来館・成約

ブライダルフェアの定員6組に8組の予約を受けると、仮の式場では年12組ぶん成約が増える。ただし混む日が3回に1回出る。決めるのは、断っている人が本当に他社へ行くかどうかだ

ブライダルフェアの予約が定員に達したとき、7組目、8組目の予約を断るか、受けるか。受けるなら、何組まで受けるか。現場では「当日に混んだら困る」の一言で、断る運用になっていることが多い論点です。ただ、予約した人が全員来るわけではありません。定員6組の枠に6組の予約を入れても、当日の来場は4〜5組になる日のほうが多いはずです。空いた席は、その日の売上にはなりません。

この記事では、定員を超えて予約を受ける「上乗せ予約」を、数字で考えます。上乗せで増える成約と、混んだ日に落ちる成約を並べて、どの条件なら受けたほうがいいかを整理します。使う数字は、すべて僕が置いた仮の数字です。調査や実績ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

結論を先に書くと、決めるのは上乗せの組数より、断っていた人が本当に他社へ行くかどうかです。ここを確かめずに上乗せすると、増えるはずの成約が増えません。

仮の式場の前提

計算に使う前提です。

  • ブライダルフェアの1枠は、同じ時間帯に最大6組まで案内できる
  • 1年間に開く枠は40枠(たとえば、20週末に午前と午後の2枠)
  • 予約した組のうち、当日に来る割合(来場率)は75%。残りの25%は無断欠席か、直前の連絡でのキャンセル
  • 当日来た組のうち、契約に至る割合は30%
  • 契約1組あたりの粗利は140万円
  • 来場した組のうち、案内できるのは6組まで。7組目以降は、日を改めてもらうか、お断りする

無断欠席の対策そのものは、リマインドの連絡で減らす考え方があります。この記事は逆で、欠席が一定数出ることを前提にして、予約の受け方を決める話です。来場率75%は、僕が置いた数字です。会場の実績が分かるなら、そちらに置き換えてください。

6組の予約では、案内できる席が毎回1.5組分空く

まず、定員ちょうどの6組までしか予約を受けない場合です。1組ごとに75%の確率で来るとすると、来場は平均で4.5組。案内できる席は6つあるので、平均で1.5席が空きます。

この空きは、日によって違います。6組が全員来る日は、全体の約18%しかありません。来場が4組以下の日は、半数近い約47%です。ならすと1枠あたり4.5組を案内して、成約は1枠あたり1.35組。年40枠で54組の成約になります。粗利にすると、年7,560万円です。

席が空いている日にも、スタッフと会場は押さえています。人件費、試食の仕込み、会場の準備は、来場が少なくてもほとんど変わりません。空いた1.5席は、費用がかかっているのに、成約の機会に使われていない席です。

予約を7組、8組と増やすと、混む日が出る

次に、予約を増やした場合です。同じ75%の来場率で、予約の組数ごとに計算します。

受ける予約 来場の平均 案内する組数の平均 6組を超えて断る組数 6組を超える日の割合 年間の成約 年間の粗利
6組 4.5組 4.50組 0 0% 54.0組 7,560万円
7組 5.25組 5.12組 0.13組 13% 61.4組 8,596万円
8組 6.0組 5.53組 0.47組 37% 66.4組 9,295万円
9組 6.75組 5.77組 0.98組 60% 69.3組 9,700万円
10組 7.5組 5.90組 1.60組 78% 70.8組 9,909万円

読み取れることが3つあります。

1つ目は、増える幅が小さくなっていくことです。6組から7組にすると年7.4組増えます。7組から8組で5.0組、8組から9組で2.9組、9組から10組で1.5組。予約を1組足すたびに、効果が薄くなります。席が埋まってくるほど、足した予約で埋まる席が減るからです。

2つ目は、混む日が増えることです。8組まで受けると、6組を超える日が3回に1回出ます。10組まで受けると、5回のうち4回近くが混む日です。混む日の割合は、成約が増える速さより速く上がります。

3つ目は、7組と8組あたりに分かれ目があることです。7組の上乗せなら、混む日は7回に1回ほど。成約は年7.4組増えます。8組にすると、混む日は3回に1回に増え、成約はさらに5組ほど上乗せされます。ここから先は、混む日の損を数える必要が出てきます。

混んだ日の損は「案内できた人の成約率が落ちる幅」で決まる

上の表は、混んだ日でも成約率が30%のまま、という前提でした。実際は、そうなりません。7組が来て6組しか案内できない日は、待たされる組が出ます。スタッフの手が回らず、案内が駆け足になる日もあります。来た人全員の印象が、少し下がります。

この損を、成約率が落ちる幅で置きます。混んだ日(6組を超える日)は、その日に案内した6組の成約率が、30%から下がるとします。下がる幅は、会場によって違うので、3通りで計算します。

  • 1割下がる(30%が27%になる)
  • 2割下がる(30%が24%になる)
  • 4割下がる(30%が18%になる)

8組まで受けた場合の、年間の損は次のとおりです。混む日が37%(年40枠のうち約15枠)あり、その日の案内は6組です。

  • 1割下がる:年約370万円
  • 2割下がる:年約740万円
  • 4割下がる:年約1,480万円

一方、上乗せで増える粗利は、年約1,735万円でした。2割下がっても、増えた分のほうが大きいです。差し引きで年995万円のプラスになります。成約率が4割下がる、つまり混んだ日は成約がほぼ6割に落ちるところまで行っても、まだ増える側に残ります。

つまり、混んだ日の損だけを見る限り、8組までの上乗せは、かなり成約率が落ちても赤字になりません。ここまで読むと「上乗せしたほうがいい」と言いたくなりますが、この計算にはひとつ、強い前提が隠れています。

隠れている前提:断っていた人は、本当に他社へ行くのか

上の計算は、7組目、8組目の予約を受けなければ、その人たちは見学に来ない、と置いています。つまり、増えた成約は全部「上乗せで初めて会えた人」の成約です。

実際には、そうとは限りません。定員いっぱいの枠を断られた人が、同じ週末の別の枠に予約し直すことは十分にあります。その場合、断っていても見学には来てくれます。上乗せしたぶんの成約は、もともと別の枠で取れていた成約です。増えていません。

そこで、上乗せ予約をした人のうち、断っていたら他社へ行っていた人の割合を s とします。s が100%なら、上の計算どおりです。s が50%なら、増える成約も半分になります。混んだ日の損は、s に関係なく発生します。

8組まで受け、混んだ日の成約率が2割下がる場合(年の損が740万円)で、s ごとの差し引きを計算します。

断っていたら他社へ行っていた人の割合 増える粗利 混んだ日の損 差し引き
100% 1,735万円 740万円 +995万円
50% 868万円 740万円 +128万円
30% 520万円 740万円 −220万円
10% 174万円 740万円 −567万円

分かれ目は、約4割強です。混んだ日の成約率が2割下がる会場では、断った人の4割強が他社へ行く会場なら、受けたほうが得です。断った人の大半が別の枠に来てくれる会場では、上乗せは損になります。

成約率の落ち幅が小さいほど、分かれ目は低くなります。1割下がるなら、分かれ目は2割ほどです。4割下がるなら、8割を超えます。この表の読み方は、落ち幅と s の組み合わせで決まる、ということです。

来場率が違えば、答えは逆になる

ここまでは、来場率を75%と置いていました。来場率が違えば、上乗せの効果は大きく変わります。同じ8組の上乗せで、来場率ごとの増える成約を計算します。

来場率 6組のとき空く席 8組に上乗せして増える成約(年) 8組のとき混む日の割合
60% 2.4席 12.9組 11%
75% 1.5席 12.4組 37%
90% 0.6席 6.7組 81%

来場率が60%の会場は、8組まで受けても混む日は9回に1回ほどです。空いた席が多いので、増える成約が大きく、混む日の損は小さい。上乗せの効果が最も出ます。

来場率が90%の会場は、事情が逆です。8組まで受けると、5回に4回が6組を超える日になります。増える成約は6.7組と少なく、混む日の損は大きい。この会場で上乗せするなら、7組までが上限です。それでも混む日は半分近くになります。

自分の会場の来場率が分からないまま上乗せの組数を決めるのは、いちばん危ないやり方です。まず、直近の数か月で、予約した組に対して実際に来た組の割合を数えるのが先です。時間帯や曜日で違うので、枠ごとに分けて見ます。人気の時間帯は来場率が高く、平日の夕方は低い、というように、同じ会場でも差が出るはずです。

受けるときの運用で、混んだ日の損を小さくする

上乗せを受けるなら、混んだ日の成約率の落ち幅を小さくする運用が効きます。落ち幅が1割か4割かで、分かれ目が大きく変わるからです。

  • 予約を受けるときに、混む可能性を伝えておく。 予約の確認連絡に「当日の混み具合によっては、待っていただくことがあります」と書いておく。待たされるのが想定外か、想定内かで、印象は大きく変わります
  • 6組目の次から、案内を二段にする。 全員に同じ案内をするのではなく、会場見学を先に、試食と相談を後にするなど、待ち時間が出ても動ける流れを決めておく
  • 7組目以降が来たときの動きを決めておく。 別の日の優先予約を渡す、軽い案内だけにして後日改めて詳しく見てもらう、などの決まりがあれば、断ることになった人が他社へ行く割合を下げられます
  • 上乗せは、来場率が低い枠にだけ入れる。 全枠に一律で入れるのではなく、実績で来場率が低かった枠だけ、定員を超えて受ける

最後の運用が、いちばん現実的です。来場率が60%の平日夕方の枠は7組、8組まで受けてよく、90%の土曜の午前は6組で止める。枠ごとに上限を変えると、混む日の損を小さくしながら、空き席を減らせます。

上乗せをやらないほうがいい条件

数字で見ると上乗せが有利な場合が多いですが、やらないほうがいい条件もあります。

  • フェアの案内が、一組ずつの個別対応になっている会場。 6組を同時に案内するのではなく、1組に1人のスタッフがつく形では、7組目が来た瞬間に案内できません。混んだ日の成約率の落ち幅が、4割をはるかに超えるかもしれません
  • 断った人が、別の枠にほぼ確実に来てくれる会場。 予約サイトで別の枠が常に空いていて、定員いっぱいの枠を見た人が、そのまま別の枠を選べる状態なら、s は低いはずです
  • 来場率が9割を超えている枠。 空き席がほとんど出ない枠に上乗せしても、混む日が増えるだけです

逆に、上乗せが向くのは、予約を受けるのが難しい枠(土日の午前、人気の時間帯)で、来場率が低く、他社へ行く人が多い会場です。日程が重なる時期は他社も同じ週末にフェアを開いているので、断られた人は、そのまま他社のフェアに予約しがちです。

確かめる順番

実際に上乗せを考えるときは、次の順番で確かめるのが早いです。

  1. 直近3か月の予約数と、実際に来た数を、枠ごとに数える。来場率が出る
  2. 定員に達して断った件数を数える。予約サイトや電話の記録に残っているはず。断った件数が少なければ、上乗せの余地もありません
  3. 断った人のその後を追う。同じ週の別の枠に予約が入ったか、入らなかったか。入らなかった割合が、s の目安になります
  4. 来場率が低く、断った件数が多い枠を1つ選び、定員を1組だけ増やして1か月試す。混んだ日が何回あったか、その日の成約率を、通常の日と比べる

4の試しは、1か月でも結果が出ます。一度に2組増やすより、1組ずつ増やして、混んだ日の成約率がどう動くかを見たほうが、落ち幅の実績がつかめます。

まとめ

  • 定員6組の枠に6組しか予約を入れないと、来場率75%の仮の式場では、毎回1.5席が空く。年40枠で、成約は54組
  • 予約を8組まで受けると、年間の成約は12組増える計算。ただし6組を超える混んだ日が、3回に1回出る
  • 混んだ日の成約率が2割下がっても、差し引きで年995万円のプラス。損を見るだけなら、上乗せはかなり強い
  • 分かれ目は、断っていた人が他社へ行く割合。2割下がる会場では、4割強が他社へ行くなら受けたほうが得
  • 来場率が違えば答えも変わる。60%なら8組まで、90%なら7組が上限になりうる
  • 上乗せは全枠一律ではなく、来場率が低く、断った件数が多い枠にだけ入れる