来館・成約

担当プランナーの変更依頼、式場は誰がどう受けるか

契約から数週間たったころ、二人から「担当の方を替えていただくことはできますか」と言われる。現場の責任者なら、一度は経験があると思います。言われた側のプランナーは傷つきますし、上長は「相性の問題だろう」と流したくなります。ただ、この一言への受け方は、成約後の解約を左右するはずの場面です。

結論を先に書きます。担当変更の依頼は、「受けるか断るか」の二択で考えると失敗します。決めておくのは、誰が最初に聞くか、何を聞くか、いつまでに返すかの3つです。担当本人に理由を聞かせず、上長が別の場で聞き、2営業日以内に答えを返す。この段取りがあれば、変更するかしないかの結論がどちらでも、二人の不信は大きくなりにくいと考えています。

この記事に出典つきの数字はありません。担当変更の依頼率や、受け方による解約率の違いを調べた公開調査を、僕は確認できていません。以下の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

担当変更の依頼は、解約の手前にある合図

二人が担当の変更を口にするとき、理由は大きく3つに分かれると思います。

  • 連絡の遅さ:返信が来ない、打合せの日程が決まらない、といった段取りへの不満
  • 見積もりや提案への不信:オプションを勧められすぎた、説明が足りなかった、という感覚
  • 話が合わない:言い方が合わない、年齢や価値観の距離を感じる、という相性の話

これを「相性」とひとまとめにすると、対応を誤ります。1つ目と2つ目は、担当を替えても会場に対する不信が残るからです。担当が替わっても「この会場は返信が遅い」「この会場は勧めすぎる」という印象は消えません。3つ目だけが、担当を替えれば解決する可能性が高い話です。

つまり、依頼が来た時点でやることは、変更の可否を決めることではありません。どの理由なのかを切り分けることです。

誰が最初に聞くか

最初の窓口で、結果の大半が決まります。避けたいのは、依頼を受けた担当本人が、そのまま理由を聞く形です。

担当プランナーに直接伝えられる二人は、実は少数だと思います。多くの二人は、メールやLINEの末尾に「できれば」と添えるか、見学時に対応してくれた別のスタッフにこっそり伝えます。その言葉が担当本人に回ると、次の打合せで本人が過剰に丁寧になったり、逆に硬くなったりして、二人は「言わなければよかった」と感じます。

窓口は、担当より上の立場の人間か、担当の組織から外れた人間に決めておくのが安全です。

  • 受けた人は、理由を深く聞かず、「責任者から2営業日以内にご連絡します」とだけ答える
  • 担当本人には、二人が名前を出した範囲では伝えない。伝えるのは、上長が内容を確認したあとにする
  • 依頼を受けた人から上長への報告は、その日のうちにする

ここで大事なのは、「聞いた人が解決しようとしない」ことです。二人の不満を、その場で謝ってなだめようとすると、中途半端に約束だけが増えます。

何を聞くか:3つの質問

上長が二人に会う(電話でもかまいません)とき、聞くことは3つに絞れます。

  1. いつから、何がきっかけでそう感じたか。 出来事を聞きます。「どんな人ですか」と聞くと、人格への不満が出てきて、後で処理しにくくなります
  2. 担当が替われば、その気持ちは解消するか。 連絡の遅さが理由なのに、新しい担当も同じように忙しければ、二人はまた失望します。ここで、担当を替えても変わらない部分があれば、正直に伝えます
  3. 変更しないとしたら、何があれば続けられるか。 連絡の頻度を決める、打合せに上長が同席する、窓口を2人にする、といった代替案を、二人の側から引き出します

3つ目の質問は、断る場合の選択肢にもなります。「替えられません」と言う前に、「こうなら続けられそうですか」と聞く。これだけで、二人の側に決めた感覚が残ります。

受ける条件と断る線

会場として、変更を受ける条件をあらかじめ書いておくと、毎回悩まずに済みます。僕なら、次のように分けます。

受けてよい場合

  • 連絡が3営業日以上途絶えるなど、事実として確認できる段取りの不備がある
  • 担当の言動に対して、二人が不快だったと具体的に説明できる
  • ハラスメントに当たりうる言動の申し出(これは条件ではなく、即座に別の対応が必要です)

変更せず、代替案で続ける場合

  • 理由が「なんとなく合わない」で、出来事が出てこない
  • 担当を替えても解消しない不満(価格、日程の制約、会場の設備など)が中心
  • 担当の替えが利かない時期(挙式の1か月前など)で、引き継ぎの失敗のほうが危ない

即時に別の人が入る場合

  • 担当が長期で不在になる、退職する、体調を崩す

最後の項目は二人の依頼ではなく会場の都合です。会場の都合で担当を替えるときは、二人が言い出すより前に、会場から連絡する。これは二人が言い出す前の話なので、この記事の対象とは別に整理しておく価値があります。

注意したいのは、担当本人の評価に響かせない運用です。変更を受けるたびに担当の評価が下がる会場では、プランナーが依頼の存在を隠す方向に動きます。「依頼があった」という事実と、「担当の落ち度」を、会場の記録上で分けておく必要があります。

受け方で、解約はどれだけ変わるか

ここからは、仮の式場でモデル計算をします。前提はすべて僕の想定です。

  • 年間の成約は120組
  • 担当変更を口にする二人は、成約の5%。年6組
  • 1組あたりの粗利は120万円(解約された場合に失う額として置きます)
  • 受け方A:担当本人が受け、理由を聞いて「努力します」と答える。解約率30%
  • 受け方B:上長が別枠で聞き、2営業日以内に答えを返す。解約率10%

AとBの解約率は、根拠のある数字ではありません。受け方で差がつくという仮説を、数に直して見ているだけです。

この前提だと、年6組のうち、Aでは1.8組、Bでは0.6組が解約になります。差は1.2組で、粗利にして144万円です。Bで増える手間は、上長の面談と引き継ぎで1組あたり3時間、時給2,000円と置くと、年6組で3.6万円。手間の費用は、差の2.5%にすぎません。

では、依頼の数や解約率の差が違えば、どうなるかを並べます。

年間の依頼組数 解約率の差 防げる組数 粗利換算
3組 30%→10% 0.6組 72万円
6組 20%→10% 0.6組 72万円
6組 30%→10% 1.2組 144万円
12組 30%→10% 2.4組 288万円
12組 40%→15% 3.0組 360万円

どの行でも、手間の費用(年数万円)を上回ります。解約率の差が10ポイントしかなくても、依頼が年6組あれば72万円です。ここで分かるのは、受け方を整える投資は、小さな会場でも合う計算になりやすいということです。逆にいえば、この表が成り立たなくなるのは、依頼がほぼ来ない会場だけです。ただし、その場合は「来ない」のではなく「担当に言えずに黙って解約している」可能性もあります。

断るときの伝え方

変更を断る場合は、伝え方で結果が変わります。僕なら、次の順序で伝えます。

  1. 二人が感じたことを、そのまま受け止める。「そう感じさせてしまったことは、会場として受け止めます」まで言う
  2. 変更を見送る理由を、担当の問題ではなく運営の事情で説明する。「挙式まで3週間で、引き継ぎの途中で情報が抜けるほうが心配です」のように
  3. 代替案を具体的に出す。連絡手段、頻度、上長の同席、決めごとの書面化を、日付つきで
  4. 3週間後か、次の打合せの後に、会場から様子を確認する

やってはいけないのは、「担当は優秀ですから」と擁護することです。二人は評価を聞いているのではなく、続けられるかどうかを探っています。

変更を受けるときの引き継ぎ

変更を受けた場合の失敗は、引き継ぎの穴から起きます。新しい担当が、すでに二人が伝えた内容を聞き直すと、「また一から説明するのか」という新しい不満が生まれます。

  • 引き継ぎ書に、決定事項と未決事項を分けて書く
  • 二人が伝えた希望のうち、すでに断られたものは別に記録する
  • 新担当が最初に連絡するとき、「引き継ぎを読みました。◯◯の件は確認済みです」と先に言う
  • 前の担当と二人を、直接会わせない(連絡は上長経由に切り替える)

前の担当に対する配慮も必要です。引き継ぎの場で、前担当の問題点を上長が洗い出すと、その場の空気が崩れます。何が起きたかは、後日、別の場で整理します。

変更後の三週間を見ておく

担当を替えたら終わり、にはなりません。変更を受けた二人は、新しい担当に対しても「また同じことになるのでは」と身構えています。最初の三週間は、上長が新担当の連絡の返信時間と打合せの日程の決まり方を確認します。ここで遅れが出ると、二人は「結局どの担当でも同じだ」と受け取り、会場そのものへの不信に変わります。

また、変更を受けたこと自体を、会場の内部で責める材料にしないことも大切です。変更の件数は、担当の評価ではなく、受け方の改善に使う記録として扱います。理由の内訳(連絡の遅さ、提案への不信、相性)を半年ごとに数えるだけでも、研修で直す場所が見えてきます。

依頼を減らす側の手当て

最後に、依頼そのものが出にくい仕組みを考えます。

  • 契約後2週間と1か月の時点で、上長から短い確認の連絡を入れる(「ご不明な点はありませんか」程度)
  • 契約時に、担当が不在のときの連絡先を渡しておく
  • 打合せの終わりに、次回までの連絡手段と、返信の目安を日付で確認する

どれも新しい仕組みというほどではありません。ただ、二人が担当に言いにくい不満を、別のルートで出せるようにしておく効果があります。

まとめ

  • 担当変更の依頼は、解約の手前にある合図。受けるか断るかの前に、理由を切り分ける
  • 最初の窓口は担当本人にしない。上長が別枠で聞き、2営業日以内に答えを返す
  • 聞くことは、出来事・担当を替えれば解消するか・続けられる条件の3つ
  • 受ける条件と断る線を事前に書いておき、断るときは代替案を日付つきで出す
  • 仮の式場(年120組)では、受け方の改善による解約減が年72〜144万円。手間は年数万円にとどまる
  • 引き継ぎは決定事項と未決事項を分けて書き、二人に同じ説明を求めない

担当を替えるかどうかより、二人が言い出した後の数日をどう扱うかが、成約後の信頼を決めます。