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式場の口コミ返信は、低評価を書いた人でなく見学前の二人に向けて書く

低評価の口コミがついたとき、返信は誰に向けて書いているでしょうか。書いた本人に向けて、と答える会場が多いのではないかと思います。お詫びして、事情を説明して、改善を約束する。気持ちはよく分かります。ただ、この書き方だと、返信がいちばん効く読み手に届かないことがあります。

結論を先に書きます。口コミ返信の読み手は、投稿者本人よりも、これから会場を選ぶ二人です。投稿者は返信を読んで、もしかしたら納得してくれるかもしれません。けれど口コミ欄を開いてスクロールしている見学前の二人は、星の数より先に、会場がクレームにどう向き合う組織なのかを見ています。そう考えて返信を書くと、謝り方も、説明の量も、書かないことの線引きも変わってきます。

この記事に出典つきの数字はありません。口コミを読んだ人が実際にどれだけ予約をやめるのか、返信で何割戻るのかを、僕は確かめられていません。以下の数字は、工数の話を除いてほとんど置いていません。置いたものは、すべて僕が決めた仮の前提です。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

返信の読み手は三者いる

口コミ欄の返信は、一つの文章に三種類の読み手がいます。

一人目は投稿者本人です。当日の対応に不満があって書いた人で、返信を読んで気持ちが収まることもあれば、逆に火がつくこともあります。二人目は、その会場で式を挙げた別の人たちです。まだ付き合いのある二人や、ゲストとして来た人が見ていることがあります。三人目が、見学を予約する前に口コミを開いている二人です。

見学前の二人には、投稿者の事情を知る手段がありません。当日、何が起きたのか。本当に会場の落ち度だったのか、思い違いだったのか。分からないまま、返信の言葉づかいだけで会場の姿勢を判断します。ここが大事なところで、返信が事実の説明に寄りすぎると、事実が正しくても「言い訳が多い会場」に見えます。逆に、事実を曖昧にしたまま謝りすぎると、「本当にそうだったんだ」と読まれます。

だから返信は、投稿者に向けて書きながら、その文面が第三者に読まれても困らないか、を毎回確かめる文章になります。投稿者への返信と、見学前の二人への説明を、同じ数行で済ませる仕事です。

低評価への返信の骨組み

型を決めておくと、担当者によるばらつきが減ります。僕が使いやすいと考えているのは、次の四つを、この順に並べる形です。

最初に、書いてくれたことへのお礼を一文。長くしません。二つめに、不快な思いをさせた点を、具体的に特定して受け止めます。「ご不便をおかけしました」では何についてか分からないので、「当日の控室の案内が遅れた点」のように、投稿者が書いた事実をそのまま拾います。三つめに、会場として確認できたことと、すでに変えたことを書きます。変えたことがなければ「社内で共有しました」ではなく、何を誰が見直すのかを書きます。四つめは、直接話したい場合の窓口を一文。ここでは連絡先の番号やメールアドレスを書かず、会場の問い合わせ窓口に誘導するにとどめます。

この順番の意味は、見学前の二人が上から読んだときに、一番上で「誠実そうだ」と感じ、真ん中で「具体的に受け止めている」と感じ、最後で「ここで話が続けられる」と分かるようにするためです。反論は入りません。事実と違う点があっても、骨組みの外に出します。その扱いは後の節で書きます。

文字数は、短い口コミなら返信も短く。長い口コミでも、返信は口コミの半分以内に収まるくらいが読みやすいです。返信のほうが長くなると、見学前の二人には言い訳に見えやすくなります。これは僕の感覚であって、数字で確かめたわけではありません。

書いてはいけない内容

次の内容は、事実であっても返信に書かないほうがいいと考えています。

契約内容や金額、当日の進行の詳細です。「お客様のご契約では〜でしたので」と書くと、返信が事実の反論になります。それだけでなく、契約の内容を口コミ欄で明かすことが、個人情報の扱いの面でも問題になりえます。個人情報保護法まわりの線引きは、会場の顧問や専門家に確かめてください。僕が言えるのは、書かなければリスクが生じない、ということです。

投稿者の特定につながる情報もだめです。挙式日、卓の人数、担当したプランナーの名前などです。口コミが匿名に近い投稿でも、会場側は誰か分かることが多いので、つい書いてしまいます。ここは書かない、と決めておくほうが安全です。

もう一つは、宣伝です。低評価への返信に「現在はこの点を改善した新プランをご用意しています」と入れる会場を見かけることがあります。読み手の二人には、クレームを販促の機会にしているように映るおそれがあります。改善したことの報告は構いませんが、新プランの案内にはしません。

事実と違う口コミの扱い

投稿の内容が、明らかに事実と違うことがあります。当日いなかった担当者の名前が書かれている、契約していないプランについての不満が書かれている、といったものです。

ここで反論の返信を書くと、事実を正せる代わりに、口論に見えます。二つの選び方があります。一つは、事実の誤りを一文だけ、感情を入れずに書く方法。「当会場では〜のプランはご用意しておりません」のような書き方で、投稿者を責める言葉は入れません。もう一つは、口コミサイトやGoogleの報告・削除依頼の窓口に出して、返信は書かない方法です。

どちらを選ぶかは、会場として決めておくといいです。僕のおすすめは、事実の誤りが二人の判断に影響しそうなときだけ、一文で訂正する。それ以外は、返信を書かずに窓口へ報告する、という切り分けです。ただし、Googleや各サイトが、何を削除の対象にするかは、僕は公式の基準を確認していません。報告したからといって削除されるとは限らない前提で、運用を組んでください。

星だけの口コミと高評価への返信

星だけで本文のない口コミにも返信するかどうか。これは会場の方針で決めてよいと思います。僕は、星が低い場合だけ短く返信する形を勧めます。「評価をいただきありがとうございます。不足があった点があれば、お問い合わせ窓口でお聞かせください」くらいの二文です。本文がないので、事実に触れる必要がなく、書き手が迷いません。

高評価への返信は、型どおりのお礼にならないよう、口コミに書いてある具体を一つだけ拾います。「料理を褒めていただいた」なら、その料理の話を一言。これは返信の書き手が口コミをちゃんと読んでいる、という証拠になります。ここも読み手は見学前の二人です。同じ文面のテンプレートが並んでいると、機械的な会場に見えてしまいます。

返信を書く人と承認の決め方

運用で一番もめるのは、誰が書いて、誰が見るかです。

低評価の返信は、当日の担当者本人に書かせないほうがいいと考えています。本人は事実に近すぎて、弁明が入るからです。かといって、全部を社長が書くと、返信が滞ります。僕が使いやすいと思うのは、窓口を決めて、書く人を一人に絞り、低評価だけ支配人か責任者が承認する形です。

返信までの目安も決めておきます。何日以内と決めるかは会場によって違いますが、ゴールデンウィークや繁忙期に未返信が積まれると、口コミ欄に返信のない低評価が並びます。返信のない低評価を見た二人は、「放置する会場」と読む可能性があります。この読み方が実際にどれだけ起きるのかは、僕も数字を持っていません。ただ、返信の期限を先に決めておくと、判断のたびに迷う時間が消えます。

工数の損益を仮の式場で置く

返信に時間をかける価値があるのか。これを仮の式場で計算してみます。

前提は次のとおりです。すべて僕が置いた数字です。

  • 年間の口コミは60件。そのうち星3以下が12件、星4以上が48件
  • 低評価の返信は1件45分。下書き、確認、承認までを含めます
  • 高評価の返信は1件5分
  • 担当者の人件費は1時間2,000円
  • 1組あたりの粗利は148.5万円。ほかの記事で使っている仮の式場の値に合わせました

低評価の返信にかかる時間は、12件×45分で9時間。高評価は48件×5分で4時間。合計13時間です。13時間×2,000円で、年間の人件費は2.6万円になります。

この2.6万円を粗利148.5万円で割ると、約0.0175組分です。つまり、返信の運用を維持するのに必要なのは、年間で1組の成約の57分の1ほどの効果です。年に1組の成約を二人の判断に左右される範囲で拾えれば、返信に使う時間は十分に元が取れる計算になります。

もちろん、これは返信が成約に効いた場合の話です。返信が成約に影響しているのかどうかは、会場の側から直接は測れません。測れる範囲で言えるのは、返信の運用がこの金額で済むということ、そして見学の問い合わせで口コミを見て来たと答える二人の割合を、アンケートで聞けば、おおよその見当がつくことです。見学後のアンケートに「口コミを見ましたか」の一問を足すだけで、数字が自社のものとして手に入ります。

逆に、返信に時間をかけすぎるリスクもあります。低評価1件に1時間以上かけ、社内で何度も文面を直していると、年12件でも12時間以上になります。この場合も、2.4万円ほどの人件費の差です。金額としては大きくないのですが、担当者が口コミを見るたびに消耗することのほうが、実際の損失になりやすいです。型を決める目的は、金額の節約より、書く人の気持ちを守ることにもあります。

判断の分かれ目

返信の方針は、会場の口コミの量と、社内で返信にかけられる人数で変わります。

口コミが年20件ほどしかない会場は、全件に丁寧に返信して構いません。工数が小さく、一件ごとの存在感が大きいからです。年100件を超える会場は、低評価と、長文の高評価だけに絞り、短い星だけの口コミは見送る線引きも現実的です。

もう一つの分かれ目は、低評価の中身が、会場の運営上の問題か、期待のずれかです。運営上の問題、たとえば連絡の遅れや当日の案内の不備は、返信で改善を示すだけでなく、実際に直す必要があります。期待のずれ、たとえば写真のイメージとの違いは、返信で説明しても二人には言い訳に見えやすく、サイトや見学での事前説明を直すほうが効きます。返信を書くたびに、口コミを現場の改善に回す仕組みがあるかも、確かめたい点です。

まとめ

  • 口コミ返信の主な読み手は、投稿者本人より、これから見学を決める二人です
  • 低評価への返信は、お礼、具体的な受け止め、確認できたことと変えたこと、窓口の順に書きます
  • 契約内容、投稿者を特定できる情報、新プランの宣伝は返信に書きません
  • 事実と違う口コミは、判断に影響しそうなときだけ一文で訂正し、それ以外は窓口に報告します
  • 仮の式場(年60件の口コミ)で、返信の工数は年13時間、人件費は2.6万円ほどです。粗利148.5万円の1組の57分の1で収まります
  • 書く人を一人に絞り、低評価だけ責任者が承認し、返信の期限を先に決めておきます