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遠方ゲスト向けに提携ホテルの客室を押さえると、仮の式場では売れ残り6%で紹介料が消える。決めるのは客室の数より、取り消せる期限だ

遠方から来るゲストのために、会場の近くのホテルの客室をまとめて押さえておく。二人にとっては助かる話ですし、式場にとっても「宿泊まで面倒を見てくれる会場」という見せ方ができます。ただ、この仕組みには、式場が売れ残りの客室を抱える入口が空いています。

結論から書くと、仮の式場で計算した場合、ホテルから受け取る紹介料は年17.3万円です。一方、押さえた客室が売れ残って式場の負担になると、最大で年115万円が出ていきます。売れ残りが押さえた客室の6%を超えた時点で、紹介料は消えます。

この記事の数字は、すべて僕が置いた前提による計算です。実在の式場やホテルの実績ではありません。自社の数字に置き換えて使ってください。

客室を押さえる、とはどういう契約か

ホテル業界で「ルームブロック」と呼ばれる仕組みです。ある日の客室を、まとまった数だけ、決まった条件で先に押さえておきます。結婚式では、挙式日の前日の夜に、遠方ゲストが泊まる客室を式場がホテルに頼んで確保する形が考えられます。

契約の形は、大きく3つに分かれます。

  • 案内だけ:式場はホテルの名前と連絡先を二人に伝えるだけ。客室は二人やゲストがホテルに直接予約する。式場に責任も収入もない
  • 期限つきで押さえる:式場がホテルに客室を押さえてもらい、期限までに使う数が決まらなければ、無料で手放せる。期限を過ぎた分だけ、式場が費用を持つ
  • 買い取る:押さえた客室は、使われなくても式場が代金を払う。そのかわり、押さえる数が多くても、ホテルからの条件はよくなりやすい

どの形にするかで、式場が抱えるリスクがまったく変わります。以下、この3つを同じ式場で比べます。

仮の式場の前提

次の前提を置きます。

  • 年間の挙式は120組
  • 遠方から宿泊するゲストがいる組は、そのうち40%の48組
  • 宿泊の客室は1組あたり平均3室、1泊
  • 客室の料金は1泊1室12,000円
  • ホテルが式場に払う紹介料は、実際に泊まった分の10%
  • 式場の粗利は1組140万円

ここで使う12,000円や10%は、僕が置いた数字です。ホテルの料金は地域や曜日で大きく違いますし、紹介料の有無も、ホテルとの付き合いしだいです。

48組が平均3室を使うので、年に泊まる客室は144室です。紹介料は、144室×12,000円×10%で、年172,800円になります。年17.3万円。これが、客室を押さえる側の式場が受け取りうる収入の上限です。

120組のうち40%が宿泊ありという割合も仮の値です。地方の式場で遠方ゲストが少なければ、もっと小さくなります。

売れ残りが出る理由

では、売れ残りはなぜ出るのでしょうか。

押さえる数は、挙式の何か月も前に決めます。このとき、二人はまだゲストの出欠を集めていません。出欠が固まるのは、招待状の返信が戻ってからで、挙式の1〜2か月前です。さらに、返信で「出席」と答えたゲストが、実際に宿泊の手配をホテルに頼むかどうかは、また別の話です。親戚の家に泊まる人も、日帰りにする人も、自分でホテルを探す人もいます。

つまり、押さえる時点の人数は、ほとんどが見込みです。見込みが外れたとき、足りなければ他のホテルを案内すれば済みます。余ったときは、客室が残ります。

式場は、足りなくなる不安のほうを大きく感じやすく、少し多めに押さえがちです。仮の式場で、実際に使われるのは平均3室なのに、安全のために5室押さえると仮定します。

  • 押さえた客室:48組×5室=240室
  • 使われる客室:48組×3室=144室
  • 売れ残り:240室-144室=96室

売れ残り96室は、押さえた240室の40%です。

3つの契約形態を、同じ式場で比べる

案内だけ

式場の収入も、リスクもゼロです。二人の手間は、ホテルを自分で探して自分で予約する分だけ残ります。

期限つきで押さえる

期限までに手放せば、費用はかかりません。期限を過ぎて残った客室だけが、式場の負担になります。

仮に、押さえた客室のうち、期限の前に手放せるのは半分、期限を過ぎて残るのが半分だとします。売れ残り96室のうち48室が期限を過ぎて残る計算で、その分の支払いが、客室料金の半額(ホテルが別の客に売れる可能性を見込んだ値)だとします。

48室×12,000円×50%=28.8万円。

紹介料17.3万円を引くと、差し引き11.5万円の赤字です。粗利140万円の成約0.08組分にあたります。

買い取る

売れ残り96室の全額を、式場が払う場合です。

96室×12,000円=115.2万円。

紹介料17.3万円を引いても、97.9万円の赤字です。粗利140万円で割ると、成約0.7組分にあたります。年に0.7組の成約を、この仕組みだけで取り戻せるかどうか、が損益分岐になります。

契約の形 紹介料 売れ残りの負担 差し引き
案内だけ 0円 0円 0円
期限つき(残り半分が期限後) 17.3万円 28.8万円 -11.5万円
買い取る 17.3万円 115.2万円 -97.9万円

同じ客室を押さえるのに、結果はこれだけ違います。

6%という線の意味

紹介料17.3万円は、客室の数にすると何室ぶんの売れ残りで消えるのでしょうか。

17.28万円÷12,000円=14.4室。押さえた240室に対して、6%です。

売れ残りが全体の6%に収まれば、買い取りの契約でも、紹介料のほうが大きくなります。6%を超えると赤字です。

先ほどの前提では、売れ残りは40%でした。6%に収めようとすると、押さえる数を、実際に使われる数にかなり近づけなければなりません。使われる数は平均3室ですが、組によって1室の組も5室の組もあります。平均に合わせて押さえれば、足りない組と余る組が半々で出ます。余る組の分だけが売れ残りとして残る、というのが買い取りの怖いところです。

足りない組の分は、他のホテルを案内して補えますが、余る組の分は、買い取りだと戻ってきません。

取り消せる期限が、損益を決める

押さえる数をいくら調整しても、売れ残りの比率を6%に抑えるのは、買い取りでは難しいと僕は考えています。仕組みとして、見込みの誤差が必ず片側に残るからです。

調整が効くのは、押さえる数よりも、取り消せる期限のほうです。

  • 期限が挙式の60日前:二人の出欠がまだ固まっていない。見込みの誤差がそのまま売れ残りになる
  • 期限が挙式の30日前:招待状の返信が戻り始めている時期。誤差はかなり減る
  • 期限が挙式の14日前:出欠も宿泊の希望もほぼ固まっている。売れ残りはほとんど出ない

ホテル側から見ると、直前に手放された客室は他の客に売りにくいので、期限は長く取りたくありません。ここが交渉の場所です。

期限を30日前にできれば、先ほどの「期限つき」の計算で、期限後に残る分は半分よりずっと小さくなると考えられます。たとえば期限後に残るのが売れ残りの1割(約10室)まで減れば、支払いは10室×12,000円×50%=6万円です。紹介料17.3万円のほうが大きく、年11.3万円の黒字になります。

つまり、同じ紹介料でも、期限の交渉しだいで、赤字にも黒字にもなります。

契約の前に、ホテルに聞くこと

僕なら、次の点を契約前に確かめます。

  • 取り消しを無料で受けてくれる期限は、挙式の何日前か
  • 期限の後に残った客室は、ホテルが別の客に売れた場合、式場への請求から引いてもらえるか
  • 紹介料は、実際に泊まった客室に対してか、押さえた客室に対してか
  • 押さえる客室の数は、挙式ごとに決めるのか、年間でまとめて決めるのか
  • 挙式の日が変わったとき、押さえた客室の日付も変えられるか

最後の点は見落としやすいところです。式場の挙式日は、二人の都合で変わることがあります。客室だけが元の日付で残ると、その分が売れ残りになります。

二人にとって、客室を押さえてもらうことの価値

ここまで、式場の損益だけを見てきました。二人の側から見ると、どうでしょうか。

遠方のゲストが宿泊を伴う場合、二人は、自分が呼んだ人のホテルの手配まで気にかけたくなります。式場が客室を押さえていれば、「予約はここに連絡してください」と、招待状に1行書けます。ゲストが各自でホテルを探す手間と、日取りが重なる土日の満室を避けられる安心は、二人にとって大きいはずです。

ただ、僕はこの効果を数字で示せません。客室を押さえる式場とそうでない式場で、成約率にどれだけ差が出るかを示す調査を、僕は見つけていません。数字があるふりをしても仕方がないので、ここは損益分岐の逆算に使います。

買い取りの契約で、売れ残りが96室なら、成約0.7組の上積みが要ります。年120組の式場にとって、0.7組は成約率で0.6ポイントの差にあたります。見学が年300組なら、成約率が40%から40.2%に動く程度です。月次の成約率は数ポイント揺れるのが普通ですから、この差が出たかどうかは、数字から読めません。

つまり、買い取りを選ぶ場合、効果があったかどうかを後から確かめる方法がありません。確かめられないリスクは、取らないほうが堅いと考えています。

先に作るなら、案内の資料

客室を押さえなくても、宿泊の悩みに応える方法はあります。

  • 会場から徒歩や送迎でいける範囲のホテルを、料金帯別に3〜4軒、一覧にしておく
  • 二人が招待状に同封できる、ホテルの案内カードを用意する
  • 提携ホテルがあるなら、「結婚式の宿泊」と伝えれば団体料金になることを、先に確認しておく

これは、費用がほとんどかからず、売れ残りも出ません。そのうえで、特定の日(繁忙期の土曜など)にホテルが埋まりやすい地域なら、その日だけ期限つきで押さえる、という使い方が考えられます。

まとめ

  • 遠方ゲストの宿泊のために客室を押さえる契約は、紹介料の収入より、売れ残りの負担のほうが大きくなりやすい
  • 年120組、宿泊ありが48組、1組3室の仮の式場では、紹介料は年17.3万円。5室ずつ押さえて買い取ると、売れ残りは96室、最大115.2万円の負担になる
  • 売れ残りが押さえた客室の6%を超えると、紹介料は消える。買い取りで6%に収めるのは、出欠が固まる前に数を決める以上、難しい
  • 損益を分けるのは、押さえる数より取り消せる期限。30日前まで手放せれば、期限後の売れ残りが1割でも年11.3万円の黒字になる
  • 効果(成約率への上積み)は後から数字で確かめにくい。買い取りは避け、案内資料から始めるのが堅い