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掲載媒体を3か月止めても、問い合わせの減り方は読めない。月40万円の媒体の損益分岐は、月2.7件

掲載している媒体の効果が分からないとき、いちばん分かりやすい確かめ方は「いったん止めてみる」ことです。止めて問い合わせが減れば効いていた、減らなければ要らなかった。理屈としては単純です。

ただ、この確かめ方は、月の問い合わせが100件ちょっとの式場だと、ほとんどの場合うまく読めません。しかも読めないゾーンが、費用の判断がいちばん分かれるところと重なっています。この記事は、実在の式場や調査の数字ではなく、前提を置いた仮の式場で計算した話です。数字はすべて想定で、自分の会場の数字に置き換えて使う前提で読んでください。

仮の式場の前提

次の式場を考えます。

  • 月の問い合わせ:120件(媒体経由、公式サイト経由、紹介などの合計)
  • そのうち、媒体Aの経由と答えた人:70件
  • 問い合わせから来館:50%(60組)
  • 来館から成約:30%(18組)
  • 成約1組の粗利:100万円
  • 媒体Aの掲載費:月40万円

この数字は、先に出した成約率や粗利の記事と同じ仮の式場です。問い合わせ1件が最終的に生む粗利は、18組×100万円÷120件で15万円。これが以降の計算の基準になります。

止めても、70件は消えない

媒体Aの経由と答えた人が70件いるからといって、媒体Aを止めると70件が消えるわけではありません。

理由は、同じ人が複数の経路で式場に触れているからです。媒体Aで見つけた人が、その後に公式サイトを検索して、公式サイトのフォームから問い合わせることがあります。申込みの導線が違うだけで、媒体Aがなくても、別の媒体やSNS、検索で見つけて来た可能性がある人もいます。

そこで「Aを止めても、別の経路で来る割合」を代替率と呼び、rと書きます。Aを止めて減る問い合わせは、70件×(1−r)です。

  • r=0%(誰も代わりに来ない):70件減る
  • r=30%:49件減る
  • r=50%:35件減る
  • r=70%:21件減る
  • r=90%:7件減る

実際のrは分かりません。申告ベースの数字は、「いちばん最後に触れたところ」を答えている人が多いので、媒体Aの寄与を大きく見せる方向に偏りやすいと、僕は思っています。ただ、これは仕組みから言えるだけで、どのくらい偏るかは式場ごとに違います。

月40万円の損益分岐は、2.7件

ここで、媒体費を回収するのに要る増加件数を出します。

問い合わせ1件の粗利が15万円なので、掲載費40万円を回収するには、40÷15で月2.67件の問い合わせが、媒体Aのおかげで増えていれば足ります。

これをrに直すと、70件のうち2.67件だけが媒体Aの寄与なら元が取れる、ということです。rが96.2%、つまり問い合わせの96%は、媒体Aがなくても来ていた人でも、まだ損益はトントンです。

掲載費ごとに並べると、こうなります。

  • 月20万円:増加が月1.3件あれば回収(rが98.1%まで)
  • 月40万円:月2.7件(rが96.2%まで)
  • 月80万円:月5.3件(rが92.4%まで)
  • 月150万円:月10件(rが85.7%まで)

媒体費が月150万円でも、増加が月10件あれば回収できます。「申告された70件のうち、本当に増えた件数は何件か」という問いは、思ったより小さい数字で答えが変わります。

ここは仮の式場の数字なので、粗利が低い式場、成約率が低い式場では分岐が上がります。たとえば、増える問い合わせは、もともと来る問い合わせより成約率が低いかもしれません。その場合に備えて、増加分の価値を半分の7.5万円で見ると、月40万円の分岐は5.3件になります。それでも月5件ほどです。

止める実験で見分けられる差

では、媒体Aを止めて、減った件数を見れば分かるのか。偶然のぶれと比べて計算します。

問い合わせは、月120件という平均のまわりで、偶然だけでもばらつきます。件数が足し合わせに近い性質を持つと仮定すると(ポアソン分布と呼ばれる、まれな出来事の件数によく使われる近似です)、月120件のばらつき(標準偏差)は約11件です。

止める実験は、止める前の期間と止めた期間を比べます。2つの期間の差のばらつきは、1か月ずつなら約15.5件。3か月ずつなら約26.8件の差のばらつきが、月に直すと約8.9件になります。

偶然ではないと、ある程度の確からしさ(有意水準5%、検出力80%)で言えるのは、差がばらつきの約2.8倍あるときです。この基準で、見分けられる最小の減少を出すと、次のようになります。

  • 1か月止める:月43件以上の減少
  • 3か月止める:月25件以上の減少
  • 6か月止める:月18件以上の減少

3か月止めて、月25件減ったのなら、偶然ではないと言えます。しかし、月25件の減少が見えないとき、実際の減少は「0から25件のどこか」としか分かりません。

月40万円の損益分岐は2.7件でした。0から25件の中に、2.7件も、7件も、15件も入っています。つまり、止めて「減らなかった」という結果は、「要らなかった」とも「十分に効いていた」とも読めてしまうのです。

読めるのは、損益分岐が大きい媒体だけ

この食い違いは、掲載費で逆算できます。

3か月の実験で見分けられる最小の減少は月25件でした。25件の減少が損益分岐になるのは、掲載費が25×15万円=月375万円のときです。月375万円を超える媒体費なら、止めて「減らなかった」ことが、「元が取れていなかった」ことを意味します。

月40万円の媒体で同じ判断をしようとすると、実験が読めるのは「減ったときだけ」です。25件以上減れば、明らかに効いていたと言えます。減らなかったときは、何も言えません。

このとき、よくある失敗は「減らなかったから要らなかった」と読んでしまうことです。月7件減っていて、媒体費は月40万円に対して105万円の粗利を生んでいたのに、実験の結果は「差は見えず」。そのまま掲載をやめると、年に約1,260万円の粗利を手放すことになります(掲載費を引いても約780万円)。

逆の失敗もあります。止めたときに偶然、月30件減ると、「やはり効いていた」と思います。ところが、その月は季節や天気でたまたま減っただけだったかもしれません。偶然のぶれが±11件あるので、ありえる話です。

繁忙期や時期のずれも、実験を邪魔する

もう1つ、件数のぶれとは別の問題があります。

結婚式の問い合わせは、季節で大きく動きます。止めた期間が秋の繁忙期にあたり、比べる期間が夏だと、媒体を止めたかどうかと関係なく件数が変わります。前年同月と比べる方法もありますが、前年からの市場の変化や、自社の広告以外の変更も混ざります。

さらに、問い合わせから来館、成約までには時間がかかります。止めた月の問い合わせが減っても、成約の減少が見えるのは数か月先です。問い合わせの数字だけでは足りず成約まで待つなら、実験は半年を超えます。

こうなると、止める実験は「やってみればすぐ分かる」ものではありません。コストの大きい媒体で、時間をかけて、慎重に設計する実験です。

止めずに判断する3つの確認

では、月40万円規模の媒体は、どう判断すればいいのか。僕は、止める前に次の3つを見るのが先だと考えています。

1つ目は、問い合わせ時の聞き方です。「どこで知りましたか」だけでなく、「最初に知ったのはどこで、最終的に問い合わせを決めたのはどこでしたか」と2つに分けて聞きます。これで、媒体Aが「最初のきっかけ」になっている件数を別に出せます。最初のきっかけがAの人が、70件のうち何件か。この数字は、rの目安になります。

2つ目は、媒体Aの経由で来た人の、来館率と成約率です。媒体Aの経由だけ成約率が低いなら、1件あたりの価値は15万円より低くなり、損益分岐は上がります。逆に高いなら下がります。この比較は、止めなくても、過去の記録から出せます。

3つ目は、掲載費の一部だけを動かす方法です。全部を止めるのではなく、上位プランから下位プランに落とす、掲載する地域を絞る、といった形です。媒体費が半分になれば、損益分岐も半分の件数になりますが、実験で検出できる差は変わりません。そのため、これは「効果を測る」手段ではなく、「リスクを下げながら費用を減らす」手段です。

2社の媒体を同時に動かさない

複数の媒体を持っている式場は、実験の設計に気をつけてください。

AとBを同時に止めると、減った件数がどちらの影響か分かりません。1つずつ順番に止めるなら、止める順番による季節の影響が混ざります。

実験をするなら、次の条件をそろえたほうが読みやすくなります。

  • 1回に動かす媒体は1つだけにする
  • 実験前に「何件以上減ったら続ける」を決めておく
  • 同時に、公式サイトや他の媒体の施策を変えない
  • 期間は、少なくとも3か月以上にする

「何件以上減ったら続ける」は、損益分岐の件数で決めるのが筋です。ただ、先ほどの計算のとおり、損益分岐が実験で見分けられる差より小さいことが多いので、「減らなかったら止める」と決めてしまうと、損をする判断に寄ります。

損益分岐が小さい媒体は、残す判断が基本になる

少し乱暴にまとめると、掲載費が月375万円を下回る媒体は、止める実験で元が取れているかを確かめることができません。

その場合の現実的な判断は、次のとおりです。

  • 損益分岐の件数が、問い合わせ全体のごく一部(今回の例では月2.7件、全体の2%強)なら、残す判断が基本になる
  • 残す判断をするなら、1件あたりの価値(成約率と粗利)を、媒体別に見える形にしておく
  • 掲載費を減らす余地があるなら、プランの見直しから始める

この結論は、仮の式場の数字から出したもので、どの式場にも当てはまるわけではありません。問い合わせが月500件ある式場なら、ばらつきの幅は変わり、実験で見える差の大きさも変わります。月1,000万円の媒体費を払っているなら、止める実験が意味を持ちます。

大事なのは、自分の式場の損益分岐の件数と、実験で見える最小の差を、先に並べて見ておくことです。その2つの数字の大小で、実験が役に立つかが決まります。

まとめ

  • 問い合わせ1件が生む粗利が15万円の式場では、月40万円の媒体は、増える問い合わせが月2.7件あれば元が取れる
  • 申告された70件のうち、96%が媒体なしでも来る人でも、損益はトントンになる
  • 月120件規模の式場が3か月止めて見分けられるのは、月25件以上の減少から。それ未満の減少は、偶然と区別がつかない
  • 「止めて減らなかったから要らない」は、月375万円を超える媒体費でないと成り立たない
  • 季節と、問い合わせから成約までの遅れが、実験の読みをさらに難しくする
  • 止める前に、最初のきっかけの聞き取り、媒体別の成約率、プランの見直しを先に見る