卒花嫁の紹介は、過去3年の360組に働きかけても年5組前後。紹介特典は「どうせ来た人」の割合で割高になる
卒花嫁からの紹介は、広告費がかからない集客として語られがちです。ただ、紹介が年に何組生まれるのかを、段階ごとに掛け算した式場は多くないと思います。
結論から書きます。年120組の仮の式場が、過去3年に挙式した360組すべてに働きかけても、紹介で成約するのは年に5組前後です。しかも、紹介特典を付けるときの実質の費用は、額面より高くなります。特典がなくても来たはずの人にも、特典を払うからです。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。実在の調査の数字ではありません。式場ごとに値は違うので、自分の会場の数字に置き換えて使ってください。目的は、紹介を増やすときに、どの段階を数えて、どこに手を入れるかを決める材料を作ることです。
紹介が成約になるまでの5つの段階
紹介は、次の5つの段階を順に通ります。
- 挙式した組が、結婚式をよい経験だと思っている
- その人が、結婚を考えている誰かに式場の話をする
- 話を聞いた人が、見学の予約を入れる
- 見学した人が、その式場で契約する
- 契約した人が、紹介だったと式場に伝わる形で記録される
段階が増えるほど、残る人数は減ります。どの段階も100%にはなりません。広告であれば、費用を増やせば入口の人数を増やせますが、紹介の入口は卒花嫁の数と気持ちで決まるので、式場が自由に増やせません。
仮の式場で掛け算する
前提を置きます。
- 年間の挙式は120組で、ここ数年ずっと同じとする
- 紹介の対象は、過去3年に挙式した組。360組とする
- そのうち、1年のあいだに結婚を考えている誰かへ式場の話をする組は10%とする。36組
- 話を聞いた人のうち、実際に見学の予約を入れる人は30%とする
- 見学した人のうち、契約する人は50%とする
計算は次のとおりです。
- 360組 × 10% = 36組が、誰かに式場の話をする
- 36 × 30% = 10.8人が、見学に来る
- 10.8 × 50% = 5.4組が、成約する
年120組の式場にとって、紹介の成約は5.4組で、全体の4.5%です。これが、広告費がかからないと言われる集客の、仮の大きさです。
注意したいのは、この前提が「話をした1人につき、見学に来る可能性のある人が1人」という置き方だということです。実際には、1人の卒花嫁が複数の友人に話すこともあるし、話しても誰も動かないこともあります。10%、30%、50%のどれも、確かめた数字ではありません。
どの段階を動かすと効くか
5つの段階は掛け算なので、どれか1つが1.5倍になると、結果も1.5倍になります。
- 話をする組が10%から15%になる:54組 × 30% × 50% = 8.1組
- 見学に来る人が30%から45%になる:36 × 45% × 50% = 8.1組
- 成約する人が50%から75%になる:10.8 × 75% = 8.1組
どの段階を1.5倍にしても、結果は同じ8.1組です。違いが出るのは、その段階を1.5倍にするのに何が要るかです。
話をする組を増やすには、挙式後の連絡の仕方を変える必要があります。見学に来る人を増やすには、紹介された人にだけ見学の予約を取りやすくする手当てが要ります。成約する人を増やすのは、紹介だからという理由で条件を変えることになり、通常のお客様との公平の問題が出ます。
僕は、段階の2、つまり話をする組の割合を先に見ます。理由は、ここが一番、数字がないまま放置されているからです。式場が把握しているのは、成約した紹介の件数だけで、話をしたけれど動かなかった件数は誰も数えていません。
紹介特典は、どうせ来た人にも払う
紹介特典を付ける式場は多いと思います。特典がある式場の計算で見落としやすいのは、特典がなくても来た人です。
たとえば、仲のよい友人が卒花嫁から話を聞いて、特典の有無に関係なく見学に来ることがあります。この人に特典を払っても、特典が紹介を増やしたわけではありません。払った分は、そのまま費用として出ていきます。
計算してみます。前提は次のとおりです。
- 紹介の成約が10組あったとする
- 紹介1組につき5万円の特典を、紹介した側と紹介された側に合わせて払うとする
- 払う特典の合計は、10組 × 5万円 = 50万円
このうち、特典がなくても成約したはずの組の割合を「どうせ来た割合」と呼びます。特典が本当に増やした成約は、10組のうち(1 − どうせ来た割合)の分だけです。
| どうせ来た割合 | 特典で増えた成約 | 増えた1組あたりの実質の特典 |
|---|---|---|
| 0% | 10組 | 5万円 |
| 30% | 7組 | 約7.1万円 |
| 50% | 5組 | 10万円 |
| 70% | 3組 | 約16.7万円 |
額面は5万円ですが、7割がどうせ来た人なら、特典で増えた1組あたりの実質は16.7万円です。額面の3倍を超えます。
広告費と並べると、損益分岐が見える
実質の特典を、広告で1組成約を取るときの費用と並べます。広告の1成約あたりの費用を20万円と仮置きします。
特典の額面ごとに、どうせ来た割合がどこまでなら広告より安いかを出します。
- 額面3万円:どうせ来た割合が85%でも、実質20万円で広告と同じ
- 額面5万円:75%まで。それを超えると広告より高くなる
- 額面10万円:50%で実質20万円。広告と同じになる
額面が小さければ、多少「どうせ来た人」が混じっていても、広告より安く済みます。額面を10万円に上げると、半分が「どうせ来た人」の時点で広告と並びます。
つまり、特典の額を決める前に確かめるのは、どうせ来た割合です。この割合が高い式場ほど、特典を厚くしても紹介は増えにくく、費用だけが増えます。
どうせ来た割合を、どう見積もるか
どうせ来た割合を、会場の中で測る方法は2つあります。
1つ目は、初回のヒアリングで聞くことです。「ご紹介を受けたとき、特典がなかったとしても見学にいらしていましたか」と聞くと、答えがばらつきます。聞き方によって数字が変わるので、正確には測れません。ただ、半数以上が「特典を知ったのは後だった」と答える式場なら、どうせ来た割合は高いと読めます。
2つ目は、特典の導入前後を比べることです。特典を入れた月の前後で、紹介の見学が増えたかを見ます。ただし、季節の波があるので、前年の同じ月と比べないと誤ります。紹介の件数は月に数組しかないので、1年ほど見ないと差は読めません。
どちらの方法でも、ぴったりの数字は出ません。それでも、特典の額を決めるときに「どうせ来た割合が5割なら実質2倍」と思って決めるだけで、判断は変わります。
紹介を数える記録の置き方
紹介の数字がないのは、記録がないからです。最低限、次の4つを記録できれば、先ほどの掛け算が自分の会場の数字でできます。
- 初回の問い合わせ・見学予約の時点で、紹介だったか
- 紹介した人は、挙式から何か月後の卒花嫁か
- 紹介した人と、された人の関係(友人、親族、職場)
- 見学の予約から成約までの結果
紹介元が挙式から何か月後かを残すと、段階2に効く時期が分かります。挙式直後に話す人が多いのか、1年後に結婚を考える友人が出てくるころなのか。働きかけの時期を決める材料になります。
関係が分かると、紹介が友人に偏るのか、親族にも広がるのかが見えます。親族の紹介は式場が働きかけにくい経路なので、友人の紹介を伸ばす施策と分けて数えます。
予約の入口で、紹介の有無を答える欄を作っても、答えない人はいます。LINEの予約や問い合わせフォームに「どなたかのご紹介ですか」という選択肢を入れておくと、記録の抜けが減ります。
卒花嫁に働きかけるタイミング
段階2の割合を上げたいとき、働きかけの回数より、時期が効くと僕は見ています。これも出典がある話ではなく、仕組みからの推測です。
卒花嫁が式場の話をする相手は、結婚を考えている友人です。友人が結婚を考えるのは、卒花嫁の結婚式に出席したあとであることが多く、そのとき卒花嫁の記憶には結婚式が新しく残っています。ここで式場から連絡が来ていると、話題に出やすくなると考えられます。
そこで、挙式後に連絡を取る機会を、次の3つの時点に分けて考えます。
- 挙式の直後:お礼と写真の受け渡し
- 3か月後:アルバム、映像の完成のころ
- 1年後:1周年のお知らせ
どの時点がもっとも紹介につながるかは、会場の記録がないと分かりません。先ほどの記録に「何か月後の卒花嫁か」を残す理由は、この3つの時点のうち、どこに連絡を集中させるかを決めるためです。
紹介にだけ力を入れすぎない
ここまで、紹介を増やす話をしてきましたが、紹介は式場の集客を支えきれる量ではありません。仮の式場で、紹介の成約は年5.4組で、120組の4.5%です。
紹介を2倍に増やしても、10.8組です。全体の9%にしかなりません。年120組を保つための集客のうち、91%は別の経路から来ます。
そのため、紹介への投資は、広告や自社サイトからの流入と同じ土俵で比べ、どれが1成約あたり安いかで配分します。紹介は費用がかからないから、優先して伸ばすというのは、順序が逆です。紹介は費用が安くても、規模が小さいので、伸ばしても全体の数字は動かしにくい経路です。
判断の分かれ目
紹介の施策を考えるときの判断の分かれ目を、4つにまとめます。
- 紹介の記録が1年分ない式場:特典の額を決める前に、記録を取り始める。特典を先に付けると、特典の効果が測れなくなる
- 紹介が全体の1割を超える式場:すでに卒花嫁の満足が高い可能性がある。特典よりも、段階2の時期を探る
- 紹介が全体の1割未満の式場:段階のどこで落ちているかを、記録から見る。特典で全部を解こうとしない
- 特典を付けている式場:どうせ来た割合を、初回ヒアリングで聞いてみる。5割を超えるなら、額を下げるか、紹介された側だけに絞る
どれも、数字が先で、施策が後です。
まとめ
- 年120組の仮の式場で、過去3年の360組から紹介の成約が生まれるのは、年5.4組前後。全体の4.5%
- 紹介は5つの段階の掛け算で、どの段階を1.5倍にしても結果は同じ1.5倍。違いは、その段階を動かすための手当て
- 紹介特典は、特典がなくても来た人にも払うため、実質の費用が額面より高くなる。どうせ来た割合が70%なら、額面の3倍を超える
- 特典を決める前に、どうせ来た割合を、ヒアリングと導入前後の比較で見積もる
- 紹介元との関係、挙式から何か月後か、結果を最低限記録する
- 紹介の規模は小さいので、広告や自社サイトと同じ土俵で、1成約あたりの費用で配分する
