集客

資料請求者への電話は、4回目でも仮の式場で年4.6万円。止める線は費用ではなく、嫌がられて離れる人の数で引く

資料請求が入った二人に、式場から電話をかける。多くの式場で当たり前にやっていることですが、「何回かけるか」を決めている式場は少ないように思います。つながらなければ翌日にもう一度、それでもだめなら週明けにまた、というふうに、担当者の感覚で続いたり、途中で止まったりしています。

結論を先に書きます。年600件の資料請求がある仮の式場で計算すると、電話を1回追加するときの費用は、4回目でも年4.6万円ほどです。その1回で追加でつながる人が1.5%の来館につながれば、元が取れます。費用の側は、驚くほど軽いです。

だから、回数の上限を費用で決めるのは間違いです。止める線は、つながらない人の数と、電話を嫌がられたときの損で引きます。この記事では、その損の側を計算します。

数字はすべて、僕が置いた仮のものです。出典のある調査の数字は使っていません。つながる率、来館につながる率は、式場ごとに違います。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。

仮の式場を置く

前提を書いておきます。

  • 資料請求は年600件
  • 電話1回にかかる手間は5分。人件費は1時間2,500円なので、1回あたり約208円
  • 来館の成約率は30%、粗利は1組140万円。来館1件の期待粗利は42万円
  • 電話をかけなかった場合でも、請求者の2割にあたる120件は、自分から来館の予約を入れる

最後の120件は大事な置き方です。電話のおかげで来館するわけではない二人が、請求者のなかに最初から混ざっています。電話の効果を測るときは、この「どうせ来た人」を分けておかないと、効果を大きく見積もってしまいます。

1回ごとに、つながる人は減っていく

電話は、かけるたびに追加でつながる人が減ります。仮に次のように置きます。数字は請求者600件に対する割合です。

回 追加でつながる割合 追加でつながる人数
1回目 40% 240人
2回目 15% 90人
3回目 8% 48人
4回目 4% 24人
5回目 2% 12人

2回目以降は、すでにつながった人にはかけません。かける相手は、前の回でつながらなかった人だけです。だから、かける件数も回を追うごとに減ります。1回目は600件、2回目は360件、3回目は270件、4回目は222件、5回目は198件です。

この置き方では、5回かけてもつながる人は合計69%。残りの31%の人は、5回かけてもつながりません。

追加の1回の費用は、4回目でも年4.6万円

回ごとの費用を出します。

回 かける件数 費用 追加でつながる人数
1回目 600件 12.5万円 240人
2回目 360件 7.5万円 90人
3回目 270件 5.6万円 48人
4回目 222件 4.6万円 24人
5回目 198件 4.1万円 12人

5回かけても、合計の費用は年34万円ほどです。3回までなら年26万円です。

では、追加の1回が元を取るには、追加でつながった人のうち何割が来館して成約すればいいか。来館に進む割合を、つながった人に対して30%と置くと、追加の人数から次のように出せます。

回 追加で来館する人 追加で増える成約 追加の粗利
1回目 72人 21.6組 3,024万円
2回目 27人 8.1組 1,134万円
3回目 14.4人 4.3組 605万円
4回目 7.2人 2.2組 302万円
5回目 3.6人 1.1組 151万円

ただし、この表の粗利は大きすぎます。つながった人が、電話の効果で来館したとは限らないからです。電話がなくても来る人が混ざっています。

元が取れる線を、粗利の大きさではなく「必要な来館率」で出しましょう。追加でつながった人のうち、電話がきっかけで来館を決めた人の割合が何%あれば、その回の費用が戻るか。5回目で考えます。費用は4.1万円、つながった人は12人です。1組の期待粗利は42万円ですから、1件の来館が増えれば4.1万円は戻ります。12人のうち1人が、電話のおかげで来館を決めれば足ります。割合にすると約8%です。

4回目は、24人のうち1人で足ります。約4%です。3回目は48人のうち1人、約2%、2回目は90人のうち1人、約1%、1回目は240人のうち1人、約0.4%です。

つまり、どの回も、必要な来館率はとても低い。5回目でさえ、追加でつながった12人のうち1人が来館に進めば、費用は消えます。

費用で止める理由が、どこにもない

ここまでで言えることは単純です。電話を5回かけても、年34万円。そのうち1人でも来館が増えれば、元が取れる。費用の面では、回数を絞る理由がありません。

それでも、多くの式場が2〜3回で止めています。止める理由は費用ではなく、別のところにあるはずです。

  • 何度もかけると、嫌がられる気がする
  • つながらない人に、何度もかけるのは空しい
  • 担当者の時間が、来館中の接客に取られる

どれも、損益の外にある理由です。このうち、数字にできるのは「嫌がられる」のほうだけです。そこを計算します。

嫌がられたときの損は、請求者の1%で年50万円

電話が原因で、本来は自分から来館するはずだった二人が来なくなる。これが、電話の損の側に置く項目です。

先ほど置いたとおり、電話がなくても来館する二人が120件います。この120件のうち、電話の回数が増えたせいで、1%が来館をやめるとします。

1%は1.2件です。1件の期待粗利が42万円ですから、年50万円。0.5%なら25万円、2%なら101万円、3%なら151万円です。

来館をやめる割合 失う来館 失う粗利
0.5% 0.6件 25万円
1% 1.2件 50万円
2% 2.4件 101万円
3% 3.6件 151万円

比べてみます。5回目の電話は、費用4.1万円で、追加でつながった12人のうち1人が来館すれば戻ります。一方で、電話が嫌がられて「どうせ来た人」の1%が離れると、50万円が消えます。

だから、損益を決めているのは費用ではありません。電話の回数を増やしたときに、「どうせ来た人」を何人遠ざけるか、です。

この1%という数字は、測れません。年600件、うち「どうせ来た人」が120件では、1%の差は1.2件です。月に直せば0.1件。そんなものは、数字では見分けられません。

測れないので、結論の出し方を変えます。損の側に置いた1%が、現実にありうる幅かどうかを、運用のルールで小さくするほうに考えを移します。

嫌がられにくくする、電話の組み立て

回数を増やしても嫌がられにくい形は、考え方としては次のようなものです。僕が経験則で挙げているもので、効果の大きさは分かりません。

  • 資料請求のフォームで「電話してよい時間帯」を聞く。聞いた時間帯の外にはかけない
  • 資料請求のフォームで「電話・メール・LINEのどれがよいか」を聞く。電話を選ばなかった人には、電話をかけない
  • 留守番電話が入ったら、同じ日にはかけ直さない。次は別の時間帯にかける
  • 3回かけてつながらなければ、4回目以降は電話をやめて、メールかLINEに切り替える
  • つながった人には、次の連絡の予定を、その場で聞く。「また何日ごろにご連絡してもよいですか」と聞いて、断られたらかけない

特に最初の2つが効きます。フォームで連絡の手段を聞いておけば、電話を望んでいない二人にかけるという、いちばん嫌がられる形を避けられるからです。

止める線は「つながらない人の数」で引く

ここまでの計算で、回数の上限は費用では決まらないと分かりました。では、何で決めるか。僕は、つながらない人の数で線を引くのが堅いと考えています。

5回かけても、つながらない人は31%です。その人たちにこれ以上かけても、つながる確率は2%を切ります。そこで、電話は4回で止めて、残りの人にはメールかLINEで一度だけ案内を送る、という形を考えられます。

この形だと、次のようになります。

  • 電話は最大4回。費用は年30万円ほど
  • 4回でつながらなかった人(請求者の約33%、200人ほど)には、メールかLINEで日程の案内を1通だけ送る
  • 以降は追わない

メールには「電話がつながらなかったので、来館の日程の案内を送ります」と書き、空いている見学枠を3つ並べておくと、返信しやすくなります。

回数を増やしたほうがいい場合

回数を増やしたほうがいい場合もあります。

  • 挙式予定日が近い二人。仮予約の期限があって、決めるまでの期間が短い二人は、早くつながるほど得です。「挙式まで半年」と答えた請求者には、回数を増やして、日を詰めて連絡します
  • 土日の見学枠が空いている時期。枠が空いている月は、来館が1件増えるごとの粗利が、そのまま残ります。満枠の月は、追加の来館が既存の予約を押し出すだけで、純増になりません
  • 担当者に余力がある時間帯。接客中でない時間帯にかけるなら、手間の費用は実質ゼロです

回数を減らしたほうがいい場合も、書いておきます。

  • 資料請求のフォームに、電話番号が必須でない会場。電話番号を入れなかった人は、電話を望んでいない可能性が高いです
  • 請求者のほとんどが、すでに他社の見学を済ませている時期。電話を受けても、もう決めている二人が多いなら、つながる率が上の置き方よりも低くなります

自分の会場で確かめる3つの数字

この記事の数字は仮置きです。自分の会場で、次の3つを数えると、回数の線が引けます。

1つ目は、回ごとのつながる率です。1回目、2回目、3回目で、追加で何件つながったか。電話の記録を、回数を残して付けていない会場は、1か月だけでも付けてみると分かります。

2つ目は、つながった人の来館率です。回が進むほど下がるのか、変わらないのか。ここが変わらないなら、回数を増やす理由が強くなります。

3つ目は、電話を断られた件数と、来館をやめた理由に「電話」が出てくる件数です。フォームの自由記入欄や、アンケートの回答から拾えます。月に1件でも出るなら、回数を絞る理由になります。

まとめ

  • 年600件の資料請求がある仮の式場で、電話の費用は1回の追加で年4〜12万円。5回かけても合計で年34万円ほど
  • 追加でつながる人は、5回目でも12人。そのうち1人が来館すれば、5回目の費用は戻る。費用の側で、回数を絞る理由はない
  • 損益を決めるのは、電話が嫌がられて「どうせ来た人」が離れること。120件の1%で年50万円が消える
  • この1%は、年600件では数字で確かめられない。測れないものは、嫌がられにくい運用のルールで小さくする
  • フォームで連絡の手段と時間帯を聞く。電話を望まない人にはかけない。留守番電話のあとに同じ日にかけ直さない
  • 止める線は、つながらない人の数で引く。仮の式場では、電話は4回で止め、つながらなかった約33%にはメールを1通送る
  • 数字はすべて仮置き。自分の会場では、回ごとのつながる率とつながった人の来館率を、1か月だけ記録して確かめるところから始める