商品・価格

引出物は1組で約41万円、粗利が3割なら12.5万円。持ち込みを断って離脱する二人が9%を超えたら、断るほうが損になる

引出物の持ち込みを認めるかどうか。会場によって答えがばらばらで、規定を決めた理由を社内で聞かれると、案外うまく説明できない項目だと思います。

衣裳の持ち込みは、料金が大きいぶん議論になりやすい項目です。引出物は1点あたりの金額が小さいので、「ネットで安く買えるなら、どうぞ」と流してしまう会場も多いはずです。ところが、1組分を足し上げると、粗利の1割近くになる数字が出てきます。

結論から書きます。招待客52人の仮の式場で、引出物と引菓子とプチギフトの3点をそろえると、ゲスト向けのギフトは1組あたり約41万円です。会場の粗利が3割なら、約12.5万円がこの1項目で残る計算になります。持ち込みを断ったせいで契約をやめる二人が、持ち込みたい二人のうち9%を超えると、断るほうが損になります。9%という線は、粗利率が2割なら6%、4割なら12%に動きます。

この記事の1人あたりの金額と品目数は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の数字です。粗利率や持ち込みたい二人の割合は、僕が置いた仮の値です。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

調査に出ている引出物の金額

まず、二人が実際にいくらかけているかを確かめます。ゼクシィ結婚トレンド調査2024(全国推計値)では、招待客1人あたりの金額の平均は次のとおりです。

  • 引出物:6,300円
  • 引菓子:1,400円
  • プチギフト:288円

価格帯の分布も出ています。引出物は3,000円台が31.6%で最も多く、5,000円台が23.4%。3,000円から6,000円の間に約7割が入ります。引菓子は1,000円から1,500円が62.4%。プチギフトは400円未満が約8割です。

もう一つ、品目数も出ています。ギフトの合計品目数は3品が53.9%で最多、2品が21.0%、1品が13.6%でした。つまり、半数強の二人は、引出物と引菓子とプチギフトのような3点の組み合わせを選んでいます。

ここで注意したいのは、この3つの平均が、別々の母集団の平均だということです。引菓子をつけなかった二人は、引菓子の平均に入っていません。3つを足して「1人7,988円」とするのは、3点そろえた二人を仮に置いたときの話で、全員の平均ではありません。調査の中には「ギフト総額」の平均として別の数字も載っていて、足し算の結果とは合いません。足し算が合わないのは、数えている人が違うからです。この点は、後で自分の会場の数字に当てはめるときにも効いてきます。

仮の式場で、1組あたりを出す

仮の式場を決めます。

  • 年間の挙式は120組
  • 招待客は平均52.0人(ゼクシィ結婚トレンド調査2024の平均)
  • 引出物6,300円、引菓子1,400円、プチギフト288円の3点をそろえる二人を想定する
  • 会場のギフトの粗利率は3割(仮。20%と40%も後で見ます)
  • 1組あたりの粗利は140万円(これまでの記事と同じ仮の値)

1組分の金額を出します。

  • 引出物:6,300円×52人=32万7,600円
  • 引菓子:1,400円×52人=7万2,800円
  • プチギフト:288円×52人=1万4,976円
  • 合計:約41万5,000円(1人あたり7,988円)

粗利率が3割なら、41万5,000円×30%=約12万5,000円です。年120組が全員3点そろえるなら、年間のギフト売上は約5,000万円、粗利は約1,500万円になります。

実際には全員が3点そろえるわけではないので、この年間の額は上限に近い数字です。それでも、会場の粗利の1割弱がギフトの粗利だという感覚は、置いておいて損はないと思います。粗利140万円の1組のうち、12.5万円(約9%)がギフトです。

持ち込みを認めると何が起きるか

二人が引出物を持ち込む理由は、だいたい想像がつきます。ネット通販やカタログギフトの専門店のほうが、同じ金額でよい品が選べると考えるからです。会場の提携先の品物は、中間の手数料が乗る分、選べるものの範囲が狭く見えることがあります。ここは会場の事情というより、二人の側の感覚の問題です。

持ち込みを認めた場合、持ち込んだ組のギフトの粗利は消えます。仮の式場では1組あたり12.5万円です。持ち込みをした二人が全体の2割、つまり年24組なら、24組×12.5万円=年約300万円が消えます。1割なら約150万円、3割なら約450万円です。

一方、持ち込みを断った場合に失うものは、品物の粗利ではありません。持ち込みたいと思っていた二人が、「それなら別の会場にします」と言って離れていくことです。離れた二人は、ギフトの粗利だけでなく、1組の粗利140万円を丸ごと持っていきます。

2つを比べる式は、短くなります。

  • 認める:粗利は140万円−12.5万円=127.5万円(二人は残る)
  • 断る:二人が残れば140万円、離れれば0円。離れる確率をrとすると、140万円×(1−r)

断るほうが得になる条件は、140万円×(1−r)>127.5万円。解くと、rが約8.9%を下回るときです。

つまり、持ち込みたい二人のうち、断られても契約する人が9割強いるなら、断るほうが得です。断られて9%を超える人が離れるなら、認めたほうが得です。

粗利率で、境目が動く

ギフトの粗利率は、提携先との契約で会場ごとに大きく違うはずです。3割は仮の値なので、動かして見ます。

ギフトの粗利率 1組あたりのギフト粗利 断るほうが得な離脱率の上限
20% 約8.3万円 5.9%
30% 約12.5万円 8.9%
40% 約16.6万円 11.9%

粗利率が高い会場ほど、断る理由が強くなります。粗利率が2割にとどまるなら、離脱が6%を超えた時点で断るのは損です。

ここで見落としやすいのは、この境目が「持ち込みたい二人」だけに当てはまる数字だという点です。持ち込みを断られても何も思わない二人は、そもそも対象に入っていません。会場全体でみれば、離れる二人はごく一部です。その一部が、持ち込みたい二人の中の何%かを、数えるしかありません。

持ち込み料を取ると、境目はどうなるか

認めて、持ち込み料を取る選択肢もあります。持ち込み料をFとすると、認めたときの粗利は127.5万円+Fです。断るほうが得になる離脱率の上限は、(12.5万円−F)÷140万円まで下がります。

  • 持ち込み料3万円:上限は約6.8%
  • 持ち込み料6万円:上限は約4.6%
  • 持ち込み料10万円:上限は約1.8%

持ち込み料を10万円にすれば、ほぼ「認める」と同じ状態になります。断って1.8%以上離れるなら、認めて10万円もらうほうが得です。

ただし、持ち込み料には別の問題があります。52人分の引出物を会場に運び込んで、保管して、各席に並べる手間は、会場の人手がかかります。この作業の人件費を、持ち込み料で回収できているかは、別に確かめる必要があります。手間の中身は、箱の数、保管の場所、数が合わなかったときの対応の3つです。仮に、1組の持ち込みで会場の人が合計2時間動くなら、時給2,000円の人件費で4,000円です。これは12.5万円に比べれば小さい額ですが、持ち込み料を3万円と決めたときの1割強にあたります。

離脱率は、どう数えるか

ここまでの話は、「持ち込みを断られて離れる二人が何%か」が分からないと、結論が出ません。この数字は、調査には出ていません。会場で数えるしかない数字です。

数え方は3つあります。

1つ目は、見学や打合せで「引出物を持ち込めますか」と聞かれた回数を記録することです。聞かれた組のうち、契約まで進んだ組が何組かを、半年分並べます。

2つ目は、契約をやめた二人に、やめた理由を聞くことです。その中で持ち込みが理由に挙がった割合を見ます。ただし、やめた理由は本音が出にくい項目なので、見積もりの金額が理由に挙がった二人の中に、持ち込みの話が混ざっていないかも確かめます。

3つ目は、断る規定を一定期間だけ変えてみることです。たとえば、3か月は持ち込みを認め、その間の持ち込み率と契約率を、前の3か月と比べます。会場の予約状況が季節で変わるので、前年の同じ時期と比べるほうが安全です。

どの方法でも、サンプルが小さいと数字がぶれます。年120組の会場で、持ち込みを聞いてくる二人が10組なら、1組の差が10%です。6%や9%の差を見分けるには、数が足りません。ここは、数字で決めるというより、数字の大きさの感覚を持って決める段階だと思います。

持ち込みを認める前に確かめること

認めるにしても、断るにしても、決める前に確かめておきたい点がいくつかあります。

1つ目は、提携先との契約です。引出物を会場の提携先から買う約束があり、最低の発注数や、粗利を一定額保証する取り決めがあると、持ち込みを認めた時点で提携先との関係に響きます。契約を読み直さないまま規定だけ変えると、後で数字が合わなくなります。

2つ目は、引菓子とプチギフトです。引出物は持ち込みを認めても、引菓子は会場で手配する、という分け方もできます。引菓子とプチギフトは、1人あたりの金額が小さく、二人も持ち込みたいと思わないことが多いはずです。ただ、これは僕の想像で、調査の裏づけはありません。分けて聞いたときの二人の反応を見る価値はあります。

3つ目は、配送の責任です。持ち込まれた品物が人数分そろっていなかった、式の当日に届かなかった、数が余った。こういうとき、誰が対応するかを先に決めておかないと、当日の現場が困ります。

4つ目は、品物の質です。ゲストの手に渡る品物は、会場の評判にもつながります。持ち込みのほうが質が高い場合もあれば、低い場合もあります。会場側が品物を選ぶ立場にないぶん、質の責任も持てません。この点は、規定のうえで割り切るしかありません。

断る、認める、持ち込み料。どの会場に何が合うか

最後に、どういう会場に何が合うかを整理します。数字の置き方は仮ですが、考え方は使えます。

  • ギフトの粗利率が高く(3〜4割)、持ち込みを聞く二人が少ない会場:断る。離脱が1割を超えにくい前提を置ける。
  • 粗利率が低め(2割前後)で、持ち込みを聞く二人が多い会場:認める。離脱が6%を超えやすい。
  • 提携先との契約で数量や粗利に縛りがある会場:契約の見直しが先。規定だけ変えても数字は動かない。
  • 手間がかかるのが気になる会場:認めて、持ち込み料を設定する。人件費を差し引いたうえで額を決める。

どれを選んでも、引出物の粗利は、1組あたり1割弱の項目です。大きな判断に見えて、実際には成約率の1ポイントのほうが大きく動きます。来館が年600組の仮の式場なら、成約率が1ポイント上がると年6組、粗利にして840万円です。ギフトの持ち込み規定は、成約率に影響が出るときだけ、変える価値があると思います。

まとめ

  • ゼクシィ結婚トレンド調査2024では、1人あたりの金額は、引出物6,300円、引菓子1,400円、プチギフト288円。ギフトの品目数は3品が53.9%で最多。
  • 招待客52人の仮の式場で3点そろえると、1組あたり約41万円。粗利が3割なら約12.5万円で、粗利140万円の約9%。
  • 持ち込みを断って離れる二人が、持ち込みたい二人の約9%を超えると、断るほうが損になる。粗利率が2割なら約6%、4割なら約12%。
  • 持ち込み料を取ると境目は下がる。3万円で約6.8%、10万円で約1.8%。持ち込みの手間の人件費も差し引いて額を決める。
  • 離脱率は調査に出ていない。聞かれた回数と契約までの数、やめた理由、規定を変えた期間の比較のどれかで、会場が数えるしかない。
  • 決める前に、提携先との契約の最低数量と粗利の保証を読み直す。