来館・成約

式場の不在着信は誰がいつ折り返すか|見学中に取れない電話の決め方

土曜の午前、プランナー全員が見学の接客に入っています。事務所の電話が鳴ります。取る人はいません。9回鳴って切れました。着信履歴には、知らない携帯番号が1件残ります。

この1件を、誰が、いつ折り返すか。決めている式場は意外と少ないと思っています。僕が見聞きする範囲の話で、業界全体の統計ではありません。ただ、決めていない会場では「手が空いた人が気づいたら」折り返す運用になりがちで、その「気づいたら」が夕方になったり、翌日になったりします。

結論から書きます。見学中に取れなかった電話の折り返しは、速さそのものより先に、担当の名前と時間の枠を決めておくほうが効きます。誰の仕事でもない着信は、誰にも折り返されないからです。この記事では、仮の数字で折り返しの遅れが成約数にどれだけ響くかを確かめたうえで、担当の決め方と、留守電に入れる一言の中身まで整理します。

先に断っておく数字の扱い

この記事の数字は、着信数も、つながる確率も、成約率も、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均ではありません。折り返しが何分遅れたら何%つながりにくくなる、という調査を、僕は見つけられていません。だから出典のある数字としては書けず、「仮にこうだとすると」の計算にしています。

読み方としては、数字の大きさではなく、計算の組み立てを持ち帰ってください。自分の会場の着信ログに置き換えれば、同じ式で自社の数字が出ます。

取れなかった電話は、新規の問い合わせであることが多い

式場にかかってくる電話には、既存のお客様からの連絡と、新規の問い合わせがあります。契約済みのお客様は、担当プランナーの携帯やLINEに連絡することが多いので、事務所の代表番号に来る電話は、新規の問い合わせや来館予約の相談が中心になる会場が多いのではないでしょうか。これも僕の推測で、会場によって違います。まず自分の会場の着信履歴を1か月分見て、代表番号の電話のうち何割が初めての番号なのかを数えてみてください。

初めての番号で、見学の接客が重なる土日の昼に着信が集中しているなら、取れなかった電話は、取りこぼした新規客の候補そのものです。メールやフォームの問い合わせは記録が残りますが、不在着信は履歴の1行しか残りません。問い合わせの数を数えるときに、ここは抜け落ちやすい場所です。

電話をかけてくる人にも事情があります。電話を選ぶ人は、フォームを書く手間を避けたい人、すぐに確認したいことがある人、親世代の人のように、そもそも電話のほうが話しやすい人です。聞きたいことを持って、今まさに検討している状態でかけてきています。

折り返しの速さを、仮の数字で比べる

では、折り返しの速さの差を計算してみます。置いた前提は次のとおりです。

  • 代表番号への着信が月に120件
  • そのうち、見学の接客と重なって取れない着信が25%。つまり月30件
  • 折り返したときに相手が出てくれる確率は、15分以内なら60%、90分後なら45%、翌日なら25%とする
  • 電話がつながった人のうち、見学の予約に進む人が50%
  • 予約した人のうち、実際に来館する人が60%
  • 来館した人のうち、成約する人が35%

どれも仮です。つながる確率が時間とともに下がる、という方向だけは、自分の経験に照らして違和感のない人が多いと思います。仕事中にかけた電話は、昼休みなら出られても、午後の会議に入ると出られません。夜は食事や入浴で出られません。時間が過ぎるほど、相手の生活の別の場面に入ってしまいます。

この前提で計算すると、月30件の不在着信から出てくる成約は、次のようになります。

折り返しの速さ つながる件数 見学予約 来館 成約
15分以内 18件 9組 5.4組 約1.9組
90分後 13.5件 6.75組 4.05組 約1.4組
翌日 7.5件 3.75組 2.25組 約0.8組

15分以内に折り返せる会場と、翌日になる会場では、月に約1.1組の差が出ます。年にすると13組あまりです。1組の成約が持つ粗利は会場によって大きく違うので、金額には直しません。自分の会場の1組あたりの粗利を掛ければ、折り返しの遅れの年間コストが出ます。

この差は、広告費を増やして埋めようとすると高くつきます。すでにかかってきた電話は、広告費をかけずに手に入った接点だからです。ほかの経路から1組増やす費用と比べてみる価値はあると思います。

もう一つ見ておきたいのは、15分と90分の差は約0.5組、90分と翌日の差は約0.6組という点です。「すぐ」にこだわり続けるより、「翌日に回さない」を守るだけでも、差のおよそ半分は取り戻せます。人手の限られた会場は、まず翌日持ち越しをゼロにするところから始めてかまいません。

担当を決めないと、折り返しは起きない

折り返しが遅れる理由は、速さの問題より前に、担当がいないことにあります。

事務所に着信履歴が残る。見学が終わって戻ってきたプランナーが、履歴を見る。知らない番号だ。ほかの誰かが折り返しただろう、と思う。別のプランナーも同じことを考える。こうして、全員が「誰かがやっただろう」と思ったまま、夕方になります。

僕はこれを、折り返しの空白と呼んでいます。人が足りないから起きるのではありません。履歴を見た人が全員、自分の仕事だと思っていないから起きます。

対策は単純で、折り返しの担当を、人ではなく枠で決めることです。

曜日と時間帯で担当を固定する

たとえば、土日の接客が詰まる時間帯は、事務スタッフかフェアの受付担当に折り返しを持たせます。接客に入らない人が一人でもいれば、その人の仕事にします。接客に全員入る日は、接客の合間に5分取れる人を、前日のうちに決めておきます。

名前を決めるときのコツは、履歴を見る時間も決めてしまうことです。「30分おきに、着信履歴を確認する」まで決めておけば、折り返しが遅れても最大30分で止まります。

担当が休みの日の代わりも決める

担当を固定すると、その人が休んだ日に空白が戻ります。代わりの人を一人だけ決めておけば足ります。表にして事務所に貼っておくと、休みの日の判断で迷いません。

折り返したあとの記録を、1行だけ残す

折り返したら、時刻と結果を1行だけ書きます。「10:40 つながった、来週土曜14時で予約」「10:40 出ず、留守電なし」の程度です。これがないと、次の人がもう一度かけてしまい、相手に2回着信が残ります。同じ番号から短時間に2回かかってくると、営業電話のように見えてしまうので、気になります。

かけ直しても出ない人には、3回までの順番を決める

折り返しても出ない人は必ずいます。ここでの判断は、何回かけるかと、その間隔です。

僕の考えは、最初の折り返しで出なかったら、同じ日のうちに時間を変えてもう1回、翌日にもう1回、の合計3回までです。それ以上は、嫌がられる側に倒れると思っています。資料請求後の電話フォローについては、止める線を決めるときに「嫌がられる数」で判断する考え方があります。ここでも同じで、かけ直しを重ねるほど、相手が構えます。

2回目をいつにするか。最初に昼にかけて出なかったなら、2回目は夕方の退勤後の時間帯にずらします。昼と夜で生活が違うからです。3回目は、翌日の別の時間帯にします。曜日をまたぐなら、平日と休日で出やすい時間帯が変わります。

3回かけても出なければ、SMSやLINEで一度だけ連絡して終えます。電話番号しか知らない場合はSMSです。文面は短くします。式場名、折り返しの電話をした旨、見学の予約ページのURL、の3つです。長い文章は、読まれません。

留守電の一言で、折り返しの電話が減る

折り返しの前に、できることがあります。取れなかった電話に、留守電のメッセージを残してもらうことです。

留守番電話の案内を録音するなら、次の3点を入れます。

  • いま接客中で電話に出られないこと
  • 何時ごろまでに折り返すつもりか(たとえば、「30分以内に」「本日中に」)
  • 急ぎのときは、予約ページかLINEからも受け付けていること

何時ごろに折り返すかを先に言っておくと、かけてきた人は次の行動を決められます。「待っていればいい」と分かれば、他の式場に電話を切り替える動機が弱まります。逆に、案内がなく発信音だけだと、何も残さず切る人が多くなります。切った人の番号は履歴に残っても、用件が分かりません。

もう一つの効果は、折り返す側の手間が減ることです。用件が分かれば、折り返す前に空き状況を調べておけます。「見学を希望されている」と聞けば、候補日を2つ用意して電話をかけられます。つながった瞬間に話が進むので、通話は短くなります。

留守電を使わない会場もあります。機械的な応答を好まない会場の判断は分かります。その場合は、着信が切れる直前にSMSで自動返信を送る仕組みもあります。「ただいま接客中です。〇〇時までに折り返します」と、同じ内容を送るだけでも十分です。ただ、自動送信の設定は電話機やサービスによって違うので、自分の環境で使えるかを確かめてから決めてください。

折り返しの電話で、最初に言うこと

つながったあとの最初の一言も、決めておくと違います。折り返しの電話は、相手から見ると「知らない番号からの着信」か「自分が先にかけた先からの着信」のどちらかです。

出ないことが多いのは前者です。式場名の番号が、携帯の画面に出ているかどうかで、出るかどうかが変わります。携帯の連絡先に登録されていない番号は、そもそも出ない人がいます。

そこで最初の10秒で言うことを決めておきます。

  1. 式場名と自分の名前。「先ほどお電話をいただいた、〇〇の△△です」
  2. かけた理由。「接客中で出られなかったので、折り返しました」
  3. 相手の時間を確かめる一言。「いま2分ほどよろしいですか」

3つ目を入れる理由は、かけ直されることに慣れている人は少ないからです。仕事中に出た人は、長く話せません。2分でいいか、と聞かれれば、「今は無理」と言いやすくなります。「今は無理」と言われても、それは拒否ではなく、別の時間の約束を取るきっかけです。「では、19時ごろにまたかけ直しましょうか」と返せば、次の接点が約束になります。

数えるものは2つだけ

運用を始めたら、数えるものは2つに絞ります。

  1. 不在着信のうち、折り返しまでの時間の中央値。履歴を見る時間を決めたあとなら、30分以内に収まるはずです。収まらないなら、担当の枠が機能していません
  2. 折り返してつながった件数と、そのうち見学予約になった件数。ここが上の表の「つながる確率」と「見学予約率」に当たります

最初の1か月は、数字をきれいにそろえるより、記録の1行を残すことのほうが大事です。1か月分のログがあれば、この記事の仮の数字を、自分の会場の実数に置き換えられます。置き換えて、折り返しの遅れによる取りこぼしが月0.3組もないなら、この仕組みに時間をかけなくてかまいません。月1組を超えるなら、担当の枠を最優先で決めたほうがいいと思います。

まとめ

  • 見学の接客中に取れなかった代表番号の着信は、新規の問い合わせの候補が多い。まず1か月分の履歴で、初めての番号の割合を数える
  • 仮の前提(月30件の不在、つながる確率は15分で60%、90分で45%、翌日で25%)で計算すると、15分以内と翌日の差は月約1.1組になる。自社の実数に置き換えて使う
  • 折り返しが遅れる原因は、人手より担当不在の「折り返しの空白」。曜日と時間帯で枠を決め、履歴を見る間隔(30分おき)も決める
  • 出ない人には、時間帯を変えて同日1回、翌日1回の計3回まで。そのあとはSMSかLINEで一度だけ連絡して終える
  • 留守電には、接客中であること、折り返しの目安時間、予約ページの案内の3点を入れる
  • 折り返しの最初の10秒は、式場名、かけた理由、相手の時間の確認の順に決めておく
  • 数えるのは、折り返しまでの時間とつながった件数の2つだけ。取れなかった電話は、広告費をかけずにすでに手に入った接点