁がひとつ違います。ここは、現場の段取りの話になります。

夜の予約を翌朝に返す段取りで、僕が差が出ると考えているのは、次の3点です。

  1. 出社して最初の仕事を、夜に入った予約への返信にする。メールの確認は、その次です
  2. 返信に、来館日程の候補を最初から2つ3つ書く。「ご希望の日程をお知らせください」と書くと、二人はもう一度考える手間が増えます
  3. 夜に入った予約の一覧を、前日の夜の時点で担当者に渡す。担当者が朝に探す時間をなくします

もちろん、これで来館率が本当に15ポイント上がるかは、僕は確認していません。上の表は、「上がったらいくら」を見せているだけです。自分の会場で、夜の予約の来館率と、昼の予約の来館率を、まず実際に出してみてください。差がなければ、この章の話は当てはまりません。

夜のコンバージョンを測る。件数が少ないと、揺れる

時間帯ごとの転換率を、自社のデータで比べたくなると思います。ここに、件数の落とし穴があります。

夜の予約が月に15.8件の会場を考えます。件数のばらつきは、おおよそ件数の平方根で決まります。16件なら、平方根は4。95%の信頼度で見ると、誤差は約±49%です。つまり、月16件の夜の予約は、本当の平均が8件から24件のあたりにある、としか言えません。

3か月ためて48件なら、誤差は約±28%。100件なら約±20%です。

なので、夜の転換率が昼の6割だった、という数字を1か月分で出して、「夜は弱い」と判断するのは危ういです。数字が動いた原因が、時間帯の弱さなのか、たまたまの揺れなのか、1か月では見分けられません。止める判断をするなら、少なくとも3か月分は見てください。

ただし、先ほどの計算で、止める線は昼の70分の1くらいでした。48件で見える揺れは±28%なので、この線を見誤ることはありません。つまり、「止める」の判断は、少ない件数でも、はっきり出ます。逆に、「夜を2割絞る」のような細かい調整の判断は、件数が足りません。細かい調整は、数字を見ずに決めてよいと割り切るか、半年待つかです。

絞る選択肢もある。ただし使うのは入札の強さ

夜を止めない場合でも、時間帯で入札の強さを変える設定は使えます。昼の転換率が夜より高いなら、昼のクリック単価の上限を上げ、夜を下げる、という使い方です。

効果を仮の数字で見ます。夜のクリック単価を200円から150円に下げると、広告費は月10.5万円から、クリックが減るぶんも含めて6.3万円に減ります。ただし、単価を下げると、広告の掲載順位が下がり、クリック数も減ります。クリックが2割減って420になるなら、夜の来館は11.0組から8.8組に減ります。浮く広告費は約4.2万円で、失う来館は2.2組、期待粗利で約92万円です。

数字を見るとわかるとおり、夜の入札を下げて得をするのは、夜の転換率が、昼よりずっと低いときだけです。この仮の式場では、夜の転換率は昼の4分の3なので、下げる理由がありません。下げるなら、昼の転換率が夜の2倍以上あるかを、先に自社のデータで確かめます。

受付時間を広告に合わせる、という逆の選択

最後に、逆の発想も置いておきます。広告の時間を受付に合わせるのではなく、受付を広告に合わせる、というやり方です。

たとえば、夜20時まで受付を延ばす、という選択があります。この場合の損益は、ほかの記事で一度書きました。電話の受付時間を1時間延ばす損益です。広告の話に引き戻して言うと、夜のクリックが多い会場ほど、受付を延ばす価値は上がります。

ただ、人を増やす話は、広告の設定よりずっと重い判断です。広告の時間帯設定は、今日から変えられますが、受付時間は人の働き方を変えます。順番としては、夜のフォームの返信を速くする、受付を延ばす、の順に試すほうが、費用は小さく済みます。

やらないほうがよい会場

この記事の計算が当てはまりにくい会場もあります。

  • クリックの単価が極端に高い会場。1クリック2,000円を超えるなら、止める線は10倍に上がります。夜の転換率を実際に測ってから決めます
  • フォームの項目が多く、夜に入力を終える二人が少ない会場。夜の転換率が低くなるので、先にフォームを見直します
  • 広告をまだ出していない会場。時間帯の前に、広告を出すかどうかが先の判断です

まとめ

  • 受付が終わった夜の検索広告を止めても、仮の式場で浮くのは月10.5万円です
  • 失う来館は月11組で、期待粗利は約460万円。差は約44倍です
  • 止める線は、クリックが来館になる割合が、クリック単価を来館の期待粗利で割った値を下回るとき。仮の数字では0.048%です
  • 夜のクリックは、取れないのが電話であって、予約ではありません。フォームとLINEで入ります
  • 本当の差は翌朝の返事の速さに出ます。夜の来館率が15ポイント動くと、月約100万円が動きます
  • 夜の予約が月16件だと、誤差は約±49%です。止める判断は3か月分を見てからにします
  • 入札を絞るのは、昼の転換率が夜の2倍以上あると、自社のデータで確かめられたときだけです

広告の設定画面は、いじりやすい場所です。でも、夜に入った予約を、翌朝いちばんに返すこと。こちらのほうが、効く額は桁が上です。