InstagramのDMで届く見学相談は、返信を翌日に回すと仮の式場で年9組が消える。1件20分かけても、元が取れないのは成約率0.7%を切るときだけだ
Instagramの公式アカウントに、見学の相談がDMで届くようになった。このとき誰がいつ返すのか、という話を書きます。投稿の運用費はよく議論されますが、届いたDMの返信にかかる時間と、返信が遅れたときの損失はあまり数えられていないと思います。
結論から書きます。前提を置いた仮の計算では、DMへの個別返信は1件あたり20分かけても、期待できる粗利のほうが90倍以上大きくなります。逆に、返信を翌日に回すと年9組の契約が消えます。論点は「手間をかけるか」ではなく、「いつ返すか」と「土日に誰が返すか」です。
先に断っておくと、この記事に出典はありません。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の実績ではありません。DMの件数も、予約につながる割合も、会場ごとにまったく違います。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
仮の式場の前提
計算に使う前提を並べます。
- Instagramの公式アカウントに届く見学相談のDMは月40件
- 個別に返信するときの手間は、やりとり全体で1件20分。担当者の時間は1時間2,500円と置く
- DMの相手のうち、見学の予約まで進むのは、当日中に個別返信したときで30%
- 予約した二人のうち、実際に来館するのは70%
- 来館した二人のうち、契約するのは35%
- 契約1組あたりの粗利は105万円(売上350万円、粗利率30%)
予約までの割合の30%は、僕の仮定です。DMで相談してくる二人は、すでに会場に関心があって、質問したいことがはっきりしている人たちです。ですから、フェアの申込フォームに入ってくる人より、予約に進む割合は高いと考えるのが自然です。ただし、どこまで高いかは分かりません。後で数字を変えて確かめます。
返し方を4通りに分ける
返信の仕方を、次の4つに分けて比べます。
- A:当日中に担当者が個別に返す。予約までの割合は30%
- B:自動返信で予約フォームのリンクを送るだけ。手間はほぼゼロで、1件2分と置く。DMの相手が、フォームの入力まで進まずに離れるので、予約までの割合は15%と置く
- C:担当者が個別に返すが、返信は翌日になる。待っている間に他の会場を見る二人が出るので、予約までの割合は22%と置く
- D:1日2回、決めた時刻(昼と夜)にまとめて個別返信する。最大で半日待たせる代わりに、担当者の手が空く時間に回せる。予約までの割合は27%と置く
BとCとDの割合も仮定です。大事なのは、Aが最も高く、次にD、C、Bの順に落ちていく、という並びのほうです。
4通りの計算
年間にすると、次のようになります(月40件を12か月、小数は四捨五入)。
| 返し方 | 予約 | 来館 | 契約 | 粗利 | 手間(人件費) |
|---|---|---|---|---|---|
| A 当日個別 | 月12.0組 | 月8.4組 | 年35.3組 | 年3,704万円 | 年40万円 |
| D 1日2回 | 月10.8組 | 月7.6組 | 年31.8組 | 年3,334万円 | 年40万円 |
| C 翌日個別 | 月8.8組 | 月6.2組 | 年25.9組 | 年2,717万円 | 年40万円 |
| B 自動返信のみ | 月6.0組 | 月4.2組 | 年17.6組 | 年1,852万円 | 年4万円 |
人件費は、Aの場合で月40件×20分=13.3時間、年40万円です。Bは月40件×2分で、年4万円。その差は年36万円です。
一方、AとBの契約の差は年17.6組、粗利にして1,852万円です。人件費の差36万円と比べると、手間の話ではなくなります。DMを個別に返すかどうかを「人手が足りないから自動返信で」と決めると、年1,800万円分のものを人手の節約で手放すことになります。ここはどんな会場でも、まず個別返信から始めるのが筋だと考えています。
1件あたりに直すと
月の合計では実感が湧かないので、DM1件あたりに直します。
Aで個別に返信した1件が生む粗利の期待値は、0.30(予約)×0.70(来館)×0.35(契約)×105万円=約7.7万円です。かける手間は20分、2,500円で計算して833円です。90倍以上の差になります。
この差を使って、手間の側から見た損益分岐も出しておきます。個別返信が自動返信より元を取るために必要な、予約までの割合の差は、月40件のとき0.29ポイントです。AとBの差を15ポイントと仮定しましたが、それが0.3ポイントまで縮んでも、個別返信のほうが得です。
契約率の側から見ても同じです。AとBの差が15ポイント開いているなら、来館した二人の契約率が0.7%でも、個別返信は人件費を回収します。つまり「手間をかける価値があるか」を議論する余地は、実はほとんどありません。個別返信は、数字の上では、やる前提で設計するものです。
本当の論点は、返信を待たせる時間
では、何を決めるのか。返信のタイミングです。
AとCの差は、年9.4組、粗利にして987万円です。同じ担当者が、同じ20分をかけて返しているのに、返信が翌日になるだけでこれだけ開きます。DMは、LINEや電話よりも今すぐ聞きたいという気持ちで送る人が多い連絡手段だと思います。その場で答えが返ってこないと、別の会場のアカウントにも同じ質問を送る二人が出ても不思議ではありません(これは構造としての推論で、割合を示す調査があるわけではありません)。
Dの1日2回返信は、AとCの中間です。年31.8組で、Aより3.5組少なく、Cより5.8組多くなります。担当者が接客中でも対応できるという意味で、現場の現実に合わせた形です。毎回すぐ返す体制が作れない会場は、まずDを標準にして、Aに近づけていく順番が無理がありません。
土日のDMは誰が返すのか
仕組みの上で、いちばん抜けやすいのが土日です。
式場の担当者は、土日が接客で最も忙しい。ところが、二人が式場のことを調べるのも、土日の夜や休日が中心になるはずです。DMも同じで、土日に届く割合が高いと考えるのが自然です。
仮に、月40件のうち4割の16件が土日に届くとします。この16件が月曜の返信になって、予約までの割合が30%から22%に落ちると、次のようになります。
- 失う予約:16件×8ポイント=月1.28組
- 失う契約:1.28組×0.70×0.35=月0.31組、年3.76組
- 失う粗利:年3.76組×105万円=約395万円
これに対して、土日の返信を担当する時間を、月8時間(土日の夜に30分ずつ、4週)手当として確保したとします。8時間×2,500円×12か月で、年24万円です。失う粗利395万円は、その16倍です。
もちろん、土日に返信するために誰かを待機させるのは、現場の負担です。ここは、金額よりも、人の運用の問題です。ただ、損益の上では、休日対応の手当を出す理由は十分にあります。出さずに放っておくと、見えない損失として年400万円が静かに失われます。
1日2回の枠を決めるときの現実
Dの形をとるなら、時刻と担当を先に決めておきます。決めておかないと、誰かが返すだろうで、結局誰も返さない日が出ます。
- 返信の時刻を2つ決める。例として、昼の休憩の後と、夜の閉店後
- 担当者を固定し、休みの日の代理も決める
- 返信は、定型文をそのまま貼らない。ただし、返信に入れる項目は決めておく。見学の候補日を2つ出す、予約フォームのリンク、所要時間の目安の3つ
- 受け取ったDMは、LINEや予約フォームに載せ替えて、そこで予約を取る流れにする
最後の項目は、見落としやすい点です。DMのやりとりは、後から検索したり、担当を引き継いだりしにくい。予約が決まった時点で、予約システムに移すと、見学当日に何を聞かれていたかを担当者が引き継げます。DMの中だけで完結させると、見学当日にDMで聞いたはずなのにという行き違いが起きます。
自動返信は、使い方を変えれば強い
Bの自動返信は、ここまで弱く見えますが、使い方によっては有効です。個別返信の代わりにすると弱く、個別返信の前に置くと強い、というのが僕の考えです。
たとえば、DMが届いた直後に、次のような自動返信を送ります。
- 受け付けたこと
- 通常は何時間以内に担当者が返信するか(例:本日の20時まで)
- 急ぐ場合の予約フォームのリンク
こうすると、返信までの待ち時間を二人が見通せます。待たされることが分かっていれば、他の会場へ流れる割合は、何も返ってこない場合より低くなるはずです。予約までの割合が仮にCの22%から25%に上がるなら、翌日個別返信でも年3.5組、粗利にして約370万円の差が出ます(40件×3ポイント×0.70×0.35×12か月×105万円で計算)。この3ポイントも仮定ですが、自動返信の1通は、設定に30分かかるだけです。
つまり、自動返信は個別返信をやめるために使うのではなく、個別返信が遅れる間をつなぐために使うものです。
件数が増えたときの上限
ここまでは月40件で考えました。件数が増えると、Aの当日個別返信は、人手の上限にぶつかります。
月200件に増えると、20分×200件=66.7時間。1人の月の労働時間を160時間とすると、4割強をDMの返信が占める計算です。このあたりが、個別返信の上限だと見ておきます。ここまで増えたら、返信の内容を分けます。
- 日程や空き状況など、答えが決まっているものは、定型文と予約フォームで返す
- 料金や演出など、会場ごとの相談が要るものは、個別に返す
分け方の線は、「返信に判断が入るかどうか」です。判断が入らない返信を自動化して、判断が入る返信に人の時間を使います。これは、件数が増えたときの話で、月40件の段階では、全件を個別に返したほうが得です。
DMの返信で、避けておくこと
数字に出ないものも、書いておきます。
- 料金の見積もりを、DMで確定させない。条件によって総額が変わる会場は、DMで出した金額が約束と受け取られます。目安の範囲を示して、正式な見積もりは見学の場で出す、と決めておく
- 個人情報の聞き方を決める。DMで氏名や電話番号を聞くなら、予約フォームに移ってから入力してもらう。DMの履歴に個人情報が溜まっていくのは、管理の面で避けたい
- 他社の名前が出てきても、比較で返さない。「他の会場と迷っています」と言われたら、他社を下げるのではなく、その会場の見学で確かめられることを示す
特に最初の、見積もりの扱いは、あとから困りやすい点です。DMは記録が残るので、担当者が替わっても、誰かが読み返せます。そこに根拠のない金額が書いてあると、見学の場で食い違います。
数字を変えて確かめる
最後に、前提を動かしても結論が変わらないかを確かめます。
- 月のDMが10件でも、Aの当日個別返信は、Bの自動返信より年4.4組多く契約が取れます(予約までの差が15ポイントのとき)
- 予約までの割合の差が5ポイントに縮んでも、月40件ならAのほうが、年5.9組多い
- 来館した二人の契約率が20%に落ちても、A-Cの差は年5.4組残る
- 担当者の時給が5,000円でも、Aの人件費は年80万円で、AとBの契約の差の粗利1,852万円には届かない
どの前提を動かしても、「個別に、早く返す」が上回ります。数字が逆転するのは、DMがほとんど来ない会場か、DM経由の来館が他の入口とほぼ同じ人たち(すでに予約済みの二人など)の場合です。その場合は、返信の速さを上げるより、DMの窓口を縮めるほうが筋が通ります。
計測のしかた
自分の会場で確かめるには、最低限これを数えます。
- 月に届いた見学相談のDMの件数
- そのうち、予約フォームやLINEまで進んだ件数
- 返信までにかかった時間(当日中、翌日、それ以降)
返信までの時間ごとに、予約まで進んだ割合を並べるだけで、この記事の仮定が自分の会場でどうなっているかが分かります。3か月分あれば、傾向は見えるはずです。件数が少ない会場は、半年分をまとめて見ます。
まとめ
- DMの個別返信は、1件20分かけても、仮の式場では期待粗利のほうが90倍以上大きい。手間をかけるかどうかは、論点にならない
- 論点は返信のタイミング。同じ担当者が同じ手間をかけても、翌日にまわすと仮の式場で年9組、粗利にして約990万円が消える
- 土日に届くDMを月曜に回すと、年395万円が見えないまま失われる。土日の返信手当は年24万円で足りる
- 毎回すぐ返せない会場は、1日2回の固定時刻で返すところから始める。時刻と担当を先に決めておく
- 自動返信は個別返信の代わりではなく、遅れる間をつなぐために使う
- 件数が月200件近くまで増えたら、判断が入らない返信から自動化する
- 見積もりをDMで確定させない。個人情報は予約フォームに移ってから聞く
