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披露宴のゲスト撮影ルールは3つの型で用意する|式場は二人に選んでもらう

披露宴や挙式の最中に、ゲストがスマホを掲げて撮影している光景は、もう珍しくありません。式場は、これを認めるのか、止めるのか。僕が気になっているのは、この線引きを「会場の方針」として一律に決めている式場が多いのではないか、という点です。

結論を先に書きます。ゲストの撮影ルールは、禁止か自由かの二択で決めずに、3つの型を用意して、契約後の打合せで二人に選んでもらうのが現実的です。理由は、運用の費用がほとんどかからないからです。年120組の仮の式場で計算すると、案内カードの印刷とスタッフの声がけで、年11.7万円ほど。粗利148.5万円の成約に換算すると、0.08組分にしかなりません。費用が小さいなら、会場が一律に決める理由は弱く、二人の希望に合わせる余地のほうが大きい、という話です。

この記事に出典つきの数字はありません。ゲストの何割が撮影しているのか、撮影ルールで写真の購入率がどれだけ変わるのかを示す調査は、僕は確かめられていません。以下の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

一律に決めると、何を捨てることになるのか

まず、式場にとってゲストの撮影が何に関わるのかを整理します。関わる先は、大きく3つあります。

1つ目は、会場のカメラマンの写真です。挙式の入場、指輪の交換、誓いのキスといった場面は、一度しか撮れません。ゲストが通路に身を乗り出したり、前列でスマホを掲げたりすると、カメラマンの画角にゲストの腕や画面が入ります。写っていないカットは、アルバムやデータの販売にも影響します。

2つ目は、ゲスト自身の撮影の楽しみと、二人への写真の贈り物です。二人が「友人が撮ってくれた写真も欲しい」と思うこともあれば、「式に集中してほしいから、撮影は控えてほしい」と思うこともあります。

3つ目は、SNS投稿を通じた認知です。ゲストが「#会場名」付きで投稿すれば、そのフォロワーに会場の名前が届きます。式場の公式アカウントが撮れない角度や雰囲気の写真が、自然に外に出ていきます。

この3つは、同時に満たせないことがあります。撮影を全面禁止にすれば、カメラマンの写真は守られますが、ゲストの投稿は止まります。全面自由にすれば、投稿は増えますが、カメラマンの画角が荒れます。一律に決めると、必ずどちらかを捨てることになる。ここが、会場の方針として固定したときの弱点です。

3つの型を用意する

そこで、型を3つ用意します。名前は仮です。

型A:全面自由。 挙式から披露宴まで、ゲストの撮影を制限しません。フラッシュの禁止と、通路に出ない約束だけを案内します。

型B:挙式だけ静止。 挙式の間は、ゲストのスマホ撮影をお願いして控えてもらいます。カメラマンが撮った写真を、後で二人から共有する形です。披露宴は自由にします。

型C:要所だけ止める。 入場、乾杯、ケーキ入刀など、司会が事前に告げる数か所だけ、撮影のための時間をつくります。ほかの時間は、撮影を気にせず過ごしてもらいます。

型Bは「アンプラグド」と呼ばれることがあります。僕がここで使う名前は仮のもので、会場で呼びやすい言葉にしてください。

大事なのは、3つとも、式場が許可する範囲で二人が選べる形にしておくことです。式場は選択肢を作り、選ぶのは二人。そうすると、後で「撮影を止められた」「注意されなかった」といった不満が、二人の側からも出にくくなります。

仮の式場を置く

次に、運用の費用を計算します。前提を並べます。

  • 年間の挙式は120組
  • 1組あたりの列席者は平均70人
  • 1組あたりの粗利は148.5万円。ほかの記事で使っている仮の式場の値に合わせました
  • 案内カード(ゲスト向けの撮影ルール)の印刷は、1組あたり600円。席札や卓上に置く小さなカードの想定です
  • 司会者と当日スタッフの声がけの手間は、1組あたり15分。時給1,500円で換算すると375円です
  • 写真のアルバム・データの追加販売の粗利は、1組あたり12万円。購入するのは一部の組だけなので、年間の購入組数は別に置きます

どれも「そうだとすると」の置き方です。大事なのは、数字の当たり外れではなく、どこが効いてくるのかを見ることです。

運用費は年11.7万円にしかならない

案内カードが1組600円、声がけの手間が1組375円。合計は1組あたり975円です。年120組で11.7万円になります。

この11.7万円を、粗利148.5万円の成約に直すと、0.08組分です。つまり、ルールを整える運用費は、成約が12組に1組分も減らないうちは、回収できる規模だという意味です。

ここで比べたいのは、費用そのものより、ルールを置かないことで失うものです。置かなければ、カメラマンの画角と、二人の希望のどちらかが毎回その場の判断になります。その場の判断は、司会とスタッフの経験に左右されます。

カメラマン写真を守る効果は、0.8ポイントで元が取れる

次に、ルールがカメラマンの写真の売上を守る効果を、損益分岐で見ます。

アルバム・データの追加販売の粗利が、1組あたり12万円だとします。年120組が全員買えば、年1,440万円です。運用費の11.7万円は、この1,440万円の0.8%にあたります。

言い換えると、ルールを置いたことで購入率が0.8ポイント上がれば、運用費は回収できます。120組なら、およそ1組です。120組のうち1組が、「撮影が荒れなかったから、アルバムを買った」と動いてくれれば足ります。

反対に、ルールを置かないことで購入率が下がる場合を考えます。購入率が1ポイント下がれば年14.4万円、3ポイントで43.2万円、5ポイントで72万円の粗利が消えます。5ポイントは、120組なら6組分です。これだけ動くことはないのかもしれませんが、動かないと言い切る材料も、僕は持っていません。

ここで言いたいのは、購入率が動くかどうかを証明することではありません。動いても動かなくても、運用費が小さい以上、ルールを整えたほうが損にならない、という構造です。

ゲスト投稿の側も、0.26組で元が取れる

今度は、ゲストの投稿から来館が生まれる側を見ます。

ゲストの投稿を見て来館した二人が、成約に至る確率を、仮に30%と置きます。1来館あたりの期待粗利は、148.5万円の30%で44.6万円です。運用費の11.7万円は、この44.6万円で割ると0.26来館分です。年に0.26組、つまり4年に1組ほど、ゲストの投稿から来館が生まれれば、運用費は回収できます。

成約率が20%なら0.39来館、40%なら0.20来館です。どの置き方でも、年に1組を下回ります。

ここでも、投稿が来館を生むかどうかは、確かめられていません。確かめなくても、小さな運用費の範囲で、投稿を止めない型も選べるようにしておけば、取りこぼしは起きません。型Aと型Cがその役目です。

型を選ぶのは、契約後の打合せがちょうどいい

型を二人に選んでもらうなら、いつ聞くのがよいでしょうか。

契約前の見学の場では、早すぎます。二人はまだ撮影ルールのことを考えていませんし、見学時に聞かれても、判断材料がありません。式の直前、たとえば最終打合せで聞くと、ゲスト向けの案内を印刷する時間が足りなくなります。

僕が現実的だと考えるのは、契約後の最初から2回目の打合せです。ちょうど招待状の準備が始まる時期で、ゲストに伝える情報をまとめる作業と重なります。招待状の裏面や、Web招待状の案内欄に、撮影についての一文を入れられます。

聞き方は、短くします。

「ゲストの写真撮影について、3つの形から選べます。挙式中は控えてもらう形、全面自由の形、要所だけ止める形です。どれがお二人のイメージに近いですか」

選択肢の名前よりも、そのあとの確認が大切です。選んだ型を、ヒアリングシートの1項目として記録し、司会者と当日の担当に渡します。記録がなければ、当日は司会者の判断に戻ってしまいます。

会場が一律に決めておく線

ここまで「二人に選んでもらう」と書きましたが、すべてを選択制にするわけではありません。会場が一律に決めておいたほうがよい線が、3つあります。

1つ目は、フラッシュと通路。 フラッシュを焚くことは、型にかかわらず禁止にします。挙式中にゲストが通路や祭壇の前に出ることも、同じく型を問わずお願いします。安全と、ほかのゲストの視界に関わるためです。

2つ目は、ライブ配信と即時投稿。 ゲストの中には、挙式の様子をその場でSNSに投稿する人がいます。親族の顔が出ること、出席していない人に知られたくない事情があること。二人の確認が取れていない状況で、顔が出るのは避けたいので、「投稿は式のあとで、二人の許可が出てから」という一文を、案内に入れておくと安全です。

3つ目は、会場スタッフと設備の撮影。 厨房、控室、スタッフの顔が写り込む撮影は、会場のルールとして、型にかかわらず控えてもらいます。

この3つを固定しておくと、型の選択肢は「どこまで撮っていいか」の1軸だけになり、二人も説明を受けやすくなります。

型ごとの運用で、現場が気をつけること

型を用意しても、当日に回らなければ意味がありません。型ごとに、現場が気をつける点を挙げます。

型Aでは、挙式の入場や指輪の交換のところで、ゲストが前に出やすくなります。司会の最初のアナウンスで、「通路には出ないでください」と告げておきます。カメラマンの立ち位置を、事前に打合せで確認しておくことも欠かせません。

型Bでは、司会者が挙式の開始前に、撮影を控える理由を一言添えるとよいと思います。「お二人が、皆さまの目で式を見てほしいと望んでいます」のように、二人の意向として伝えると、ゲストの受け取り方が変わります。式場からの禁止として伝えると、ゲストは「また注意された」と感じやすくなります。

型Cでは、撮影のための時間を司会が告げる数か所を、事前に決めておく必要があります。入場、乾杯、ケーキ入刀の3か所を基本にし、二人の希望で足します。数が増えすぎると、進行が押します。ほかの記事で書いた「披露宴が押したときに削る順番」にも、撮影の時間は入れておいたほうが安全です。

どの型でも、二人の選択をゲストに知らせる手段は、招待状の案内、卓上のカード、司会のアナウンスの3つです。1つだけでは伝わらない人が出ます。

ほかの運用との関係

撮影ルールは、ほかの運用とつながっています。

まず、カメラマンの持ち込みです。外部のカメラマンを持ち込む二人には、持ち込み料の設定があるはずで、その撮影を妨げない範囲を、同じ型の案内に含めることになります。ゲストの撮影が、持ち込みカメラマンの画角にも影響するからです。

次に、会場の写真素材の掲載同意です。式場が二人の写真を公式アカウントに載せる場合、契約書の掲載同意欄で許可を取る運用があります。ゲストが撮った写真を会場が再掲するときは、二人とゲストの同意が別に要ります。「ゲストの投稿を会場が再投稿するか」は、型の案内とは別に、運用のルールとして決めておくほうが安全です。

最後に、見学時の撮影ルールです。見学のときに二人が撮る写真と、披露宴のゲストの撮影は、目的もリスクも違います。同じ「撮影禁止」の貼り紙で扱うと、混乱のもとになります。

まとめ

  • ゲストの撮影ルールを一律に決めると、カメラマン写真かゲスト投稿のどちらかを捨てることになります
  • 型を3つ(全面自由・挙式だけ静止・要所だけ止める)用意して、二人に選んでもらう形が現実的です
  • 年120組の仮の式場で、運用費は年11.7万円。粗利148.5万円の成約0.08組分です
  • カメラマン写真の購入率が0.8ポイント上がれば、運用費は回収できます(仮の前提)
  • ゲスト投稿から来館が年0.26組出れば、運用費は回収できます(成約率30%と置いた場合)
  • 型を聞くのは、契約後の2回目の打合せ前後がちょうどよいです
  • フラッシュ・通路・即時投稿・スタッフ設備の撮影は、型を問わず会場が固定します
  • 選んだ型は、ヒアリングシートに記録して、司会者と当日担当に渡します