新郎新婦のリアル

手作りアイテムの持ち込みは、式場が期限を確認する物を絞ると仮の式場で年34万円残る。確認すべきはムービーと印刷物だけで、小物まで追うと赤字になる

プロフィールムービー、ウェルカムボード、席札、席次表。二人が自分で作って式場に持ち込むものは、年々増えている印象があります。僕が確かめられた公開データはないので、増えているかどうかは断言しませんが、見積もりに「持ち込み可」と書いてある会場はよく見ます。

持ち込みを認めた会場が困るのは、持ち込み料の有無ではありません。当日が近づいたときに、物が届いていないことです。ムービーのデータが前日に届く、席次表の印刷が間に合わない、ボードが想定より大きくて置く場所がない。こういうことが一つ起きると、当日の担当者の1時間がそこに消えます。

結論を先に書きます。持ち込みの期限を確認する相手は、全部ではなく、ムービーと印刷物に絞ったほうが残ります。年120組、うち6割が何かを持ち込む仮の式場で、重い2種類だけに中間確認を入れると、年約34万円残る計算になります。小物まで3回ずつ追いかけると、手間が上回って年約9万円の赤字です。

先にお断りします。この記事の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。遅れる割合や、遅れたときの対応にかかる時間について、僕が確かめられた公開データはありません。業界の相場としては読まず、自分の会場の数字に置き換えるための型として読んでください。

持ち込みの「重さ」を分ける

持ち込みは、全部が同じ重さではありません。遅れたときに、当日の進行や人員にどれだけ響くかで、二つに分けられます。

重いもの。

  • プロフィールムービー、エンドロールムービー。再生確認、音声確認、形式変換、差し替えが必要になる
  • 席次表、メニュー表などの印刷物。名前の誤りがあれば刷り直しになり、配置の準備も止まる

軽いもの。

  • ウェルカムボード、席札、小さな装飾。遅れても、当日に持って来てもらえば置けるものが多い

ムービーが重いのは、データを受け取ってから使えるようになるまでに、式場側の作業が挟まるからです。形式が合わなければ変換が要りますし、音が途中で切れていれば、二人に連絡して作り直してもらいます。席次表も同じで、誤字の確認が済んでいなければ、刷れません。

軽いものは、物そのものが届けば終わりです。席札が前日の夜に届いても、置く作業が増えるだけです。もちろん、60枚の並べ替えは楽ではありませんが、止まるわけではありません。

二人の側の時間にも上限があります

式場が期限を確認する理由は、二人が悪いからではありません。二人の側の時間には上限があって、そこを超えると遅れるからです。

仮に、契約から挙式まで8か月あるとします。仕事をしながら準備する二人が、手作りに使える時間は、二人合わせて週3時間。準備を始めてから締切までの30週で、90時間です。

ここに、1アイテムごとの所要時間を仮に置きます。

  • ウェルカムボード 8時間
  • 席札(60枚) 10時間
  • 席次表・メニュー表 20時間
  • プロフィールムービー 25時間
  • エンドロールムービー 30時間

この五つを全部作ると93時間で、90時間をわずかに超えます。しかも、これは何も起きない前提です。仕事が忙しい月や、体調を崩した週は、まず手が止まります。

僕の見立てでは、使える時間の6割、つまり54時間を超えるあたりから、締切が危なくなります。この6割は根拠のある数字ではなく、予備を残すために置いた仮の線です。ボード、席札、ムービー1本なら43時間で、収まります。これに席次表を足すと63時間で、線を超えます。

式場の側から見ると、二人が何を持ち込むと言っているかを聞くだけで、遅れそうな組が分かります。持ち込みが4つ以上、うちムービーと印刷物が両方ある組は、遅れる側に入ります。

仮の式場の前提

  • 年間の挙式は120組、そのうち6割の72組が何かを持ち込みます
  • 重いもの(ムービー・印刷物)は1組あたり平均1.2件、軽いものは1.8件。合計で重い86.4件、軽い129.6件です
  • 何も確認しないと、重いものの25%、軽いものの15%が期限に遅れます
  • 遅れた重いものの対応は、スタッフ2名で3時間とみなし、1件3万円とします。軽いものは1時間で、5,000円です
  • 中間確認は、LINEなどで進み具合を聞いて、必要なら催促する作業です。1回15分、人件費は1時間2,500円で、625円です

この中で一番怪しいのは、遅れる割合です。25%という数字に根拠はありません。後で動かして確かめます。

何もしないときの損失

何も確認しなかったときの、遅れの損失です。

  • 重いもの:86.4件 × 25% = 21.6件。1件3万円で、64.8万円
  • 軽いもの:129.6件 × 15% = 19.4件。1件5,000円で、9.7万円
  • 合計で、年74.5万円です

損失のほとんどは、重いものです。件数は軽いものと変わらないのに、損失は9割近くが重いものに寄っています。

重いものだけ確認する

ムービーと印刷物を持ち込む72組に、挙式の1か月前に1回だけ、進み具合を聞きます。人件費は、72組 × 625円で、4.5万円です。

これで重いものの遅れが25%から10%に下がると置きます。

  • 遅れる件数は、86.4 × 10% = 8.6件で、損失は25.9万円
  • 減る損失は、64.8万円 − 25.9万円 = 38.9万円
  • 手間を引いて、年34.4万円残ります

損益分岐も出しておきます。確認の手間4.5万円を回収するのに必要なのは、重いものの遅れの割合が1.7ポイント下がることだけです。25%が23.3%に下がれば、足ります。ここは、僕の置いた前提に関係なく、堅い結論です。1回の確認が、遅れを1.7ポイントも減らせないとは、あまり考えられません。

軽いものまで確認すると赤字

では、全部のアイテムに、3回ずつ確認を入れたらどうなるか。

  • 手間は、72組 × 3回 × 625円で、13.5万円
  • 軽いものの遅れが15%から8%に下がると置いても、減る損失は、129.6 × 7% × 5,000円で、4.5万円
  • 軽いもの分の手間だけを見ると、9万円の赤字です

軽いものは、遅れたときの損失が小さいので、追いかける手間のほうが重くなります。遅れの割合を15%から0%にしても、減るのは9.7万円で、手間を超えることはなかなかありません。

つまり、期限を追うかどうかは、アイテムの種類では決まりません。遅れたときの損失が、確認の手間より大きいかどうかで決まります。

遅れる割合を動かして確かめる

重いものの遅れの割合を、25%から動かします。確認で10%まで下がる前提は変えません。

  • 元の遅れが15%なら、減るのは86.4 × 5% × 3万円で、13万円。手間を引いて8.5万円残る
  • 元の遅れが10%なら、確認しても下がる余地がなく、手間の4.5万円が赤字になる

確認が効くのは、元から遅れる組がいる会場です。持ち込む二人の大半が期限どおりに出す会場なら、確認は要りません。ここは、自分の会場の過去の遅れ件数を数えれば、すぐ分かります。

遅れた件数が分からないときは、これから3か月、遅れた持ち込みを記録するだけでも、判断の材料になります。

損失の単価を動かして確かめる

遅れた重いものの対応が、3万円ではなく1万円だったら、どうなるか。

  • 何もしないときの損失は、重いもので21.6万円
  • 確認で10%に下がると、減るのは13万円。手間を引いて8.5万円残る

単価が3分の1でも、残ります。逆に、ムービーの再生トラブルで披露宴の進行を止めるようなことがあれば、1件の損失は3万円では済みません。単価は、この計算の中で一番低く見積もっても、結論が変わりにくい数字です。

二人に先に伝えること

確認と同じくらい効くのは、契約の日に、期限と上限を二人に伝えることです。

  • ムービーは挙式の1か月前、印刷物は2週間前に、データまたは原稿を受け取る
  • 持ち込みが多い場合は、使える時間の上限があることを先に話す。ムービーを2本作るなら、他は式場に任せる選択肢も示す

後者は、式場の商品を売り込む意味ではなく、二人の遅れを減らすための案内です。ムービーとボードと席札と席次表を、仕事をしながら全部作る二人は、僕の計算では限界に近いです。

この案内は、持ち込み料を取る取らないとは別の話です。持ち込み料の損益は別の記事で書いているので、ここでは触れません。

受け取りの形をそろえる

確認の回数を増やさなくても、遅れの損失を小さくする方法があります。受け取りの形を、あらかじめそろえておくことです。

ムービーなら、受け取る形式と容量の上限、納品の方法を、契約の日の案内に書いておきます。二人がデータを作り終えてから「どの形式で出せばいいですか」と聞くようでは、そこで1往復増えます。席次表なら、名前の漢字と並びを二人が確認した版を、式場が最終確認する、という順番を先に決めておきます。

形がそろっていれば、遅れたものを受け取ったあとの作業が短くなります。仮に、遅れたムービーの対応が3時間から2時間になれば、1件の損失は3万円から2万円に下がります。この前提で、何も確認しない場合の重いものの損失は、64.8万円から43.2万円になります。確認の有無とは別に、年21.6万円の差が出ます。

この21.6万円は、紙1枚の案内を作る手間で動かせる部分です。確認の電話やLINEを増やすより、先に手を付ける場所だと僕は考えています。

数字を自分の会場に置き換える

自分の会場で確かめるなら、次の三つです。

  • 持ち込みの件数を、重いものと軽いものに分けて数える
  • そのうち、期限を過ぎたものの件数を数える
  • 遅れた1件に、スタッフが何時間かけたかを、担当者に聞く

三つ目は、数字が取りにくいです。聞いてみると、各担当者の記憶にも差があります。それでも、おおよその時間が分かれば、確認の手間と比べられます。

まとめ

  • 持ち込みは、遅れたときの影響で、重いもの(ムービー・印刷物)と軽いもの(ボード・席札)に分ける
  • 仮の式場(年120組、持ち込みは6割)で、重いものだけ挙式1か月前に1回確認すると、年約34万円残る
  • 確認の手間を回収するのに必要なのは、重いものの遅れが1.7ポイント下がることだけ
  • 軽いものまで3回ずつ追うと、軽いものの分だけで手間が上回り、年約9万円の赤字になる
  • 元から遅れる組が少ない会場では、確認は要らない。過去の遅れ件数で判断する
  • 二人の手作りに使える時間は、仮に週3時間。持ち込みが4つ以上でムービーと印刷物が両方ある組は、遅れる側に入る