北海道の会費制は7年で会費が上がり、会費の総額は4割減った
会費制の結婚式というと、「ご祝儀制より安く済むから選ばれている形式」と説明されることが多いです。式場側から見ると、客単価が下がる方式にも見えます。
この見方は、データを並べると半分しか合っていません。リクルートブライダル総研の「ゼクシィ結婚トレンド調査」の北海道版を、2018年から2024年まで7年分並べてみました。1人あたりの会費は上がっています。それなのに、集まる会費の総額は4割以上減っています。
動いたのは単価ではなく、人数です。今回はこの数字を分解して、会費制のエリアで式場の売上と新郎新婦の負担がどう変わったのかを書きます。
会費制がほぼ標準のエリア
まず前提です。会費制は全国でみると少数派です。ゼクシィ結婚トレンド調査2024で、披露宴・ウエディングパーティーの形式を聞いた結果は次のとおりでした。
- 全国(推計値):ご祝儀制89.6%、会費制5.1%
- 北海道(n=224):ご祝儀制10.7%、会費制81.7%
- 青森・秋田・岩手(n=192):ご祝儀制68.2%、会費制21.9%
- 首都圏(n=394):ご祝儀制91.9%、会費制2.0%
- 九州(n=274):ご祝儀制97.8%、会費制0.4%
全国の5.1%という数字は、ほとんどが北海道と東北の一部で作られています。北海道は会費制が普通の地域で、ご祝儀制のほうが例外です。
ここで注意したいのが、同じリクルートの「結婚マーケット調査2025」です。この調査では、披露宴・ウエディングパーティーを実施した人の形式は、ご祝儀制72.9%、会費制15.7%、両方を取り入れた人9.6%でした。会費制の割合が3倍近くに見えますが、これを「会費制が増えた」と読むのは危険です。
調査の対象が変わっているからです。2024年版までは『ゼクシィ』読者とネット会員で挙式か披露宴を実施した人(回答者は妻)が対象でした。2025年版は、全国の20〜49歳で、挙式、披露宴・ウエディングパーティー、結婚を機とした食事会のどれかを実施した人に広げています。サンプルの作り方が違う2つの数字を、同じ線の上に置くことはできません。
言えるのはここまでです。ゼクシィ会員という枠を外して見ると、会費制は1割台半ばまで出てくる。ただし年齢別では差が大きく、35〜39歳は4.3%(n=82)、25〜34歳は約2割でした。若い層ほど会費制が多いという傾向は、結婚マーケット調査の側でも出ています。
この記事では、時系列で同じ条件のまま追える北海道のデータ(ゼクシィ結婚トレンド調査)を使います。2018年から2024年まで、同じ調査設計で7回分が公開されているからです。
北海道の会費制は、7年間ほぼ動いていない
形式の比率から見ます。北海道で披露宴・ウエディングパーティーを実施した人のうち、会費制だった割合の推移です。
| 調査年 | 会費制 | ご祝儀制 | n |
|---|---|---|---|
| 2018年 | 83.9% | 6.9% | 274 |
| 2019年 | 81.9% | 8.7% | 299 |
| 2020年 | 79.0% | 10.3% | 281 |
| 2021年 | 76.1% | 13.5% | 163 |
| 2022年 | 77.6% | 10.9% | 201 |
| 2023年 | 77.5% | 10.0% | 209 |
| 2024年 | 81.7% | 10.7% | 224 |
2021年に76.1%まで下がったあと、2024年に81.7%まで戻しています。ただ、7年を通して76〜84%の範囲に収まっていて、会費制が北海道の標準であることは変わっていません。
会場の種類でみると、2024年はハウスウエディング(ゲストハウス)が93.8%(n=16)、レストランが88.5%(n=26)、一般の結婚式場が83.8%(n=117)、ホテルが75.6%(n=41)でした。ホテルだけはご祝儀制が22.0%あります。n が小さい区分もあるので細かい差は追わず、ホテルは少し違う、とだけ受け取るのがよさそうです。
エリアでは、札幌市が83.4%、札幌市以外が78.5%。年齢別では、24歳以下が93.9%(n=33)、25〜29歳が83.7%、30〜34歳が82.6%、35歳以上が47.4%(n=19)です。35歳以上は19人しかいないので傾向止まりですが、若いカップルほど会費制に寄るのは確かでしょう。
形式は動いていない。では何が動いたのか。会費の金額と人数です。
1人あたりの会費は、じわじわ上がっている
会費制の披露宴・ウエディングパーティーを実施した人に聞いた、ゲスト1人あたりの会費(平均)です。北海道、2018年から2024年まで。
| 調査年 | 1人あたり会費(平均) |
|---|---|
| 2018年 | 1.6万円 |
| 2019年 | 1.7万円 |
| 2020年 | 1.7万円 |
| 2021年 | 1.7万円 |
| 2022年 | 1.7万円 |
| 2023年 | 1.8万円 |
| 2024年 | 1.9万円 |
7年で約3,000円の上昇です。ゼクシィの調査は平均を「万円」の小数第1位で出しているので、実際の差は2,500〜3,500円の幅で見ておくのが安全です。
分布を見ると、変化はもっとはっきりします。会費が「2万円以上」と答えた人の割合は、2018年が1.9%でした。2020年は1.4%。それが2023年に13.5%、2024年には46.2%になっています。2018年に最も多かったのは「1万7千円〜1万8千円未満」の40.0%、2019年は同じ帯が48.3%でした。2022年は「1万8千円台」が51.4%で最多です。それが2024年は2万円以上が46.2%で最多になり、1万8千円台は21.6%まで縮んでいます。
会費の相場は、1万7千〜8千円台の山から、2万円以上の山へ移りました。お祝いごとの相場が動く速さとしては、かなり速いです。
全国(推計値)の会費制でみても、2024年の1人あたり会費は平均1.8万円で、2万円以上が47.7%でした。北海道だけの動きではなく、会費制全体が2万円のラインに寄っています。
ちなみに、ゼクシィの記事では結婚マーケット調査2025をもとに、会費の平均額を2万1,000円と紹介しています。新しい対象でも、2万円前後という水準は変わりません。
それでも会費の総額は4割減っている
ここからが本題です。会費制の披露宴を実施した人に聞いた、会費の総額(ゲストから集まった会費の合計、平均)です。
| 調査年 | 会費総額(平均) |
|---|---|
| 2018年 | 158.5万円 |
| 2019年 | 120.5万円 |
| 2020年 | 120.2万円 |
| 2021年 | 73.0万円 |
| 2022年 | 69.3万円 |
| 2023年 | 85.8万円 |
| 2024年 | 90.2万円 |
2018年の158.5万円から2024年の90.2万円まで、68.3万円の減少です。割合で言うと約43%減。1人あたりの会費が上がっているのに、総額がここまで減っているのは、掛け算の相手が小さくなったからです。
その相手が、招待客の人数です。北海道の披露宴・ウエディングパーティー招待客人数の平均は次のとおりでした。
| 調査年 | 招待客人数(平均) |
|---|---|
| 2018年 | 78.8人 |
| 2019年 | 67.1人 |
| 2020年 | 69.7人 |
| 2021年 | 43.8人 |
| 2022年 | 40.9人 |
| 2023年 | 45.6人 |
| 2024年 | 50.5人 |
2018年の78.8人から2024年の50.5人へ。28.3人、約36%の減少です。底は2022年の40.9人で、そこから2年かけて10人ほど戻しています。
会費と人数を掛けて、総額と合うか確かめておきます。2024年は1.9万円×50.5人で約95.9万円。調査の会費総額は90.2万円です。2022年は1.7万円×40.9人で約69.5万円に対し、調査は69.3万円で、ほぼ一致します。2018年だけは計算が126.1万円で、調査の158.5万円とは開きがあります。この年は会費制で人数の多い層に偏った回答だった可能性がありますが、原因まではデータからは分かりません。傾向としては、会費の総額を動かしているのは会費の単価ではなく人数、という読みで外れていません。
つまり北海道の会費制は、単価が下がったのではなく、1人あたりの会費が上がりつつ、呼ぶ人数が3分の2ほどになった形式です。客層の拡大か単価下落かで言えば、どちらでもありません。人数の縮小です。
総額は上がり、自己負担が増えている
会費の総額が減ると、新郎新婦の財布はどうなるのか。ここが式場の経営に関わってきます。
北海道で、挙式、披露宴・ウエディングパーティーにかかった総額(平均)は次のように動いています。
| 調査年 | 挙式、披露宴・ウエディングパーティー総額 |
|---|---|
| 2018年 | 194.6万円 |
| 2019年 | 200.2万円 |
| 2020年 | 203.8万円 |
| 2021年 | 172.0万円 |
| 2022年 | 188.3万円 |
| 2023年 | 203.1万円 |
| 2024年 | 221.5万円 |
2018年比で約27万円、14%の増加です。ゲストが減っているのに、総額は増えています。全国の2024年版は343.9万円なので、北海道が安いことに変わりはありません。ただ、北海道の中だけで見ると、式場の売上にあたる額は上がっています。
総額が上がって、会費総額が下がる。差額は新郎新婦が負担します。会費制の披露宴を実施した人の「会費以外の負担額」(平均)です。
| 調査年 | 会費以外の負担額 |
|---|---|
| 2018年 | 115.9万円 |
| 2019年 | 120.5万円 |
| 2020年 | 124.4万円 |
| 2021年 | 125.0万円 |
| 2022年 | 135.4万円 |
| 2023年 | 143.6万円 |
| 2024年 | 141.4万円 |
7年で25.5万円増えています。会費制は、ゲストの会費でおおむね賄える式、というイメージで語られがちですが、2024年の北海道では、会費でまかなえた(負担額0円)と答えた人は4.6%しかいません。会費以外の負担額が「210万円以上」の人が15.8%、「180〜210万円未満」が17.1%います。
ここで、概算を1つ置きます。総額を人数で割って、ゲスト1人あたりに換算した金額です。
- 2018年:194.6万円÷78.8人=約2.5万円
- 2024年:221.5万円÷50.5人=約4.4万円
1人あたりの会費が1.6万円から1.9万円に上がったとはいえ、1人あたりの総額が2.5万円から4.4万円へ上がったほうが速いです。会費でゲストの費用を賄える割合は、2018年の約65%から、2024年は約43%まで下がる計算です。
この計算には断りが要ります。総額の平均は、会費制だけでなくご祝儀制の人も含めた北海道の実施者全体の値です。会費と人数は会費制の実施者だけの値なので、割り算の相手が揃っていません。年ごとのサンプルも入れ替わります。数字そのものより、動いた方向を見るための概算です。それでも、北海道の会費制が「会費で全部まかなえる式」から遠ざかっていること自体は、「会費以外の負担額」の実測値(115.9万円から141.4万円)でも確認できます。
少人数化は、会場側の客単価を押し上げている
ここまでの数字を、式場の側から読み直します。
北海道の式場にとって、1組あたりの売上に近い総額は、7年で14%上がりました。一方、人数は36%減っています。ゲスト1人にかける金額が上がらなければ、この両立はありえません。料理、飲物、演出、装花、撮影の1人あたり単価が上がり、人数の減少を埋めた形です。
会費制のゲスト側から見ても、同じことが言えます。1.6万円の会費で出席していた時代から、1.9万円、そして2万円以上が半分近い今へ。会費の相場が上がったのは、会場が提供する料理や空間のグレードが上がったことと、少人数で1人に割ける予算が増えたことの両方が背景にありそうです。ここは調査から直接は分からないので、僕の読みです。
もう1つ、年齢の効果もあります。2024年は妻の年齢が24歳以下で会費総額89.3万円、25〜29歳で91.5万円と、若い層ほど会費制の比率が高いのに、会費以外の負担額は24歳以下が163.8万円、25〜29歳が147.0万円と、30〜34歳の113.5万円より大きいです。若いカップルほど、ゲストの数が多く、総額も大きく、自己負担も大きい形になっています。若年層の会費制は、安さを求めた選択というより、ご祝儀を介さない形式を選んでいる、と見るほうが自然です。
会場の種類別では、2024年の会費総額(平均)は、ホテルが133.2万円、一般の結婚式場が91.7万円、ハウスウエディングが83.2万円、レストランが52.5万円でした。レストランは55.0%が50万円未満で、小さな会が中心です。会場の種類が違えば、会費総額で設計した予算の置き方もまるで変わります。
東北の会費制は、まだ別の形をしている
北海道だけ見ていると偏るので、会費制が比較的多い東北北部も見ておきます。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024の「青森・秋田・岩手」では、会費制が21.9%(n=192)でした。会費制実施者の会費総額(平均)は133.7万円(n=38)。1人あたりの会費は約1.9万円で、北海道と同水準です。つまり会費は同じでも、集まる総額は北海道の90.2万円より4割以上多い計算になります。
n=38 は小さいので断定はできません。それでも、東北北部の会費制は、人数が多い会に使われている可能性があります。会費制の形が、地域によって「少人数のカジュアルな会」にも、「人数の多い従来型の披露宴の会費版」にもなりうる、ということです。
首都圏は会費制2.0%(n=394)。会費制の実施者は7人しかいません。会費の平均は1.9万円ですが、サンプルが少なすぎて数字として使えません。首都圏で「会費制」を謳った商品を作ると、母集団の側が薄い、ということは知っておいていいと思います。
計画を立てるときに見たい数字
ここまでの話を、式場の数字に当てはめるとしたら、どこを見ればいいか。会費制のプランを持っている、あるいは持とうとしている会場について、いくつか書きます。
会費総額ではなく、1人あたりの総額
会費制のプランを設計するとき、「会費1.5万円×60人」のように、単価と人数の掛け算で考えがちです。ところが今回の数字では、動いているのは人数です。会費を上げても、人数が減れば会費総額は増えません。
プランを組むときは、会費の総額を目標にするのではなく、1人あたりの総額(会費と持ち出しの合計)が何円になるかを先に決めるほうが、実態に合います。北海道の2024年の概算では、1人あたり総額は約4.4万円。会費の1.9万円は、その4割強にあたります。
人数のレンジごとに、会費の置き場所を変える
2024年の北海道の招待客人数は、30人未満が26.3%、30〜50人未満が21.5%、50〜80人未満が33.4%、80人以上が15.1%と、広く散らばっています。平均の50.5人は、実際にはどの層にも当てはまらない数字です。
人数が30人台の会と70人台の会では、会費を同じ1.9万円に置いても、売上の形が違います。会費制は、人数が減るほど「会費でまかなえる部分」が小さくなり、持ち出しが目立ちます。逆に言えば、少人数の会の見積もりは、会費の説明より、持ち出しの説明に時間を割くことになります。
持ち出しの説明が、成約を左右する
会費以外の負担額は、平均141.4万円です。新郎新婦は、「会費制だから安く済む」と思って相談に来ます。見積もりを出すと、会費で賄えるのは一部で、残りは100万円を超える。このギャップが、成約前の離脱や、成約後の不満の源になりえます。
見積もりの最初に、会費で賄える範囲と、そうでない範囲を、1人あたりの数字で並べて見せる。それだけで、期待のずれはかなり小さくなると僕は考えています。ここは調査で裏付けがあるわけではなく、数字の構造から導いた設計の方向です。
北海道の数字をそのまま持ち込めない理由
最後に、読み方の注意を書いておきます。
1つ目は、会費制の実施者という絞り込みです。会費、会費総額、会費以外の負担額は、会費制の披露宴を実施した人だけに聞いた設問です。2024年の北海道で、会費総額の回答者は154人、1人あたり会費の回答者は171人。年別・区分別に割ると、n が数十人になります。小さな差は誤差の範囲だと思って読む必要があります。
2つ目は、平均値の癖です。人数や費用は、一部の大きな会に引っ張られます。2018年の会費総額158.5万円は、全体の14.4%が「50万円未満」なのに、「250万円以上」が7.8%(5.0%+2.8%)いる分布から出た平均です。中央値ではないので、典型的な1組の姿とは限りません。
3つ目は、自己申告であることです。ゲスト数、会費、総額は、新郎新婦の記憶による回答です。会費制のパーティーは費用の内訳が複雑で、記憶違いが出やすい項目でもあります。
4つ目は、コロナ禍の影響です。2021年と2022年の人数は、コロナ禍で招待客を絞った時期の数字だと考えられます。2018年の78.8人から2021年の43.8人への落ち込みは、全部が構造変化ではなく、一部は一時的な縮小だったと考えるべきです。そして2024年に50.5人まで戻っていることも、その見方と合います。一方で、2024年の50.5人は、2018年の78.8人には遠く、コロナ前の水準には戻っていません。
こうした限界を含めても、北海道の会費制について「会費は上がり、人数は減り、会費の総額は縮み、持ち出しは膨らんだ」という大きな方向は、複数の指標で同じ向きに出ています。
まとめ
- 会費制は全国で5.1%(ゼクシィ結婚トレンド調査2024)、北海道では81.7%。2018年から2024年まで、北海道の会費制比率は76〜84%の範囲で動いていない
- 北海道の1人あたり会費は、2018年の1.6万円から2024年の1.9万円へ。2万円以上と答えた人は1.9%から46.2%に増えた
- 会費総額は158.5万円から90.2万円へ約43%減。原因は会費の単価ではなく、招待客人数が78.8人から50.5人へ約36%減ったこと
- 挙式、披露宴・ウエディングパーティーの総額は194.6万円から221.5万円へ約14%増え、会費以外の負担額は115.9万円から141.4万円へ25.5万円増えた
- 概算では、ゲスト1人あたりの総額は約2.5万円から約4.4万円に上がり、会費で賄える割合は約65%から約43%に下がった
- 会費制の設計は、会費の総額ではなく、1人あたりの総額と持ち出しを先に置くほうが実態に合う
- 結婚マーケット調査2025の15.7%は対象を広げた別の調査で、2024年までの数字と並べて「増えた」とは読めない
