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披露宴の受付を式場スタッフが代行すると、仮の式場では全組なら年60万円。有料にすれば年36万円の黒字。先に決めるのは、ご祝儀を預かるかどうかだ

披露宴の受付は、新郎新婦の友人や同僚に頼むのが一般的です。ところが、頼む側の二人は意外と悩んでいます。誰に頼むか、お礼はいくらか、当日にご祝儀を預けて大丈夫か。式場から「受付はスタッフが代行できます」と案内されれば、ほっとする二人は一定数いるはずです。

では式場の側から見て、この代行は付けたほうがいいのか。結論を先に書きます。年120組の仮の式場で計算すると、全組に無料で付けた場合の人件費は年60万円です。有料の選択肢にして、3割の組が選べば、年36万円の黒字になります。

ただ、この損得の計算より前に決めておくことがあります。スタッフがご祝儀を預かるのか、名簿の確認と案内だけにするのか、という線です。ここを決めずに代行を始めると、金額の計算が意味を持たなくなる事故が起こりえます。

なお、ここで使う数字は、ほぼすべて僕が置いた仮の前提です。受付代行を選ぶ二人の割合や、その単価について、僕が確かめられた公開データはありませんでした。業界の相場として読まず、自分の会場の数字に置き換えるための型として読んでください。

前提を先に置きます

仮の式場の前提は次のとおりです。

  • 年間の挙式は120組、1組あたりの粗利は140万円です
  • 来館は年300組、成約率は40%です
  • 受付の代行は、開宴の30分前からの受付に加えて、準備15分と片付け15分を足した1時間をスタッフ2人で担当します
  • スタッフ1人の1時間あたりの人件費は、社会保険などを含めて2,500円とします

この前提だと、1組あたりの人件費は次のとおりです。

2人 × 1時間 × 2,500円 = 5,000円

これを全組に付けると、5,000円 × 120組で年60万円です。時給の置き方でどれだけ動くかも見ておきます。時給が2,000円なら年48万円、3,500円なら年84万円です。どの置き方でも、年50〜80万円の範囲に収まります。金額の桁は小さく、損益を決めるのはここではありません。

無料で付けるとき:成約がどれだけ増えれば元が取れるか

全組に無料で付けるなら、年60万円は特典のコストです。これを回収するには、成約が何組増えればよいでしょうか。

粗利が1組140万円なので、60万円 ÷ 140万円で0.43組です。来館が年300組なので、成約率に直すと0.14ポイントです。40%が40.14%になれば元が取れる計算です。

粗利を120万円に置けば0.5組、160万円に置けば0.38組です。どの粗利でも、必要な上積みは年に半組前後です。

この数字の読み方には注意が必要です。年300組の来館に対して成約率が0.14ポイント動いたかどうかは、数字の上では見分けられません。成約率は月ごとに大きく揺れるからです。だから、「受付代行を付けたら成約が増えた」とは、年間の数字を見ても言えません。付けるなら、効果が測れない前提で、コストが年60万円で収まる範囲かどうかだけを見て決めることになります。

有料にするとき:選ぶ割合で黒字が決まる

有料の選択肢にする場合は、考えるのが逆になります。コストは、選んだ組の分しか発生しません。

仮に代行料を1.5万円とします。1組あたりの人件費は5,000円なので、1組あたりの粗利は1万円です。選ぶ割合ごとに、年間の粗利は次のようになります。

  • 2割の24組が選ぶ:24万円
  • 3割の36組が選ぶ:36万円
  • 5割の60組が選ぶ:60万円

粗利そのものは、大きな金額ではありません。年間の粗利が1億円台の式場にとっては、誤差に近い数字です。

ここで見ておきたいのは、有料にした場合の副作用です。受付を代行するために1.5万円を払った二人は、見積もりの総額が1.5万円増えます。見積もりの総額が増えること自体が、成約率を下げるおそれがあります。

ただし、受付代行は、見積もりの初期段階で入れる項目ではありません。契約後の打合せで二人が選ぶオプションの1つに置けば、成約率への影響はほぼなくなります。契約前の見積もりには入れず、契約後のオプション一覧に置く。この置き場所が、有料にするときの前提です。

損益より先に決める線:ご祝儀を預かるか

受付の仕事は、大きく2つに分かれます。

1つは、名簿の確認、芳名帳の記入の案内、席次表の手渡し、会場の案内です。もう1つは、ご祝儀の受け取りと、その保管です。

前者は、間違えても取り返しがつきます。後者は、間違えると取り返しがつかないことがあります。

ご祝儀の金額を、仮に1人3万円、出席者を60人としましょう。1組で預かる現金は180万円です。これを受付の机で受け取り、開宴までの間、保管することになります。

友人に頼んだ受付なら、預かった友人がご祝儀袋の入った袋を新郎新婦の親族に渡します。万が一の紛失が起きても、友人と二人の間の話です。式場スタッフが預かって紛失すれば、式場の責任になります。180万円の現金を、短時間でも式場が預かる意味を、一度考えておく必要があります。

この線の引き方は、次の3通りが考えられます。

  • 名簿の確認と案内だけにして、ご祝儀は二人が指定した親族が預かる
  • ご祝儀も預かるが、受け取った袋は二人の親族の前で鍵付きの箱に入れ、その場で親族に渡す
  • ご祝儀は預からない、と契約書や案内に明記する

僕は、最初は1つ目の線で始めるのが堅いと考えています。理由は、式場の責任が現金に及ばないからです。受付代行の価値は、「友人に頼む負担を減らす」ことにあります。ご祝儀の保管まで引き受けなくても、名簿の確認と案内を任せるだけで、多くの二人の負担は軽くなります。

ご祝儀を預かる運用にするなら、会場の保険や管理規定が、現金の紛失や盗難をカバーしているかを先に確認してください。ここは僕には確かめられない部分なので、契約している保険の約款を読んで判断する領域です。

人員の壁:同じ時間帯に受付が重なる日

損益より先に、人員の壁にも触れておきます。

受付の代行は、開宴の30分前に集中します。同じ日に披露宴が2組あり、開宴の時間が近いと、スタッフが4人、同時に要ります。

仮に、そうなる日が年12日あるとします。その日だけ、追加のスタッフを2人、1時間分、アルバイトで確保するなら、2人 × 1時間 × 2,500円 × 12日で年6万円です。金額は小さいのですが、問題は金額ではありません。その日に、スタッフを確保できるかどうかです。

確保できなければ、代行の枠は「1日1組まで」と決めるしかありません。先着順で断るのか、人気日の組を優先するのか、ここを決めておかないと、現場が当日に判断することになります。

受付の代行を付ける前に、年間の披露宴のスケジュールを見て、開宴時間が重なる日を数えておくのが、いちばん手堅い準備です。数えるだけなら、スプレッドシートで数分です。

無料にするか有料にするか:判断の分かれ目

ここまでの数字を並べると、無料と有料の分かれ目が見えてきます。

無料で付ける場合のコストは、年60万円です。これが回収できるのは、成約率が0.14ポイント上がる場合ですが、年間の数字では見分けられません。つまり、「特典として付けて、数字では確かめない」と割り切る選択です。

有料にする場合は、選んだ組だけに人件費が発生し、年36万円前後の粗利が残ります。粗利は小さいのですが、数字の上では確実に黒字です。

僕なら、次のように決めます。

  • 二人が受付で悩んでいるという声が、見学のときに多く出る式場は、無料の特典にして、成約の押し上げに使う。ただし、声が多いかどうかは、見学のヒアリング記録で数えて確かめる
  • 声が少ない、または数えていない式場は、有料のオプションにして、契約後の打合せで案内する

後者のほうが、判断の失敗が小さく済みます。有料で始めて、選ぶ組が4割を超えるようなら、無料の特典に切り替える材料になります。逆に、無料で始めて有料に切り替えるのは、二人にとって「特典がなくなった」という印象になりやすく、難しくなります。

二人に伝えるときの言い方

受付を代行する案内には、決めておくと混乱しない項目があります。

  • 代行するのは、名簿の確認、芳名帳の案内、席次表の手渡しまでか
  • ご祝儀を預かるかどうか。預からない場合は、二人が指定した親族に直接渡してもらう
  • 受付の開始時間と、終了の目安
  • 友人に頼みたい場合は、友人と式場スタッフが一緒に受付に立てるか

最後の項目は、見落とされがちです。「代行を頼むと、友人にお願いする機会がなくなる」と感じる二人もいます。受付は、友人に頼むことで、その友人を披露宴の「役割」で呼べる意味もあります。代行を使いながら、友人は席に着いてもらう、という選び方もあれば、友人とスタッフで分担する、という選び方もあります。

選択肢は、1つに絞らなくて構いません。「全部お任せ」「友人と分担」「友人のみ」の3つを案内しておけば、二人は自分の関係性に合ったものを選べます。

この記事で確かめていないこと

最後に、この記事で確かめていないことを書いておきます。

  • 受付代行を選ぶ二人の割合は、仮に置いた数字で、公開データを確認できていません
  • 代行料の相場も、確認できていません。1.5万円は計算のために置いた金額です
  • ご祝儀の平均額や出席者数は、考え方の例として置いた数字です
  • 会場の保険が、受付での現金の紛失をカバーするかどうかは、契約ごとに違います

自分の会場で使うなら、代行料と選ぶ割合は、数か月だけ試験的に有料で出して、実測してから決めるのがいちばん確かです。

まとめ

  • 受付を式場スタッフ2人が1時間で代行すると、1組の人件費は5,000円。全組なら年120組で年60万円、時給の置き方で年48万円から84万円の範囲に収まる
  • 無料の特典として付ける場合、元を取るのに必要な上積みは成約0.43組、成約率で0.14ポイント。年間の数字では測れない大きさなので、「測れない前提で割り切る」ことになる
  • 有料の選択肢にして3割が選べば、粗利は年36万円。契約前の見積もりではなく、契約後のオプション一覧に置けば、成約率への影響はほぼ出ない
  • 損益より先に決めるのは、ご祝儀を預かるかどうか。最初は名簿の確認と案内だけに絞り、ご祝儀は二人が指定した親族に渡してもらう線が堅い
  • 同じ時間帯に披露宴が重なる日は、スタッフが足りなくなる。年間のスケジュールで開宴時間が重なる日を先に数え、代行は1日1組までなど、断る基準を決めておく
  • 金額の小さい施策なので、迷うときは有料で始める。無料から有料への切り替えは、二人に特典がなくなった印象を残しやすい