披露宴のゲスト送迎バスは、仮の式場で年720万円。成約が年5.1組増えれば元が取れる。バスかタクシーかを分けるのは、乗る人数が20人前後を超えるかどうかだ
駅から離れた会場にとって、ゲストの送迎バスは「付けるのが当たり前」の設備に見えます。ただ、毎回の挙式に出すバスは、1回ごとに現金が出ていく費用です。しかも、その費用で成約が増えたのかどうかは、普通の集計では見えません。
結論から書きます。仮に、1回の挙式で送迎バスに6万円かかる式場が年120組を迎えると、費用は年720万円です。粗利が1組140万円なら、取り返すには成約が年5.1組、来館が年400組なら成約率で1.3ポイントの上乗せが要ります。そしてバスとタクシーのどちらが安いかは、ゲストが一度に何人乗るかで決まり、バス6万円の仮置きでは20人前後が境目になります。
この記事の数字は、出典のある統計ではありません。送迎バスの費用も利用人数も、会場ごとにまったく違うからです。僕が置いた前提を先に並べて、そのうえで「どこを自分の数字に替えれば、自分の会場の答えが出るか」が分かるように書きます。
前提を先に置きます
計算に使う前提は、次のとおりです。すべて仮置きで、実在の会場の実績ではありません。
- 年間の挙式は120組、来館(フェアを含む見学)は年400組、成約率は30%
- 1組あたりの粗利は140万円
- 披露宴の招待客は60人。そのうち、バスやタクシーを使いたい人は半数の30人
- 送迎バスは委託で、1回の挙式につき往復の運行で6万円(4万円と8万円でも計算します)
- タクシーは、駅から会場まで1台で片道3,000円。ゲストは2人ずつ相乗りする想定
粗利140万円は、これまでこのメディアの計算で使ってきた置き方に揃えています。違う会場なら、ここを自社の数字に替えてください。
1回6万円のバスは、年120組で720万円になる
まず費用です。1回あたりの運行費に、年間の挙式数をかけるだけです。
- 1回4万円なら、年480万円
- 1回6万円なら、年720万円
- 1回8万円なら、年960万円
この金額を粗利140万円で割ると、取り返すのに必要な成約が出ます。
- 年480万円なら、年3.4組
- 年720万円なら、年5.1組
- 年960万円なら、年6.9組
来館が年400組の会場では、1ポイントの成約率は年4組です。つまり、6万円のバスを元が取れる状態にするには、成約率で1.3ポイント、組数でいえば年5組強が「バスがあったから決めた人」でなければなりません。4万円なら0.9ポイント、8万円なら1.7ポイントです。
ここで大事なのは、「バスがあるから選んだ」という人の数え方です。バスがあってもなくても来た人は、バスの効果に入れてはいけません。駅から遠いことが理由で候補から外れていた人が、バスがあることで候補に戻った。その人数だけが、バスの手柄です。
バスの効果は、どこに出るのか
バスが効くとしたら、場所は3つに分けられます。
- 来館の入口:見学やフェアの段階で、「車がないと行けない」と思った人が来館をやめる。バスが(あるいは見学時の送迎が)あれば、この人たちが戻る
- 成約の判断:二人が会場を比べるとき、親や友人の足の確保が決め手になる。特に、高齢の親族や、お酒を飲むゲストが多い二人が気にする
- 契約後の満足:当日のゲストの負担が減り、口コミや紹介が良くなる。ただし、これは成約には間に合わず、効果が出るのは何か月も先です
損益の計算に入れられるのは、1と2です。3は、あれば嬉しいが、式場の年間の数字には乗りにくい。僕は3を計算に入れません。入れた瞬間に、何でも元が取れる計算になるからです。
ゼクシィの会場選びの解説記事には、遠方のゲストが多い場合は空港や新幹線の駅から近い場所にする、駅から遠くてもバスが出ているなら実際に足を運んで確かめる、という趣旨の話が出ています。ただ、これは選び方の助言であって、バスの有無が成約率を何ポイント動かすかを示した数字ではありません。この数字は、自社で測るしかありません。
自社で測るなら、見学の理由を2つの欄で記録する
測り方は難しくありません。来館した二人の失注理由と、契約した理由に、「アクセス」の欄を1つ作ります。
- 失注した二人に、「アクセスが理由で見送ったか」を聞く(聞けなければ、接客した担当が書く)
- 契約した二人に、「送迎の有無が決め手に入っていたか」を聞く
半年やれば、年の見込みが出ます。年400組の来館で、契約した120組のうち「送迎が決め手に入っていた」が10組あれば、バスの効果は成約で年10組とみなせます。もちろん、「決め手に入っていた」は「それがなければ決めなかった」と同じではありません。半分に割って5組と読むくらいが、慎重です。
この半分の読み方で5組なら、720万円のバス(必要な成約は5.1組)は、ほぼ損益分岐です。つまり、6万円の運行は「儲かる」でも「無駄」でもなく、境目の上にいます。
乗る人数が増えると、バスのほうが安くなる
もう1つの論点は、費用の中身です。バスは乗る人数が増えても1回の費用は変わりません。タクシーは乗る人数に比例して増えます。
前提のタクシーは、片道3,000円で2人相乗りです。往復で考えると、1人あたりの負担は片道1,500円、往復3,000円になります。バスが1回6万円なら、タクシーと同じ費用になる人数は、6万円を3,000円で割った20人です。
もう少し細かく、バス料金とタクシー料金の組み合わせで分岐人数を並べます(バスの費用 ÷ 1人あたりのタクシー代の往復)。
- バス4万円、1人往復3,000円なら、13人
- バス6万円、1人往復3,000円なら、20人
- バス6万円、1人往復4,000円なら、15人
- バス8万円、1人往復3,000円なら、27人
- バス8万円、1人往復2,000円なら、40人
乗る人が30人なら、バスが6万円のとき、タクシーで往復を回すと9万円です。バスのほうが3万円安くなります。逆に、乗る人が10人なら、タクシーは3万円で、バスは3万円分の損です。
つまり、バスかタクシーかは、「ゲストの半分が乗る」のか「2割しか乗らない」のかで答えが替わります。披露宴60人のうち、車で来る人が多い会場や、駐車場が広い会場では、乗る人が10人にも届かないことがあります。
年720万円を、別の形に分けて使う案
バスを出すか出さないかの二択に見えて、実は間にいくつか選択肢があります。
- 駅からの送迎は、挙式の時間にあわせた「定時運行」にする。個別に出さず、人が少ない時間帯は運行しない
- 見学や来館の二人には、予約制の送迎か、タクシー券を出す。ゲスト全員の送迎は出さない
- 披露宴の人数が一定を超える日だけ、バスを手配する(たとえば50人以上のとき)
- ゲストの送迎を、会場費のなかに含めて見せるのではなく、料金表に「送迎バス(1台)」として別の行で出す
最後の案は、費用を二人に転嫁するように見えますが、僕は「何に払っているのか」を見えるようにする意味のほうが大きいと思います。見積もりに「送迎バス 6万円」が1行あれば、二人は「要る・要らない」を自分で決められます。要らないと判断した二人が多ければ、そもそもバスが必要な会場かどうかが、データで分かります。
ただし、見積もりに行を足すと、総額が6万円分見えるようになります。総額に敏感な二人にとっては、その6万円が競合との比較で不利に働きます。この影響は、成約率が何ポイント動くかで測るしかありません。
来館の送迎は、挙式の送迎とは別の話
ここまで書いたのは、挙式の当日のゲスト送迎です。見学やフェアに来る二人の送迎は、別の損益です。
来館の送迎は、1回の費用が小さい一方で、効く相手が「会場を探している二人」に限られます。仮に、年400組の来館のうち、車がなくて来館できない二人が1割(40組)いるとします。この40組に送迎を出して、そのうちの半分(20組)が来館し、30%が成約すれば、成約は年6組です。
この6組は、年720万円のゲスト送迎の損益分岐(5.1組)を超えています。ただし、実際には「車がない二人」が1割もいるのかどうかが、この計算のすべてです。ここは仮置きなので、自社の来館の記録で、来館手段を聞いて測ります。聞く質問は1つで足ります。「今日は、どうやっていらっしゃいましたか」です。
送迎の費用を、来館の二人だけに絞れば、年で数十万円で収まる可能性があります。ゲスト全員の送迎を出す前に、来館の送迎から始めるほうが、測りやすく、戻しやすい。僕はこの順番のほうが堅いと思います。
判断の分かれ目を、4つに絞る
ここまでの話を、会議で使える形に絞ります。
- 年の費用を出す:1回の運行費 × 年の挙式数。6万円×120組で720万円
- 必要な成約を出す:年の費用 ÷ 粗利。720万円 ÷ 140万円で5.1組
- 「アクセスが理由の失注」と「送迎が決め手の契約」を、半年数える
- 乗る人数を見る:バス費用 ÷ 1人あたりのタクシー代の往復。6万円 ÷ 3,000円で20人
3の数字が必要な成約を超えるなら、バスは続ける価値があります。下回るなら、定時運行や予約制に切り替えて、費用を下げる余地があります。4の人数がバスの定員に届かない会場は、タクシー券のほうが安い可能性が高いです。
まとめ
- 送迎バスが1回6万円なら、年120組の仮の式場で年720万円。粗利140万円なら、成約が年5.1組増えれば元が取れる
- 来館が年400組なら、成約率で1.3ポイント。4万円なら0.9ポイント、8万円なら1.7ポイント
- バスの手柄は、「バスがなければ候補から外れていた人」だけ。バスがあってもなくても来た人は、数に入れない
- 失注の理由に「アクセス」の欄を作り、契約した二人には「送迎が決め手に入っていたか」を聞くと、半年で年の見込みが出る
- バスとタクシーの分かれ目は、バス費用を1人あたりのタクシー代で割った人数。6万円と往復3,000円なら20人、8万円なら27人
- 送迎は、挙式当日のゲストと来館の二人で、損益が別。来館の送迎のほうが小さく始められ、測りやすい
- この記事の数字は、すべて仮置きの前提による計算で、実在の会場の実績ではない
