式場の介添料は1人目を込みにして2人目から別建てにする
見積書に「介添料」という行を立てている式場は多いです。立てていない式場もあります。どちらが正しいという話ではなく、この行をどう置くかで、値引きの会話の中身も、当日の追加の売れ方も変わります。
結論から書きます。介添スタッフ1人分は基本料金に込めて、2人目からを別建てにする形が、損益でいちばん収まりやすいです。理由は、別建ての行は二人から見て外せる行に見えるのに、外れた分のスタッフ費用は消えないからです。一方で、2人目以降の介添は、必要な二人にだけ売れる性質の商品なので、別建てに向いています。
この記事の数字は、時給も、料金も、売れる割合も、すべて僕が置いた仮のものです。業界の相場や平均ではありません。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
介添料は、値引きの会話で最初に外される行になりやすい
介添は、新婦の衣装の着付けや裾の整え、移動の付き添い、控室から会場への誘導などを受け持つスタッフです。挙式から披露宴まで、新婦のそばにいる時間が長い。人件費として確実にかかるのに、二人から見ると何をしているのかが見えにくい行でもあります。
見積書の中で、見えにくい行は外される側に回ります。「ここは友人にお願いできませんか」「この項目、なしにできませんか」という会話が出やすいのは、料理や衣装のように中身を手に取れる項目ではなく、サービス料や介添料のような人の手間の行です。
ここで押さえておきたいのは、外された行の分だけ、費用が消えるわけではないことです。介添を外して、新婦の着付け直しや移動を友人に任せたとしても、会場の側は、安全のために誰かを近くに置きます。レストランウェディングのように人手が薄い会場でも、段差のある移動や長い裾の扱いは、結局スタッフが見ることになります。
つまり、別建てにした介添料を値引きで外すと、収入だけが減って、費用は残ります。ここが、この行を別建てにするときの最大の注意点です。
介添1人の費用を、先に数字にする
まず費用から置きます。仮に、次の前提を置きます。
- 介添スタッフの時給は2,000円
- 1組あたりの拘束は5時間(控室での準備、挙式、披露宴の中座、終了まで)
- 社会保険や交通費などの上乗せを、時給に対して15%と置く
この前提だと、1組あたりの人件費は2,000円 × 5時間 × 1.15 = 11,500円です。
次に、売り値を置きます。介添料として、見積書に載せる金額を税込2万2,000円とします。単純に引き算すると、粗利は1組あたり1万500円です。
年間120組の式場なら、介添の人件費は年138万円、介添料の売上は年264万円です。売上の側が大きいのは、人件費以外に、研修、衣装の取扱いの備品、控室の消耗品が、この行で回収されているためです。
2人目の介添は、少し違います。親族の着付けの付き添いや、足の不自由な祖母の移動の付き添いのように、必要な時間が限られます。仮に拘束3時間として、人件費は2,000円 × 3時間 × 1.15 = 6,900円。追加料金を1万2,000円と置くと、粗利は5,100円です。
別建ての行は、外される率で損益が決まる
ここから本題です。介添料2万2,000円を別建てにした場合と、基本料金に込めた場合を比べます。
込めた場合は、基本料金が2万2,000円ぶん高くなり、介添料の行は消えます。二人から見ると、外せる行がなくなります。収入は常に2万2,000円で、外される心配がありません。
別建ての場合は、外される率を r、2人目以降の追加が売れる割合を a と置くと、1組あたりの収入は次の式になります。
(1 − r) × 2万2,000円 + a × 5,100円(追加の粗利)
込めた場合の2万2,000円と比べて、別建てが得になるのは、次の条件のときです。
r < a × 5,100円 ÷ 2万2,000円
追加が売れる割合 a を変えて、外される率の上限を計算します。
| 追加が売れる割合 | 別建てが得になる、外される率の上限 |
|---|---|
| 5% | 1.2% |
| 10% | 2.3% |
| 20% | 4.6% |
| 30% | 7.0% |
追加がかなり売れても、外される率は7%までしか許せません。1組あたり5,100円という追加の粗利が、2万2,000円という本体に対して小さいからです。
この表の見方を、具体的な年間の金額で補います。外される率が10%で、追加が売れる割合が10%なら、別建ての1組あたり収入は(0.9 × 2万2,000円)+(0.1 × 5,100円)= 2万310円。込めた場合より1,690円少なく、120組で年20万円の差になります。外される率が20%に上がれば、差は1組あたり3,890円、年47万円です。
別建てにして、10組に1組が外すだけで、年20万円が消えます。これは大きな金額ではありません。ただ、1回の値引き交渉で外されるのは、介添料だけではないはずです。ほかの行も一緒に外される場面が増えるなら、介添料は、値引きの口火になる行として働きます。
込めると、見学のときの価格が高く見える
込める側にも、弱点があります。基本料金が2万2,000円ぶん高くなることです。
結婚式場を探す二人は、複数の会場の見積もりを比べます。そのとき、基本のプラン料金は、最初に目に入る数字です。公式サイトや紹介サイトの料金欄は、別建ての項目を含めない金額が出ることが多いと思います。同じ内容でも、介添料を別建てにしている会場のほうが、料金欄の数字は小さく見えます。
込めて見劣りした場合のコストを、成約の数で測ります。1組の成約で得られる粗利を、仮に80万円と置きます。
別建てと込みの差は、介添料の2万2,000円 × 年120組 = 年264万円です。これは粗利80万円の3.3組分に当たります。
つまり、料金欄で見劣りして失う成約が、年に3.3組を超えるなら、別建てのほうが損益はよくなります。年間120組の式場でいえば、成約の約2.8%です。
2.8%は、料金欄の見え方だけで動く数字としては小さくありません。でも、介添料を込めた分だけ成約が落ちるのかどうかは、この計算からは分かりません。僕が言えるのは、込める判断をするなら、成約の2.8%を動かすほど料金欄の数字が効くのかを、自分の会場の実績で確かめる価値がある、というところまでです。たとえば、基本プランの料金を変えた過去の月に、来館数や成約数がどう動いたかを見られれば、手がかりになります。
判断の分かれ目は、介添の範囲が人によって違うこと
ここまで、介添を1人分の固定の商品として扱ってきました。でも現場では、介添が受け持つ範囲は二人によって違います。
差が出る条件を、5つ挙げます。
- お色直しの回数。回数が増えるほど、中座のたびに衣装の着替えと移動の付き添いが発生する
- 衣装の種類。和装は着付けと所作の補助で、洋装よりも手間がかかる
- 外部で借りたドレスの持ち込み。取扱い方法を確認する時間が増える
- 挙式の場所。チャペルと披露宴会場が離れているなら、移動の付き添いが増える
- ゲストの構成。車椅子の方、高齢の親族、乳幼児が多い披露宴では、新婦以外にも付き添いが必要になる
この5つのうち、1から4までは新婦本人に関わる条件で、スタッフ1人でまかなえる範囲です。基本料金に込める介添1人分は、ここまでを受け持つと考えられます。
5つ目だけが性質が違います。新婦以外のゲストのための付き添いは、条件の合う披露宴にだけ必要で、必要な人数は披露宴ごとに違います。これを基本料金に込めると、使わない二人も負担することになります。使わない二人から見ると、込みのほうが割高になります。
だから、1人目を込みにして、2人目以降を別建てにする形になります。新婦に付く介添は全員に必要で、費用も確実に発生するので、込めて見えなくする。ゲストの付き添いは必要な二人だけが選ぶので、別建てで選べる形にする。
この分け方なら、値引きの会話で外される行は、もともと選ぶ人が限られる追加の行だけになります。外されても、費用は発生しない(付き添いを頼まれなければ、スタッフは来ない)ので、損益は崩れません。
追加の介添は、契約時に聞かないと売れない
2人目以降の介添を別建てにするなら、売り方にも注意が要ります。追加が売れる割合 a は、売り方でかなり変わるはずだからです。
当日の直前に、「もう1人つけますか」と聞いても、遅いです。人手の手配が間に合わないことが多く、二人も、費用の話を披露宴の前日にされるのを喜びません。
聞く場面は、2つが考えられます。
- 契約時のヒアリング。招待客の中に、車椅子の方、高齢の方、小さなお子さんがどのくらいいるのかを、席次の相談より前に聞く
- 最終打合せ。人数が確定したあとに、付き添いが必要な方のリストを見ながら、追加の介添を提案する
特に、最終打合せで出す提案は、二人の側から見て自然です。お客様の人数と構成が決まったところで、「この方には付き添いのスタッフをつけると安心です」と言われるのは、サービスの案内として受け取られやすい。値引きの交渉の延長ではなく、安全の確認として話せます。
もうひとつ、追加の料金は、時間で決めておくとよいです。3時間なら1万2,000円、5時間なら1万8,000円のように、拘束時間に応じた表を持っておくと、二人も選びやすく、スタッフも手配しやすくなります。
年間の損益で、3つの形を並べる
120組、追加が売れる割合10%と20%で、3つの形を並べます。外される率は、別建ては10%と置きます。1組あたりの収入で比べます。
| 形 | 1組あたりの収入(10%売れる場合) | 年間(120組) |
|---|---|---|
| A. 介添料を全部別建て | 2万310円 | 約244万円 |
| B. 全部込み(追加の販売なし) | 2万2,000円 | 264万円 |
| C. 1人目込み、2人目から別建て | 2万2,000円 + 510円 | 約270万円 |
Cの510円は、追加が売れる10%に5,100円を掛けた金額です。追加が20%売れるなら、1,020円になり、年間で約276万円になります。
Cは、Bに比べて、年6万円から12万円増えるだけです。大きな差ではありません。Cのよさは金額ではなく、値引きで外される行を作らないことと、全員に必要な介添と一部に必要な追加を、別のものとして二人に見せられることにあります。
一方、Cの課題は、基本料金が2万2,000円ぶん高く見えることです。これは、先に見た3.3組分の損益分岐で判断します。基本料金の見え方で、成約の約2.8%を落とすと考えるなら、Aのほうが得になります。落とさないと考えるなら、Cです。
どちらかは、自分の会場の過去の数字を見て決めるしかありません。ただ、見方の順番は決められます。まず、値引き交渉で、介添料が外された割合を数える。次に、料金欄を変えた過去の時期の成約を見る。この2つを並べて、先に超えるほうを避けます。
見積書の書き方で、二人の納得が変わる
形を決めたあとで、見積書の書き方にも触れておきます。
込めた場合は、「基本料金に含まれるもの」として、介添が何をするのかを、見積書の別紙か説明で書きます。含まれていることが見えないと、他会場との比較のときに、介添がない会場と同じ土俵に見えてしまいます。含めるだけでなく、含まれていることを見せる。これを怠ると、込めた意味が半分になります。
別建ての追加の行は、何時間の付き添いなのか、誰に付くのかを、行の中に書きます。「介添追加 1名」とだけ書くと、どの範囲まで受けるのかが分からず、当日に「ここまでやってくれると思った」という行き違いが出ます。
消費者向けの価格は、税込の総額で示す義務があります。介添料を別建てにするときも、税込の金額で見積書に書きます。税抜の金額のままで、追加の費用が後から発生するように見える書き方は、避けたほうがいいです。
まとめ
見積書の介添料の置き方について、この記事の結論を回収します。
- 別建ての介添料は、二人から見て外せる行に見える。外されても、スタッフの費用は消えないので、収入だけが減る
- 仮の前提(時給2,000円、5時間、料金2万2,000円)では、別建てが込みより得になる条件は、外される率が追加の売れる割合よりずっと小さいときに限られる
- 込めるときの弱点は、料金欄の数字が上がること。年120組なら、成約の約2.8%(3.3組)を落とすかどうかが損益分岐
- 新婦に付く介添は全員に必要なので込め、ゲストの付き添いは必要な二人だけが選ぶので別建てにする
- 追加の介添は、契約時のヒアリングと最終打合せで聞く。当日の直前では手配が間に合わない
介添料は、金額の大小より、どの行を外せる行にするかで損益が決まります。
