遠方の親しいゲストは、交通費に配慮がないと出席したい人が56%。半額負担で81%、全額負担で88.9%まで上がる
遠方に住む親しい友人を結婚式に呼ぶとき、交通費を持つかどうかで、来てくれる人の数は変わるのか。ゼクシィの記事に載っている調査によると、交通費がご祝儀(3万円)と同額かかる遠方の親しいゲストが「出席したい」と答えた割合は、特別な配慮がない場合で56%、交通費を半額負担してもらえる場合で81%、全額負担してもらえる場合で88.9%でした。
配慮なしと全額負担の差は32.9ポイントです。20人の遠方ゲストを呼ぶ披露宴なら、出席の見込みは11人強から17人強に変わります。人数が変わると、料理も席も引出物も変わるので、見積もりの総額に直接響きます。
ただ、この数字は「出席したい」という意向で、実際の出席率ではありません。調査の回答者数も記事に書かれていません。そこで、数字の読み方に注意を置いたうえで、仮の披露宴を置いて、二人の収支と式場の見積もりにどう効くかを計算してみます。
56%、81%、88.9%はどういう調査か
数字の出どころを先に整理します。ゼクシィの記事「結婚式に遠方から来てくれるゲストへの交通費・宿泊費、お車代はどうする?」では、ゲストの気持ちをケース別に紹介しています。
前提は、新郎新婦と親しい間柄の人を招く場合です。ケース1は「遠方のため、ご祝儀(3万円)と同額程度の交通費がかかる場合」で、このとき出席したいと答えた割合は次のとおりです。
- 特別な配慮がない場合:56%
- 交通費を半額負担してもらえる場合:81%
- 交通費を全額負担してもらえる場合:88.9%
記事の末尾にある出典は2つです。2022年9月に行った「ゼクシィ花嫁会」108人へのアンケートと、過去10年以内に結婚式へ参列した経験がある20代以上の男女へのマクロミルの調査です。ただ、上の割合がどちらの調査の数字なのか、回答者が何人だったのかは、記事の中で示されていません。
この点は割り引いて読む必要があります。回答者が100人前後の調査なら、1人の違いが1ポイント近くになります。56%と81%の差(25ポイント)は大きいので、方向は信じてよいと思います。一方で、88.9%という小数点つきの数字を、そのまま見積もりの前提にするのは危ない。81%と88.9%の差(7.9ポイント)は、回答者数によっては誤差の範囲に入ります。
もう一つ、聞き方の限界があります。「出席したい」は意向です。実際には仕事や子どもの都合で来られない人もいますし、逆に、配慮がなくても来てくれる人もいます。この調査から言えるのは、「親しい遠方のゲストは、交通費の負担が大きいと迷う人が半数近くいて、持ってもらえると迷いが減る」という方向までです。
仮の披露宴で計算する
ここからは、調査にない数字を前提として置いた計算です。実在の式場や二人のデータではありません。
前提は次のとおりです。
- 遠方の親しいゲストを20人招待する
- 1人あたりの交通費は3万円(調査のケース1と同じで、ご祝儀と同額)
- ご祝儀は1人3万円
- 出席したゲスト1人あたりの会場への支払い(料理、飲み物、引出物など)は2.5万円
- 出席者の割合は、調査の「出席したい」の割合をそのまま使う
2.5万円はあくまで仮の置き方です。実際の1人あたりの金額は式場とプランで大きく違うので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
出席者と二人の負担
| 交通費の扱い | 出席者(20人中) | 二人が負担する交通費 |
|---|---|---|
| 配慮なし(56%) | 11.2人 | 0円 |
| 半額負担(81%) | 16.2人 | 24.3万円 |
| 全額負担(88.9%) | 17.8人 | 53.3万円 |
半額負担にすると、出席者は5人増えて、二人は24.3万円を出します。全額負担にすると、出席者は6.6人増えて、53.3万円です。
ここで、追加の1人あたりの負担を見ると、半額から全額に上げたときの効き方が分かります。全額にするための追加の金額は29万円(53.3万円−24.3万円)で、増える出席者は1.6人(17.8人−16.2人)です。1人あたり約18万円。半額負担までは増えた5人に対して24.3万円(1人あたり約4.9万円)でしたから、半額から全額に上げるほうが、1人あたりの効きがかなり重くなります。
ご祝儀と会場への支払いを入れた二人の収支
出席者が増えれば、ご祝儀も増える。一方で、会場への支払いも増えます。1人あたりのご祝儀3万円から会場への支払い2.5万円を引いた0.5万円が手元に残り、そこから交通費の負担を引きます。
- 配慮なし:11.2人×(3万円−2.5万円)=5.6万円のプラス
- 半額負担:16.2人×(3万円−2.5万円−1.5万円)=16.2万円のマイナス
- 全額負担:17.8人×(3万円−2.5万円−3万円)=44.5万円のマイナス
半額負担で二人は約21.8万円の差(プラス5.6万円からマイナス16.2万円)、全額負担で約50.1万円の差を出すことになります。その代わり、親しい友人が5人、6.6人と余計に来てくれる。この差額をどう受け止めるかは、二人が「人数を増やしたいのか、費用を絞りたいのか」で変わります。
ご祝儀と同額の交通費がかかるケースでは、全額負担にするとご祝儀がそのまま交通費に消えます。二人にとって、遠方の人を呼ぶことは、収支を取りにいく行為ではなく、「その人に来てほしいから出す」という判断になります。
式場の側から見ると何が変わるのか
ここから、会場の話です。
出席者が増えると、会場の売上は増えます。上の仮の置き方で、1人あたりの会場の粗利を仮に0.8万円(支払い2.5万円の32%)とします。半額負担で出席者が5人増えれば、粗利は4万円の増加。全額負担なら、6.6人増えて5.3万円の増加です。
金額としては大きくありません。遠方ゲスト20人の話だけなら、会場にとっての増収は数万円にとどまります。
では、式場には関係ない話かというと、そうではないと思います。理由は3つあります。
見積もりの人数が変わる
見積もりは、人数が決まらないと確定しません。遠方のゲストを呼ぶかどうか、呼んだら来てくれるのかは、二人が最後まで迷うところです。迷っている間は、見積もりの人数も揺れます。
人数が揺れると、初回見積もりと契約後の見積もりの差が大きくなる。別の記事で扱ったように、契約後に見積もりが上がることは、キャンセルや不信感の原因になります。遠方ゲストの扱いを最初に聞いておけば、人数の幅が見えて、見積もりのずれが小さくなります。
費用の項目として、見積もりに載っていない
遠方ゲストの交通費・宿泊費は、式場の見積もりには入っていません。二人が別に払うお金です。見積もりを見て「予算に収まった」と思った二人が、あとから交通費と宿泊費で追加の出費に気づく。この時点で、予算の余裕がなくなっていることがあります。
初回の打合せで、「遠方から来るゲストは何人くらいですか。交通費や宿泊費は、どうされる予定ですか」と一言聞くだけで、二人は結婚式の費用の外側にあるお金を意識できます。式場が費用を取るわけではない。ただ、予算の上限を決める前に出てくる話なので、聞くほうが親切です。
宿泊の提案が、式場の売上になる場合がある
宿泊を伴う遠方ゲストが多い場合、会場の近くの宿泊先を案内したり、提携のホテルを紹介したりすることがあります。式場が宿泊施設を持っている場合は、宿泊が売上に入ります。持っていない場合でも、案内の仕方で二人の手間は変わります。
ここは会場によって条件がまったく違うので、一般論としては「聞かれてから答える」より「聞く前に案内を用意しておく」ほうが、遠方ゲストの多い二人の安心につながる、と言える範囲に留めておきます。
二人が迷う判断の分かれ目
式場の担当者が二人の相談を受けるとき、交通費の負担の判断で迷う場面は、次のように分けられます。
全額・半額・なしを決める基準
調査のケース1は「ご祝儀と同額の交通費」でした。交通費が1万円なら、ご祝儀のほうがはるかに大きい。交通費が6万円なら、ご祝儀の倍かかる。同じ「遠方」でも、金額がまったく違います。
ゼクシィの記事では、お車代の相場を「交通費の半額程度で、切りのいい金額(1万円、1万5000円など)」としています。この記事にある数字は相場の目安として書かれたもので、調査結果ではありません。
判断の材料は、少なくとも次の3つです。
- そのゲストが、二人にとってどれくらい来てほしい人か(親族、親しい友人、職場の上司など)
- 交通費が、ご祝儀に対してどれくらいの比率か
- 二人が、結婚式全体の費用の中で、ゲストに回せる余裕があるか
全員に全額は難しい。全員に配慮なしでは、親しい人ほど迷わせる。そこで、「来てほしい度」の高い人から順に、半額、全額と厚くしていく考え方があります。
宿泊費をどう扱うか
ゼクシィの記事に引用されている別の調査(ParaLux)では、結婚式のゲストが感じる「見えない出費」のうち、遠方への交通費に負担を感じる人が42.14%、宿泊費が22.57%でした。この数字は別の調査の紹介で、ここでは一次の確認はできていませんが、交通費のほうが宿泊費よりも負担と感じる人が多い、という傾向は見てとれます。
宿泊費は、挙式が午前なのか午後なのかで要不要が変わります。当日の夜に帰れる時間帯なら不要、翌日の早朝から動くのも難しい時間帯なら、1泊が必要になります。この線引きは、式場の挙式の時間帯の設計にも関わります。
「出席したい」と「出席した」のずれ
意向と実際は違う、と先に書きました。実際に出席する人の数を読むには、招待状を出す時点での返信の傾向が一番確かです。式場側が手元に持っている自社の過去の出席率(招待した人数に対して、実際に来た人数の割合)があれば、それが一番よい前提になります。
調査の56%・81%・88.9%を自社の見積もりの前提に使うよりは、自社の過去の出欠データで、遠方の人の出席率を数えておくほうが、現場の実感に近い数字になります。
見積もりの段階で聞いておくこと
最後に、式場が二人に聞いておくとよいことを、順番に整理します。
- 遠方から来る見込みのゲストは何人か(親族、友人、職場で分けて)
- 移動の手段は何か(新幹線、飛行機、車)。交通費の見当はいくらか
- 交通費や宿泊費は、二人で持つ予定か、ゲストにお願いする予定か
- 持つ場合、全員に同じ扱いか、関係の近さで分けるか
- 見積もりの人数は、遠方ゲストが来る場合と来ない場合で、いくつの幅を見ておくか
5番は、式場側の運用にも関係します。人数の幅を最初に押さえておけば、契約後に「実は遠方の人が全員来ることになった」という変更があっても、料理や席数のずれを小さくできます。
まとめ
- ゼクシィの記事に載る調査では、ご祝儀と同額の交通費がかかる遠方の親しいゲストが「出席したい」と答えた割合は、配慮なしで56%、半額負担で81%、全額負担で88.9%だった
- 回答者数が記事に書かれていないので、方向は信じてよいが、81%と88.9%の差は誤差の可能性がある。意向は実際の出席率とは別
- 仮の披露宴(遠方20人、交通費3万円、ご祝儀3万円、会場への支払い2.5万円)で計算すると、半額負担で出席者は5人増え、二人の負担は24.3万円。全額負担で6.6人増え、53.3万円
- 半額から全額に上げる追加の1.6人には、約29万円かかる。1人あたりの効きは、半額までよりかなり重くなる
- 会場にとって、遠方ゲストの扱いは数万円の増収にとどまる。効くのは、見積もりの人数の幅と、予算の外にある出費を最初に伝えるかどうか
- 実際の出席率は、自社の過去の出欠データで数えるのが一番確かな前提になる
